おりものの色が黄色・黄緑色に変化したら要注意!原因や病院に行くべきサインと治療法を女医が解説。
更新日:2024.12.23
おりものといえば、「白や透明のもの」というイメージの方が多いでしょう。
しかし、おりものは女性の体の状態を反映するバロメーターでもあり、色や性状が変わるのは自然なことです。 診療をおこなう中で、おりものの色が「黄緑色・黄色・茶色・灰色」等、通常とは異なる色で不安というご相談をいただくことが少なくありません。
いつもと違う色のおりものは、何らかの異常がある可能性が考えられます。
今回の記事では、まずはおりものの役割や「正常」な状態について簡単にお伝えしたのち、黄緑色・黄色を中心に、おりものの色が変化する原因・治療についてご紹介いたします。
当てはまると感じられる場合には、お早めにご相談ください。
正常な「おりもの」とは?
女性なら「おりもの」は誰でも生じますが、その役割や正常な状態については、あまりご存じでない方が多いです。まずは、おりものについてご紹介します。おりものの役割
おりものは、腟や子宮頚部、子宮内膜からの分泌物です。
子宮内膜などから剥がれた古い細胞も混じっており、誰にでも分泌されています。 おりものには、大きく2つの役割があります。
① 腟内を清潔に保つ
おりものには、腟内を清潔に保つ「自浄作用」があります。これは腟内の常在菌であるラクトバチルスによる作用です。デリケートゾーンの周辺は雑菌が多く存在していて、腟の中にも入り込みやすいですが、ラクトバチルスが存在して腟内環境を維持することにより、腟内に入り込んだ雑菌が繁殖しないよう、防いでいます。
② 受精の手助け
排卵期には、おりものは粘度が高いゼリーのような性状へと変化し、精子が卵子の元へスムーズに辿り着けるようサポートしています。これは、頸管からでる粘液で、ラクトバチルスとは異なります。
正常なおりものの状態
おりものは一般的に次のような状態が正常です。
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透明、乳白色、クリーム色 下着等に付着して時間が経つと黄色に変化 |
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ほとんどないか、少し酸っぱい臭い |
性状 |
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日頃から、ご自身の「いつも」のおりものの状態を知っておくことが、異常を発見する近道になります。
おりものが変化したタイミングで疑わしい原因は?
まずは、おりものの変化が起きたタイミング別に、原因として考えられるものをご紹介します。排卵前後や月経前
月経周期に合わせて、おりものの性状や量が変化します。
月経直後はおりものが少ない時期で、排卵期に向けてさらっとしたおりものが増えていきます。排卵の前後は少し粘度が高い透明なおりものが多く出る時期です。排卵の後はおりものが白っぽく変化し、量は減っていきますが、月経の前は若干量が多くなります。 こうした変化は病気ではなく、自然なものです。
おりものの量があまりに多くて生活に支障があるなどでなければ、問題はありません。
妊娠中
妊娠中は、おりものの性状もいつもと変わりやすいです。
特に妊娠の初期は、おりものが比較的サラサラとして、量が多くなる傾向にあります。 また、妊娠中は寝不足や疲労、免疫力が低下しやすいことなどから、腟カンジダ症や細菌性腟炎になることも多いです。おりものが増えるだけでなく、臭いやかゆみが気になる場合には相談していただいた方がよいでしょう。
妊娠中、とくに注意が必要なのは、絨毛羊膜炎になることです。細菌感染症が頸管、卵膜、子宮内に広がることにより、早産のリスクが高まります。おりものの性状が変わったら、必ず主治医にご相談ください。
産後
産後は、血液の混じったおりものである「悪露」がしばらく出ます。
一般的に、1〜2か月程度の悪露のあと、黄色や白のようなおりものへと変化し、だんだんと妊娠前のようなおりものへ戻っていきます。黄色や白のおりものでも、通常は臭いやかゆみはありません。
臭いが強い場合や発熱している場合、腹痛がある場合には子宮内感染を起こしていることもあるため、産婦人科でご相談ください。産後の子宮内感染症は非常に重症になる場合があります。
心身のストレスがあるとき
睡眠不足、疲労の蓄積、人間関係のトラブルなど、心身にストレスがかかっているときは交感神経優位になるため、全身の血流障害が生じます。このため、腟内も血流障害が生じ、腟内のラクトバチルスの減少により、腟カンジダ症や細菌性腟症を起こしてしまうことがあると思われます。下腹部痛がある場合
おりものの変化とともに下腹部痛がある場合は、性感染症や、子宮筋腫などの疾患を疑います。
性感染症は、種類によっておりものの変化に違いがありますが、検査せずに、症状だけではわかりにくいケースも多いです。また、性病に場合は無症状のことも多く、知らない間に感染したまま放置することになり、悪化して骨盤内炎症性疾患(PID)に進展することも少なくありません。
子宮筋腫の場合、月経のあとに黄色っぽいおりものが続けて出るということがあります。月経期間以外での下腹部痛、ひどい月経痛、経血量が多いなどの症状があれば、子宮の超音波検査もおすすめします。
年代別で起こりやすいおりもの変化の原因は?
