更年期のめまいと吐き気の原因と対処法、更年期障害以外を疑う「めまいと吐き気」の特徴も女医が丁寧に解説。
更新日:2024.06.29
更年期といえばホットフラッシュやイライラ感を思い浮かべるかもしれませんが、それ以外にも症状はさまざまです。
めまいや吐き気も、更年期症状の一種です。
今回は、更年期の時期に起こる「めまいや吐き気」に着目し、原因や対処法について解説いたします。
更年期の時期に出てきた症状だからといって、更年期障害が原因とは簡単に言い切れません。原因を検索した後に、適切な対処をすることが大切です。お一人で我慢せず、ご相談ください。
40代・50代のめまいと吐き気の原因は?
40代・50代の更年期の時期には、心身ともにさまざまな不調が訪れます。
「年だから仕方ない」「そういうものだ」と、我慢を続けていませんか?
めまい・吐き気の原因として、更年期障害はもちろんですが、それ以外の要因による不調も考えられます。原因に合わせて適切なアプローチをおこなえば、不調も改善可能です。
耳や脳からくるめまい
めまいが強い方は、まずは耳や脳が原因の「めまい」かどうかをはっきりさせるべきでしょう。
【更年期以外を疑う特徴】
・更年期以前の若い頃(20歳代など)からずっと続いている
・急激に始まった(症状の出た日時が言えるくらい)
・立ち上がれないほど強いめまい
耳鼻科や神経内科などで、耳・脳からくるめまいを確認しましょう。
たとえば、「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」という疾患は、めまいの中でも最も多いもので、50代以降の女性で特に多いです。適切な運動療法などにより改善が期待できます。
【危険なサイン】
めまいと共に次のような症状が急にあらわれたときは、夜間であってもすぐに医療機関を受診しましょう。
・呂律が回らない、話しにくい
・手足の痺れ、顔の歪みが出てきた
このような特徴があるめまいの場合は、脳の器質性疾患である可能性が高いです。脳出血や脳梗塞の場合、緊急の治療が必要になります。
片頭痛や緊張型頭痛の悪化
更年期の時期には、片頭痛や緊張型頭痛の悪化がよく見られます。強い頭痛の場合、めまいや吐き気を伴うことも少なくありません。
「元々頭痛持ちで、ひどくなってきた」という方だけでなく、「更年期になって頭痛が気になり出した」という方も、頭痛の治療をしてみませんか?
片頭痛、緊張型頭痛はそれぞれ対処法が異なりますので、ご自身がどちらの頭痛に当てはまるのか知っておきましょう。両方を併せ持つ方もいます。
片頭痛の特徴 |
緊張型頭痛の特徴 |
---|---|
・温めると悪化する | ・温めると楽になる |
・光や音の刺激、カフェイン、アルコールなどで悪化しやすい | ・体を動かしたりストレッチをしたりすることで痛みがやわらぎやすい |
・月経周期と頭痛の悪化が関連しがち |
・圧迫されるような痛みが30分〜数日程度続く |
・目がチカチカするなど前兆を感じる場合もある |
|
当院では、まず器質性疾患の除外診断のため、MRI検査をおこないます。
一般診療でご予約ください。水曜日には脳外科の女性専門医が頭痛外来を担当しております。
胃の疾患
吐き気が強い場合には、胃の疾患も気になります。
胃炎や胃潰瘍、胃がんでは、吐き気を感じる場合もあります。胃がんは40歳代ごろから増えてくるため、嘔気が強い場合は、胃内視鏡などの検診をおこないましょう。
【更年期以外を疑う特徴】
・鋭い痛みもある
・食後に痛みがある
・とくにダイエットをしていないのに痩せてきた
・黒い便が出る
更年期には、ホルモンバランスや副交感神経の働きがゆらぐことで、胃腸の症状が出ると考えられています。ただし、胃の症状の性質だけで、更年期症状かそれ以外かを見分けるのは難しいです。
更年期の時期に胃の症状が出てきた方は、一度、胃内視鏡検査を受けてみるのがよいでしょう。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、消化器がんなどが除外できれば、症状・病態に合わせた治療をおこないます。
これらを除外したあと、更年期による胃の不調と診断されたの場合には、ホルモン補充療法などにより、吐き気や胃もたれなどの改善も期待できることがあります。
高血圧によるめまい・吐き気
意外かもしれませんが、血圧が高いことによりめまいや吐き気を生じることもあります。血圧は年齢とともに徐々に上昇します。また、高血圧はエストロゲンの減少により動脈硬化が進行することにより、更年期に増えてくる病態の1つなのです。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれることもあるのですが、その言葉通り、あまり自覚症状がないまま、ある日突然、脳出血、眼底出血などの重大な病気を起こします。
医療機関にかかったとき、調剤薬局へ行ったときなど、機会があれば血圧を測ってみるようにしてください。 目安として、上の血圧(収縮期血圧)が140を超えているようであれば、医療機関にてご相談ください。
更年期障害
更年期障害によってめまい・吐き気を感じる方は、ホットフラッシュの症状も感じていることが多いです。
これらは「血管運動神経症状」と総称されるもので、自律神経のゆらぎにより血管や神経の活動が乱れることが原因と考えられます。ふわふわと、足元が浮ついたようなめまい・海を漂っているようなめまいと表現される方が多いです。
更年期による症状の場合、放っておいてもよくなりにくく、長く続いてしまうことも少なくありません。更年期障害の治療で、血管運動神経症状はやわらぐことがあるため、治療をおすすめいたします。
ツライめまい・吐き気の対処法は?
