【産婦人科医監修】生理前と妊娠初期の違いを徹底解説|症状チェックリストと見分け方まとめ
更新日:2025.11.02
「生理前の不調かな?でも、もしかして妊娠…?」
生理予定日が近づくにつれ、胸の張りや下腹部痛、眠気といった体のサインに、「いつも通り」と感じながらも、心のどこかで「いつもと違うかも」と期待や不安が入り混じる…。
そんな経験はありませんか?
その症状は、多くの女性が経験する月経前症候群(PMS)なのでしょうか。
それとも、新しい命のサインである妊娠初期症状なのでしょうか。
この記事では、産婦科専門医が、生理前と妊娠初期の症状の見分け方を徹底解説します。
ご自身の症状を客観的に振り返るセルフチェックリストから、基礎体温やおりものの変化、妊娠の可能性を判断する医学的なポイントまで、あなたの疑問と不安に一つひとつ丁寧にお答えします。
この記事を読み終える頃には、ご自身の体の状態への理解が深まり、「次に何をすべきか」が明確になっているはずです。
目次
まず結論から|生理前と妊娠初期の症状は、なぜこんなに似ているの?
多くの方が症状の違いを知りたいと思う中で、まずお伝えしたいのは「両者の症状は酷似しており、症状だけで断定はできない」という事実です。
その理由は、どちらの症状も「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という一つの女性ホルモンの影響で引き起こされるからです。
生理前(PMS)
排卵後、黄体ホルモンの分泌量が増え、妊娠の準備をします。
このホルモンの影響で、眠くなったり、イライラしたり、体に様々な不調が現れます。妊娠が成立しないと自然に月経となり、妊娠が成立すると月経はきません。
妊娠初期
妊娠が成立すると、赤ちゃんを育てるために黄体ホルモンの分泌が継続します。
そのため、生理前と同じような症状が続く、あるいはより強く現れるのです。
【参考】女性ホルモンの通常周期と妊娠時の比較
※【図について】本図はホルモン推移を理解するための概念図です。個人の数値や診断を示すものではありません。体調や検査結果は医師にご相談ください。
このように、生理前も妊娠初期も、黄体ホルモン(プロゲステロン)分泌量が増えるため、症状も似通ってくるのです。
「症状だけで一喜一憂しない」ことが、心穏やかに過ごすための第一歩です。
生理前と妊娠初期の違いはいつから?妊娠成立までの流れ
妊娠していた場合、体の中ではいつから変化が起こり始めるのでしょうか。
排卵から生理予定日までの流れを時系列で見ていきましょう。
1.排卵・受精(約0日目)
卵子が排出され、精子と出会い受精します。
2.細胞分裂
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管を通って子宮へ移動します。
3.着床(排卵から約7〜10日後)
受精卵が子宮内膜に潜り込み、「妊娠が成立」となります。
4.hCGホルモン分泌開始
着床後、妊娠を維持するための「hCGホルモン」が分泌され始めます。
これが妊娠検査薬で陽性反応を示すホルモンです。
5.妊娠初期症状の出現
hCGホルモンの影響で黄体ホルモンの分泌が続き、生理予定日前後から「妊娠初期症状」として自覚症状が出始めます。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは?
hCGは、着床後に絨毛(胎盤のもと)から分泌され、黄体を刺激してプロゲステロンを保ち妊娠を支えるホルモンです。
あなたはどっち?妊娠初期症状セルフチェックリスト
ご自身の症状を客観的に振り返ってみましょう。
以下の項目で、「妊娠初期に当てはまるかも」と思うものが多ければ、可能性を考えてみてもよいかもしれません。
【体の変化編】
【感覚・気分の変化編】
【症状別】生理前と妊娠初期の違いを徹底比較
まずは一覧表で、症状ごとの違いの傾向を掴みましょう。
| 症状 | 生理前(PMS)の傾向 | 妊娠初期の傾向 | 見分けるポイント |
|---|---|---|---|
| 基礎体温 | 高温期が続くが、生理開始とともに急激に下がる。 | 高温期(36.7℃以上の微熱感)が17日以上続く。 | 【最も客観的なサイン】 基礎体温グラフが一番わかりやすい。 |
| おりもの | 量が減り、白く濁って粘り気が出る。 | 量が増え、水っぽくサラサラしたり、乳白色になったりする。茶色やピンクの着床出血が少量見られることも。 | 生理予定日を過ぎても続くおりものの「量」と「性状」。 |
| 胸の張り | 生理開始とともに症状が和らぐ。 | 生理予定日を過ぎても張りが続き、乳首が敏感になったり、乳輪が黒ずんだりすることも。 | 症状の「持続期間」と「乳首・乳輪の変化」。 |
| 腹痛 | 生理痛のようなズーンとした重い痛み。 | 下腹部がチクチク・シクシク痛んだり、足の付け根が引っ張られるような痛み。 | 痛みの「種類」と「場所」。 |
| 眠気・だるさ | 生理が始まると解消される。 | 生理予定日を過ぎても異常な眠気や倦怠感が続く。 | 「いつもとは比べ物にならない」と感じるほどの強さ。 |
