「おりものの正常な変化と異常なサイン」おりものの色、におい、量と病気の可能性を女医が丁寧に解説。
更新日:2024.03.20
皆さんは、ご自身の「おりもの」の状態を観察していますか?
「下着について不快」「正常な状態かわからない」など、
おりものに苦手意識を持っている方が多いかもしれません。
おりものは、女性の健康のバロメーター。
とはいえ、「本来のおりもの」「状態のよいおりもの」って、女性でもよくわからない方が多いでしょう。今回は、おりものの役割や自然な変化についてご紹介するとともに、受診をしていただきたい状態についても解説いたします。
ご自身のおりものについて、もっと身近に感じていただけたらと思います。
おりもの
まずは、おりものの役割や、本来のおりものの状態について知ることからはじめましょう。おりものの役割
おりものは、腟や子宮頚部、子宮内膜からの分泌物です。
子宮内膜などから剥がれた古い細胞も混じっており、誰にでも分泌されています。
おりものには、大きく2つの役割があります。
① 腟内を清潔に保つ おりものには、腟内を清潔に保つ「自浄作用」があります。
これは腟内の常在菌であるラクトバチルスによるものです。デリケートゾーンの周辺は雑菌が多く存在していて、腟の中にも入り込みやすいですが、ラクトバチルスが存在することにより、腟内に入り込んだ雑菌が繁殖しないよう、防いでいます。
② 受精の手助け 排卵期には、粘度が高い、ゼリーのようになおりものになることがあります。
これにより、精子が卵子の元へスムーズに辿り着けるよう、サポートしています。
おりものの自然な変化
おりものは、いつも同じ量や状態というわけではありません。
月経周期に伴い、性質が変化しています。
一般的なおりものの変化を、月経周期と合わせてみてみましょう。
<卵胞期>
月経のあとの時期です。おりものの性状はさらっとしていて、月経直後は少なく、排卵期に向けて少しずつ量が増えます。
<排卵期>
排卵期は、おりものの量が最も増える時期です。性状は少し粘度が高い透明なおりものが出ることがあります。
<黄体期>
排卵後、おりものの量は少し減ります。性状は少し白く濁ったような色になります。
<月経前>
月経前には、少しおりものの量が増える傾向にあります。白く濁ったようなおりもので、匂いが強くなることも多いです。
おりものの状態は「年代」によっても変わる
おりものの量や性質は、女性ホルモン「エストロゲン」の影響を強く受けます。
そのため、年齢を重ねるごとにおりものにも変化が生じるのが自然です。
【思春期のおりもの】
初潮のころから、おりものが徐々に増え始めます。
【性成熟期のおりもの】
20代〜30代は、エストロゲンの分泌量が最も多くなる時期で、性成熟期と呼ばれることもあります。おりものの量も、最も多くなる時期です。
【更年期のおりもの】
30代後半〜40代は、エストロゲンの分泌量が減ってきて、更年期と呼ばれる時期です。とくに、40代後半になると、エストロゲンの減少に伴うさまざまな症状を感じる方が多くなります。月経やおりものの周期性も、バラバラになってきます。
【閉経後のおりもの】
閉経後は、エストロゲンの分泌がほとんどなくなり、おりものも急激に減ります。おりものによって維持されていた腟内の環境が、乱れやすくなる時期です。
おりものの異常は体からのサイン
「おりものの色・におい・量がいつもと違う」と感じたら、それは、体からのサインかもしれません。おりものが変化しやすい病態についていくつか紹介しますので、当てはまるものがあれば婦人科でご相談ください。
カンジダ腟炎
カンジダは、時々腟内に存在し病原性は高くありませんが、何らかの原因で過剰に増えてしまうとカンジダ腟炎を起こします。ヨーグルト状のおりもので、デリケートゾーンのヒリヒリ感・かゆみが特徴で、比較的、頻度の高いトラブルです。 抗菌作用のある腟錠やクリームを使って治療をおこないます。寝不足、体調不良、ストレスなどで免疫の低下したタイミングや、パンティライナーやストッキングによる蒸れが原因となり得ます。
細菌性腟症
