萎縮性腟炎とは?症状・自然に治るのか・放置リスク・治療法を婦人科医が解説。
更新日:2026.06.23
閉経後に、歩くと下着が擦れたり違和感があったり、下着が食い込んで痛くなるということはありませんか?
萎縮性腟炎(老人性腟炎)という言葉は、聞きなれない言葉だと思いますが、
- 子宮がん検診の結果のコメント欄に書いてある
- 婦人科がん検診の受診時に、陰部が痛くて検査が受けられず、萎縮性腟炎と言われた
- 外陰部の違和感やピンクのおりものなどで婦人科を受診したときに医師に診断された
このような方が多いようです。
目次
萎縮性腟炎とは?
主に更年期以降の女性ホルモン低下により、腟や外陰部の粘膜が薄くなり、乾燥・ヒリヒリ感・かゆみ・性交痛・出血・頻尿などが起こりやすくなる状態です。
近年では、腟だけでなく外陰部や尿道・膀胱まわりの不調まで含めて「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」という考え方で捉えられることもあります。
「年齢のせいだから仕方ない」と我慢される方も少なくありませんが、保湿ケア、局所ホルモン療法、HRT、腟レーザー、ホームケアなど、症状や背景に合わせた治療・ケアの選択肢があります。
乾燥やヒリヒリが続く、性交痛がある、出血を伴う、排尿時の違和感や頻尿がある場合は、自己判断せず婦人科で相談することが大切です。
ただし、デリケートゾーンの乾燥やヒリヒリ、出血、かゆみ、おりものの変化は、萎縮性腟炎だけでなく、感染症や皮膚トラブル、婦人科疾患が関係していることもあります。
まず知っておきたいこと
萎縮性腟炎について、最初に押さえておきたいポイントは以下です。
更年期・閉経後に多くみられます。
女性ホルモン、特にエストロゲンの低下が関係します。
乾燥、ヒリヒリ、かゆみ、性交痛、出血、おりものの変化、頻尿などが起こることがあります。
閉経後のホルモン低下が背景にある場合、自然に元の状態へ戻ることは期待しにくいと考えられます。
症状が続く場合や、出血・強い痛みがある場合は、婦人科で原因を確認しましょう。
保湿や摩擦を減らすケアで楽になることはありますが、治療の代わりにはなりません。
出血、強い痛み、性交痛、かゆみ、おりものの変化、尿症状が続く場合は、婦人科への相談をおすすめします。
更年期以降に多くみられる萎縮性腟炎
萎縮性腟炎は、更年期から閉経後にかけて多くみられる症状です。
耳慣れない言葉かもしれませんが、閉経が近づく時期や閉経後に、外陰部や腟の皮膚が薄くなり、乾燥・違和感・ヒリヒリ感・性交痛・出血などの症状が出ることがあります。
当院でも、萎縮性腟炎やGSMに関連する乾燥・ヒリヒリ・性交痛・尿トラブルなどのご相談を多くいただいています。
また、最近では20代や30代の方でも、ホルモンバランスの変化、低用量ピルの影響、産後・授乳中、薬剤の影響などにより、腟の乾燥や性交痛、内診時の痛みが起こる場合があります。
この記事でわかること
この記事では、以下について解説します。
- 萎縮性腟炎とは何か
- 老人性腟炎・GSMとの関係
- 萎縮性腟炎の主な症状
- 自然に治るのか、いつまで続くのか
- 放置するとどうなるのか
- 婦人科で相談した方がよい症状
- 萎縮性腟炎の原因
- セルフケアでできること、避けたいこと
- 婦人科での検査・診断
- 治療法とホームケア
- よくある質問
萎縮性腟炎とGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)
萎縮性腟炎は、
主に女性ホルモンの低下によって腟粘膜が薄くなり、乾燥・ヒリヒリ感・かゆみ・性交痛などが起こる状態を指します。
