【妊娠初期のおりもの】色・量・におい・状態の変化と、受診の目安を産婦人科医が解説。
更新日:2025.12.27
「妊娠検査薬で陽性が出たけれど、おりものの色がいつもと違う」
「茶色いおりものやピンク色の出血が混じっていて不安……」
「おりものが急に減ったけれど、赤ちゃんは無事なの?」
妊娠初期(主に妊娠判明〜12週頃まで)は、ホルモンバランスの激変により、おりものの状態が非常に変わりやすい時期です。ネットで検索すると「流産」や「感染症」といった怖い言葉が並び、不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、
妊娠初期のおりものの変化は、その多くはホルモンの影響による生理的な変化(正常な反応)と考えられます。
しかし中には、切迫流産や感染症など、治療が必要なサインが隠れていることもあります。
この記事では、産婦人科医の視点から、「よくある正常な変化」と「早めに受診すべき注意サイン」を、色・量・におい・性状別に分かりやすく解説します。不安な気持ちを少しでも解消し、適切な行動をとるための参考にしてください。
この記事のポイント
変化の原因
妊娠初期のおりものは、量が増える・水っぽくなる・酸っぱいにおいが強くなるなどの変化が多く、その多くはホルモンの影響による生理的な変化です。
注意サイン
一方で、鮮血を伴う出血・黄緑色で悪臭やかゆみを伴うおりもの・強い腹痛を伴う症状は、切迫流産や感染症などのサインの可能性があります。
受診の目安
「様子見でよいパターン」と「受診した方がよいサイン」を、色・量・におい・性状別の早見表とQ&Aで整理し、妊婦さんが受診の判断をしやすいよう解説します。
目次
妊娠初期はなぜ「おりもの」が変化しやすいの?

※イラストはイメージです
そもそも、なぜ妊娠するとおりものが変わるのでしょうか?
その最大の理由は、妊娠を維持するために分泌される女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の急激な増加です。
おりものの役割と、ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の影響
おりものには、自浄作用(腟内を酸性に保ち、雑菌の侵入を防ぐ)と、受精の手助けをする役割があります。
妊娠が成立すると、身体は「赤ちゃん(胎児)を細菌感染から守ろう」とする防御機能を高めます。そのため、エストロゲン(卵胞ホルモン)の作用でおりものの量を増やし、腟内を洗い流そうとする働きが強まると考えられています。
妊娠初期のおりものは「いつから」増え始める?
おりものの変化は、早ければ妊娠3週〜4週頃(生理予定日前後)から感じ始めることがあります。
受精卵が着床し、ホルモンバランスが変化し始めるこの時期に、
「なんとなくいつもより水っぽい」「下着が濡れる感覚がある」
と感じる方が増えてきます。
妊娠初期のおりものは「いつまで」続く?
基本的には、出産まで量が多い状態が続くことが一般的です。
妊娠期間中は常にホルモン分泌が活発であり、出産に向けて産道を細菌から守る必要があるためです。臨月までおりものシートが手放せないという方も少なくありません。
Check「正常なおりもの・異常なおりもの」
おりものの正常と異常の基本的な見分け方を知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
生理前のおりものとの違いと、正常な変化
「生理が来そうなの? それとも妊娠?」と迷う時期の、おりものの違いを見ていきましょう。
生理前と妊娠初期のおりものの違い
最も大きな違いは、「生理予定日を過ぎてもおりものが減らない・増える」点です。
| 特徴 | 生理前のおりもの | 妊娠初期(妊娠超初期)のおりもの |
|---|---|---|
| 量 | 排卵後から徐々に減り、生理直前に少し増えるが粘り気は少ない | 生理予定日を過ぎても量が多いまま、または増える |
| 色 | 白濁〜透明 | 乳白色〜クリーム色、時に茶色(着床出血) |
| 性状 | ベタベタ、ドロッとしている | サラサラ、水っぽい、とろみがある |
生理前のおりものを詳しくcheck
生理前のおりものの変化を、日数単位でもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
正常なおりものの色・見た目・におい
妊娠初期の健康なおりものは、主に以下のような特徴を持っています。
これらに当てはまる場合、多くのケースでは正常な経過と考えられます。
・色
透明、白〜乳白色、薄いクリーム色、薄い黄色(下着についた場合)
・におい
無臭か、ヨーグルトのような「やや酸っぱいにおい」(善玉菌が働いている証拠です)
・量・粘り気
生理前よりも少し量が増え、サラサラと水っぽい状態や、少しとろみのあるペタペタした状態
色別|茶色・ピンク・黄色・水っぽいおりもの等の見分け方
ここからは、実際にみなさんが検索することの多い「色」ごとの症状解説です。
「様子見で良い色」と「受診すべき色」をしっかり区別しましょう。
妊娠初期のおりものが「茶色・ピンク・赤」っぽいとき
