【必見】不正出血の全て!月経との違い・原因・症状・対処法・受診目安などを婦人科女医が丁寧に解説。
更新日:2025.01.26
ほとんど全ての女性が、一生の間に何度か「不正出血」に悩まされた経験があるでしょう。
大きな問題のないこともありますが、病気のサインという可能性もあります。適切なタイミングで、受診していただくことが大切です。
今回は、不正出血が起こる原因や受診の目安をご紹介するとともに、原因ごとの対処法を簡単に解説いたします。
不正出血とは
月経以外の期間に腟から生じる出血は、すべて不正出血です。
出血量・頻度・色により、ある程度は原因を考えることができます。ただし、原因の特定には内診や超音波検査等が必要で、自己判断で原因を決めてしまうのは危険です。
出血量や頻度による違い
量や頻度による傾向をご紹介します。
・少量で1日〜数日程度の場合
ホルモンバランスの乱れや、性行為の際に傷がついたなどの理由で一時的に出血したことが考えられます。 ストレスの多い生活をされている方は、不定期に出血を繰り返してしまうケースも見られます。
排卵期に少量の出血が出ることがあります。1回だけのこともありますが、2か月に1回は出血するという方もいらっしゃいます。
子宮腟部びらんで少量出血する場合があります。
・少量で続く場合
子宮頸がんや子宮体がん、子宮頸管ポリープ・子宮内膜ポリープなど、なんらかの疾患によって出血が続いている可能性があります。
細菌性腟症による子宮腟部びらんのため、少量の出血が持続する場合もあります。 思春期や更年期には、ホルモンバランスが乱れやすいため、月経が長引いてダラダラと出血することも多いです。 卵巣破裂などで出血する場合があります。
・大量の場合
出血量が非常に多い場合は、筋腫分娩など緊急性が高い出血かもしれません。
また、大量出血の場合、輸血が必要な場合もあります。 ご本人が気付いていない流産の場合も、大量出血になることがあります。 数日間の出血が定期的に生じる場合は、不正出血ではなく、月経周期が短くなる「頻発月経」かもしれません。
出血の色による違い
出血の色だけで原因を見極めるのは難しいですが、量や頻度と合わせて考えれば、参考にはなるでしょう。
鮮血(鮮やかな赤)やピンクの場合
「現在出血している」と考えられます。
性行為による腟の裂傷、子宮腟部びらん、腟炎、子宮頸管ポリープなどを疑います。
茶色や黒っぽい赤の場合
ある程度体内で出血してから時間が経過している可能性があります。
子宮頸がんや子宮体がん、子宮内膜ポリープ、ホルモンバランスの乱れによる不正出血を考えます。
不正出血の原因と種類
不正出血は、大きく次の4種類に分類されます。機能性出血
ホルモンバランスの乱れが原因で起こる出血を、機能性出血と呼びます。病的な原因ではなく、思春期や更年期などホルモン量が不安定な時期や、ストレスがある時に起こりやすいです。無排卵月経や黄体機能不全なども、機能性出血の要因となります。
器質性出血
腟、子宮、卵巣など女性器の疾患が原因で起こる出血です。子宮筋腫、子宮内膜症、腟炎、子宮頸管ポリープ・子宮内膜ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなどが挙げられます。これらの疾患により、性交時や運動時に出血することもあります。
排卵出血
月経と月経の中間の「排卵」の時期に起こる出血です。ごく少量の出血であることが多く、月経とは異なり下腹部痛もほとんどありません。少しネバネバしたおりものと一緒に出てくることもあります。
その他
妊娠初期の着床出血、切迫流産・早産、甲状腺の疾患、性交による腟の裂傷などが原因で出血することもあります。
また、低用量ピルの服用開始時や内服時間のずれでもホルモンバランスが一時的に乱れ、不正出血を起こすのは珍しくありません。
更年期には、月経周期がバラバラになり、量も安定しなくなります。
月経と不正出血との関連や違いについて
月経以外の出血はすべて不正出血だとお伝えしましたが、月経なのか不正出血なのか判断が難しい場合もあるでしょう。月経と不正出血の違いは?
月経は、ホルモン分泌によって周期的に生じる子宮からの出血です。月経では、厚くなった子宮内膜が剥がれて血液とともに排出されます。
本来であれば、プロゲステロンにより、月経まで子宮内膜は安定しているはずです。しかし、ストレスや疲労などでプロゲステロンの分泌量が変化すると、子宮内膜が不安定となり、一部が剥がれてしまうことがあります。これが不正出血です。
子宮内膜がすべて剥がれる状態が月経であり、部分的に剥がれた状態が不正出血といえます。1回だけや、複数回でもごく少量の出血であれば、不正出血の可能性が高いです。
月経不順と不正出血の違いは?
