なぜ私は「3部位を分けて診る」ようになったのか|モナリザタッチ4,300件超の施術経験
更新日:2026.08.06
患者さんの言葉から変化した診療
医師になって30年以上になりますが、今でも患者さんから教えていただくことがあります。
モナリザタッチの診療も、その一つです。腟内への治療から始まり、患者さんが教えてくださった「入口の痛み」を見つめ直すことで、現在の診療方針へたどり着きました。
私は2019年11月にモナリザタッチを導入しました。
当時、日本ではまだ腟レーザー治療を行っている施設は多くありませんでした。
「本当に患者さんの役に立つ治療なのか」「海外で評価されている治療は、日本の女性にも役立つのだろうか」。そんな期待と不安を抱えながら診療を始めたことを、今でもよく覚えています。
現在の当院の考え方
モナリザタッチは、腟内だけを一律に照射する治療ではありません。
当院では「腟内」「腟前庭部(腟入口部)」「外陰部」を分けて評価し、症状が起きている場所と組織の状態に応じて、必要な治療を考えます。3部位を診ることと、全員へ3部位を照射することは同じではありません。
目次
最初は、私も「腟内」を中心に治療していました
モナリザタッチが開発された当初から、多くの研究は腟内への照射を中心に行われていました。
閉経後のGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)では、女性ホルモンの低下に伴い、次のような変化が起こります。
- 腟粘膜が薄くなる
- 潤いが減る
- 血流や組織の弾力が低下する
- 摩擦によって性交時に痛みを感じやすくなる
そのため、私も当時の研究や治療方法に沿って、腟内を中心に治療していました。
診療を重ねる中で、腟内の乾燥感や内診時の痛み、性交時の摩擦感が以前より気になりにくくなったとお話しになる方がいらっしゃいました。
しかし一方で、腟内の症状が軽くなっても、別の痛みが残る患者さんがいらっしゃったのです。
「先生、まだ入口が痛いんです」
「腟の中の乾燥は楽になりました。でも、入る瞬間だけはまだ痛いんです」
最初は、なぜ痛みが残るのか分かりませんでした。
腟内の乾燥は以前より軽くなっている。腟粘膜の状態にも変化がみられる。それでも、挿入時の性交痛だけが残る。
「なぜだろう」。その疑問が、私の診療を変えるきっかけになりました。
「どこが痛いですか?」という質問から始まった変化
それまでは、「性交痛があります」という一つの症状として捉えることが多くありました。
しかし、その頃から私は診察のたびに、患者さんへ「どこが痛いですか?」と詳しく尋ねるようになりました。
すると、患者さんは「入口です」「ここです」と、ご自身の指で腟入口部を示してくださいました。
診察すると、腟の奥ではなく、腟前庭部に触れたときの痛みや圧痛がみられる方がいらっしゃいました。
症状を聞く
「性交痛」という言葉だけでなく、いつ、どのように痛むかを確認します。
場所を分ける
入口・腟内・奥など、痛みが生じる場所を具体的に整理します。
診察で確かめる
粘膜・皮膚・圧痛・炎症・筋肉の緊張などを確認し、原因を考えます。
「腟」だけでは説明できない症状がありました
さらに診療を重ねると、同じ「乾燥」「ヒリヒリ」「痛み」という訴えでも、症状が起きている場所は同じではないことに気付きました。
患者さんが感じていること
- 腟が乾燥する
- 腟が痛い
- 尿がしみる
- 外側がヒリヒリする
診察で確認される場所
- 腟内の粘膜
- 腟前庭部・腟口周囲
- 尿道口周囲
- 外陰部の皮膚
腟内が乾燥している方、外陰部の皮膚が乾燥している方、尿道口周囲がヒリヒリする方、腟前庭部だけに痛みが集中している方など、状態は本当にさまざまです。
患者さんは、デリケートゾーン周辺の症状をまとめて「腟が痛い」「腟が乾燥する」と表現されることがあります。しかし、診察してみると、症状が起きている組織や背景は同じとは限りません。
症状名だけで治療を決めず、「どこに症状があり、その場所に何が起きているのか」を確認することです。