次に、年代別に起こりやすいおりものの変化・トラブルについてご紹介します。幼少期のおりもの
幼少期は、あまりおりものが出ませんが、おりものが増えることがあります。
よくあるのは、細菌性腟症です。
4~5歳の子どもは、大人の女性とは違った理由から、デリケートゾーンに炎症を起こしてしまうことがままあります。
・腟と肛門の距離が近い
・腟内のラクトバチルスが未熟
・ペーパーの切れ端が腟内に残ってしまう
・排便のあとに上手に拭き取れない
・陰部が気になって触ってしまう
・興味から陰部に食べ物や異物を入れてしまう
・お砂場遊びや海水浴などで腟に雑菌が入ってしまう
トイレ排泄ができるようになったタイミングなどに、比較的起こりやすいように思います。排泄後のペーパーの使い方を、正しく教えてあげましょう。
かゆみを伴うときは、下着やソープ、洗濯洗剤、入浴剤などによる外陰炎が考えられます。綿など通気性の良い下着を使う、刺激の少ないソープや洗剤に変えるなど工夫が必要です。また、初潮前にはおりものが増えて、腟炎を起こすことがあります。また、同時に膀胱炎を起こすことがあります。
初潮〜思春期
おりものは、初潮の1年ほど前から日常的に出てくるようになります。
日本では12歳前後、10歳ごろから初潮を迎えるお子さんが増えてきます。初めての「おりもの」に戸惑うお子さんも多いです。おりもので汚れた下着を長時間つけていたり、おりものを気にして洗いすぎたりすることで、細菌性腟症や腟カンジダ症となる場合があるため、おりものについて教えてあげることも必要になります。
細菌性腟症や腟カンジダ症は、性交経験の有無とは関係がないこともあります。
性成熟期(20〜30代)
性的な活動が活発になったり、学業や仕事などで忙しくなったりする年代です。
そのため、おりものの変化を起こす原因は、非常に多岐にわたります。 性行為の経験がある方であれば、性感染症を考えないわけにはいきません。色や臭い、性状でおおよその原因を絞り込むことはできますが、確定診断には検査が必要です。
また、最近は、若い方でも低用量ピルを長期間服用している方の中に、萎縮性腟炎を起こしておりものの色の変化・デリケートゾーンのかゆみで悩んでいる方もみられるようになっています。
更年期・閉経後
通常、更年期には一時的におりものの量が増えることもありますが、閉経後はおりものの量が急激に減ります。
おりものにより維持されていた腟内環境も乱れやすく、閉経後にもデリケートゾーンのトラブルは少なくありません。 更年期や閉経後には、萎縮性腟炎によるトラブルが増えてきます。萎縮性腟炎の場合、おりものが黄緑色のようになることが多いです。
更年期や閉経後におりものの異常がある場合は、子宮体がんも気にかかります。膿のようなおりもの、水のようなおりものが多量に出る場合は、検査をしてみましょう。
おりものの色の変化で考えられる病気とその治療
タイミング別・年代別でご紹介したように、おりものの色がいつもと違う場合、考えられる疾患はいくつもあり、色だけで原因を見極めるのは非常に難しいです。まずは婦人科でしっかりと検査をし、適切な治療をおこないましょう。
これまでにご紹介してきた原因とその治療法について、詳しく解説いたします。
腟トリコモナス症
トリコモナス原虫が腟内に寄生して生じる感染症です。
おりものの色・性状・症状
黄緑色のおりものの場合、第一に考えます。 黄色〜緑色で悪臭を放つ泡状のおりものが増え、デリケートゾーンの強いかゆみやヒリヒリ感、排尿時痛などを感じることも多いです。 感染者数は一時期減少傾向にありましたが、近年、また増加傾向にあります。
主な感染原因と治療法
主に性行為で感染しますので、パートナーと同時の治療が大切です。性交渉以外でも下着・タオル・便座・浴槽などを介して感染する可能性があります。 治療薬は、腟錠及び内服薬があります。腟錠だけで完治しない場合は、内服薬の併用が有効です。
