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【生理がこない】妊娠以外にも原因が?病気・ストレス・腹痛・ピル・ホルモン異常などを婦人科女医が徹底解説!

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「生理がこない」

まだ、妊娠の気持ちの準備ができていない時、不安になったり、焦ったりと落ち着かない日々を過ごす方がいらっしゃると思います。

生理がこない原因について知っておくことで、慌てずに対処することができるのではないかと思います。

今回は、生理の仕組みについて簡単にご紹介し、生理がこない原因や治療法を解説いたします。

生理が起こるメカニズム

まずは、生理が起こる仕組みを知っておきましょう。

生理は、エストロゲン・プロゲステロンの2つの女性ホルモンによって調整されています。それぞれ分泌量に規則正しい波があり、卵胞期・排卵期・黄体期・生理と生理周期を作り出します。

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生理が終わった直後の「卵胞期」でまず、卵巣から分泌されてくる女性ホルモンはエストロゲンです。

生理開始から14日目ごろに分泌量がピークとなり、排卵が起こります。排卵を境に、エストロゲン分泌は低下し、かわりにもう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌が増えていく「黄体期」を迎えます。

プロゲステロンは子宮内膜を安定化させる役割のホルモンです。妊娠が成立しなかった場合(受精卵が子宮内に到達しなかった場合)には、プロゲステロンの分泌も低下していき、不安定になった子宮内膜が剥がれて生理となります。

 

生理がこない/遅れる原因①「妊娠」

画像 生理がこないとき、まず第一に考えるのは妊娠でしょう。

妊娠の初期症状

もし妊娠していた場合、生理の予定日はおおよそ妊娠4週に該当します。早ければ妊娠4週ごろから症状を感じる方もいますが、症状があるかどうか、どのような症状が出るかについては、個人差が非常に大きいです。

【妊娠の初期症状】

・おりものが水っぽくなり量が増える
・わずかな出血(着床出血)
・微熱が続く
・眠気が取れない
・食欲が増す
・気分の波が大きくなる
・吐き気、ゲップが出る
・胸の張りや体のむくみが出る

基礎体温をつけている方であれば、妊娠の可能性を確認することができます。高温期が終わらずにずっと続いていれば、妊娠の可能性があるでしょう。

妊娠初期症状と生理前症状の違いは?

生理前症状と妊娠初期症状は、同じように黄体ホルモンが分泌されている症状のため、症状だけで区別するのは難しいかもしれません。

【生理前症状】

・粘つきがあり、白っぽいおりものが出る
・体がだるい
・眠気が取れない、あるいは眠れない
・食欲が増す
・胸の張りや体のむくみが出る
・集中できない
・頭痛や腰痛がある
・気分の波が大きくなる

先ほどご紹介した「妊娠の初期症状」と似たような症状が多いですが、おりものの特徴は異なることがあるといわれておりますが、生個人差が大きいです。

 

生理がこない/遅れる原因②妊娠以外(病気の可能性)

画像 妊娠以外に、何らかの病気が原因で生理がこないケースもあります。代表例をご紹介いたします。

1. 強いストレスによる低ホルモン

生理は、女性ホルモンの緻密な分泌量の増減によってコントロールされています。

このブログでも、何度か「生理は、女性の健康のバロメーターです」とお伝えしてきました。その理由として、ストレス、生活習慣の乱れなどによって容易にホルモン分泌が抑制され、生理がこなくなったり、不正出血がダラダラ続いたりすることが挙げられます。

生理がこないとき、ストレスの有無を確認し、ストレスがあるようであれば、その対策を考えましょう。ストレスがかかって数か月後の無月経のこともあり、ストレスがかかってすぐに生理が来なくなるわけではありません。

2. 体重の急激な変化

体重が急激に変化すると、生理がこなくなってしまうケースがあります。

「痩せすぎると生理が止まる」というのはイメージしている方も多いですが、じつは、体重が増えすぎることでも生理は止まります。 BMIが17未満、または25以上になると、生理のトラブルが生じやすいです。適正体重を保つようにいたしましょう。

