「おりもの尿漏れみたい?」見分け方、原因(月経・妊娠・病気・更年期)、受診の目安など疑問に女医が丁寧に解説!
更新日:2024.11.01
「おりものが水っぽい」
「水のようなおりもののせいで、下着や洋服が汚れてしまう」
そのような症状でお悩みの方は、じつは少なくありません。
おりものの状態はなかなか人と比べにくく、「ふつう」がわかりにくいものです。
今回は、水っぽいおりものが出てくるという状態について、原因や受診の目安をお伝えします。
おりもの?尿漏れ?どっち!?
おりものだろうと思っていたら、じつは「尿漏れ」だったということがよくあります。まずは、尿漏れでないかどうか、確認してみましょう。【1】もれてくる「タイミング」をチェック
次のようなタイミングで、陰部から水のようなものが出てくる場合は、「腹圧性尿失禁」といって、尿漏れの可能性もあります。
・くしゃみ、咳などお腹に力が入ったとき
・立ち上がったとき
・運動中
タンポンを使用しても下着が汚れるようであれば、尿漏れの可能性が高いです。
【2】匂いをチェック
尿漏れの場合、しばらく時間が経つとアンモニア臭が気になってくるでしょう。色だけでは、よくわからない場合が多いです。
おりものは、一般的には少し酸っぱい、ヨーグルトのような匂いといわれます。後ほど説明いたしますが、腟炎を起こしている場合は匂いが変化し、生臭い匂い・鼻にツンと響くような匂いがすることもあります。
尿漏れの場合でも、ある程度婦人科で対応することが可能です。おりものか?尿漏れか?わからない場合にも、お気軽に婦人科でご相談ください。
水っぽいおりものが出る原因は?
尿もれではなく、おりものの性質が水っぽくなっている場合について、考えうる原因を4パターンご紹介します。1. 月経周期との関連
月経周期に伴っておりものの性状が変化するのは、自然なことです。
・月経が終わったあと
量は少ないものの、比較的サラッとしたおりものが出てきます。
・排卵期の前後
おりものの量が増える時期です。透明で水っぽく、少しねばつきのあるおりものが多量に出る傾向にあります。ですから、「月経と月経のちょうど真ん中あたりの時期に、水っぽいおりものが出る」のは自然なことで、基本的には問題ありません。
・排卵期から月経にかけて
おりものの量自体は減り、やや粘り気や匂いのある、黄白色へと変化していくことが多いです。
【CHECK】
一時的、周期的なおりものの変化であれば、あまり心配しすぎなくてもよいでしょう。
2. 妊娠初期
妊娠が成立すると、女性ホルモンの分泌量がぐっと増えるため、おりものの量も増えやすいです。
一般的に粘りけは少なくサラッとして、白から黄色のような色になります。少々、匂いが強くなったように感じることもあるようです。
おりものの性状だけで妊娠を判断することはできませんが、月経が遅れている場合、妊娠している可能性がある場合におりものの変化があったのであれば、検査をしてもよいでしょう。
3. 更年期・閉経後
更年期には、女性ホルモンの分泌量が急に増えたり減ったりと、波のように揺れ動きます。そのため、一時的に女性ホルモンの分泌量が増えたタイミングでおりものも増えることも、ありえるでしょう。
月経周期が不安定になっている更年期の「水っぽいおりもの」は、他の原因が除外されているのであれば、大きな心配はいりません。
閉経後の方は、閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)の可能性を考えます。
2014年に提唱された新しい概念で、エストロゲンの低下に伴って生じるさまざまな不調の総称です。
エストロゲンが減少すると、コラーゲンが減少することで腟の乾燥が生じ、粘膜の萎縮が起こります。腟内の細菌バランスも乱れやすくなり、また、骨盤底筋群のゆるみも出てきます。
当ブログでも何度かご紹介している「萎縮性腟炎」もその症状の1つですが、GSMでは、次の2種類の症状を呈します。
【デリケートゾーンに関する症状】
・腟の乾燥、痛み
・デリケートゾーンのかゆみ、ヒリヒリ
・性交時痛 ・性交時に濡れにくい
【排尿に関する症状】
・頻尿
・排尿を我慢しにくい
・尿漏れ
閉経後の多くの女性が、GSMの症状に悩まされていると言われております。婦人科は、月経のある方だけの場所ではありません。何歳になっても、女性ならではのお悩み症状は、婦人科でご相談ください。
更年期、閉経後いずれの場合でも、婦人科での検査・治療で不快症状を緩和させることができます。
4. 病気の可能性
急なおりものの変化があったとき、病気の可能性を考えないわけにはいきません。
代表的な原因として、まず腟炎を考えます。
・細菌性腟症、カンジダ腟炎
性感染症ではありませんが、腟内環境の乱れにより発症します。性交渉の経験がない方でも発症することはあります。
・クラミジア感染症
クラミジアによる感染症で、女性は自覚症状がほとんどないことも多いです。黄色や黄緑色で、少し粘つきのあるおりものがでることがあります。
・腟トリコモナス症
トリコモナスという原虫による感染症で、基本的には性感染症ですが、タオルの共有などで感染することもあります。黄色く、泡状のおりものがでることがあります。
腟炎について下記の記事で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
膣炎の原因、症状、受診判断の有無
性行痛との関係や治療法を女医が丁寧に解説!