一方でGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は、
腟だけでなく、外陰部、尿道、膀胱まわりの不調まで含めて考える概念です。
たとえば、次のような症状が重なる場合は、
萎縮性腟炎だけでなくGSMとして総合的に考えることがあります。
・腟や外陰部の乾燥
・ヒリヒリ感、かゆみ
・性交痛
・排尿時の違和感
・頻尿
・尿漏れ
・繰り返す膀胱炎のような症状
つまり、萎縮性腟炎はGSMの一部として考えられることがあり、症状が腟だけでなく尿トラブルや性交痛まで広がっている場合は、GSMの視点で相談することが大切です。
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更年期以降の乾燥・ヒリヒリ・性交痛・頻尿でお悩みの方へ
腟や外陰部の乾燥、ヒリヒリ感、性交時の痛み、頻尿・軽い尿もれなどは、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)として総合的に考えることがあります。
当院では、症状の原因を確認したうえで、ホームケア、局所ホルモン療法、モナリザタッチ、エムセラなどを組み合わせた治療をご提案しています。
※症状が軽い段階でもご相談いただけます。必要に応じてオンライン相談も可能です。
症状別に確認したい方へ
乾燥・ヒリヒリ・性交痛・尿トラブルのほか、おりものの変化、におい、かゆみ、性交後からの症状などがある場合は、萎縮性腟炎以外の原因が関係することもあります。ご自身の症状に近いページもあわせてご確認ください。
※本文中にも、それぞれの症状に合わせて関連ページをご案内します。
萎縮性腟炎の症状
萎縮性腟炎では、腟や外陰部の乾燥だけでなく、ヒリヒリ感、かゆみ、性交痛、出血、おりものの変化、尿トラブルなどが起こることがあります。まずは、主な症状と注意したいポイントを確認しましょう。
症状の全体像を簡単に整理すると、以下のようになります。
| 症状 | 起こりやすいこと | 注意したいポイント |
|---|---|---|
| 乾燥 | 腟や外陰部のうるおいが減り、摩擦を感じやすくなります。 | ヒリヒリ感、性交痛、出血、尿症状を伴う場合はGSMとして考えることがあります。 |
| ヒリヒリ・しみる | 下着、ナプキン、排尿、洗浄剤などの刺激で痛みを感じることがあります。 | 腟炎、外陰炎、かぶれ、皮膚トラブルとの区別が必要です。 |
| かゆみ | 乾燥や炎症、感染、かぶれなどにより、かゆみが出ることがあります。 | 強いかゆみ、繰り返すかゆみ、おりものやにおいの変化を伴う場合は相談しましょう。 |
| 性交痛 | 腟のうるおいや弾力が低下し、性交時に痛みを感じやすくなります。 | 痛みが続く場合は、性交痛外来で原因を確認することもできます。 |
| 出血 | 粘膜が薄くなり、摩擦や内診、性交などの刺激で少量出血することがあります。 | 閉経後の出血は、少量でも婦人科で確認しましょう。 |
| おりものの変化 | 量、色、においが変わることがあります。 | 感染症や腟炎でも起こるため、かゆみ・痛み・においを伴う場合は検査が必要です。 |
| 頻尿・尿もれ | GSMとして尿道や膀胱まわりの変化を伴うことがあります。 | 過活動膀胱、膀胱炎、骨盤底筋のゆるみとの区別が必要です。 |
以下では、それぞれの症状について詳しく解説します。
こんな症状があれば要注意【萎縮性腟炎セルフチェック】
萎縮性腟炎は、腟の乾燥やヒリヒリ感だけでなく、外陰部、性交時の痛み、出血、おりものの変化、尿トラブルなど、複数の症状として現れることがあります。
