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モナリザタッチと腟の乾燥|腟粘膜・血流・潤いの関係を婦人科医が解説

モナリザタッチは、腟の乾燥にどのように働きかけるのでしょうか。

私は、その治療の考え方を、「分泌液を直接増やす」というより、「腟壁そのものの組織環境に働きかける」と捉えると、理解しやすいと思っています。

腟壁そのものには分泌腺がありません。腟の潤いを支えるうえで大切なのが、腟壁の血流と、健康な腟粘膜です。

当院では、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の治療の選択肢として、モナリザタッチ(フラクショナルCO₂レーザー)を行っています。

今回は、研究で報告されている腟粘膜の変化と、私が診療のなかで着目している「潤い」との関係についてお話しします。

閉経後の腟では何が起きるのでしょうか

閉経によってエストロゲンが低下すると、腟には次のような変化が起こります。

  • 腟上皮が薄くなる
  • 血流や血管構造が変化する
  • コラーゲンや弾性線維などの組織構造が変化する
  • 粘膜の弾力が低下する
  • 自然な潤滑が低下する

その結果、「乾く」「ヒリヒリする」「擦れる」「性交渉のときに痛い」といった症状が現れることがあります。これらは、GSMでみられる腟症状の一部です。

つまり、GSMによる乾燥は、単に「分泌液が足りない」という問題だけではありません。

腟壁そのものの組織環境が変化していることが重要なのです。

モナリザタッチは腟壁に微細な熱刺激を与えます

モナリザタッチは、フラクショナルCO₂レーザーを用いて、腟粘膜などに点状の微細な熱刺激を加える治療です。

「フラクショナル」とは、面全体に一様に照射するのではなく、微細な点状に照射し、その周囲に照射されていない組織を残す方法を指します。

この熱刺激による創傷治癒反応や、組織のリモデリング(再構築)に着目し、乾燥やヒリヒリ感、性交痛などの症状改善を目指します。

ここからが、組織の仕組みを考えるうえで興味深いところです。

顕微鏡で調べた腟粘膜には、どのような変化がみられるのでしょうか

フラクショナルCO₂レーザー照射後の腟粘膜を、顕微鏡で調べた研究があります。

例えば、Zerbinatiらの研究では、閉経後の女性から採取した腟粘膜の組織を調べ、次のような変化を報告しています。

確認された項目 報告された変化
腟上皮 厚みや成熟に関する変化
グリコーゲン 上皮細胞内での増加
線維芽細胞 活動を示す所見
組織を支える成分 コラーゲンや細胞外マトリックスに関する変化
上皮と結合組織の境界 毛細血管を伴う構造の変化

用語の補足

線維芽細胞:コラーゲンなどの組織成分をつくる細胞です。

細胞外マトリックス:細胞の周囲で組織を支える成分です。

こうした所見は、レーザーが「水を出す」のではなく、腟壁の組織に修復・再構築に関わる反応を起こすという考え方につながっています。

組織の変化と、症状への効果は分けて考えます

一方で、組織学的研究は、採取した組織にどのような変化がみられるかを調べたものです。これだけで、乾燥感がどの程度改善するか、その効果がどれくらい続くかまで判断することはできません。

2021年に発表された、閉経後の腟症状がある女性85人を対象としたランダム化比較試験では、レーザー治療と模擬治療を比較し、12か月後の症状改善に統計学的な有意差は認められませんでした。

組織の変化を示す研究がある一方、症状に対する有効性や長期的な安全性には、引き続き検証が必要です。当院でも、研究結果と診察所見を踏まえて治療の適応を判断します。

特に注目したいのが「血管」です

腟に分泌腺がなくても潤う仕組みの一つに、腟壁の血管から組織を通って移動する水分があります。

特に性的興奮時には、腟壁の血流が増え、血漿由来の水分が腟壁を通って表面に移動し、潤滑に寄与します。

そのため、腟粘膜の機能を考えるうえで、腟壁の血管・血流環境は重要な要素です。

レーザー照射後の組織学的研究では、上皮と結合組織の境界にある乳頭状の部分に、毛細血管を伴う構造が報告されています。

ただし、顕微鏡で血管構造が観察されたことと、実際の血流量や潤滑に関わる水分が増えたことは、同じではありません。

私は、こうした組織変化が腟粘膜の機能とどのようにつながるのかに関心を持っています。

院長が着目していること

腟壁のリモデリングによって、上皮や結合組織、血管を含む局所環境が変化し、それが粘膜の機能や乾燥感に関わるのではないか。

これは、組織学的な所見をもとに当院が着目している仮説です。

「腟粘膜のリモデリング」とは?

リモデリングとは、組織がつくり替えられ、その構造が変化していくことです。

モナリザタッチについて「腟の再生」という言葉が使われることもありますが、新しい腟をつくったり、年齢による変化をすべて元に戻したりするという意味ではありません。

自分自身の腟組織に微細な刺激を与え、それに対する創傷治癒反応によって、上皮や結合組織などに変化が生じる。

この意味で、「腟粘膜のリモデリングに働きかける治療」と表現すると、治療の仕組みが伝わりやすいと思います。

保湿剤・潤滑剤との違い

腟の乾燥に対する保湿ケアは、とても大切です。また、性交時に用いる潤滑剤には、摩擦を減らす役割があります。

一方、モナリザタッチは、外から水分を補う治療ではありません。バルトリン腺やスキーン腺などを刺激して、大量の分泌液を出させる治療でもありません。

それぞれの働きかけ方を整理すると、次のようになります。

保湿剤

粘膜表面の水分保持を助け、乾燥による不快感を和らげます。

潤滑剤

性交時などの摩擦を減らします。

モナリザタッチ

照射する腟壁などの組織に熱刺激を与え、修復・再構築に働きかけることで症状改善を目指します。

これは、どれか一つがすべての方に優れているという意味ではありません。

GSMでは、保湿剤・潤滑剤に加え、適応に応じた局所エストロゲン療法なども選択肢になります。症状や治療歴、ご希望を確認しながら、治療と日常のケアを考えることが大切です。

