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子宮頸がんの(初期)症状や原因、性行為・妊娠との関係性、なりやすい人は?治療法は?ステージ毎の生存率まで丁寧に解説。

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近年、マンガやドラマでも取り上げられたことのある「子宮頸がん」ですが、発症したらどうなるのかについて、しっかりとした情報を持っていますか?

知らずに、無防備でいる方も多いでしょう。

私は産婦人科医として、子宮頸がんについては「十分な情報が伝わっていないな」と思うことがあります。あまり、想像したくない心理が働くは当然のことですが、正しい知識が足りないために、予防・早期発見できないのは残念なことです。

今回の記事では、子宮頸がんの原因や症状についてしっかりとお伝えしてまいります。

子宮頸がんとは?

子宮頸がんは、子宮の入り口の部分である子宮頸部にできるがんのことです。 女性特有のがんとして知られており、定期的な検診で早期発見・早期治療が可能です。

画像 まずは、子宮頸がんそのものについて、正しい知識を持ちましょう。

子宮頸がんの原因はHPV

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症するがんです。

HPVは主に性交渉により感染します。HPVは約200もの型があり、子宮頸がんに関わるもの、尖圭コンジローマに関わるものなど、型により特徴がさまざまです。身の回りにありふれたウイルスで、男女ともに8割ほどの方は、一生の間で一度は感染したことがあると考えられています。

子宮頸がん発症年齢/子宮頸がんになりやすい年代は?

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出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

子宮頸がんは、性交渉を持つようになってから数年〜の若い年代の女性に発症が多く、妊娠・出産といったライフプランにも関わってしまう、厄介ながんです。最も子宮頸がんの発症が多いのは30代半ばから40代の方ですが、早ければ20代でも、子宮頸がんになる可能性が十分にあります。

子宮頸がんへの進展は年月がかかる

HPVに感染しても、すぐに子宮頸がんになるわけではありません。

まず、感染したとしても、時間の経過とともに自然とウイルスが排出されることが多いです。排出されず、持続的にHPVに感染していると、子宮頸部の細胞が変化し、「異形成」と呼ばれる、がんの前段階の状態となります。

軽度異形成(CIN1)

約10%が高度異形成以上の病変に進行し、約30%は変化せず、約50~60%は自然に病変が消失するといわれています。

中等度異形成(CIN2)

約20%が高度異形成以上の病変に進行し、約40%は変化せず、約40%は自然に病変が消失するといわれています。

高度異形成(CIN3)

30~60%が軽度異形成などの病変に退縮するものの、約10%は浸潤がんに進行するといわれています。

異形成も、時間経過で消失する可能性はありますが、一部は数年〜10年ほどかけて、上皮内がん、子宮頸がんと進展してしまいます。そのため、異形成が見つかった場合には、異常がない場合よりも頻繁に状態を確認しなければなりません。

子宮頸がんに関する誤解/性行為との関係性

時々、子宮頸がんになりやすい人として、「子宮頸がんになるのは、性的な経験が多いから」「初体験が早いから」そのように考えている方がおられます。

ですが、直接的に結びつけることは、正しいとは言えません。もちろん、性交渉のパートナーの数が多いほど、HPVに接触する機会は増えるため、リスクが高まることは否定できません。しかし、たとえ性交渉の相手が生涯に1人だけであったとしても、子宮頸がんを発症することはありえます。

「子宮頸がんになった=性的に奔放だった」とは限りません。

こういった誤解が根強くあることで、受診機会の先延ばしに繋がったり、子宮頸がんについて知る機会を失ったりしている側面も、少なからずあるのではと感じます。「なりやすい特徴」というものは特になく、子宮頸がんは、性交渉の経験が一度でもあれば誰でもなる可能性のある病気なのだと、知っていただきたいと思います。

子宮頸がんのステージと生存率

子宮頸がんも他の様々ながんと同様に、早期発見・早期治療が非常に重要です。がんのステージは、がんの広がりや深さなどによってI〜IVの段階に振り分けられます。数字が大きくなるほど、がんも進行しているということです。

子宮頸がんステージⅠ

がんが子宮頸部にとどまっており、周囲には広がっていない状態。

子宮頸がんステージⅡ

がんが子宮頸部を超えて広がっているが、腟壁下1/3または骨盤壁には達していない状態。

子宮頸がんステージⅢ

がんの広がり(浸潤)が腟壁下1/3まで達するもの、ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの、ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの、ならびに/あるいは骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に転移が認められる状態。

子宮頸がんステージⅣ

がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔を超えて広がった状態。

子宮頸がんの5年生存率(※実測生存率

ステージI

92.2%

ステージII

79.0%

ステージIII

65.8%

ステージIV

25.6%

※治療をしたとしても、進行しているほど、5年生存率は大きく下がってしまいます。
※データ参照元:全がん協加盟施設の生存率協同調査(2011~2013年)