以下では、症状ごとに起こりやすい変化と、注意したいポイントを整理します。
1.外陰部や腟の乾燥感
デリケートゾーンが乾燥し、ティッシュで拭いたときや、下着・ナプキンが擦れたときに痛みを感じることがあります。
外陰部の皮膚や粘膜が乾燥すると、赤み、ヒリヒリ感、かゆみ、痛みが出やすくなり、小さな傷やひび割れができることもあります。
軽い乾燥であれば、保湿や摩擦を減らすケアで楽になることもありますが、乾燥に加えて性交痛、出血、尿症状がある場合は、萎縮性腟炎だけでなくGSMとして総合的に考えることがあります。
2.かゆみやヒリヒリ感
じっとしていても気になるかゆみや、入浴後、排尿後、運動後、ナプキン使用後などにヒリヒリ感が強くなることがあります。
ただし、ヒリヒリ感やかゆみは萎縮性腟炎だけでなく、カンジダ腟炎、細菌性腟症、外陰炎、かぶれ、皮膚疾患などが関係することもあります。
症状が続く場合や、おりものの変化・においを伴う場合は、原因を確認することが大切です。
3.性交痛・内診時の痛み
腟のうるおいや弾力が低下すると、潤滑不足や摩擦によって性交時に痛みを感じやすくなります。
「以前は問題なかったのに、最近痛みを感じるようになった」「腟口が狭くなったように感じる」「タンポンや腟剤を入れにくい」「内診時に痛みを感じやすくなった」という変化がある場合もあります。
性交痛や内診時の痛みが続く場合は、萎縮性腟炎だけでなく、GSM、外陰部痛、感染症、骨盤底筋の緊張なども含めて確認することが大切です。
4.出血
萎縮性腟炎では、腟や外陰部の粘膜が薄くなり、摩擦や内診、性交などの刺激で少量出血することがあります。
ただし、閉経後の出血は、萎縮性腟炎だけでなく他の婦人科疾患が関係することもあります。
少量であっても、閉経後に出血がある場合は自己判断せず、婦人科で確認しましょう。
5.おりものの変化
萎縮性腟炎では、おりものの量や色、においが変化することがあります。
- おりものの量が減る
- 黄色っぽい、褐色っぽいおりものが出る
- 少量の血液が混じる
- においが気になる
- かゆみを伴う
おりものの変化は、感染症や他の婦人科疾患でも起こります。色やにおいが強い、かゆみが続く、出血を伴う場合は、婦人科で確認しましょう。
6.排尿時の痛み・頻尿・尿もれ
萎縮性腟炎やGSMでは、腟や外陰部だけでなく、尿道や膀胱まわりの組織にも変化が起こることがあります。
そのため、排尿時にしみる、トイレが近くなる、残尿感がある、尿もれが気になる、膀胱炎のような症状を繰り返すなどの尿トラブルを伴うことがあります。
- トイレが近くなる
- 夜間にトイレで起きる回数が増える
- 排尿時にしみる、ヒリヒリする
- 残尿感がある
- 尿もれが気になる
- 尿意を感じると我慢しにくい
- 膀胱炎のような症状を繰り返す
ただし、頻尿や尿もれは、過活動膀胱、膀胱炎、骨盤底筋のゆるみなどが関係している場合もあります。症状が続く場合は、萎縮性腟炎だけでなく、GSMや泌尿器系の原因も含めて確認することが大切です。
セルフチェックポイント
以下の質問に「はい」と答える項目が増えるほど、萎縮性腟炎の可能性が高まります。
- 閉経をしていますか?(または閉経の時期に近づいていますか?)
- デリケートゾーンの乾燥感を日常的に感じますか?
- 性交時に以前より痛みを感じるようになりましたか?
- おりものの量が明らかに減少していますか?
- かゆみやヒリヒリ感が続いていますか?
- トイレが近くなった、または排尿時に痛みを感じることがありますか?
- 下着との摩擦で不快感を感じることがありますか?
- デリケートゾーンのケアをしても症状が改善しませんか?
