GSMのホルモン治療と腟レーザーはどう使い分ける?|エストリオール腟錠との違い
更新日:2026.07.28
「腟の乾燥やヒリヒリ感には、ホルモン治療とレーザーのどちらがよいのでしょうか」
「腟錠を処方されたけれど、痛くてうまく挿入できません」
GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の治療について、このようなご相談をいただくことがあります。
GSMの治療には、保湿剤や潤滑剤、局所エストロゲン療法、骨盤底筋へのアプローチ、モナリザタッチなどの腟レーザー治療があります。
どれか一つがすべての方に適しているわけではありません。症状が起きている場所、粘膜や皮膚の状態、腟錠を無理なく使用できるか、既往歴、治療へのご希望などを確認しながら選ぶことが大切です。
この記事の結論
エストリオール腟錠とモナリザタッチは、単純に優劣をつける治療ではありません。
局所エストロゲン療法には、GSMに対する医学的なエビデンスが蓄積されています。一方、モナリザタッチは、ホルモンを使用しない自由診療の選択肢ですが、標準的な治療をすべて置き換えるものではありません。
腟錠を無理なく使用できるか、症状の中心が腟内・腟入口部・外陰部のどこにあるかなどを確認し、その方に合った方法を検討します。
GSMとはどのような状態ですか?
GSMは、閉経前後の女性ホルモン低下に伴って生じる、腟・外陰部・尿路周辺の症状をまとめた名称です。
主に次のような症状があります。
- 腟や外陰部の乾燥
- ヒリヒリ感、灼熱感、かゆみ
- 性交時の摩擦痛や挿入時の痛み
- 性交後や診察後の少量出血
- 頻尿、尿意切迫感、排尿時の違和感
- 繰り返す膀胱炎
ただし、これらの症状は、感染症、皮膚疾患、子宮や卵巣の病気、骨盤底筋の緊張などでも起こります。
「更年期だからGSMだろう」と自己判断するのではなく、症状が続く場合には、ほかの原因がないかを確認することが重要です。
症状から確認したい方へ 腟の乾燥・ヒリヒリとGSMの関係 乾燥やヒリヒリ感の原因、レーザーより先に確認すべき感染症や皮膚疾患について解説しています。日本で受けられる局所ホルモン治療
GSMに対する代表的な治療の一つが、腟周辺へ局所的にエストロゲンを作用させる治療です。
海外では、腟用のエストロゲン製剤として、腟クリーム、腟錠、腟リングなど、複数の剤形が使用されています。
一方、日本では、海外と同じように複数の剤形から自由に選べる状況ではありません。国内の通常診療では、医師が症状や既往歴を確認したうえで、エストリオールを含む腟錠を使用することがあります。
エストリオール腟錠は医療用医薬品です。
適応、使用方法、使用期間は、症状や既往歴によって異なります。自己判断で使用を開始・中止せず、処方した医師の指示に従ってください。
エストリオール腟錠で期待されること
エストリオール腟錠は、腟内へ挿入し、腟粘膜へ局所的にエストリオールを作用させる薬剤です。
診察のうえで適応がある場合、次のような腟粘膜の症状に対して使用されます。
- 腟内の乾燥
- 腟粘膜の萎縮性変化
- ヒリヒリ感や灼熱感
- 性交時の摩擦痛
- 腟粘膜が薄く、傷つきやすい状態
腟錠を無理なく挿入でき、症状の中心が腟内の乾燥や萎縮にある方にとっては、有用な治療選択肢です。
使用頻度や期間は一律ではありません。症状の変化や粘膜の状態を確認しながら、医師が調整します。
腟錠を挿入すること自体がつらい場合があります
GSMでは、腟内の乾燥だけでなく、次のような変化を伴うことがあります。
- 腟入口部や腟前庭部の乾燥・萎縮
- 触れたときの痛み
- 外陰部の乾燥や皮膚の脆弱性
- 腟口の狭さや伸びにくさ
- 骨盤底筋の緊張
このような状態では、腟錠を挿入しようとしたときに、次のような負担が生じることがあります。
- 腟入口部が痛む
- 錠剤や指が擦れてヒリヒリする
- 指を入れること自体がつらい
- 挿入時に少量出血する
- 痛みへの不安から身体に力が入る
- 一度痛みを経験し、次の使用が怖くなる
治療したい症状そのものが、腟錠の挿入を難しくすることがあります
腟錠が医学的な選択肢であっても、患者さんが実際に挿入できず、継続できなければ治療は進みません。薬の種類だけでなく、「痛みなく使用できるか」という視点も大切です。
挿入時に強い痛みや出血がある場合、無理に続ける必要はありません。処方した医師へ相談し、症状の場所や腟入口部の状態を確認してもらいましょう。
腟入口部や外陰部が症状の中心となる場合
腟錠は腟内へ使用する薬剤です。
一方、症状の中心が次のような場所にある場合には、腟錠だけで十分に改善しないことがあります。
- 外陰部
- 小陰唇周辺
- 腟入口部
- 腟前庭部
- 尿道口周囲
このような場合には、最初から無理に腟錠を使用するのではなく、診察結果に応じて、次のような方法を検討します。
- 外陰部の保湿
- 洗浄方法の見直し
- 下着やナプキンによる摩擦・蒸れの軽減
- 感染症、炎症、皮膚疾患の治療
- 痛みのない範囲での段階的なケア
- 骨盤底筋の緊張を緩めるアプローチ
- モナリザタッチなどの非ホルモン治療
腟入口部や外陰部の状態を先に整えることで、その後、腟錠を使用できるようになる方もいます。
照射部位を詳しく知りたい方へ モナリザタッチはどこに照射する? 腟内・腟前庭部・外陰部の違いと、症状に応じた照射部位の考え方を解説しています。モナリザタッチとはどのような治療ですか?