2020年/年齢階級別死亡率

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出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

子宮頸がんの症状チェック

当てはまる症状があれば、早いうちに婦人科でご相談ください。必ずしも子宮頸がんとは限りませんが、何らかの異常はあると考えられます。

<初期の症状>

異形成など、初期の段階ではあまり症状が出てこない方もいらっしゃいます。おりものが多い、時々ピンクのおりものがでるなどの症状を訴える方が多いです。定期的な検診で偶然に発見されることがあります。「症状がなくても、定期的な子宮頸がん検診」が大切です。

<高度異形成〜子宮頸がん>

月経期間以外での不正出血

不正出血が毎月のようにある、いつもある、低用量ピル等を服用して月経のコントロールをしているにも関わらず不正出血が頻繁であるなど、不正出血は異常のサインです。

性行為や運動などの刺激による出血

刺激を受けた際に出血をきたすことが多いとき、子宮頸部びらんのこともありますが、なんらかの異常を疑うこともあります。

おりものの量、匂い、色などの変化

おりものの量が増え、匂いもきつくなることが多いです。ピンクのおりもののときもあります。茶褐色の膿のようになったり、少し粘つきのある性状に変わったりすることもあります。

腹痛、排尿や排便の異常、下肢のむくみなど

病態が進行すると、一見すると女性器とは無関係に思われるような症状も出てきます。

当てはまる症状が1つでもある方は、一度、婦人科へ検査にいらしてください。
20代や30代は、学業や仕事、子育てなど様々なことに忙しく、少しの体調不良は後回しにしてしまいがちです。知識を持つことが、少しでも早い受診の後押しになればと思います。

子宮頸がんの治療法

画像 次に、子宮頸がんの治療法をご紹介します。

1.手術

がんの広がりにより摘出の範囲が変わります。
進行の度合いによっては、今後の妊娠を諦めなければなりません。手術には次のような後遺症もあります。

<子宮を残す手術の場合>※円錐切除術(上皮内癌までの場合)

・術後の出血が持続する
・子宮頸部の閉塞
・切除の程度により、早産のリスクが高まる可能性
・切除断端陽性の場合、一定の再発リスクがあるため、子宮全摘術の追加治療を行う

<準広汎子宮全摘術の場合>

・リンパの流れが悪くなることで下肢がむくむ
・排尿の感覚が戻らない
・性交渉に支障が出ることがある
・妊娠できない
・更年期障害になることがある

<広汎子宮全摘術の場合>

・排尿の感覚が戻らない
・リンパの流れが悪くなることで下肢がむくむ
・再発や転移の可能性について年単位で経過を見る必要がある
・腸閉塞(どの腹部手術でも起こりうる合併症です)
・性交渉に支障が出ることがある
・妊娠できない
・更年期障害になることがある

後遺症がない場合でも、「いつ再発するか」と考えながら暮らすのは精神的につらいものです。後遺症の頻度も、少なくはありません。子宮頸がんは、「手術をしたらすっかりよくなる」わけでもないことを知っておいてください。

2.抗がん剤・放射線治療

子宮頸がんが進行していた場合、化学療法(抗がん剤治療)や放射線による追加治療も必要です。

子宮頸がんは、放射線療法が有効であるため、放射線療法のみで治療をする場合もあれば、手術と放射線療法、さらには化学療法を組み合わせる場合もあります。

進行状況によっては、治療の選択肢が狭まることもありますので、治療のためにも「早期発見」は重要です。また、どの治療法も、ある程度の期間かかります。 どういった治療が適切かは一人ひとりの病態によりますので、担当医とよく話し合うことが大切です。

子宮頸がんの予防と発見のために

画像 子宮頸がんにより不安な思いをしないようにするには、ならないように予防すること、早くに発見することが重要です。

予防には「HPVワクチン」

予防効果が明らかとなっている「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」を接種することが重要です。

日本では一時、HPVワクチンの接種が差し控えられたこともありましたが、再び接種が「推奨」されております。もちろん、私も産婦人科医として、皆さんにワクチンの接種を推奨いたします。 初めての性交渉を持つ前に接種するのが望ましいため、12〜16歳の女性に対し、国が接種を推奨しています。

すでに性交渉の経験がある方でも、接種した時点以降で感染したHPVのがん化を防ぐ、現在感染していない型の感染を予防するという意味で、ワクチンの接種は意義があるでしょう。

ワクチンの副反応としては、筋肉注射のため、投与した部位の腫れや痛みは頻度が高く、そのほかには痒み、頭痛、倦怠感などが知られています。副反応については、一時期テレビ等で大きく報道されたこともあり、不安が拭えていない方もおられるでしょう。接種をお悩みの方は、ぜひご相談だけでもご来院ください。