| 吐き気 | 胃のむかつき程度。 | 「つわり」の始まり。空腹時や特定の匂いで吐き気がするなど、特徴的な症状が出始める。 | 気持ち悪くなる「タイミング」や「きっかけ」。 |
| 腰痛 | 生理痛に伴う腰の重だるさ。 | 子宮が大きくなる準備やホルモンの影響で、継続的な腰痛を感じることがある。 | 腹痛との関連性や症状の持続期間。 |
| 肌荒れ | 生理前にニキビができるが、生理が始まると改善する。 | ホルモンバランスの乱れから、継続的に肌荒れやニキビに悩まされることがある。 | 症状の持続期間。 |
特に気になる症状を詳しく解説
表で概要を掴んだ上で、特に多くの方が「これって妊娠?」と悩まれる症状について、見分け方のポイントをさらに詳しく解説します。
①【基礎体温の変化】「高温期が続く」が最大のサイン
生理前の体温は、排卵後に黄体ホルモンの影響で上昇し「高温期」に入ります。
これは妊娠に備えて子宮内膜を厚く保つための正常な働きです。そして生理が始まると、黄体ホルモンが減少するため体温はガクンと下がります。 一方、妊娠が成立した場合は、妊娠を維持するために黄体ホルモンが分泌され続けるため、生理予定日を過ぎても高温期が続きます。
具体的には、普段の高温期が17日以上続いた場合、妊娠の可能性が非常に高いと考えられます。体の感覚的な「熱っぽさ」だけでなく、基礎体温を測り続けることが、最も客観的で信頼できる見分け方の一つです。
②【おりものの変化】量・色・性状に注目
生理前のおりものは、排卵期を過ぎると水分量が減り、白濁した粘り気のある状態になるのが一般的です。量は次第に減少していきます。
これに対し、妊娠初期のおりものは、エストロゲンというホルモンの分泌が増える影響で、量が増加する傾向にあります。
色は無色透明~乳白色で、性状は「水っぽくサラサラしている」と感じる方が多いです。 また、妊娠のサインとして有名な「着床出血」も、おりものの変化として現れます。
これは、受精卵が子宮内膜に着床する際にごく少量の出血が起こるもので、生理予定日の数日前に「薄いピンク色のおりもの」や「茶色のおりもの」が下着に付着する程度、1〜3日ほど続くことがあります。
ただし、着床出血は全ての人に起こるわけではありません。
③【胸の張り・痛み】持続期間と乳首の変化
生理前に胸が張って痛むのは、PMSの代表的な症状です。
多くの場合、この張りや痛みは生理が始まると同時に軽快していきます。 妊娠初期の胸の張りとの大きな違いは「持続性」と「強さ」です。生理予定日を過ぎても張りが治まらない、むしろ強くなる、といった場合は妊娠の可能性が考えられます。
また、「乳首が下着にこすれるだけで痛い」「乳首や乳輪の色が濃くなった」といった、乳首の敏感さや色の変化は、生理前にはあまり見られない、より妊娠に特有のサインと言えます。
④【腹痛・下腹部痛】痛みの種類や場所の違い
生理前の腹痛は、生理本番の痛みに似た「ズーンとした重い痛み」や「鈍痛」が中心です。
妊娠初期の腹痛は、少し痛みの種類が異なります。子宮が少しずつ大きくなろうとすることで、「下腹部がチクチク、シクシクするような痛み」や、子宮を支える靭帯が引っ張られることによる「足の付け根(鼠径部)のつっぱり感や痛み」として感じられることがあります。
いつもの生理痛とは違う種類の痛みを感じたら、注意して様子を見ましょう。
⑤【吐き気・気持ち悪さ】つわりの始まりかも?
生理前でも、ホルモンバランスの影響で胃がムカムカしたり、気持ち悪いと感じたりする方はいます。
しかし、妊娠初期の気持ち悪さ、いわゆる「つわり」は、より特徴的です。代表的なのが「食べつわり」(空腹になると気持ち悪くなる)や「においつわり」(炊きたてのご飯や特定の食べ物の匂いで吐き気を催す)です。
もし、生理予定日を過ぎても気持ち悪い状態が続き、特定の状況で症状が強まるようであれば、それはつわりの始まりかもしれません。
⑥【眠気・だるさ】「いつもと違う」レベルの倦怠感
生理前に眠くなるのも、黄体ホルモンの作用によるものです。
しかし、その多くは生理が始まればスッキリします。
妊娠初期の眠気やだるさは、そのレベルが違います。
「日中、仕事に集中できないほど眠い」
「ソファに座るとすぐに寝てしまう」
「体を起こしているのが辛い」といった、
日常生活に支障をきたすほどの強い倦怠感が続く場合、妊娠のサインである可能性があります。
生理前でも妊娠の可能性はある?確率を医学的に解説
「生理前でも妊娠するの?」という疑問について解説します。
医学的に、妊娠の確率が最も高まるのは「排卵日の直前〜排卵日」です。
一般的に、生理前の時期は妊娠しにくいとされています。しかし、「生理前だから絶対に妊娠しない」とは言い切れません。
排卵日のズレ
ストレスや体調不良で排卵日がずれると、ご自身が「生理前」と思っている時期が、実は妊娠しやすいタイミングである可能性があります。
精子の寿命
精子は女性の体内で数日間生存できます。そのため、性交渉のタイミングが排卵日と少しずれていても妊娠に至ることがあります。
妊娠の可能性がある行為があれば、時期にかかわらず妊娠の確率はゼロではない、と考えることが大切です。
生理前に妊娠検査薬は使える?正確な時期とフライングの注意点
ご自身で確認できる最も確実な方法が妊娠検査薬です。
・妊娠検査薬はいつから反応する?