BMIは、以下の式で計算できます。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

たとえば、身長150cmで45kgの場合、BMI = 45(kg)÷1.5(m)÷1.5(m)= 20 となります。また、こちらのサイトで簡単に計算も可能です。

「急激な体重の減少による無月経」

一般的に、拒食症や神経性食思不振症といわれる摂食障害の方で、無月経になる方は多いです。極度な栄養失調により、視床下部からのホルモンが減少して無月経となります。日本人の一般的な体形で体重が42㎏以下では、生理が起こりにくいと思います。

また、生理を再開するには、元の体重にまで戻すことが大切です。骨粗鬆症や脂質代謝異常となることも多いため、ホルモン検査だけでなく、一般血液検査や骨密度を測定し、状況によりホルモン補充療法も検討します。抑うつ状態になってしまうことも多いため、精神科を併診することも考慮します。

また、過度の運動によっても無月経となる場合があります。 「急激な体重の増加による無月経」 背景に多嚢胞性卵巣症候群がある場合が多いです。急激な体重増加による無月経は、可能であれば食事療法をおこなって、健康な時の体重にコントロールすることをおすすめいたします。

3. 加齢

加齢により卵巣の機能が徐々に低下すると、エストロゲン分泌量が不安定となり、生理にも影響が出てきます。

エストロゲンは、脳の下垂体という部分の指令を受けて、排卵後に卵巣から大量に分泌されます。しかし、卵巣の機能が低下すると、いくら脳から「排卵をするように」とメッセージを受けても排卵することができず、結果として十分な量のエストロゲンを分泌することができません。

卵巣からエストロゲンが分泌されないと脳からの刺激ばかりが強くなり、さらには、同時に1つ以上の排卵が誘発され、エストロゲン分泌量が急上昇するなどによりエストロゲン分泌量のゆらぎが生じるのです。生理がこない、頻繁にくる、不正出血が続くなど、トラブルが多くなります。

こちらの記事で更年期に伴う生理の変化について、詳しくご紹介しています。

40歳未満で生理がこなくなった場合、「早発閉経」の可能性もあるでしょう。「生理がこなくて楽でいい」とおっしゃる方もいますが、健康にとっては大きな問題です。骨粗鬆症や生活習慣病のリスクが高くなります。

4. 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣に多数の小さな嚢胞が形成される状態からくる症候群です。

排卵しにくい特徴が生じて、卵巣内で男性ホルモンの濃度が高まってしまうこともあり、生理不順・生理がこない、体毛が濃くなるといった症状で気がつくことが多いです。女性の5〜10%程度にみられ、「なかなか妊娠しないので」と検査にいらして発覚するケースもよくあります。

原因は明らかになっておりません。
遺伝的な要因や、不規則な生活習慣などの環境因子も関わっていると考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群で最も困るのは、排卵が生じないことによる不妊症です。
妊娠を希望される場合は、排卵誘発剤を用いた不妊治療がおこなわれる場合もあります。以前は、腹腔鏡下卵巣多孔術(電気メスで卵巣に小さな穴を複数あける手術)が適するケースも多くありましたが、最近は不妊治療も保険適応になり、妊娠希望される場合は体外受精などの不妊治療により妊娠される例が多くなりました。

すぐの妊娠希望がない場合は、低用量ピルなどのホルモン剤を用いて、定期的に生理が起こるようにして、下垂体から過剰に分泌されたホルモンをコントロールしていきます。漢方薬が有効な方もいらっしゃいます。