3つ以上当てはまる場合は、婦人科への受診をご検討ください。
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閉経後の乾燥・ヒリヒリ・性交時の痛みなど、デリケートゾーンの不調全体を整理したい方は、更年期のデリケートゾーンケアの記事もご覧ください。
婦人科で相談した方がよい症状
以下のような症状がある場合は、自己判断せず婦人科で相談しましょう。
受診の目安を整理すると、以下のようになります。
| 目安 | 症状 |
|---|---|
| 早めに受診した方がよい | 閉経後出血、性交後出血、強い痛み、急な悪化、できもの・しこり・ただれ |
| 相談をおすすめする | 乾燥・ヒリヒリ・かゆみが続く、性交痛がある、おりものの変化がある |
| 原因確認したい | 頻尿、尿もれ、排尿時の違和感、膀胱炎のような症状を繰り返す |
| まず相談でもよい | 症状が軽いが繰り返す、受診すべきか迷う、セルフケアで改善しない |
「こんなことで受診してよいのかな」と迷う方も多いですが、乾燥、ヒリヒリ、性交痛、尿症状は婦人科で相談できる症状です。
特に、閉経後の出血、強い痛み、症状の急な悪化がある場合は、早めに受診してください。
婦人科ではどのように確認する?検査・診断の流れ
婦人科では、症状の出方、閉経の有無、出血や性交痛、おりものの変化、排尿症状などを確認し、必要に応じて診察や検査を行います。
萎縮性腟炎が疑われる場合でも、感染症、外陰部の皮膚トラブル、子宮や腟の病気などが関係していないかを確認することが大切です。
症状によっては、視診、内診、分泌物検査、感染症検査、子宮や卵巣の確認などを行うことがあります。
内診に痛みや不安がある場合は、事前に医師へお伝えください。痛みや不安に配慮しながら、必要な確認を行います。
ヒリヒリ・乾燥が続くときに考えられる他の原因
陰部のヒリヒリ感や乾燥は、更年期や閉経後の萎縮性腟炎でよく見られる症状ですが、それだけが原因ではありません。
カンジダ腟炎や細菌性腟症などの感染症、下着やナプキンによるかぶれ、若い世代でもホルモンバランスの乱れによって起こることがあります。
萎縮性腟炎以外の原因や年代別の特徴については、こちらで詳しく解説しています。
萎縮性腟炎の原因

どうしてこのような病態になるのかといえば、やはり加齢性変化、女性ホルモン(エストロゲン分泌)の減少が原因です。
腟内の常在菌であるラクトバチルスが少なくなり、腟内環境の低下の結果、雑菌が腟内に住み着いてしまい、おりものが増えてしまう病態です。
・腟粘膜が薄くなり、弾力性が失われる
・腟内の水分量が減少し、乾燥状態になる
・腟内の自浄作用が低下し、弱酸性の環境が保てなくなる
・血流が減少し、組織が萎縮する
これらの変化によって腟粘膜が傷つきやすくなり、炎症を起こしやすい状態になります。
閉経後の女性の約50%が何らかの形でこの症状を経験するといわれています。
エストロゲンは腟だけでなく、尿道や膀胱の健康維持にも関わっているため、これらの機能にも影響が出ることがあります。
月経のある若い女性が萎縮性腟炎を主訴にご来院されることは非常にまれです。
閉経になると、月経があったころに比べると女性ホルモンであるエストロゲンが低下します。このことにより女性性器萎縮が生じます。
女性性器は一般的に生殖に必要な臓器であるため、生殖年齢が過ぎると自然に退化するようになっていると思われます。
しかしながら、女性性器である腟や外陰部は、機能性を維持しなければならない尿道や肛門に近い臓器であるため、可能であれば機能が維持されることが望ましいです。
腟炎や性交痛の原因にも
近年、閉経以降の人生が長いことから、この泌尿生殖器系の臓器の萎縮が頻尿の原因となったり、排泄物が接触しやすい場所であることから免疫力の低下により腟炎を繰り返すと生活しにくい状況になります。
また、性交痛の原因として、腟や外陰部がしぼんでしまったり、分泌物が減少することで痛みが生じたりすることもあります。
腟の嫌な臭い、または、腟の痛みで受診される患者様もいらっしゃいます。
関連記事
20代・30代で萎縮性腟炎になる場合も
萎縮性腟炎は更年期以降にみられることが多い症状ですが、長期低用量ピルを内服している20〜30歳代で起こることもあります。
以下のような状況にある方は注意が必要です。
長期低用量ピル服用者
低用量ピルに含まれるプロゲステロンの影響で、腟の潤いが低下することがあります。
産後・授乳中の女性
出産後や授乳中はエストロゲンレベルが低下し、一時的に腟の乾燥症状が現れることがあります。
早発閉経の方
40歳未満で閉経症状が現れる早発閉経の場合があります。
抗がん剤治療中・治療後の方
特に婦人科系がんや乳がんの治療中や治療後は、低エストロゲンのため、強い症状が出現する場合があります。
抗うつ薬などの薬剤服用中の方
一部の薬剤は腟の乾燥を引き起こすことがあります。
若い世代も注意!
