性交痛の原因は子宮内膜症？痛む部位・症状・原因・治療法に関して女医が丁寧に解説。

「じつは、性交の時に痛みを我慢している」という女性、少なくありません。

「パートナーに言いにくい」「病院に行くような症状でもない」…

と考える方が多いようです。

性交は、パートナーとの大切なコミュニケーションの1つでもありますから、女性側も痛みなく、心から楽しめるのが理想的。

性交痛を感じる原因として、婦人科系の疾患が隠れていることがあります。「私が我慢していればすむから…」と、性交がつらいままにしておくのはやめましょう。

さまざまある婦人科系の疾患の中で、今回は「子宮内膜症」に着目し、性交痛が生じる原因・性交に関連するお悩みなどについて解説したいと思います。

子宮内膜症と性交痛

子宮内膜症について、また、性交痛との関連について解説します。

子宮内膜症の特徴

子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にあるべき子宮内膜が、それ以外の場所に発生する病気です。

腹膜、卵巣、卵管、腸、子宮筋層内など、あらゆる部位に子宮内膜に似た組織ができてしまいます。
これらの組織は、女性ホルモンの影響を受けて月経時に向けて増殖しますが、腟に開通していない部位なので、月経によって体外へ排出することはできません。

子宮以外の場所でたまった子宮内膜は、周囲の炎症や癒着を引き起こし、その部位が動かされたときに激痛を感じることがあります。

以前よりも徐々に月経痛がひどくなってきた場合、月経困難症が増悪したと感じられる場合、子宮内膜症かもしれません。
癒着の場所によって、月経痛以外にも、性交痛、腰痛、排便時痛、不正出血などが起こります。

さらに、子宮内膜症は不妊の原因にもなりえます。
20〜30歳代の女性に多い病気ですので、将来の妊娠のためにも、月経痛を放置せずにお早めにご相談いただくことが大切です。

子宮内膜症に関連した性交痛の特徴

性交痛は、年代に関係なく、女性の5〜10人に1人が経験するといわれています。

原因がわかれば、適切な対処をとり、性交痛を改善することも可能です。
診察室で面と向かってお話するのは少し恥ずかしい…と思われるかもしれませんが、婦人科は女性の体にまつわるお悩みを解消する場所。当院は、医師を含めスタッフ全員女性ですから、遠慮なくご相談ください。

性交時に痛む部位としては、大きく3パターン考えられます。

・挿入時に痛む（腟の入り口）

・こすれた時に痛む（腟内）

・奥を突かれた時、ピストン運動時に痛む（腟の奥の方）

痛みが子宮内膜症に関連している可能性がとくに高いのは、「奥を突かれた時に痛む」パターンです。

子宮内膜症は、子宮後方～直腸前面の「ダグラス窩」という部分に発生することが多く、この場合は奥の方が痛む傾向にあります。

また、痛い体位・痛くない体位がある場合には、子宮内膜症による骨盤内癒着が影響している可能性を考えてもよいでしょう。

性交時に痛みを感じるせいで緊張してリラックスできず、十分に腟が潤わないことで、さらに性交時痛を悪化させてしまうという方もおられます。性交時に卵巣嚢腫が破裂してしまうこともあります。

どのパターンの痛みであっても、婦人科での治療でやわらぐ可能性がありますので、お気軽にご相談ください。

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の治療は、大きく薬物治療と手術に分けられます。重症度や、妊娠のご希望の有無などを加味して、一人ひとりに適切な治療法をご提案いたします。

子宮内膜症の治療をおこなうことで、性交痛もやわらぐことが多いです。

【薬物治療】

まずは、痛みに対して鎮痛薬・鎮痙薬などを使用します。
漢方薬の処方により症状が軽快する方もいらっしゃいます。
こうした薬の使用である程度症状を抑えることはできますが、根本的な治療にはなりません。
また、低用量ピルは子宮内膜症、月経困難症の診断で保険適応で処方が可能です。