人により、月経周期はある程度定まっています。
25〜38日周期が正常で、それより短い場合が頻発月経、長い場合は希発月経と呼ばれます。
初潮から数年の思春期の間は「無排卵性月経」のことも多く、それに伴って月経不順も自然なことです。経血量もあまり安定しません。 おおむね、二十歳を超えても月経不順の場合は、検査をおすすめします。
月経前後の不正出血の場合
月経の直前の不正出血の場合、子宮内膜が不安的になり一部が剥がれて出血していることが考えられます。 月経直後の不正出血も同様に、部分的に残っていた子宮内膜が剥がれ、不正出血のようになっていると考えるのが自然です。
不正出血の原因となる病気
不正出血の原因となりうる疾患について簡単にご紹介します。子宮体部の疾患
・子宮筋腫
子宮の筋層に発生する良性腫瘍で、女性ホルモンの影響を受けて成長します。筋腫核が内腔に面している場合は大量出血の原因になります。
・子宮腺筋症
子宮内膜の組織が子宮筋層内に侵入・増殖する疾患で、強い月経痛や過多月経の原因となります。
・子宮内膜ポリープ
子宮内膜が局所的に隆起・増殖してポリープ状になったもので、基本的には良性腫瘍です。ポリープの位置によっては、小さくても不正出血の原因となることがあります。経血量が増え、月経期間が長くなる方も多いです。
・子宮内膜炎
細菌感染などにより子宮内膜に炎症が起こる疾患です。性感染症の場合もあります。
・子宮内膜症
子宮内膜様の組織が子宮外で増殖する疾患で、不正出血のほか、重い月経痛や不妊の原因となることがあります。
・子宮体がん
子宮内膜から発生する悪性腫瘍で、比較的初期からみられる不正出血が特徴的です。
子宮頸部の疾患
・子宮頸管ポリープ
子宮の入り口(頸部や腟部)頸管に生じるポリープで、HPVとの関連性が示唆されております。性行為や運動、排便時のいきみなどに伴い、不正出血を起こします。
・子宮頸管炎
子宮頸管に起こる炎症性疾患で、おりものの増加や不正出血などの症状が現れます。
・子宮頸部びらん
子宮頚管内側の円柱上皮部分が外側に張り出し、「びらん」のように見える病態です。
性成熟期の女性の8割前後の方に見られますが、健康には影響ありません。性行為の刺激により不正出血を起こすケースがあり、気になる場合は治療も可能です。
・子宮頸がん
HPVの感染により発生するがんです。
前がん病変(子宮頸部異形成)の段階でも、持続的な不正出血がみられることがあります。
卵巣の疾患
・卵巣機能不全
卵巣機能が低下する病態です。ホルモン分泌が正常におこなわれないことで、月経不順や不正出血、無月経など月経のトラブルを起こします。
・卵巣出血
排卵期に生じる卵巣出血の場合、腹痛をともなう数日間持続する出血がある場合があります。
腟の疾患
・腟炎
細菌やカンジダなどの感染により腟炎を起こし、かゆみやおりものの変化が特徴です。デリケートゾーンが刺激に弱くなり、不正出血を呈することがあります。
・萎縮性腟炎
エストロゲンの低下により腟粘膜が萎縮して炎症を生じる病態で、更年期以降の多くの女性に見られます。萎縮した粘膜は、下着の擦れなどわずかな刺激でも出血してしまうことがあります。
・腟がん
腟に発生する悪性腫瘍で、不正出血やおりものの増加などの症状が現れます。稀な疾患です。
妊娠に関連する病態
・異所性妊娠
いわゆる子宮外妊娠です。受精卵が卵管などの狭い部分に着床して大きくなり、破裂してしまうと、急激な強い腹痛と、大量の出血を起こします。
・切迫流産、切迫早産
妊娠中の出血で最も疑うものです。絨毛や胎盤が部分的に剥がれた状態で、安静が必要になります。
・胞状奇胎(ほうじょうきたい)
妊娠初期の少量の出血がある場合があります。強い嘔気を伴うことが多いです。
さまざまなケースで生じる不正出血の原因・対処法
不正出血でよくあるパターンごとに、原因と対処法をお伝えします。更年期に伴う不正出血について
更年期の時期には、非常に不正出血が増えます。
月経周期がバラバラになり、出血量も予測がつかなくなり、ストレスに感じる方も多いです。自然な経過ではありますが、気持ちのいいものではありません。 更年期の不正出血が不快な方、月経困難症の方などは、閉経まで比較的安全に服用でき、月経をコントロールできる「ジエノゲスト」がおすすめです。
