ミレーナ挿入は痛い?太る?臭う?副作用・デメリット・更年期のミレーナの悩みなどを女医が丁寧に解説。
更新日:2024.04.04
最近は、月経痛がつらい場合に「月経を止める」という選択肢があることが、少しずつ知られるようになってまいりました。
その1つであるミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)は、月経困難症や子宮腺筋症などでお悩みの方、より確実な避妊をご希望の方にとって非常によい選択肢ですが、デメリットもあります。
今回は、ミレーナのメリット・デメリットについて、婦人科医としての視点からしっかりと解説したいと思います。
ミレーナとは?
ミレーナはどういったものでしょうか?まずは詳しくご紹介します。
ミレーナの仕組みと効果
ミレーナは、3cmほどでT字の形をした小さなプラスチック製の器具です。
器具に黄体ホルモンが付加されており、約5年に渡ってゆっくりと子宮内に放出され続けることで、子宮内膜をごく薄い状態に保ってくれます。 まず、子宮内膜が薄くなることにより、月経量が大きく減少し、月経痛が楽になるのが大きなメリットです。
月経困難症、過多月経の場合は保険適応で使用することができます。
10〜20%の方は、月経が全く起こらなくなり、快適にお過ごしいただけます。
避妊の効果も高いです。
低用量ピルと同等か、それ以上の確率でしっかりと避妊できます。
パール指数 | |
---|---|
避妊しなかった場合 | 85人 |
コンドーム | 2〜15人 |
低用量ピル | 0.27人 |
ミレーナ | 0.1〜0.2人 |
※パール指数とは、
ある避妊方法をおこなった場合、1年間に何人の方が妊娠するかを示した値です。
低用量ピルとの違い
月経痛の緩和や避妊といえば、低用量ピルの方が広く使われています。どちらがよいのか、お悩みの方もおられるかもしれません。
低用量ピルは、毎日決まった時間に女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の含まれた錠剤を服用することで、排卵を抑制して女性ホルモン量を一定にし、月経量や月経痛を緩和する薬です。月経が周期的に起こるため予定が立てやすくなるなど、生活にもよい影響があります。しかし、人によっては全身の副作用(頭痛、むくみ、吐き気など)が生じてしまうかもしれません。
一方で、ミレーナはプロゲステロンを子宮内のみに作用させることができる点が大きく異なります。子宮にのみ作用するため、全身への副作用はほとんどありません。
ミレーナのようにプロゲステロンのみが含まれた内服薬としては、「ジエノゲスト」があります。月経困難症でお悩みであれば、ミレーナだけでなく、ジエノゲストも選択肢としておすすめです。
更年期障害に対する効果
更年期障害の治療の一環として、ミレーナを併用できる場合もあります。
更年期障害は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少により多彩な症状を呈します。ホットフラッシュ、発汗、のぼせといった症状(血管運動神経症状)の治療には、エストロゲンの補充療法をおこなうことが多いです。
このとき、子宮がある方の場合、プロゲステロンを補充しなければ子宮体がんのリスクが高まってしまうという問題点があります。月経困難症や過多月経であらかじめミレーナを装着している患者様が、更年期障害の症状が出てきてホルモン補充療法をする場合、エストロゲン製剤だけの補充で治療が可能です。
ミレーナのメリットとデメリット
ミレーナは、月経でお悩みの方にはおすすめしたい一方で、知っておいていただきたいデメリットもあります。
婦人科医として、公平な目線でメリットとデメリットをご紹介します。
<ミレーナのメリット>
・月経痛、月経量が大きく緩和される
・月経に伴うデリケートゾーンの不快感が軽減される
・月経がなくなる場合もある
<ミレーナのデメリット>
・取れてしまう、位置がずれてしまうことがある
・感染症がある場合には挿入できない(事前に治療が必要です)
・定期的に(約5年)交換する必要がある
・挿入時に痛みがある
・子宮内腔の形状により、挿入できない場合や外れてしまうことがある
こういったメリットとデメリットをふまえ、
ミレーナをとくにおすすめするのは、以下のような方です。
月経困難症、月経過多で悩んでいる方(保険適用となります)
低用量ピルを服用できない方(喫煙者、肥満、前兆のある片頭痛、血栓素因のある方など)
より確実な避妊方法をお探しの方
月経痛や経血量など、月経に関してお悩みのある方は、お気軽にご相談ください。
ミレーナのほか、ジエノゲスト、低用量ピルもご用意がありますので、症状やライフプランに合わせたご提案をいたします。
ミレーナに関するよくあるご質問
ミレーナを使用している方は、低用量ピルなどと比べると、まだ多くありません。身近に使用している方がおらず、心配に思っている方も多いです。ここでは、ミレーナに関して、よく寄せられるご質問にお答えいたします。