当院でのHPVワクチン接種費用

当院では、9価の「シルガード」、4価の「ガーダシル」の2種類を用意しております。

ご希望の方は、予約の上、ご来院ください。
いずれも3回の筋肉注射が必要です。

※公費の接種券をお持ちの場合は、ガーダシル、シルガードどちらも無料となります。

 

費用

予防できるHPV型

シルガード

1回38,500円

3回110,000円

95%の子宮頸がん
(16、18、31、33、45、52、58型)、
尖圭コンジローマ(6、11型)

ガーダシル

26,400円

70%の子宮頸がん(16、18型)、
尖圭コンジローマ(6、11型)

相談料

3,300円

 

早期発見には「がん検診」

子宮頸がんワクチンを接種した方も、接種しないことを選んだ方も、子宮頸がん検診は必要です。

まだまだ検診受診率も低いですが、子宮頸がんの症状が出る前に、いち早く見つけるためには検診しかありません。自己採取法は感度が低いため、医療機関での検診をおすすめします。

とくに、ワクチンを接種しない選択をした方は、少しでも早い段階で子宮頸部異形成や子宮頚がんを見つける必要があります。必ず、定期的に子宮頸がん検診へいらしてください。

地域によっては子宮頸がん検診に対する補助があるため、無料〜数百円程度の負担で検診を受けることができます。 子宮頸がん検診でどのような事をするか、結果の見方などについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ご覧ください。

子宮頸がん検診の費用は?痛い?検査内容は?
検査結果の見方から要精密検査の確率まで丁寧に解説。

 

子宮頸がんと性交渉に関するQ&A

画像 子宮頸がんやその治療に伴い、性交渉に関してお悩みになる方は多いです。よくあるご質問にお答えします。

Q. 子宮頸部異形成がある場合、性交渉は控えるべきですか?

子宮頸部異形成があるというだけで、一律に性交渉を控えるべきとは思いません。 ただし、性交渉の刺激で出血してしまう、痛みを感じやすいなど、女性にとって不快な症状が出ることがあるため、お互いによく相談してください。 異形成の処置後などは一時的に性交渉を控えていただく場合もありますので、医師に確認してください。

Q. 性交経験がなくても、子宮頸がんを発症する可能性はありますか?

性交経験が全くない場合には、ほとんど可能性はありません。性交経験がないのであれば、HPVワクチンについては推奨されますが、子宮頸がん検診はしなくてもよいでしょう。 一度でも性交経験があるのであれば、最後の性交渉から時間が経っていたとしても、定期的な子宮頸がん検診が重要です。子宮頸がん以外にも、女性器にまつわる疾患は多くありますので、かかりつけの婦人科を持って定期的な検査をおすすめします。

Q. 子宮頸がんの手術や化学療法・放射線治療後の性交渉は可能ですか?

手術や化学療法・放射線治療後は、出血しやすかったり、感染に注意が必要だったりと、通常とは膣の状態が異なります。一定期間は性交渉を控えていただく必要があるでしょう。治療後の状況は一人ひとり違いますので、具体的にどの程度の期間控えるべきかは、担当の医師へ確認してください。 腟の長さが変わる、腟分泌液が出にくくなるなどして、以前と同じように性交渉ができなくなる場合もあります。保湿ジェルを使う、マッサージをする、潤滑剤を使うなどの工夫が大切です。腟萎縮が強い場合は、腟レーザーが有効な場合もあります。

Q. がん治療が卵巣機能に影響を与える場合、卵子を凍結保存しておく方法は有効ですか?

今後、妊娠をご希望される可能性がある方については、がん治療を始める前に卵子や受精卵、卵巣組織を凍結保存する方法をとることがあります。子宮頸がんに限らず、あらゆる種類のがんでこの方法がとられています。

Q. 妊娠中に子宮頸がんがわかった場合、どうするのですか?子どもに影響はありますか?

妊娠の初期に、必ず子宮頸がん検診をおこないます。そのとき、子宮頸部異形成であった場合には、妊娠中に何度かコルポスコープ検査をして経過を見ます。妊娠中の検査は、胎児へ影響しませんのでご安心ください 治療を優先しなければならないような事態もありえますので、妊娠前からの定期的な子宮頸がん検診が重要です。 近年、子宮頸がんの細胞が羊水を通じて胎児へと入り込み、影響が出る場合があるという報告が出てきています。ですが、何も影響がないケースも多くあり、一概に危険性があるかどうかは断言できません。

まとめ

今回は、正しい知識を持って子宮頸がんに備えていただきたいという思いから、子宮頸がんの原因や症状を中心に、予防や治療についてもお伝えしました。 子宮頸がんを発症した場合の症状や治療についてよく理解できていなければ、忙しさに流され、少々の異変では婦人科へ行こうと決心できないこともあるでしょう。今回の記事が、子宮頸がんについての正しい知識の定着につながれば幸いです。
院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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