更年期の生理の悩み(生理不順、月経出血量の変化や周期等)を女医が丁寧に解説!
更新日:2024.01.30
40代になり「今まで周期的にきていた月経が乱れてきた」「経血量が増えた/減った」など、
月経の変化にお気づきの方は、閉経が近くなってきたのかもしれません。いわゆる「更年期」ですね。更年期になると、月経が今までとは変化します。
心配になってしまうこともあると思いますので、今回は、更年期に起こる月経の変化についてお伝えいたします。
更年期に伴う月経変化について
更年期は、閉経の前後5年ずつの時期で、多くの方では40代の半ばごろからの10年ほどが更年期です。更年期に起こるホルモンの変化と、それによる月経の変化について解説いたします。
更年期のホルモンバランス
女性の体では、エストロゲン・プロゲステロンの2つの女性ホルモンが周期的に分泌され、月経周期を作っています。そのうち、更年期の月経変化に深く関与するのは排卵後に作り出されるエストロゲンです。
エストロゲンは、脳の下垂体という部分の指令を受けて、排卵後に卵巣から大量に分泌されます。
ですが、卵巣の機能が年齢とともに徐々に低下すると、いくら脳から排卵をするようにメッセージを受けても排卵することができず、結果として十分な量のエストロゲンを分泌することができません。
卵巣からエストロゲンが分泌されないと脳からの刺激ばかりが強くなり、さらには、同時に1つ以上の排卵が誘発され、エストロゲン分泌量が急上昇するなどによりエストロゲン分泌量のゆらぎが生じます。
このエストロゲン分泌量の「ゆらぎ」が、更年期にさまざまな変化をもたらす原因です。
更年期によくある月経変化
更年期には、以下のようなさまざまな月経の変化が生じます。
月経周期が短くなる/長くなる
経血量が増える/減る
出血がダラダラと続く
不正出血が多くなる
個人差はありますが、まず月経周期が短くなり、その後しばらくすると逆に月経周期が長くなって、次第に月経回数が減って、閉経という流れになる方が多いです。
経血量も、急に増えたり、不正出血かなと思うほど少なくなったりと、不安定になります。
1年間月経がこなければ、閉経したと考えます。
月経に変化があらわれたら婦人科へ
40代で月経が変化したとき、一度は婦人科を受診していただきたいと思います。
「閉経が近いのだろう」と思っていても、別の病気が原因だったということもあるためです。
出血の色や量などだけでは、月経なのか不正出血なのかの区別はできません。
不正出血で特に注意したいのは、なんといっても、「子宮がん」です。
子宮がんは、できる部位によって「子宮頸がん」「子宮体がん」の2つに分けられます。多くはありませんが、「卵巣がん」の方もいらっしゃいます。
子宮頸がん
子宮頸がんは比較的若く、20代後半頃から少しずつ増え、30代、40代での発症が多い、HPVウイルスが原因の子宮頚部に発生するがんです。
予防のためのワクチン(HPVワクチン)がありますが、今の30代後半以降の方は、ワクチンを接種していない方がほとんどだと思います。
子宮頸がんは、不正出血がダラダラと続く、スポーツや性交渉時の出血、おりものの量が増える、下腹部痛などが主な症状です。30代で、「少し早いけど閉経するのかな」と考えて不正出血を放置していて、実はがんだったという方もおられます。
子宮体がん
一方、子宮体がんは30代後半から増え、40代〜60代に多いがんです。
初期から90%の方に不正出血がみられます。
子宮頸がん検診が普及するにつれ、見落としが多いのは子宮体がんです。
子宮の内膜で発生するがんで、がん検診時に少し痛みが伴うことがあり、嫌われる傾向がある子宮体がん検診ですが、早期発見で完治できる可能性のあるがんなので、不正出血のある方は積極的に検査をおすすめします。
チェックポイント
特に注意していただきたいのは、閉経した後に性器からの出血があった場合です。
まれに、閉経後1年以上たって月経が再開することがありますが、一般的には数年以上月経が止まっていた状態から、月経が再開するということはありません。
また、稀ですが、ホルモン産生腫瘍の場合もありますので、不正出血にはがん検診が必要です。
いずれにしても、月経に変化があったり、不正出血が続いたりするようであれば、婦人科のチェックをした方がよいでしょう。