モナリザタッチは、フラクショナルCO₂レーザーを用い、腟粘膜や外陰部などへ微細な刺激を与え、その後に起こる組織の修復・再構築反応を利用する治療です。
ホルモン剤を使用しないため、ホルモン治療を希望しない方にとって、検討できる選択肢の一つです。
ただし、モナリザタッチは自由診療であり、すべてのGSM症状に適しているわけではありません。
有用性を示す研究報告がある一方、偽照射と比較した研究などを踏まえると、効果の確実性について慎重な評価もあります。そのため、局所エストロゲン療法などの標準的な治療を一律に置き換えるものではありません。
診察によって、乾燥や萎縮性変化が症状に関係しているか、感染症や皮膚疾患などを先に治療する必要がないかを確認してから、適応を判断します。
モナリザタッチについて
- 自由診療です。
- 効果や治療への反応には個人差があります。
- 複数回の治療が必要になる場合があります。
- 施術後に一時的な痛み、ヒリヒリ感、少量出血、排尿時の刺激感などが生じることがあります。
- 治療の適応、回数、照射部位は診察のうえで判断します。
最新の料金や注意事項は、モナリザタッチ治療ページをご確認ください。
エストリオール腟錠とモナリザタッチの違い
| 比較項目 | エストリオール腟錠 | モナリザタッチ |
|---|---|---|
| 治療方法 | 腟内へ薬剤を挿入し、局所的にエストリオールを作用させます。 | フラクショナルCO₂レーザーを照射し、組織の修復・再構築反応を利用します。 |
| ホルモン | 使用します。 | 使用しません。 |
| 診療区分 | 診断や処方内容によって、保険診療として使用される場合があります。 | 自由診療です。 |
| 主に検討する状態 | 腟内の乾燥や萎縮性変化など。 | 診察でレーザーの適応があると判断された乾燥・萎縮性変化など。 |
| 通院・使用 | 自宅での自己挿入が必要です。使用頻度は医師の指示によります。 | 来院して施術を受けます。複数回行う場合があります。 |
| 主な負担 | 腟入口部の痛みが強い場合、挿入が負担になることがあります。 | 施術費用、通院、一時的な刺激感などの負担があります。 |
| 医学的な位置づけ | GSMに対する局所エストロゲン療法には、比較的多くのエビデンスが蓄積されています。 | 治療選択肢の一つですが、効果の確実性について慎重な評価もあり、標準治療をすべて置き換えるものではありません。 |
| 注意点 | 既往歴、出血の有無、使用中の薬などを確認して処方します。 | 原因や症状によっては適応とならず、感染症・皮膚疾患などの治療を優先します。 |
※治療の適応や優先順位は、症状、診察所見、既往歴、ご希望によって異なります。
どちらの治療が向いているのでしょうか?
エストリオール腟錠を検討しやすいケース
- 症状の中心が腟内の乾燥や萎縮にある
- 腟錠を無理なく挿入できる
- 局所ホルモン治療を希望している
- 医師が既往歴などを確認し、使用可能と判断した
- 継続して自己挿入できる
モナリザタッチを検討することがあるケース
- 診察で乾燥や萎縮性変化が確認された
- 保湿剤などで改善が不十分
- ホルモンを使用しない治療を希望している
- 腟錠の挿入が難しい、または継続が負担になる
- 自由診療の費用や治療上の限界を理解している
上記はあくまで一般的な目安です。
腟錠を挿入できないから、必ずレーザーが適しているとは限りません。入口の痛みが感染症、皮膚疾患、傷あと、神経過敏、骨盤底筋の緊張などによる場合には、それぞれに合った治療が必要です。
どちらか一方ではなく、段階的に治療することもあります
GSMの治療は、最初から一つの方法だけに決める必要はありません。
症状の状態によっては、次のように段階的に進めます。
- 症状が起きている場所を確認する腟内、腟入口部、外陰部、尿道口周囲など、乾燥や痛みの場所を整理します。
- 感染症や皮膚疾患などを除外するレーザーやホルモン治療より先に治療すべき病気がないかを確認します。
- 保湿・洗浄方法・摩擦対策を整える日常の刺激を減らし、外陰部や腟入口部の状態を整えます。
- 局所ホルモン療法やレーザーなどを検討する症状、既往歴、ご希望を踏まえて治療方法を選びます。
- 経過を確認して治療を調整する一つの治療だけで十分でない場合には、ほかの治療やケアを組み合わせます。
例えば、入口の痛みが強く腟錠を挿入できない方では、先に外陰部や腟入口部の炎症・乾燥を整え、その後に腟錠を検討することがあります。
反対に、腟錠を使用しても入口の痛みだけが残る場合には、腟前庭部、皮膚、骨盤底筋など、腟内以外の原因を改めて確認します。