若い世代では疼痛や違和感の理由がよくわからず、誰に相談していいかもわからないため、受診が遅れがちです。
しかし、以下のような兆候があれば、年齢に関わらず婦人科を受診しましょう。
- 性交痛が続く、会陰部が切れる
- 腟内の乾燥感や不快感が長期間(2か月以上)続く
- 日常生活に支障をきたすほどのかゆみや痛みがある
若年層の腟萎縮は、原因に応じた治療やケアで改善が期待できる場合があります。早めに相談することが大切です。
萎縮性腟炎は自然に治る?放置するリスク
閉経後の女性ホルモン低下が背景にある萎縮性腟炎では、自然に元の状態へ戻ることは期待しにくいと考えられます。
萎縮性腟炎は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少に伴って、腟や外陰部のうるおい・弾力・血流が低下しやすくなることで起こります。そのため、症状が続く場合は、保湿ケアや生活習慣の見直しだけでなく、婦人科で原因を確認し、必要に応じて治療やケアを検討することが大切です。
ただし、若年層(20代・30代)で発症した場合や、薬剤の副作用、授乳期などによる一時的な症状の場合は、原因が解消されれば自然に改善することもあります。
放置するとどうなる?
1.症状の慢性化・悪化
違和感やかゆみ、痛みがさらに強くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。
2.性生活への影響
痛みにより性生活を避けるようになり、パートナーとの関係にも影響が出ることもあります。
3.排尿障害のリスク
頻尿、排尿時痛、尿失禁などの尿路トラブルが増加する可能性があります。
4.感染症リスクの上昇
腟内環境の変化により、尿路感染症や腟感染症にかかりやすくなることがあります。
5.腟の構造的変化
長期間放置すると、腟の狭窄や癒着が進行することもあります。
適切な治療を受けることで、これらの問題を予防し、QOL(生活の質)を維持することができます。「年だから仕方ない」と諦めず、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。
萎縮性腟炎の治療期間について|いつまで続くの?
「萎縮性腟炎はいつまで続くのだろう」「治療はいつまで続ける必要があるの?」というご質問は多くの患者さんから寄せられます。ここでは、萎縮性腟炎の経過と治療期間について詳しく解説します。
治療期間の目安
治療期間は症状の程度や治療法、個人差によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
症状改善までの期間
・腟内投与のエストロゲン療法
有効な場合には、使用開始から2〜4週間程度で症状の改善が実感できます。
・保湿ジェルなど
軽症であれば保湿剤を1日に数回、継続的に使用することにより1〜2か月で徐々に症状が和らぐことがあります。
治療継続の期間
・中長期的な維持療法
症状が改善した後も、多くの場合、維持療法として治療を継続します。
例えば、腟内投与のエストロゲン療法は最初は毎日使用し、症状が改善したら週2〜3回に減らすなど、頻度を調整することが可能です。
・治療期間の目安
症状が落ち着いた後も、再発予防や状態維持のために、保湿ケアや治療を無理のない範囲で継続することがあります。治療の期間や頻度は、症状や治療法によって異なるため、医師と相談しながら調整します。
再発は?治療を中断するとどうなる?