イタリアで学び、診療経験と研究がつながりました
2026年、私はイタリアで、モナリザタッチの開発初期から研究を牽引されてきたStefano Salvatore教授から直接学ぶ機会をいただきました。
教授は、フラクショナルCO₂レーザーによる組織変化の考え方や、これまで積み重ねてこられた研究成果について詳しく教えてくださいました。
そのお話を伺いながら、私は日本でモナリザタッチの診療を続ける中で出会った、さまざまな症状の患者さんを思い浮かべました。
- 挿入時に入口だけが痛む方
- 排尿時に尿道口周囲がしみる方
- 腟内ではなく外陰部の乾燥が強い方
- 保湿や皮膚疾患の治療を先に行う必要があった方
イタリアで学んだ医学と、日本で積み重ねてきた臨床経験が一つにつながったように感じました。
そこで改めて実感したのは、モナリザタッチを単に「腟を治療するレーザー」と考えるのではなく、症状が起きている場所と組織の状態を評価したうえで、治療の適応と照射部位を判断することが大切だということです。
だから私は「3つの部位」を分けて診るようになりました
現在、当院では診察の際に、腟内・腟前庭部・外陰部の3つを分けて評価しています。
症状に合わせて確認する3つの部位
腟内・腟前庭部・外陰部を、連続した組織として捉えながら個別に評価します
腟内
腟粘膜の乾燥、萎縮性変化、弾力、分泌物、腟内環境、内診時の痛みなどを確認します。
腟前庭部(腟入口部)
小陰唇の内側や腟口周囲など、挿入時や触れたときの痛みが生じやすい場所を確認します。
外陰部
大陰唇を中心に、皮膚の乾燥、かゆみ、灼熱感、赤み、傷、皮膚疾患の有無などを確認します。
大切な点:「3部位評価」は、全員へ3部位を同じように照射するという意味ではありません。診る部位は3つでも、治療する部位と治療方法は患者さんごとに異なります。頻尿や排尿時の刺激感がある場合は、尿道口周囲の状態も確認します。
4,300件以上の施術経験が教えてくれたこと
4,300件以上
2019年11月の導入から2026年6月までのモナリザタッチ施術件数
この数字は、同じ患者さんが複数回受けた施術も含む「施術件数」です。患者数を示す数字ではありません。一つひとつの診療で伺った症状や経過が、現在の診療方針を形づくる大切な経験になっています。
乾燥、性交痛、尿もれ、かゆみ、ヒリヒリ感など、患者さんが抱えている悩みは一人ひとり異なります。
「誰にも相談できませんでした」とお話しになる方も少なくありません。
その一つひとつの出会いが、私の診療を少しずつ変えてくれました。現在の診療スタイルは、私一人が考えたものではなく、患者さんと一緒に育ててきた診療だと思っています。
レーザーを照射すること自体が目的ではありません
「今日はレーザーを受ける日ではなく、原因を探す日かもしれません」
モナリザタッチは、乾燥や萎縮性変化などに対する治療の選択肢の一つです。しかし、すべての乾燥、性交痛、ヒリヒリ感をレーザーだけで解決できるわけではありません。
だから私は、照射を急ぎません。まず、「どこに症状があるのか」「なぜそこが痛いのか」を患者さんと一緒に確認します。
レーザー治療
乾燥や萎縮性変化、組織の状態などを確認し、適応がある場合に照射部位を選びます。
保湿・ホームケア
洗いすぎや摩擦を避け、外陰部や腟入口部の乾燥を整えるケアを行います。
ホルモン治療
GSMや更年期症状、既往歴などを確認し、必要に応じて適した方法を検討します。
骨盤底筋へのアプローチ
骨盤底筋の過緊張や機能低下が関係する場合は、筋肉への治療やケアを組み合わせます。
感染症・皮膚疾患の治療
感染、炎症、皮膚疾患がある場合は、レーザーより先に原因となる病気の治療を行います。
婦人科疾患の検査・治療
奥の痛みや出血などがある場合は、子宮・卵巣などの病気がないかを確認します。
症状を整理
いつ・どこが・どのように痛むかを伺います。
部位を診察
腟内・前庭部・外陰部などを分けて確認します。
原因を考える