当院の診療方針 なぜ「3部位を分けて診る」ようになったのか 腟内・腟前庭部・外陰部を分けて評価するようになった経緯を、当院の施術経験とともにお伝えしています。がん治療歴がある方は、主治医と相談して治療を選びます
乳がん、子宮体がんなどの治療歴がある方や、現在ホルモン療法を受けている方は、局所エストロゲン療法について慎重な検討が必要になることがあります。
既往歴があるから局所ホルモン療法を一律に使用できない、あるいは必ず使用できると判断することはできません。がんの種類、治療内容、再発リスク、現在使用している薬などを踏まえ、必要に応じて治療を担当する主治医と相談します。
また、モナリザタッチはホルモンを使用しない治療ですが、がん治療歴がある方すべてに適していることを意味するものではありません。
自己判断で治療を選ばず、これまでの治療歴や内服薬を医師へお伝えください。
治療方法より先に「症状の場所」を確認することが大切です
同じ「乾燥」という訴えでも、症状の場所は患者さんによって異なります。
- 腟内が乾燥している
- 腟入口部が擦れて痛い
- 外陰部の皮膚がヒリヒリする
- 尿道口周囲に刺激感がある
- 骨盤底筋が緊張し、挿入時に痛む
症状が起きている場所や原因が違えば、必要な治療も異なります。
当院では、エストリオール腟錠かモナリザタッチかを最初から決めるのではなく、まず症状の場所、粘膜や皮膚の状態、感染症、筋肉の緊張などを確認します。
薬があるか、レーザーができるかだけでなく、患者さんが実際に無理なく治療を受け、継続できるかまで含めて治療を考えることが大切です。
早めの来院診察を検討したい症状
次の症状がある場合は、セルフケアだけで様子を見ず、来院による婦人科診察をご検討ください。
- 閉経後の出血
- 性交後の出血が続く、または繰り返す
- 強い痛みや急な悪化
- 強い悪臭を伴うおりもの
- 発熱や強い下腹部痛
- 外陰部のできもの、しこり、ただれ
- 血尿や排尿困難
- 市販のケアを続けても改善しない
よくあるご質問
エストリオール腟錠とモナリザタッチは併用できますか?
症状や既往歴によっては、併用や段階的な使用を検討することがあります。ただし、すべての方に併用が必要なわけではありません。粘膜の状態、治療への反応、既往歴を確認しながら医師が判断します。
腟錠が痛くて挿入できない場合、どうすればよいですか?
無理に挿入を続けず、処方した医師へご相談ください。腟入口部の乾燥、炎症、皮膚疾患、前庭部痛、骨盤底筋の緊張などを確認し、保湿や原因治療などから始めることがあります。
ホルモン治療を希望しない場合は、レーザーしかありませんか?
レーザーだけではありません。保湿剤、潤滑剤、洗浄方法の見直し、摩擦対策、骨盤底筋へのアプローチ、感染症や皮膚疾患の治療などがあります。症状の原因に合わせて選びます。
オンライン診療で治療方法を決められますか?
オンライン診療では、症状や不安を整理し、治療選択肢や来院の必要性について相談できます。ただし、視診、触診、内診、検査はできません。痛みの場所や原因、レーザーの適応を確定するには、来院による診察が必要です。
まとめ|治療の優劣ではなく、使用できるかまで考えます
GSMに対する局所エストロゲン療法には、医学的なエビデンスが蓄積されています。腟錠を無理なく挿入でき、症状の中心が腟内にある方にとって、エストリオール腟錠は有用な治療選択肢です。
一方で、GSMによる入口の痛みや外陰部の乾燥によって、腟錠の挿入自体が負担になることがあります。
モナリザタッチは、ホルモンを使用しない自由診療の選択肢ですが、すべての方に適しているわけではなく、効果にも個人差があります。
そのため、エストリオール腟錠とモナリザタッチのどちらが優れているかを一律に決めることはできません。
症状がどこにあるか、腟錠を痛みなく使用できるか、治療を継続できるか、既往歴や希望に合っているかまで確認して治療を選ぶことが大切です。
乾燥・ヒリヒリ・性交痛でお悩みの方へ
腟錠を無理に続ける前に、症状の場所をご相談ください
「腟錠を処方されたけれど痛くて使えない」「保湿をしても乾燥やヒリヒリが続く」「ホルモン治療とレーザーのどちらが合うか分からない」という方もご相談いただけます。診察で症状の場所と原因を確認し、保険診療・自費診療・ホームケアを含めて治療方法をご提案します。
オンライン診療では、症状や不安の整理、受診先や治療選択肢についてご相談いただけます。ただし、視診・触診・内診・検査・レーザー施術はできません。出血、強い痛み、発熱、急な悪化、できもの、排尿困難などがある場合は、来院による診察をご検討ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