淋菌感染症
淋菌が原因の性感染症で、潜伏期間は数日〜1週間程度です。
おりものの色・性状・症状
女性は比較的、症状に気がつきにくいですが、緑色、黄緑色など濃い色で膿のようにドロっとしたおりものが出ることがあります。下腹部痛、性交痛、不正出血といった症状が代表的ですが、女性は、感染していても無症状の場合があります。この場合、感染してから数年後に腹膜炎を起こすことがあります。次にご紹介するクラミジアと同時に感染していることが多いです。
主な感染原因と治療法
主に性行為で感染します。症状が進展すると子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎などを起こすこともあり、また、不妊の原因となっていることもあります。 内服薬が効きにくいため、抗菌薬の点滴で治療します。治療後の再検査が非常に大切です。
性器クラミジア感染症
性感染症の1つで、クラミジア原虫が原因です。
おりものの色・性状・症状
数日〜1か月程度の潜伏期間のあと、子宮頚管炎から子宮内膜炎、卵管炎などを引き起こす場合があります。おりものの色は白から黄色、水っぽく独特の悪臭があるおりもの、下腹部痛、不正出血、膀胱炎などが代表的な症状です。 また、無症状のまま、気が付かないうちに骨盤内に炎症が広がってしまったり、虫垂炎との鑑別が難しかったりするケースもあります。上腹部痛を生じる場合もあり、非常に症状のパターンが多彩です。
主な感染原因と治療法
主に性行為で感染します。内服の抗菌薬で治療をおこないます。治療後、治療の判定のため再検査します。
子宮頸管炎
子宮の入り口にあたる子宮頸部に炎症が起こる病気です。
おりものの色・性状・症状
無症状のケースも少なくありませんが、黄緑色や灰色で膿のような粘つきのあるおりもの、下腹部痛、性交時痛、排尿時痛なども起こりえます。
主な感染原因と治療法
クラミジアや淋菌などに感染することで生じることがあります。 性行為で生じることが多いですが、妊娠中や分娩後などにも感染を起こして子宮頸管炎となることはあります。原因菌に合わせた治療が必要です。
子宮内膜炎
子宮内膜炎は、子宮の内側にある子宮内膜に炎症が起こる病気です。
おりものの色・性状・症状
主な症状としては、黄~黄緑色っぽい膿のようなおりもの、下腹部痛、発熱、不正出血などがあります。
月経がある方は、月経とともに子宮内膜がはがれていくため、一般的には子宮内膜炎にはなりにくいです。ただし、タンポンを長時間にわたって入れていた場合や、妊娠中や出産後、閉経後の方などでは、子宮内膜炎を生じる場合があります。
ミレーナなどの子宮内リングを装着している方は、十分な注意が必要です。子宮内膜症や子宮筋腫に感染した場合、子宮摘出術を施行しなければならないことがあります。また、慢性的な子宮内膜炎によって不妊や習慣流産となっているケースもみられます。
主な感染原因と治療法
クラミジアや淋菌などの性感染症の原因菌のほか、大腸菌やブドウ球菌など皮膚の常在菌なども原因となって生じる、子宮内膜の感染症です。原因菌に合わせ、抗菌成分の含まれた内服薬や腟錠を用いた治療が必要です。重症の場合、点滴療法が必要な場合もあります。
細菌性腟症
細菌性腟症も、非常に頻度の高い疾患です。
おりものの色・性状・症状
幼い子供から高齢者まで、幅広い年代で可能性があります。 おりものの量が多く、黄色い場合や灰色〜白へ変化し、魚が腐った生臭いような独特の臭いになり、かゆみも伴います。おりものはさらさらとしていることが多いです。
主な感染原因と治療法
原因菌は10種類以上あり、抗菌作用のある腟錠やクリームを使って治療をおこないます。 腟内の細菌バランスが崩れることが原因なので、細菌性腟症を繰り返す方は、疲労やストレスを溜めずに過ごすよう、生活を見直しましょう。