出産してから、忙しくて何年も婦人科には行っていないという女性も少なくありません。
当院は、忙しい方でも通いやすいよう、土日も診療をおこなっております。お気軽にご相談ください。
更年期に必要な検査と対策
更年期かも、閉経が近いかもと思われたら、婦人科へいらしてください。
検査をおこない、つらい症状には対策をとることができます。
更年期を疑う場合に必要な検査
月経の変化や更年期障害のような症状で受診された際には、更年期に伴うものなのか、何か原因となる病気があるのかを判断するために、いくつか検査をおこないます。
血液検査
女性ホルモンの値や甲状腺機能、血糖値、コレステロール値などをチェックいたします。女性ホルモンの値をみることで、更年期かどうかを客観的に判断可能です。
血圧測定
閉経の前後で、女性は高血圧になる方が増えます。頭痛やめまいの原因は、高血圧かもしれません。
がん検診
子宮頸がん、子宮体がんの検診をおこないましょう。不正出血や下腹部痛の原因になっていることがあります。
骨密度検査
閉経を境に、女性は骨密度が急激に下がります。骨密度の低下が原因で、腰痛を感じることがあります。疑わしい症状があれば、骨密度検査もおすすめいたします。当院でも骨密度検査や骨粗鬆症の治療が可能です。
さらに更年期の年齢の女性は、乳がん、甲状腺がんの早期発見のため以下の検査もお勧めしております。
がん発症には疼痛を伴わないことが多いため、検診は大切です。
甲状腺超音波検査
マンモグラフィ
乳腺超音波検査
更年期の月経変化、対策は?
更年期では、閉経に向けて月経量が減って痛みもなくなるというわけではありません。
実際には、月経量が安定せず急に大出血を起こしたり、閉経するまでずっと月経痛がつらいという方もおられます。月経変化が始まってから閉経までは数年かかりますので、我慢しつづけるというのは大変です。
とはいえ、40歳以降は血栓症のリスクが高まるため、低用量ピルの服用はあまりおすすめできません。
更年期の月経対策として、子宮内膜症、子宮腺筋症であれば、「ジエノゲスト」が選択肢となります。
ジエノゲスト
1日2回の内服薬で、黄体ホルモンのみが含まれています。
長期的に内服することで、子宮内膜をごく薄い状態に保ち、月経を止めることが可能です。内服開始時に多少の出血の可能性があることはご了承ください。
低用量ピルと違って血栓症のリスクもなく、40歳以上の方でも安心して、閉経まで飲み続けることができます。
ミレーナ
もう1つは子宮内に装着するリングである「ミレーナ」があります。
ミレーナは、黄体ホルモンを安定して少量ずつ放出し、ジエノゲストと同じように、子宮内膜増殖を抑制する作用があるため、月経痛が緩和され、出血量も減って過ごしやすくなるでしょう。
月経困難症や過多月経でお困りであれば選択肢となります。
装着時に少し痛みがある点、装着して数か月は不正出血が出やすい点、自然に取れてしまう場合がある点には注意が必要です。
1度装着すると5年ほど効果が持続します。
避妊で装着の場合には、
- 初診料:4,400円(税込)
- ミレーナ:78,000円(税込)
です。
過多月経の場合は、保険適応です。
更年期障害?更年期の月経で悩んだら・・・
月経にまつわるお悩み以外にも、更年期にはさまざまな症状に悩まされます。
イライラや気分の落ち込み、ホットフラッシュ、尿もれ、腟の乾燥など、ミレーナやジエノゲストでは改善できない症状も多いです。
当院では、更年期の症状を幅広くカバーするプラセンタ、尿もれを改善するエムセラやモナリザタッチなど、多彩な治療法をご用意しております。
更年期に起こる体の変化でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
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白金高輪 海老根ウィメンズクリニック
https://ebine-womens-clinic.com/
東京都港区高輪1-2-17 高輪梶ビル5,6,7F
03-5789-2590
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。