【更年期のつらい頭痛】頭痛の原因と対処方法を女医が丁寧に解説!
更新日:2024.01.30
「40代になって、頭痛が気になるようになってきた」
そのようにお悩みの方は少なくありません。
頭痛の原因はさまざまありますが、じつは更年期もその1つです。
今回は、更年期にさしかかった女性の「頭痛」について、原因や対処法、ケア方法をお伝えいたします。
更年期の頭痛は原因の見極めが大切
更年期の症状の1つとして頭痛があるのは事実ですが、それ以外の原因を確認することが大切です。
とくに、次にご紹介する「二次性頭痛」の可能性はしっかり判断する必要があります。
痛みの状況や鎮痛薬の使用状況について、日記やメモをつけていただくと診断の助けになります。メモなどをつけているのであれば、受診時にご持参ください。
1.機能性頭痛
頭痛の中で、命の危機には直結しないようなものを機能性頭痛と呼びます。
片頭痛
「片頭痛」という字から想像できるように、頭の片側がズキズキと痛むのが特徴です。とはいえ、4割の方は頭の両側が痛むとも言われており、「頭の両側が痛む=片頭痛ではない」とも言い切れません。
20〜40代の女性に多く、月経周期と連動して痛むという方もおられます。今は片頭痛の治療薬が増えてきており、適切な診断と治療で改善できる頭痛です。若い頃から続いていることが多いため、いわゆる「頭痛持ち」の方の中の何割かは片頭痛だと思われます。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、ぎゅーっと締め付けられるような痛みが特徴的です。肩こりやストレス、姿勢の悪さ、運動不足などさまざまな原因で緊張型頭痛が起きます。一般的に、お風呂などで温めると楽になる頭痛は、緊張型頭痛の可能性が高いです。片頭痛と合併することもあります。
薬剤誘発性頭痛
鎮痛薬の使いすぎによる「薬剤誘発性頭痛」もあります。毎日のように鎮痛薬を使っていたり、痛みが出るのを予防するために鎮痛薬を使っていたりする場合に疑います。鎮痛薬を使いすぎると痛みに対して過敏になり、どんどん鎮痛薬が必要になってしまうのです。
鎮痛薬の服用をやめるだけで、7割の方は頭痛が改善するといわれています。
2.二次性頭痛
命の危機に直結するような、何らかの病気が原因で起こる頭痛を二次性頭痛と呼びます。
くも膜下出血
急に強い頭痛が起きた、吐き気やしびれ・手足の動かしにくさなど頭痛以外の症状を伴っているという場合には、くも膜下出血の可能性も考える必要があります。40歳を超えるとくも膜下出血のリスクが高まります。とくに女性は、閉経によってエストロゲンの分泌量が減ると動脈瘤ができやすくなり、それがくも膜下出血の発症に繋がっているようです。
脳腫瘍
脳腫瘍は、小さな子どもから高齢者まで発症するがんです。月日が経つごとにだんだん強くなる頭痛、麻痺やふらつきを伴うなどの症状が特徴です。
更年期に頭痛が起きる理由
必要に応じて脳のMRIや血液検査などをおこない、二次性の頭痛を除外できれば、更年期に伴う頭痛の可能性があります。
では、なぜ更年期に頭痛が起きやすいのでしょうか?
女性ホルモン(エストロゲン)のゆらぎが原因の1つ
頭痛をはじめとして、更年期のさまざまな症状は、女性ホルモン(エストロゲン)のゆらぎによる「血管運動」が原因です。
エストロゲンは、脳からの指令を受けて脳の下垂体という部分の指令を受けて、排卵後に大量に分泌されます。ですが、命令を受けたとして、年齢とともに卵巣の機能が年齢とともに低下すると、十分な量のエストロゲンを分泌することができません。
卵巣からエストロゲンが分泌されないと脳からの刺激ばかりが強くなり、同時に1つ以上の排卵が誘発されてエストロゲン分泌量が急に上昇するなど、エストロゲン分泌量のゆらぎが生じるのです。
すると血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経も乱れがちになります。そうして、血管が急に拡張したときに血管周囲の神経を刺激し、片頭痛が悪化するというのが更年期頭痛の1つです。元々月経に関連して片頭痛が起きていた方は、更年期に片頭痛が悪化しやすい傾向にあります。
ストレスやメンタル不調が原因のことも
更年期には、体調の変化でストレスを感じたり、わけもなくイライラや不安を感じたりと、精神的な不調に陥ることが多いです。
そうした不調によって心身がうまく休まらず、緊張型頭痛が生じているかもしれません。
日頃からストレッチや運動で体のこわばりをほぐすこと、入浴で体を温めていたわることなどが大切になります。
更年期頭痛の対処法
「ただの頭痛だから」と我慢してしまう方が多いですが、頭痛は生活の質を大きく下げてしまいます。
頭痛に伴い、めまいや吐き気を感じることも少なくありません。しっかり対処して、更年期の時期を無理なく過ごせるようにいたしましょう。
市販薬・サプリメント
ごくたまにの頭痛であれば、市販薬で対処してもよいでしょう。成分はお好みのものでよいと思いますが、説明書通りに服用すること、痛む前から飲まないことは守ってください。
片頭痛の場合、人によってはマグネシウムやビタミンB2のサプリメントで頭痛の頻度や程度を抑えられる可能性があります。さほど高価なものではないので、ご興味のある方は試してみてください。
頭痛の頻度が多い場合や市販薬が無効の場合には、医療機関でご相談ください。
ホルモン補充療法
頭痛のほか、ホットフラッシュや発汗、不眠などでお悩みであれば、ホルモン補充療法も選択肢となります。
ただし、片頭痛の場合のホルモン補充療法は慎重に考える必要がありますので、頭痛のある方は必ずお申し出ください。
漢方薬
片頭痛、緊張型頭痛のいずれの場合も、効果の期待できる漢方薬がいくつかあります。一人ひとりの体質や状態に合わせ、ご提案いたします。頭痛だけでなく、更年期に伴うさまざまな症状に有効です。
ホルモン補充療法に抵抗感がある方、ホルモン補充療法ができない方にもおすすめしております。
プラセンタ
プラセンタは、頭痛をはじめとして更年期のさまざまな症状に有効です。
頭痛、ホットフラッシュ、発汗、不眠、肩こり、イライラなどにお悩みであれば、プラセンタもおすすめしております。週に1〜2回の注射で、効果を実感できることが多いです。
通院が難しい方には、保険適応外ですが内服薬のタイプもございます。
適度な運動
緊張型頭痛の場合、運動による心身のリラックス・リフレッシュ効果で頭痛がやわらぐことが多いです。激しいスポーツをする必要はありませんので、ご自身にとってストレスのない範囲で体を動かしてみてください。
ヨガやピラティス、キックボクシング、スイミングなどなんでもよいです。ウォーキングも、少し早歩きで大きく腕を振っておこなえば、十分な運動効果が得られます。
無理をしないこと
女性の皆さんは、仕事も家族のことも家事も…と頑張りすぎてしまう方が多いようです。
私はいつも、皆さんに「60%の力で、無理せず過ごして」とお伝えしています。
更年期は、ご自身の心と体が大きく変化する時期です。無理に抗おうとせず、ご自身を大切に過ごす時期にしてはいかがでしょうか。
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白金高輪 海老根ウィメンズクリニック
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。