子宮内膜症は、女性ホルモンの影響を受けて子宮内膜が増殖することが原因。
ですから、低用量ピルだけでなく、ディナゲスト（黄体ホルモン製剤）やミレーナ（子宮内黄体ホルモン放出システム）、レルミナ（GnRH抑制剤）を使って、月経自体を止めてしまうというのも1つの選択肢です。

【手術】

子宮内膜症は、どの治療法を選んでも、残念ながら再発することが少なくありません。

また、卵巣の子宮内膜症であるチョコレート嚢胞は、稀ではあるものの、がん化することが報告されています。

ですから、チョコレート嚢胞は、状態によっては手術をおすすめします。

 

子宮内膜症による性交痛のよくあるご質問

子宮内膜症の影響で性交痛を感じている方やパートナーの方から、よく寄せられるご質問にお答えします。

Q. 子宮内膜症の場合、性交でどのあたりが痛みますか？

子宮内膜症の場合、腟の奥の方を突かれたときや、ピストン運動で体が揺れる際に痛みを感じる方が多いですが、特定の場所はありません。疼痛は子宮内膜症が生じている場所によって異なりますので、痛みの部位だけで子宮内膜症と決めることはできません。

また、子宮内膜症があるからといって、痛みの原因が子宮内膜症だけとは限りません。腟が十分に潤っていなかったり、パートナーと性器のサイズが合っていないということもあります。

Q. 子宮内膜症でも性交をして問題ないですか？悪化しませんか？

子宮内膜症が性行為で悪化するということはございません。
ただし、痛みを我慢して性交をしていると、痛みから緊張してしまい、腟が十分に潤わず、さらに痛みを感じるという悪循環に陥ってしまうことがあります。また、卵巣嚢腫を併発している場合には、破裂することがあります。

婦人科で、子宮内膜症の状態を確認することは重要です。 痛みのない範囲で、体を気遣いながら楽しむのがよいでしょう。また、子宮内膜症の治療により、疼痛は和らぎます。月経が近い時期は、子宮内膜症に伴う痛みを感じやすい方が多いです。

Q. 性行為のしすぎで子宮内膜症になったのでしょうか？

性行為の回数と、子宮内膜症の発症には関連はありません。
初めて性行為をした年齢が若い、性行為の経験が多いといったこととは関係なく、月経そのものの回数が関わっていると考えられています。

近年の女性は、栄養状態がよくなったことや、出産の回数が減ったことなどから、生涯に起こる月経の回数がとても多いです。 子宮内膜症は女性ホルモンが影響し、月経のたびに少しずつ進行していく病気ですから、月経の回数が多いほど子宮内膜症のリスクは高いといえます。性行為の回数は、無関係です。

Q. パートナーが子宮内膜症で性交痛を感じています。どうしたらよいでしょうか？

婦人科医と相談して、治療を開始しましょう。
また、子宮内膜症が進行してくると、痛みも強くなってきます。

少しの揺れでもかなり強く痛みが出てしまう場合が多いので、「今、痛みがあるのではないか？」「我慢しているのではないか？」という視点を持ち、よく確認しながら性行為をすすめていくのがよいのではないでしょうか。

浅めの挿入でゆっくり動かすなど、痛くない体位・方法を模索してみてください。

「痛みがある」と伝えると、男性パートナーに問題があるように受け取られてしまうかも、傷つけてしまうかもと心配して、言い出せない女性もいます。子宮内膜症など、婦人科系の疾患をお持ちのパートナーがおられる方は、性交痛がないかどうか、気にしてあげてください。

痛みがあるうちは、パートナーへの気持ちの有無とは関係なく、性行為が億劫になるものです。性行為だけが2人のコミュニケーションではありません。痛みのあるときには、挿入をしないスキンシップを大切にし、お互いの思いを深め合うようにしましょう。

まとめ

今回は、10人に1人は罹患しているとされる子宮内膜症について、また、子宮内膜症と性交痛との関係について解説いたしました。

子宮内膜症がある方は、その部位や進行度合いによって、かなり強い性交痛を感じてしまうことがあります。

性交痛のある方は、つらい思いを我慢せず、ぜひ婦人科でご相談ください。

子宮内膜症の薬物療法はどんどん良くなってきています。
自分に合った治療法を選択しましょう。

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