悪性腫瘍(がん)
悪性腫瘍(がん)の可能性も、しっかりと除外する必要があります。
悪性腫瘍の場合、水っぽく、かつ、血が混じってくることが多いです。強いにおいがすることもあります。しばらくがん検診を受けていないという方は、がん検診も受けましょう。
水っぽいおりもの、受診すべき特徴
「おりものが水っぽい」そう感じた場合、受診すべきかどうかの目安として、次の項目をチェックしてみてください。
・常に水っぽいおりものが出る
・匂いも変わった、強くなった
・デリケートゾーンのかゆみを伴っている
・血が混じっている(茶色や赤、ピンクなど)
・下腹部痛や性交時痛を伴う
・閉経後である
・微熱がある
・疲れやすくなった
・体重が急に減った
当てはまる場合は、一度、婦人科で検査をしてみましょう。
水っぽいおりものが出るときの対処法
水っぽいおりものが出る状態で、そのままショーツを履いてしまうと、汚れや衣服への浸透が気になってしまうでしょう。手軽にできる対処法を3つご紹介します。取り入れてみてください。
・おりものシート、吸水パッドなどを使用する
おりものシートや吸水パッドが手軽で便利です。ただし、こまめに取り替えなければ不潔になってしまい、かえっておりものが増えることにもなりかねません。トイレへ行くたびに交換するようにしましょう。最近は、吸水ショーツも人気があります。
・デリケートゾーンを清潔に保つ
清潔に保つことも意識しましょう。お湯で優しく洗い、デリケートゾーン専用のソープを使うこともおすすめです。洗浄力の強いソープで洗いすぎると、腟内環境が乱れる原因になることもありますので、注意してください。
・下着や洋服の通気性を改善する
蒸れによって雑菌が繁殖しやすくなるため、締め付けの強い下着や洋服を避けること、コットンなど天然素材のものを選ぶこともよいでしょう。布ナプキンは通気性がいいので、おすすめです。
水っぽいおりものに関するQ&A
「水っぽいおりものが出る」という方からよくいただくご質問に、お答えします。Q. 水っぽいおりものが大量に出るのは異常ですか?
月経周期などにより水っぽいおりものが出るのは自然なことです。しかし、いつも水っぽい、毎日多量に出ているという場合には、なんらかの病気を調べる必要があるでしょう。Q. 水っぽいおりものが出ているとき、性交渉は問題ないですか?
腟炎を起こしていないのであれば、性交渉に問題はありません。
萎縮性腟炎の場合、性交渉により痛みや出血を伴ってしまうことがありますので、潤滑ゼリーを使う、優しくピストン運動をおこなう、痛みの少ない体位を探すなど、工夫は必要です。
性感染症だった場合、パートナーとうつしあう「ピンポン感染」により、治癒しなくなってしまいます。治癒が確認できるまで、性交渉は控えていただく方がよいでしょう。
月経周期の中間でおりものが水っぽくなっている場合は、排卵期にあたるため、妊娠する可能性が高いです。
Q. おりものが多いのですが、おりものシートは毎日つけても大丈夫なものですか?
おりものにより下着や洋服が汚れてしまうのを防ぐため、おりものシートを使うことは問題ありませんが、蒸れてしまうため、使用しないですむのであれば、使用しないほうがいいです。
また、おりものシートによる「かぶれ」でデリケートゾーンに炎症を起こすこともあるため、注意は必要です。こまめに取り替え、衛生的に使用するようにしてください。
Q. おりものが黄色い場合は、尿漏れでしょうか?
尿漏れの場合、時間が経過すると下着やおりものシートが黄色く変色してきますが、色だけでなく、臭いなども合わせて考えた方がよいでしょう。 おりものも、透明や白だけでなく、黄色やクリーム色のような色になることもあります。
下着などについて時間が経過すると、色が少し濃くなって見えるものです。また、腟炎をおこしている場合も、おりものの色が変化します。 色だけで、おりものなのか尿もれなのかを判断するのは、少し難しいと言えます。
まとめ
今回は、「おりもの」が水っぽいという症状について、原因や対処法をご紹介しました。
おりものは、月経周期や年齢によって変化するものです。しかし、腟炎や悪性腫瘍の影響でおりものの性状が変化することもあります。また、尿漏れをおりものと勘違いしているケースも少なくありません。 水っぽいおりものがいつも出ている方、量が多い方、匂いやかゆみなど別の症状もある方などは、ぜひ婦人科でご相談ください。
適切なケアで、おりもののお悩みを改善することができますよ。 また、妊娠中での水っぽいおりものは破水の可能性があるため、必ず主治医にご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。