ここでは、更年期障害に伴うめまい・吐き気の場合にターゲットを絞り、対処法をご紹介します。めまいと吐き気の両方があるとき
座る・横になるなど、安静にできる体勢をとりましょう。
深呼吸をしながら、めまいが落ち着くまで待ちます。締め付けのある衣服を着ている場合は、ゆるめた方がよいです。 予防のためには、ホルモン補充療法や漢方薬を使った治療が選択肢となります。
吐き気が強い方は、吐き気止めを用意しておくのもよいでしょう。
めまいが強いとき
座る・横になるなど、安静にできる体勢をとりましょう。深呼吸をしながら、めまいが落ち着くまで待ちます。
予防のためには、ホルモン補充療法や漢方薬を使った治療が選択肢となります。
更年期に伴うめまいでも、良性発作性頭位めまい症など耳からくるめまいの場合でも、適度な運動が予防に役立つことが多いです。ヨガやピラティス、水泳など、何か運動に取り組んでみることもおすすめいたします。
吐き気と頭痛があるとき
頭痛に伴った吐き気の場合、片頭痛か緊張型頭痛かによって対処法が異なります。
片頭痛 |
緊張型頭痛 |
---|---|
・部屋を暗くして静かに休む |
・入浴などで首や肩周りを温める |
・頭や首元を冷やす |
・ストレッチや軽い運動をする |
・光、音、カフェインなど |
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・目がチカチカするなど |
|
頭痛が出てきた場合は、早めに鎮痛剤を服用することが大切です。
片頭痛の場合は、片頭痛専用の痛み止めもございます。予防薬を使うことで、頭痛の頻度を減らすことも可能です。
更年期のめまい・吐き気についてQ&A
更年期に感じるめまい・吐き気について、よくあるご質問にお答えします。参考になさってください。Q. つわりのような気持ち悪さがあります。これも更年期障害でしょうか?
胃の動きを調節している自律神経の働きが乱れ、吐き気・胸焼け・胃もたれ・食欲低下などを感じ、「つわりのようだ」と表現される方はいます。 ホルモン補充療法、漢方薬、吐き気止めなどを使いながら、対処していきましょう。Q. 50代の女性にめまいが多いのはなぜですか?
ホルモン分泌量のゆらぎや、加齢による耳の機能の低下などが重なる時期であるため、50代はめまいが生じやすいです。
めまいの半数以上は、耳石(耳の中で動く小さな石)が原因の「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」ですが、そのほかにも、足の筋肉が衰えて平衡感覚が低下することによるめまい、ストレスなども原因として考えられます。
Q. 男性更年期の場合もめまいや吐き気がありますか?
近年注目されている男性更年期でも、めまいや吐き気を感じることはあります。女性の場合と同様に、ほかの要因がないかを確かめるべきですので、続く症状でお困りであれば医療機関にてご相談ください。
めまい症状が強い場合、まずは耳鼻科や神経内科、脳外科がよいでしょう。胃腸症状であれば、消化器内科の受診をおすすめいたします。男性更年期については、泌尿器科で扱っていることが多いので、お近くの泌尿器科へお問い合わせください。
まとめ
今回は、更年期にさしかかった女性の「めまい・吐き気」について、原因や対策をお伝えしました。
めまいや吐き気は、他人からは程度の強さがわからないため、ツラさを理解されにくいかもしれません。適切に治療をおこなえば、症状がやわらぎ、明るい気持ちで過ごせるようになります。
めまい・吐き気の症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。