検査薬は「生理予定日」から使用することができますが、排卵日のずれによって陽性反応が出ない場合もあります。このため、市販の検査薬には生理予定後1週間と記載されています。
・なぜ?なぜhCGホルモンが関係しているの?
妊娠すると分泌されるhCGホルモンが、尿中で検出できる量になるからです。
※hCGは、受精卵が子宮内膜に着床したあとにできる「胎盤のもと(絨毛組織)」から分泌されるホルモンです。妊娠が成立すると血液や尿の中で増え、妊娠検査薬が反応する“サイン”になります。
【フライング検査の注意点】
早く知りたいために生理予定日前に妊娠検査薬を使っても、hCGホルモン分泌が少ない時期には、妊娠していても陰性(偽陰性)と出ることがあります。
陰性でも1週間生理が来ない場合は再検査して、婦人科を受診しましょう。
これは危険なサインかも?すぐに産婦人科を受診すべき症状
以下の症状は、異所性妊娠(子宮外妊娠)や切迫流産など、緊急を要する状態のサインかもしれません。
一つでも当てはまる場合は、様子を見ずにすぐに産婦人科を受診してください。
・生理の時よりも明らかに多い出血、鮮血が出る
・レバーのような血の塊が出る
・我慢できないほどの下腹部痛、時間が経つにつれ痛みが強くなる
・めまいや失神、冷や汗を伴う腹痛
「いつもと違う」「おかしい」
という直感は非常に大切です。不安な時は迷わず専門医を頼ってください。
よくある質問(FAQ)|生理前と妊娠初期の違いまとめ
この記事の要点をQ&A形式でまとめました。ご自身の状況を整理するためにご活用ください。
Q1. 生理前と妊娠初期症状の一番の違いは何ですか?
A1. 最も客観的で信頼できる違いは「hCG検出」です。hCGは胎児の成分から分泌されるため、妊娠していない場合は検出されません。
Q2. 生理予定日前から妊娠の可能性はわかりますか?
A2. 月経が正確な場合には、生理予定前から妊娠判定が陽性となる場合があります。 ただし、生理予定日前はhCGの分泌がわずかなので、検出できない場合があります。
Q3. 妊娠検査薬はいつ使うのがベストですか?
A3. 市販されている多くの妊娠検査薬は、「生理予定日の1週間後」からの使用を推奨しています。この時期になると、妊娠していた場合に尿中に含まれるhCGホルモンの量が十分に増え、正確な判定ができるようになります。
Q4. 妊娠検査薬で陽性が出たら、すぐ病院に行くべきですか?
A4. 陽性反応が出たら、早めに産婦人科受診をお勧めします。
妊娠週数により超音波検査で胎嚢が確認できない場合もありますが、正常妊娠かどうかの判定に役立ちます。
Q5. 妊娠の可能性がある時、薬を飲んでも大丈夫ですか?
A5. 市販の風邪薬や頭痛薬などは一般的には大きな問題はありません。ただし、専門家の意見は大切なので、薬を服用する前に、妊娠の判定を行い産婦人科医に相談しましょう。
Q6. 生理前でも妊娠する可能性はありますか?
A6. はい。排卵日がずれたり精子の寿命が長い場合、いわゆる「生理前」の時期でも妊娠する可能性があります。時期だけで判断せず、必要に応じて検査や受診を。
【まとめ】その不安、専門医と一緒に安心に変えませんか?
生理前と妊娠初期の症状は非常によく似ていますが、
・子宮出血があるか
・症状が生理予定日を過ぎても持続・悪化するか
といった点が、一つの判断材料になります。
しかし、最終的な妊娠の判断はご自身では難しいです。最も大切なのは、一人で悩みすぎないことです。
私たち白金高輪海老根ウィメンズクリニックは、月経の悩みから妊娠、出産、そしてその先のライフステージまで、女性のあらゆる健康の悩みに寄り添うパートナーでありたいと考えています。
「こんなことで受診していいのかな?」という遠慮は全く必要ありません。
あなたのその不安な気持ちを、専門医による的確な診断と温かいサポートで、安心へと変えるお手伝いをさせてください。
どうぞお気軽に、私たちにご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。