Q. ミレーナの挿入は痛いのでしょうか?
子宮口が狭い場合、つまり経膣分娩の経験がない方などの場合は、子宮頸管拡張術をする必要があります。この処置には痛みを伴います。そのため、クリニックによっては、経膣分娩の経験がある方にしかミレーナ挿入をおこなわないということもあるようです。
当院では、ご希望があれば、麻酔を使ってのミレーナ挿入も可能です。麻酔費として、自費で55,000円(税込)をいただきますが、痛みなくミレーナを挿入したい方はご相談ください。
Q. ミレーナ挿入後、臭いが気になるのですが関係ありますか?
頻度は多くないですが、ミレーナに細菌が付着し、感染症を起こして臭いを感じてしまう場合があります。感染症が起きてしまった場合、ミレーナを抜去しなければなりません。
こうした感染症由来のトラブルを減らすため、ミレーナの挿入前には、感染症を起こしていないかどうかの検査をおこないます。
ミレーナ挿入後に性感染症にかかったり、腟内の細菌バランスが乱れて細菌性腟症を生じたりして臭いが出てくることもありますので、臭いやおりものの変化がある場合には早めにご相談ください。
Q. ミレーナは、デリケートゾーンの臭い対策になりますか?
ミレーナが直接影響するわけではありませんが、臭いが軽減することはあります。
月経用のナプキンでかぶれて外陰炎などを起こしやすい方は、日頃からデリケートゾーンの臭いが気になることが多いでしょう。ミレーナにより経血量が減る・月経がなくなるといったことで外陰炎になることが減り、臭いも気にならなくなることが期待できます。
また、月経周期に伴うおりものの変化で臭いが気になるような場合も、月経が起こらないことで臭いの変化も少なくなり、快適になります。
Q. ミレーナによって太ることはありますか?
ミレーナによって太る・痩せるといった直接的な副作用はありません。
月経前に食欲増進の症状が出やすい方は、月経がなくなれば多少お痩せになることもあるかもしれませんが、一般的にミレーナで体重への影響はほとんどないと考えてけっこうです。
Q. ミレーナをやめることになる理由として何がありますか?
ミレーナをやめる、除去する理由としては、いくつか考えられます。
・妊活をしたい
ミレーナを除去すると、体としては妊娠が可能な状態になります。
・感染症を起こした
ミレーナの除去が必要になる場合があります。
・不正出血が気になる
また、ミレーナ挿入直後は数ヶ月程度、不正出血が続きますが、その期間に耐えられず除去を希望される方もおられます。また、月経量は減っても、月経がすっきり終わらず長引いてしまうことが気になってしまうという場合もあります。
Q. ミレーナが外れてしまったら、わかるのでしょうか?
ミレーナが外れるときに不正出血が起こることが多いです。急にもとの月経の状態に戻るため、外れたとわかる方が多いです。
装着して1年以内に外れてしまう確率は数%と高くはありませんが、自然に外れることはありえます。特に外れるのは挿入して1か月以内です。適切な位置におさまっているかどうかの確認のため、1か月後には検診に来ていただくことが大切です。
ミレーナを挿入して月経量が減ったり、月経自体がなくなったりといった状態が続いていたにもかかわらず、経血量が急に増えたような場合は、ミレーナが外れたと考えられますので、受診をしてください。
Q. ミレーナを挿入しても、性行為に支障はないですか?
ミレーナ挿入後、少しの間(1週間程度)は控えていただきますが、その後は性行為に支障はありません。ミレーナを挿入しているのは子宮内であり、男性器は届きませんので、ご安心ください。
性行為の際、お腹に違和感があるというような場合には、もしかするとミレーナの位置がずれている可能性もありますので、ご相談ください。
まとめ
月経を止める方法の1つである「ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)」は、月経痛に悩まず、快適に毎日を過ごせるようになるという大きなメリットがあります。多くの方におすすめしたい方法です。
一方で、定期的な検診が必要なことや、外れてしまう可能性がゼロではないといったデメリットもあります。
月経痛の解消や、確実な避妊のためにミレーナをご検討中の方は、婦人科でご相談ください。
ミレーナのほかにも、解決法はいくつかあります。一人ひとりのライフプランと合わせて、最適な方法を探しましょう。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。