また、乾燥やデリケートゾーンの洗いすぎ、蒸れなども悪化の要因です。保湿をしっかり行いましょう。ラクトバチルスという乳酸菌が腟内環境の悪化を防御してくれるので、乳酸菌を摂取することも大切です。
萎縮性腟炎
腟内の常在菌であるラクトバチルスが少なくなり、血流障害を伴うことから腟内酸度を保てなくなり、細菌が腟内に住み着いておりものが増えてしまう病態です。
おりものの色・性状・症状
60歳代以降の方は、ほとんどが萎縮性腟炎ではないかというほど、よくある病態といえます。 更年期以降の女性に多いですが、最近は低用量ピルを長く服用している若い方にもみられるようになってきました。 デリケートゾーンの嫌な臭い、かゆみ、おりものが黄色や茶色になることがあり、おりものの増加、擦れによる痛み、頻尿といった症状があれば、ご相談ください。
主な感染原因と治療法
萎縮性膣炎の主な原因は、閉経や子宮の摘出、または卵巣機能の低下に伴う女性ホルモンの分泌減少です。これにより腟粘膜が薄くなり、潤いが失われて乾燥することで、腟の防御機能が低下します。その結果、細菌が繁殖しやすくなり炎症を引き起こします。
ステロイド軟膏やホルモン剤の腟錠を使った治療のほか、抗生剤の腟錠も要することがあります。保湿ジェルの使用、モナリザタッチの施術もおすすめです。当院では、多彩な治療法をご用意しております。
おりものの色に変化が出ている場合のQ&A
「おりものの色がいつもと違う」という状態でお悩みの方からよく寄せられるご質問にお答えします。Q. 病院へ行かなくても、自然治癒しますか?
これまでご紹介してきたように、おりものの色や臭い・性状の変化がある場合、性感染症や、腟内の細菌バランスの乱れによる細菌性腟炎などが考えられます。 細菌性腟炎では、まれに自然に軽快するケースもあるのですが、ほとんどの場合、治療しなければ自然には治癒しません。
性感染症は、治療が遅れると症状が進展し、入院での治療が必要になることもあります。 おりものの色や臭い・性状、デリケートゾーンのかゆみなどの症状がある場合、お早めに婦人科を受診してください。
Q. 妊娠中におりものの色に変化がある場合、原因はなんでしょうか?赤ちゃんへの影響は大丈夫ですか?
妊娠中は、妊娠そのものや、睡眠不足・疲労などにより免疫力が低下しています。
そのため、細菌性腟症になりやすいです。細菌性腟症のほか、腟カンジダ症も可能性として考えられるでしょう。 妊娠中に細菌性腟症になると、頸管炎を引き起こし、早産の可能性が高まります。できるだけ早く、治療をおこなう必要があります。治療は、早産防止に非常に有効です。
自己判断は禁物!忙しい方はオンライン診療の活用も
「おりものがいつもと違うけど、忙しいから…」と、すぐに受診できずに困っている方は決して少なくありません。
当院では、少しでも早く、おりものの異常の原因を突き止めて快適に過ごしていただきたいという思いから、オンラインで性感染症の治療ができるようにいたしました。ご自宅に届く検査キットを使って検体を採取し、返送していただきます。ご自宅にいながら、原因に合わせた治療がおこなえます。
おりものに違和感があるけど、なかなか受診できそうなタイミングがない…そんな方は、当院のオンライン診療でご相談ください。
まとめ
今回は、おりものの色、とくに「黄緑色・黄色」の変化に着目し、原因や対処法をご紹介しました。
おりものは、月経周期によっても日々変化します。
また、タイミングや年代によって、おりものが変化しやすい要因も異なります。 おりものの色が変化するときは、量や臭いも変化することが多いです。デリケートゾーンのかゆみなどを生じることも少なくありません。
感染症の場合もそうでない場合も、適切な治療をすることが重要です。違和感があるのであれば、お早めにご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。