「潤う」という感覚は、水分量だけでは説明できないのかもしれません

「潤うと感じること」と「腟内の水分量が増えること」は、必ずしも同じではありません。

例えば、乾燥について相談される方のお悩みには、次のような感覚が含まれています。

  • 粘膜が突っ張るように感じる
  • 擦れると痛い
  • 刺激を受けるとヒリヒリする
  • 性交時に伸びにくさや痛みを感じる

そのため私は、水分だけでなく、粘膜の柔らかさや伸びやすさ、摩擦への感じ方、炎症や刺激の程度なども、「潤い」の感覚に関わるのではないかと考えています。

治療を評価する際にも、水分量だけに注目するのではなく、症状と粘膜の状態を合わせて確認することが大切です。

腟上皮が変わると、腟内細菌叢も変わるのでしょうか

ここまで考えると、さらに興味深い疑問が生まれます。

モナリザタッチによって腟上皮の状態が変化すれば、腟内細菌叢にも影響するのでしょうか。

腟上皮、グリコーゲン、Lactobacillus(ラクトバチルス)、乳酸、pHは互いに関係しています。

そのため、腟壁のリモデリングに伴う局所環境の変化が、pHや細菌叢にどう関わるのかも、関心のあるテーマです。

ただし、上皮に変化がみられたことから、ラクトバチルスが増える、あるいは細菌叢の変化によって乾燥が改善すると、そのまま結論づけることはできません。

レーザー照射後の細菌叢の変化と、その変化が症状にどう関わるかは、分けて検討する必要があります。

この背景となる、乳酸菌・女性ホルモン・腟上皮と乾燥感の関係については、連載の2本目で解説しています。

腟の「潤い」を、組織全体から考える

この連載では、腟の分泌腺、乳酸菌と乾燥感、モナリザタッチと腟粘膜という3つの視点から、腟の潤いについて考えてきました。

最初は、「腟には分泌腺がない」という意外な事実から始まりました。

そこから見えてきたのは、血流、腟上皮、コラーゲン、エストロゲン、細菌叢、pH、炎症などが互いに関わりながら、腟のコンディションをつくっているということです。

だからこそ私は、GSMの診療でも、乾燥への対処とともに、「なぜ、この方は乾燥や不快感を感じているのか」を考えることが大切だと思っています。

モナリザタッチについても、「分泌液を増やす治療」と捉えるのではなく、腟壁の組織環境への働きかけと、その後の症状の変化を丁寧に見ていきたいと考えています。

患者さんの症状と診察所見から学び続けたいと思います

当院では、必要な治療とともに、日常の保湿や摩擦への配慮、EBINEフローラなどのホームケアについても、ご相談をお受けしています。

ただし、モナリザタッチとEBINEフローラを組み合わせることで、単独の治療より効果が高まると結論づけることはできません。乳酸菌サプリメントは、必要な診察や治療の代わりになるものでもありません。

私が大切にしたいのは、患者さんが感じる変化を伺うとともに、診察所見や、必要に応じた検査結果を合わせて判断することです。

「どのような変化があったのか」「ほかの治療やケアも関係しているのか」「どのような患者さんに、どの対応が合うのか」。

こうした点を、一つひとつ考えていきたいと思っています。

医学は、論文から学ぶことももちろん大切ですが、目の前の患者さんから学ぶことも同じくらい大切です。

研究の知見と臨床経験の両方を大切にしながら、より安全で、患者さんのお役に立てるGSMの診療につなげていきたいと思います。

モナリザタッチを検討されている方へ

腟の乾燥やヒリヒリ感、性交痛には、GSM以外の原因が関わることもあります。当院では、症状の場所や診察所見を確認し、治療の適応を判断します。

モナリザタッチの施術には、対面での診察が必要です。出血、強い痛み、しこり、発熱、急な悪化がある場合も、来院してご相談ください。

治療回数と費用

モナリザタッチは、保険適用外の自費診療です。以下の金額はすべて税込です。

治療回数の目安

初期は月1回、計3回程度

状態により異なります。

施術費用

1回 55,000円

単回料金で3回受ける場合の施術費用は、合計165,000円です。診察料などは別途必要です。

初診料 6,600円
再診料 3,300円
表面麻酔 3,300円
シェービング 3,300円

診察料・麻酔料などの追加費用は、実施内容によって異なります。施術を行わない場合でも、専門診察・説明料が発生します。

セットプランや追加費用の詳細は、治療案内ページおよび診察時の説明をご確認ください。

主なリスク・副作用と効果について

主なリスク・副作用

痛み、刺激感、少量の出血などがあります。

熱傷、感染、瘢痕、痛みの持続・悪化などにも注意が必要です。

効果の個人差

変化の程度や持続期間には個人差があり、症状が十分に改善しない場合もあります。

治療内容を詳しく知りたい方へ

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参考文献

2026年9月開催 無料WEBセミナーのご案内

2026年9月開催 無料WEBセミナー 腟が狭い気がする・挿入できないのはなぜ? 痛み・乾燥・骨盤底筋から考える無理に広げない治療を医師が解説
院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。

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