ジエノゲストを服用している間は、多くの方で月経が止まった状態となり、出血から解放されます。1日2回、決まった時間に服用していただきます。 飲み始めの時期や、時間通りに服用できなかった場合などには、不正出血が起こりやすいです。一般的に、飲み始めの不正出血は数か月以内におさまります。
低用量ピル服用中の不正出血について
低用量ピルは、月経周期を安定させ、月経痛や経血量も改善できる薬です。
薬でホルモン量を一定にするため、ホルモンバランスの乱れによる不正出血は起こりません。 ただし、服用を始めたばかりの時期は、体の本来のホルモンバランスから変化するため、一時的に不正出血が起こる場合があります。
2〜3か月服用を続けていれば、ホルモンバランスが安定して不正出血も落ち着きますので、まずは続けてみてください。 また、数日間連続して飲み忘れた場合、子宮内膜が不安定になり、出血します。
もし出血してしまったら、シートの途中で服用をやめて消退出血を起こし、リセットするのがよいでしょう。42歳以降の内服は、副作用を考慮するとお勧めしません。
ストレスに伴う不正出血について
精神的なストレスだけでなく、寝不足や過度の疲労といった身体的なストレスも、不正出血の原因になりえます。
ホルモンバランスは繊細にコントロールされているため、ストレスにより乱れやすく、不正出血や月経不順を起こすのです。 ストレスを減らすことが最も大切ですが、すぐに改善するのは難しいという方も多いでしょう。
ほかに不正出血を起こしうる病気などがないことを確認できれば、低用量ピルなどで月経をコントロールすることも選択肢です。
下腹部痛を伴う不正出血について
月経時を中心に慢性的な下腹部痛を伴う場合は、子宮内膜症や子宮筋腫など子宮の疾患を疑います。卵巣出血も鑑別診断に挙げられます。
子宮内膜症は低用量ピルやジエノゲスト、ミレーナなどで治療が可能です。子宮筋腫は、偽閉経療法や、場合により低用量ピルも選択されます。 また、急激に強い下腹部痛が生じて出血する場合、異所性妊娠や卵巣破裂の可能性が高いです。すぐに医療機関へかかってください。
トイレでいきむ際の不正出血について
排便時、いきむと出血するという場合は、子宮頸管ポリープを疑います。 発症の原因は明らかになっていません。
自覚症状がない場合は経過観察をするのが一般的ですが、自然にポリープがなくなることはありませんので、症状が出てきたら切除することも可能です。排便時の出血なので、肛門からの出血と混同されている方もおられます。
受診すべき症状は?
「不正出血が1回でもあれば受診を」と言いたいところではありますが、それでは難しい方も多いだろうと思います。
目安として、次のチェック項目に1つでも当てはまる場合は、受診してください。
・不正出血が何度も生じる
・不正出血が数日以上続く
・低用量ピルやジエノゲストを長く服用しているのに出血がある
・閉経したのに腟からの出血がある
不正出血がある場合の検査について
「出血している間は、婦人科を受診できない」と思っている方は非常に多いですが、不正出血のお悩みであれば出血のある状態でご来院いただいて全く問題ありません。(がん検診は正しい結果がでないことがあり、出血がないときの再検査をお願いする場合があります。)
・問診
いつから、どのようなタイミングで出血があるのかなど、状況をお伺いします。月経の状況などの問診も大切です。
・内診
子宮や腟の様子、出血の状態などを直接確認します。
・超音波検査
子宮や卵巣の状態を確認します。
・おりものの検査、採血、がん検査など
必要に応じて、検査を追加することがあります。
まとめ
今回は、不正出血の原因について、さまざまな角度から解説しました。 不正出血は、体に何らかの異常があるサインかもしれません。1回の不正出血でも、ご相談に来ていただくのは歓迎です。
子宮や卵巣などの状態を確認しましょう。
不正出血を繰り返す場合、長期間続く場合、閉経後の出血の場合は、早めに受診してください。
とくに腹痛がある場合は、早いご受診をおすすめします。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。