5. 高プロラクチン血症

プロラクチンというのは、通常は出産後に分泌が高まる「乳腺刺激ホルモン」です。

濃度が高まると、排卵は抑制され無月経となります。女性の場合、月経不順で婦人科を受診し、ホルモンの血液検査で診断されることが多い疾患です。

【高プロラクチン血症の症状】

・妊娠や出産をしていないのに乳汁が出る
・排卵障害(無排卵、無月経など)
・習慣性流産
・生理がほとんど来ない(希発月経)
・若年での骨粗鬆症

脳下垂体の腫瘍、脳視床下部の機能障害、一部の薬による副作用、甲状腺機能低下などが誘因となっているケースがあります。原因に合わせ、治療をおこないます。

6. 甲状腺の疾患

甲状腺の機能は、亢進でも低下でも生理周期へ影響があります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の場合、生理がこない(生理周期が長い)状態となり、また、疲れやすさや体重減少、息切れ、動悸といった症状が代表的です。 甲状腺機能低下症(橋本病など)の場合も、無排卵や無月経となります。

そのほか、筋力低下、疲れやすい、脈が遅くなるといった症状も現れます。 甲状腺の疾患をお持ちの方は日本には500万人ほどいるとされており、女性に多い疾患です。甲状腺の機能を適正に保つための薬物治療が中心です。

7. 無排卵月経

無排卵月経は、「生理のような出血はある」にも関わらず、排卵が伴っていない状態のことで、無月経(生理がない状態)とは異なる病態です。

【無排卵月経の特徴】

・生理周期が不安定
・経血量は多いとき、少ないときとばらつきがある
・不正出血がある
・不妊

上記に示したように、PCOS、甲状腺疾患、脳下垂体腫瘍などが原因になっているケースもあるため、無排卵月経の場合は鑑別診断が大切です。10代も無排卵月経が多いですが、ほとんどは自然と改善されていくので、あまり心配はいりません。

生理のような出血は定期的にあるため、なかなか「無排卵月経」であることには気がつきにくいです。 原因疾患があればその治療をおこないます。生活習慣を整え、心身に負荷をかけすぎないことも重要になります。

すぐの妊娠を希望される場合は排卵誘発剤などの治療をおこない、妊娠の希望がない場合は経過観察することもあります。低用量ピルや漢方薬などを用いることもあります。

 

年代別:生理がこないときの原因

画像 年代別に、生理がこない代表的な要因をお伝えします。

10代:ホルモン分泌が未熟

10代、とくに初潮から数年の間は、ホルモン分泌がまだ成長途中であり、生理周期が安定せず、また、無排卵月経のことも多いです。不正出血なのか、月経なのかよくわからない出血が続いたり、生理がこなかったりということも少なくありません。 医学的にはあまり大きな問題がないことが多いですが、不安があれば一度ご相談にいらしてください。

血液検査にて、ホルモンバランスを確認することができます。 また、排卵の確認のため超音波検査することも可能ですが、経腟エコーまたは直腸エコーが必要です。成長に伴って、20歳くらいまでには自然に規則的な月経になることが多いです。

生理周期がバラバラ、不正出血が多いなどで学業や部活動に支障をきたすような場合は、10代でも低用量ピルを服用することがあります。受験などに合わせた生理移動も可能ですので、お気軽にご相談ください。

20代〜30代

20代〜30代では、一般的には生理周期は安定しますので、「生理がこない」「不正出血が多い」といったトラブルには、原因となる疾患(PCOS、甲状腺疾患など)のある場合が増えてきます。そのほか、仕事のストレスや生活習慣の乱れ、妊娠が原因で生理がこない可能性もあるでしょう。

「妊娠の可能性はないから、生理がこなくて楽だし…」と、受診を先延ばしにすることは避けたほうがいいと思います。生理がこないことは、体からの「病気かも」のサインです。まずは検査をして、重大な病気でないことを確かめましょう。

40代〜閉経

40代ごろから生理周期に変化が出てきた場合は、閉経へ向かっている可能性がまず考えられます。

個人差はありますが、まず生理周期が短くなり、その後しばらくすると逆に生理周期が長くなって、次第に生理回数が減って、閉経という流れになる方が多いです。1年間月経がこなければ、閉経したと考えます。

ただし、生理が不規則になったり、不正出血が増えたりする要因は、閉経だけではありません。生理に変化が出てきたら、一度、子宮や卵巣の状態をチェックしておくと安心でしょう。

