子宮内膜ポリープの症状・原因・検査治療切除、妊娠不妊、性行為との関連性まで丁寧に女医が解説。
更新日:2024.05.23
「ポリープ」と聞くと、大腸や胃にできるものというイメージを持っている方が多いかもしれませんが、子宮の内側にも「子宮内膜ポリープ」として発生することがあります。決して珍しいものではありません。
子宮内膜ポリープは、近年、積極的に治療をした方がよいと考えられている病態です。今回は、子宮内膜ポリープの原因や症状、治療法などについて総合的に解説いたします。
子宮内膜ポリープとは
まずは、子宮内膜ポリープがどういったものか、詳しくご紹介します。子宮内膜ポリープの原因と症状
子宮内膜ポリープは、子宮の内側にある子宮内膜に発生したポリープです。若い方から、閉経前後の方まで多くの方に発生します。
子宮内膜はエストロゲンの影響を受けて厚くなり、月経の時期に血液とともに排出される組織です。子宮内膜には血液を溜めるような役割があるため、ポリープの位置によっては小さくても不正出血を起こすことがあり、やっかいな病態といえます。
ポリープの大きさは数ミリ〜数センチまでさまざまで、複数できることが多いですが、たいていの場合は良性腫瘍のため、命に関わることはありません。小さければ自然に退縮することもあり、また、無症状のことも多いです。
ただし、子宮内膜ポリープは不妊症の原因となることがあります。
子宮内膜ポリープの症状
不正出血
月経期間が長くなる
経血量が増える
閉経後の出血
不妊症
貧血(めまい、倦怠感など)
子宮内膜ポリープが発生する原因としては、炎症や出産・流産、加齢、女性ホルモンの影響などが考えられていますが、はっきりとした原因はまだ明らかになっていません。
ポリープとホルモンの関連性ははっきりしておりませんが、ストレスや疲労は、ホルモン異常や不正出血、腟炎など女性特有のトラブルを引き起こすこともあるため、リラックスしよく休息を取ることは大切です。
ごく稀に、悪性(子宮体がん及び子宮肉腫)の場合もあります。
その場合は、手術や放射線治療、抗がん剤治療が必要です。進行の度合いに応じて、治療法を選択することになります。
子宮頸管ポリープとの類似点・相違点
子宮頸管ポリープは、子宮の入り口(頸部や腟部)に生じたポリープです。HPVとの関連性が示唆されております。
不正出血を起こす点や、基本的に良性腫瘍である点は、子宮内膜ポリープと同様です。
子宮頸管ポリープは、妊娠や出産には影響しません。
子宮頸管ポリープの症状
性行為やスポーツに伴う不正出血
排便時のいきみに伴う不正出血
おりものに血が混じる
子宮筋腫とも症状が似ている?子宮内膜ポリープ
子宮筋腫は、子宮内膜ポリープと同様に子宮内部にできる病変であり、症状も似ています。
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、小さいものであれば妊娠や出産には影響しません。
子宮筋腫の症状
経血量が多くなる
月経期間が長くなる
月経痛
不正出血、貧血
不妊症
症状が軽ければ定期的な経過観察でもよいですが、上記のような症状があればホルモン療法や手術が選択肢となります。症状は似ていますが治療法が異なるため、区別のために検査が重要です。
参考記事
子宮内膜ポリープの診断と治療・再発
子宮内膜ポリープを疑った場合に必要となる検査や、治療・その後の経過についてご紹介します。診断と治療
子宮内膜ポリープの診断のため、以下のような検査をします。
・超音波検査
超音波で子宮内を観察します。子宮内膜が厚い状態だと観察しにくいことがあるため、月経終了直後におこなう方が確認しやすいです。
・子宮鏡検査
細いカメラを腟から挿入し、ポリープの性状や位置、数などを直接観察します。超音波検査で見つけられないようなポリープも観察することができます。
・子宮内膜細胞診
ポリープの細胞を採取し、悪性の傾向があるかどうかを確認します。
子宮内膜ポリープの手術(切除)について
これまで子宮内膜ポリープは、「症状がない場合や小さい場合は、治療は必須ではない」と考えられていました。ですが近年になり、慢性子宮内膜炎にも関わっていること、稀ですが悪性所見の場合もあることから、早いうちに切除した方がよいのではないかという考え方に変わってきています。
不正出血や経血量の増加などがある場合は検査をおこない、ポリープを切除することをおすすめしています。また、妊娠をご希望の方で、不妊の原因になっていると考えられる場合にも、切除がよいでしょう。
ポリープの位置や個数によりますが、入院せず、外来で切除することも可能です。まずは検査をおこないましょう。
子宮内膜ポリープの再発率
子宮内膜ポリープは、切除後にも数%〜40%の方で再発すると言われています。
女性ホルモンや加齢が原因と考えられており、完全に予防することはできません。ポリープの数が多いほど、手術から年数が経過するほど、再発の確率は高い傾向にあります。
子宮内膜ポリープと妊娠・出産
子宮内膜ポリープは不妊の原因になりうるとお伝えしました。妊娠・出産に関連したよくあるご質問にお答えします。Q. 子宮内膜ポリープを切除すると妊娠の可能性は上がりますか?
子宮内膜ポリープを切除すると、妊娠の確率が高くなるという報告が多いです。子宮内膜ポリープ以外に不妊の原因がない場合は、ポリープのサイズや数に関わらず、切除することで体外受精・顕微授精を含め妊娠確率が高まります。
子宮内膜は、再生の早い組織です。1か月で90%近く再生します。
Q. 妊娠中、子宮内膜ポリープがあることで赤ちゃんへ影響はありますか?
子宮内膜ポリープがあることで、出血や感染の原因になる可能性があるため、妊娠前に切除した方がよい場合もあります。
子宮内膜ポリープと性行為との関連
女性器にまつわる疾患があると、性行為に影響が出ないか?性行為により悪化しないか?と不安を感じる方が多いです。子宮内膜ポリープと性行為との関連で、よくあるご質問にお答えします。Q. 子宮内膜ポリープは性行為で出血・痛みを起こしますか?
子宮内膜ポリープの場合、性行為による刺激で出血が誘発されるのは珍しいです。痛みを感じることも、ほとんどありません。子宮頸管ポリープであれば性行為で出血することもありますが、通常、痛みはありません。性行為により出血や痛みが出ているのであれば、子宮頸管ポリープや子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜炎、子宮頸がんなど別の疾患を疑います。「子宮内膜ポリープがある」と診断されているからと、出血や性行時痛を放置しないようにしてください。
Q. 子宮内膜ポリープがあるなら、性行為は控えた方がよいですか?
子宮内膜ポリープがあっても、基本的には性行為への影響はありません。子宮頸管ポリープの場合は、男性器がポリープに擦れることがあり、その刺激で性行時に出血することがあります。Q. ポリープを切除したら、性行為に影響しますか?
切除後は、しばらく性行為を控えていただきます。一般的には、1か月程度経過してからがよいでしょう。その後は、とくに問題なく性行為をおこなうことが可能です。まとめ
子宮内膜ポリープは、幅広い年齢層の女性に発生する良性の腫瘍です。無症状の方も多いですが、不正出血や月経期間が長くなるなど、不快な症状を引き起こすこともあります。また、不妊の原因になることも知られています。症状の似た疾患としては、子宮頸管ポリープ、子宮筋腫、子宮内感染症などがあり、適切な治療のためには検査が必要です。不正出血など、症状のある方はまずは検査にいらしてください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。