妊娠初期に最も不安を感じやすいのが、出血混じりのおりものです。
・薄ピンク・薄茶色・こげ茶色(少量・一時的):
妊娠初期の方の中でも比較的よく見られる変化です。着床時の出血(着床出血)の名残や、充血しやすくなっている子宮の入り口(びらん)からの軽い出血の可能性が高く、腹痛がなく少量であれば、多くの場合は生理的な現象(様子見でOK)です。
・鮮血・量が多い・レバー状の塊+腹痛:
赤い血がナプキンいっぱいに広がる、生理のような痛みがある場合は、切迫流産や流産、子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性があります。夜間・休日であっても、かかりつけの産婦人科へ連絡してください。
Check「茶色のおりものを詳しく」
妊娠初期以外の場面も含めた、茶色いおりもの全般の原因や対処法はこちらをご覧ください。
妊娠初期のおりものが「黄色・黄緑・クリーム色」のとき
・薄い黄色〜クリーム色+無臭〜軽い酸味:
酸化によって少し黄色く見えるだけで、正常範囲内であることが多いです。かゆみがなければ様子を見て構いません。
・濃い黄色・黄緑色・黄土色+悪臭・かゆみ:
「細菌性腟症」や「トリコモナス腟炎」、クラミジアや淋菌による性感染症などの感染症が疑われます。
これらは放置すると、絨毛膜羊膜炎などを引き起こし、流産や早産のリスクになる可能性があるため、自己判断せず早めに検査を受けてください。
Check「黄色・黄緑色のおりものを詳しく」
黄色・黄緑のおりものや水っぽい/ネバネバのおりものの詳しい原因と治療法は、こちらの記事で解説しています。
妊娠初期のおりものが「水っぽい」「尿漏れみたい」とき
妊娠中はエストロゲンの影響で、サラサラとした水っぽいおりものが増える傾向にあります。下着が濡れて不快に感じることもありますが、透明で無臭(または酸っぱいにおい)なら正常範囲であることが多いです。
破水との違いについて
「水っぽい=破水?」と心配になる方もいますが、妊娠初期(12週未満)では、破水という卵膜が破けて羊水が出るというほど胎児は成長していず、水分だけ膣から排出することはありません。
多くの場合はホルモンの影響による水っぽいおりもの、または尿漏れと考えられますが、自分の意思で止められないほどの水がドバッと流れ出る場合は、念のため受診することをおすすめします。
Check「おりものが尿漏れみたい」
「おりものか尿漏れか、破水かの違いを詳しく知りたい」方は、こちらの記事で図解付きのセルフチェックを解説しています。
妊娠初期のおりものの量|多い・少ない・全くない・急に減る
「おりものが多すぎて不快」
「逆に全然なくて不安」という量に関する悩みも尽きません。
「多い・大量」と感じるとき
妊娠すると腟の代謝が活発になり、おりものの量は増えるのが一般的です。
「下着がすぐに汚れる」「おりものシートが手放せない」というのも、赤ちゃんを守るためのバリア機能が働いている証拠であることが多いため、色やにおいに異常がなければ多くの場合は心配いりません。
ただし、あまりに多くて生活に支障がある、かゆみがある場合は、炎症が起きていないか確認するため受診時に相談してください。
「少ない・全くない・急に減る」とき
「妊娠したはずなのに、おりものが全然出ない」
「昨日まで多かったのに、急に減った。流産したの?」と不安になる方が非常に多いです。
しかし、おりものの量だけで流産かどうかの判定はできません。
つわりの症状と同様、おりものの量にも波があります。腹痛や鮮血の出血がなければ、
おりものが減ったからといって過度に心配する必要はないケースがほとんどです。
妊娠初期のおりものが「臭い」「酸っぱい」など、においが気になるとき
妊娠中は嗅覚が敏感になるため、普段は気にならないにおいが気になることもあります。
妊娠初期のおりものが酸っぱい・ヨーグルト臭のとき
正常なおりものは、少し酸っぱいにおいがします。これは腟内を酸性に保つ「ラクトバチルス(乳酸菌)」が活動しているためで、良い状態と考えられます。
妊娠初期のおりものが「臭い・くさい」と感じるとき
- 魚が腐ったような生臭いにおい(アミン臭): 細菌性腟症の可能性があります。
- 鼻をつくような悪臭・強い腐敗臭: 異物の混入や重度の感染症の可能性があります。
Check「おりものが臭い/においが気になる」
おりもののにおい別セルフチェックや、においごとの原因・対処法を詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
性状・手触り|ネバネバ・白い塊・グミ・ゼリー状…
検索窓によく打ち込まれる、独特な触感や見た目についても解説します。
ネバネバ・粘り気・伸びるおりもの
排卵期のような透明でネバネバと伸びるおりものは、妊娠初期にも見られることがあります。女性ホルモンの影響による変化の一つであり、色やにおいに異常がなければ、正常な状態であることが多いです。
白い塊・ポロポロ・グミのようなおりもの
ボロボロとした白い塊や、酒粕状のものが混じる場合は、「腟カンジダ」が疑われることが多いです。妊娠中は免疫力が下がり、カンジダ菌が増殖しやすくなります。我慢せず受診し、治療薬を処方してもらいましょう。特に妊娠中は、市販の腟錠やクリームを自己判断で使用せず、必ず産婦人科で相談してください。