 

受診の目安と検査内容

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妊娠の可能性がある場合、つまり、前回の生理から現在までの間に性行為があった場合には、生理予定日から妊娠検査をしてみましょう。市販の妊娠検査薬も精度は高いですので、まずは市販のもので試してみてもかまいません。検査が早すぎると、正しい結果が得られませんので、生理予定日の検査で陰性だった場合には1〜2週間後に再検査して下さい。

コンドームの着用や低用量ピルの服用があったとしても、避妊の効果は100%ではありませんので、少なくとも生理が2週間遅れている場合には、妊娠検査をしてみましょう。

妊娠の可能性がない方は、3か月以上生理がない場合に、婦人科を受診してください。

それより早く受診していただいても問題はありません。
3か月以上生理がない状態は「無月経」です。骨粗鬆症のチェックやその他の疾患との鑑別が必要ですので、ご受診ください。

 

生理を安定させるために、できること

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生活が乱れたり、心身に負担がかかったりすると、生理が不安定になってしまいがちです。日々の生活の中で、次のような点を意識してみましょう。

・睡眠時間を十分にとる
・生活リズムを安定させる
・栄養バランスを見直す
・適度に運動をする
・痩せすぎ、太りすぎを是正する

 

「生理がこない」に関連したQ&A

画像 生理がこないと、不安な気持ちでいっぱいになってしまう方が多いです。よくあるご質問にお答えいたします。

Q. 生理がきそうな感じで下腹部痛もあるのですが、なかなかきません。なぜでしょうか?

一番大きい理由は妊娠です。また、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣腫瘍があると、生理の前に下腹部痛を生じるようになり、さらに、生理前でない時期でも下腹部痛・腰痛などを呈するようになるケースもあります。

普段から生理痛がひどいのであれば、そういった可能性が考えられます。 ですが、生理がこない状態が続く原因は別にあると思われますので、受診し検査してみましょう。

Q. おりものに血が混じっているのですが、生理がきません。大丈夫でしょうか?

妊娠の可能性はありますか?妊娠判定の検査をおこないましょう。薬局で入手することができます。生理がしっかりと始まる前に、子宮内膜の一部が剥がれ、不正出血が生じる場合はあります。

ですが、不正出血のような状態が続くだけで生理がこないのであれば、何らかの疾患の可能性も否定はできません。 生理がこないまま、おりものに血が混じった状態が続いているのであれば、受診をしてください。出血がおさまるまで受診を控える必要はありません。

Q. 妊娠検査薬は陰性でしたが生理がきません。

妊娠検査薬は、実施の時期が早すぎると正確な検査がおこなえません。生理の予定日から1週間以上過ぎてから、再度トライしてみてください。今回ご紹介したように、妊娠以外の要因でも生理がこなくなることは多いです。婦人科で、子宮や卵巣の状態をチェックしてみることもおすすめします。

Q. ピルの休薬期間中に生理がこないです。このまま次のシートをはじめてよいですか?

低用量ピルを正しく服用していれば、規則的に生理(消退出血)が起こらない方もいらっしゃいます。ただし、甲状腺や子宮、卵巣などの疾患により、低用量ピル服用中でも生理がこなくなる場合があります。

また、体重の急激な増減があった場合にも、生理がこなくなるかもしれません。避妊効果は100%でないため、妊娠の可能性も否定はできません。低用量ピルの服用で生理(消退出血)がなくなるのは、ごく稀です。次のシートを飲みはじめず、婦人科でご相談ください。

 

まとめ

生理がこない原因として、妊娠以外にもたくさんの疾患の可能性が考えられますが、妊娠の可能性がある場合にはまず妊娠検査をしましょう。

妊娠の可能性がない場合は、3か月以上生理がこない状態であれば、必ず婦人科を受診してください。無月経は、女性の健康にとってさまざまなリスクとなります。早いうちに原因を確認して、適切な治療をいたしましょう。

院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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