粘膜、皮膚、炎症、筋肉などを総合して判断します。
治療を選ぶ
レーザーを含む選択肢から、その方に合う方法を考えます。
私が目指しているのは「照射技術」だけではなく「診断力」です
モナリザタッチという機器は、世界各地の医療機関にあります。しかし、その機器をどこに、なぜ照射するのかを考えるのは医師です。
同じ「性交痛」でも、腟内の乾燥、腟前庭部の圧痛、外陰部の皮膚疾患、骨盤底筋の緊張、感染症、婦人科疾患など、背景はさまざまです。治療を選ぶ前に、原因を丁寧に見極める必要があります。
私はこれからも海外の研究から学び続けます。そして同時に、目の前の患者さんからも学び続けたいと思っています。
イタリアで学んだ医学と、日本で4,300件以上の施術を重ねる中で得た診療経験。その両方を大切にしながら、一人ひとりに合わせた診療を続けていきます。
おわりに
私は、モナリザタッチを単なる「レーザー治療」としてではなく、乾燥や性交痛、ヒリヒリ感などで悩む女性が、より快適に生活するための選択肢の一つとして考えています。
大切なのは、「どの機器を使うか」だけではありません。
乾燥や性交痛、ヒリヒリ感で悩み、「どこへ相談したらよいか分からない」と感じている方は、どうぞ一度ご相談ください。
まずは症状がどこから来ているのかを、一緒に確認するところから始めましょう。
私は、4,300件の施術で診療が完成したとは思っていません。これからも患者さんから学び続け、医学的な知見と日々の診療経験をつなぎながら、診療を進化させていきたいと思っています。
よくあるご質問
3部位評価では、全員に3か所を照射しますか?
いいえ。腟内・腟前庭部・外陰部を分けて診察しますが、治療する場所は症状と組織の状態によって異なります。腟内だけでよい方、前庭部への治療を検討する方、レーザー以外の治療を優先する方がいます。
性交時に入口が痛ければ、腟前庭部レーザーが必要ですか?
入口の痛みには、乾燥や萎縮性変化だけでなく、感染症、皮膚疾患、炎症、傷あと、骨盤底筋の緊張などが関係することがあります。診察で原因と適応を確認してから、レーザーを含む治療方法を検討します。
相談した当日にレーザーを受ける必要がありますか?
必要ありません。診察で原因を確認した結果、まず保湿、感染症や皮膚疾患の治療、ホルモン治療、骨盤底筋へのアプローチなどを優先することがあります。適応があり、ご希望と当日の状態が合えば施術できる場合もあります。
オンライン診療でも痛みの場所を診断できますか?
オンライン診療では、症状や不安を整理し、受診先や治療の選択肢について相談できます。ただし、視診・触診・内診・検査はできないため、痛みの場所や原因を確定するには来院による診察が必要です。
モナリザタッチについて
- モナリザタッチは自由診療です。
- 料金は1回55,000円、3回スタンダードプラン149,400円、腟前庭部レーザー55,000円です。初診6,600円、再診3,300円、表面麻酔3,300円、シェービング3,300円が別途必要になる場合があります。価格は税込みです。
- 施術後に痛み、ヒリヒリ感、少量の出血、排尿時の刺激感などが生じることがあります。
- 症状の変化や治療への反応には個人差があり、結果を保証するものではありません。
- 施術の適応、照射部位、料金、注意事項は診察時にご説明します。最新情報はモナリザタッチの治療ページをご確認ください。
乾燥・性交痛・ヒリヒリ感でお悩みの方へ
レーザーを受けることからではなく、症状の場所と原因を確認することから始めます
痛みや乾燥を一つの症状としてまとめず、腟内・腟前庭部・外陰部などを分けて診察し、その方に必要な治療やケアをご提案します。
オンライン診療では症状や受診先、治療の選択肢についてご相談いただけますが、視診・触診・内診・検査・レーザー施術はできません。出血、強い痛み、発熱、急な悪化、できもの・ただれなどがある場合は、来院による診察をご検討ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