細菌性腟症も、非常に頻度の高い疾患です。おりものが灰色〜白く変化し、生臭いような独特の匂いになります。カンジダ腟炎と違い、おりものはさらさらとしていることが多いです。 抗菌作用のある腟錠やクリームを使って治療をおこないます。
腟内の細菌バランスが崩れることが原因なので、細菌性腟症を繰り返す方は、疲労やストレスを溜めずに過ごすよう、生活を見直しましょう。
クラミジア感染症
性感染症の1つで、クラミジア原虫が原因です。数日〜1か月程度ののち、子宮頚管炎から子宮内膜炎、卵管炎などを引き起こす場合があります。おりものの変化のほか、下腹部痛、不正出血、膀胱炎などが代表的な症状です。クラミジア原虫の感染自体は症状を呈しない場合がありますが、このクラミジア原虫により、細菌性腟症を引き起こすことがあります。
また、細菌性膣症の症状を生じることなく、無症状で、気が付かないうちに骨盤内腹膜炎が広がってしまったり、虫垂炎との鑑別が難しかったりする場合もあります。また、上腹部痛を生じる場合もあり、非常に症状のパターンが多彩です。 性病は感染しないことが何より大切なので、コンドームを正しく着用すること。パートナーがいる場合は、症状がなくても定期的な検査が重要です。
トリコモナス腟炎
トリコモナス原虫が腟内に寄生して生じる感染症です。感染者数は一時期減少傾向にありましたが、最近また、増加しております。黄色〜緑色で悪臭を放つ泡状のおりものが増え、デリケートゾーンのかゆみ、排尿時痛なども感じます。 主に性行為で感染し、パートナーと同時の治療が大切です。
治療薬は、腟錠及び内服薬があります。
萎縮性腟炎
膣内の常在菌であるラクトバチルスが少なくなり、血流障害を伴うことから膣内酸度を保てなくなり、細菌が腟内に住み着いておりものが増えてしまう病態です。60歳代以降の方は、ほとんどが萎縮性腟炎ではないかと思われます。
更年期以降の女性に多いですが、最近は低用量ピルを長く服用している若い方にもみられるようになってきました。 デリケートゾーンの嫌な匂い、すれ・擦れによる痛み、頻尿といった症状があれば、ご相談ください。
ステロイド軟膏やホルモン剤の腟錠を使った治療のほか、抗生剤の腟錠も要することがあります。保湿ジェルの使用、モナリザタッチの施術もおすすめです。
子宮筋腫
子宮筋腫は、生理痛が重くなるというイメージの方が多いかもしれませんが、おりものにも変化を生じることがあります。
特に「子宮粘膜下筋腫」という子宮内腔にできている子宮筋腫の場合、月経前後に血の混ざったおりものが出やすいのが特徴です。
月経痛やおりものの異常・不正出血などでお悩みの方は、お早めに婦人科でご相談ください。
大量出血を伴う場合には、緊急手術も必要です。
子宮頚がん
子宮頚がんは、初期はほとんど自覚症状がありません。
進行してくると、不正出血、濃い茶色や膿のような性状のおりものが出たり、水っぽい分泌物が多く出たりするようになります。
子宮頚がんは比較的若いころから発症するがんで、20歳代後半から増加し、30歳代後半から40歳代の発症が最も多いです。細菌性腟症を伴うこともあり、細菌性腟症が疑われた場合、子宮頚がんの確認も大切です。しっかりとがん検診を受けて、早期発見に繋げましょう。
子宮体がん
不正出血や血の混ざったおりものに注意が必要です。特に月経以外の不正出血、閉経後の不正出血の方は、お早めに受診してください。また、おりものから変な悪臭を発する場合もあります。定期的ながん検診が重要です。
子宮肉腫
非常にまれな疾患ですが、水っぽいピンクのおりもので早期発見できる場合があります。
定期検診は重要です。
更年期・閉経後も婦人科で健康管理を
婦人科は、生理のある方・妊娠希望の方・妊娠中の方だけの場所ではありません。閉経後も、女性の体のメンテナンス・体調のご相談は、婦人科でお受けすることが可能です。女性器の悩みは、年齢とともにさまざま変化します。
おりもの、デリケートゾーンの匂い、違和感。
ちょっとした工夫や治療で快適に過ごせることも多いです。
「婦人科は、なんとなく恥ずかしい」そんなお気持ちもあるかもしれませんが、婦人科医は女性の体のエキスパート。
お気軽に、なんでもご相談ください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。