ゼリー状・とろみ・ドロっとしたおりもの
透明または白っぽいゼリー状の塊(プルッとしたグミのようなもの)が出ることがあります。これは子宮の入口で作られる粘液など、分泌物が固まったものであることが多く、単発で出血や腹痛を伴わなければ、基本的に心配いらないケースが多いです。
【早見表】色×量×におい×性状で見る「様子見」と「受診の目安」
今の症状が「様子見でいいのか」「受診すべきか」を一目で判断できるよう整理しました。
- 透明、白、乳白色、薄いクリーム色
- 薄い茶色・ピンク(少量・一時的)
- 無臭
- 酸っぱい(ヨーグルト臭)
- サラサラ、水っぽい、少しネバネバ、とろみ
- 量が多い・少ない(個人差あり)
- ホルモン影響による正常な分泌
- 着床出血の名残
- 濃い黄色、黄緑色
- 白く濁っている
- 魚臭い、生臭い
- 悪臭がする
- ポロポロした塊(酒粕状)
- 泡立っている
- 強いかゆみがある
- カンジダ腟炎
- 細菌性腟症
- 性感染症(トリコモナス等)の疑い
- 鮮血(赤い血)
- 濃い茶色が続く
- 生臭い(血のにおい)
- レバー状の塊が出る
- 生理痛のような腹痛がある
- 自分の意思で止められない水のような分泌物が続く(破水が疑われる状態)
- 切迫流産
- 流産
- 子宮外妊娠
- 絨毛膜下血腫の可能性
Q&A|よくある質問
妊娠初期のおりものについて、診察室でよく聞かれる質問にお答えします。
Q:妊娠初期のおりものは「いつから」「いつまで」続きますか?
A: 早い方では、生理予定日ごろの妊娠3〜4週頃から「量が増えた」「水っぽくなった」と感じることがあります。
その後は妊娠が続く限り、ホルモン分泌の影響でおりものが多い状態が続くことが一般的です。個人差はありますが、「出産までおりものシートが手放せなかった」という方も少なくありません。膣内環境を整える善玉菌である乳酸菌のため、良いおりものはあった方がいいのです。ただし、おりものシートはかぶれの原因になることが多いです。通気性の良い下着を使用することをお勧めいたします。
Q:妊娠初期に黄色〜黄緑のおりものが出て、臭いとかゆみもあります。病院に行くべきですか?
A: はい、なるべく早めに受診してください。
濃い黄色や黄緑色で、生臭い・魚臭いにおいがあり、かゆみやヒリヒリ感を伴う場合は、細菌性腟症やトリコモナス腟炎、クラミジアなどの性感染症を含む感染症が疑われます。流産や早産は妊娠初期の感染症に起因している場合が少なくありません。妊娠初期の膣内環境を整えることは非常に大切です。早めに受診して、治療が必要な状況か確認して、速やかに治療を開始しましょう。
Q:茶色いおりもの・ピンクのおりものが○日続いています。流産でしょうか?
A: 数日で治まり、腹痛がなければ「着床出血」などの生理的な出血の可能性がありますが、産婦人科を受診して、正常任氏であることを確認しましょう。
鮮血に変わったり、下腹部痛を伴ったりする場合、あるいは1週間以上ダラダラと続く場合は、切迫流産などのトラブルも考えられるためすぐに受診してください。
Q:妊娠初期なのにおりものが全くありません。大丈夫でしょうか?
A: 個人差が大きいため、おりものが少なくても腹痛や出血がなければ問題ないことが多いです。
「おりものが減る=流産」とは限りません。つわりの症状に波があるように、おりものの量も日によって変化します。
Q:おりものが水っぽくて尿漏れみたいです。破水の可能性はありますか?
A: 妊娠初期(12週未満)では破水という病態は起こりません。
多くの場合はホルモンの影響による水っぽいおりもの、または尿漏れですが、自分の意思で止められないほどの水が出る場合は、確認のため産婦人科を受診しましょう。
受診の目安と、当院でできる検査・治療
妊娠初期はちょっとした変化でも不安になるものです。
「こんなことで病院に行ってもいいのかな?」
と遠慮する必要はありません。
以下のような症状があれば、私たち専門家を頼ってください。
すぐ受診してほしい症状(チェックリスト)
- ナプキンが染まるほどの鮮血(赤い出血)がある
- レバーのような血の塊が出た
- 生理痛のような下腹部の痛みや張りがある
- 悪臭のするおりものがあり、発熱している
早めに受診を検討してほしい症状
- 茶色やピンクのおりものが1週間以上続いている
- おりものが黄緑色で、嫌なにおいがする
- デリケートゾーンにかゆみや痛みがある
当院で行っている検査・診療体制
当院では、内診や超音波検査によって「赤ちゃんの心拍確認」や「出血の原因(絨毛膜下血腫など)」を丁寧に診断します。また、おりもの検査を行い、カンジダやクラミジアなどの感染症が疑われる場合は、妊娠中でも使用できるお薬で速やかに治療を行います。
お母さんの不安を少しでも取り除くことが、赤ちゃんの健やかな成長にもつながります。
一人で検索して悩まず、気になる症状がある時はお気軽にご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。