萎縮性腟炎の治療を中断すると、多くの場合、数週間から数か月で症状が再発することがあります。特に腟内投与のエストロゲン療法を中止した場合は、再び腟粘膜が薄くなり、乾燥やかゆみなどの症状が戻ってくることが多いです。
萎縮性腟炎の治療方法
萎縮性腟炎の治療は、症状の程度、年齢、閉経の有無、性交痛や排尿症状の有無、感染の有無などによって異なります。
軽い乾燥や摩擦による違和感であれば、保湿ケアや生活習慣の見直しで症状が和らぐこともあります。
一方で、性交痛、出血、強いヒリヒリ感、頻尿や尿漏れなどを伴う場合は、萎縮性腟炎だけでなくGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の視点で治療を検討することがあります。
主な治療・ケアの選択肢は以下の通りです。
治療は、原因と症状に合わせて選びます。
乾燥や摩擦が中心の場合は保湿ケア、感染が疑われる場合は検査や薬による治療、萎縮や性交痛が強い場合は局所ホルモン療法やモナリザタッチなどを検討します。
| 治療・ケア | 主な目的 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 保湿ケア | 乾燥・摩擦の軽減 | 軽度の乾燥、ヒリヒリ、違和感がある場合 |
| 潤滑ゼリー | 性交時の摩擦軽減 | 性交時の痛み、濡れにくさがある場合 |
| 軟こうの塗布 | 炎症やかゆみの軽減 | 外陰部の赤み、かゆみ、炎症がある場合 |
| 腟内洗浄・抗生物質投与 | 感染や細菌性腟炎への対応 | おりものの変化、におい、感染が疑われる場合 |
| 局所ホルモン療法 | 腟粘膜の萎縮改善 | 乾燥・性交痛・萎縮が強い場合 |
| HRT(ホルモン補充療法) | 全身の更年期症状も含めた改善 | ほてり、発汗、不眠など更年期症状もある場合 |
| モナリザタッチ | 腟・外陰部の萎縮や乾燥に対する自費治療 | ホームケアや保険診療で改善しにくい場合 |
| EBINEジェル・ムース等 | 日常の保湿・清潔ケア | 乾燥・摩擦・違和感のセルフケアをしたい場合 |
| EBINE flora | 腟内環境のケアをサポート | におい・かゆみ・腟内環境が気になる場合 |
症状や既往歴によって適した治療は異なります。
出血、強い痛み、においの変化、感染が疑われる症状がある場合は、セルフケアだけで判断せず、医師の診察を受けましょう。
保湿ケア
腟保湿ジェル
ホルモンを含まない専用の保湿ジェルを使用します。乾燥や摩擦によるヒリヒリ感、違和感がある場合に、日常的なケアとして取り入れやすい方法です。
潤滑剤
性交時の痛みを軽減するために、水溶性の潤滑剤を使用することがあります。性交痛がある場合は、摩擦を減らすことも大切です。
使用方法
少量(小指の先程度)の保湿剤を清潔な指先につけ、外陰部や腟口周辺に優しく塗布します。
※就寝前に使用すると、一晩中保湿効果が持続できることもあります。
メリット
・市販品を使用することでも効果が期待できる。
・入手しやすく、日常的に続けやすい。
注意点
・腟内への使用については医師に相談してください。
・腟内感染症がある場合は使用を控え、医師の指示に従ってください。
・しみる、赤みが出る、症状が悪化する場合は使用を中止し、婦人科で相談しましょう。
軟こうの塗布
外来治療として行われることが多い治療のひとつに、軟こうの塗布があります。
かゆみや炎症が強い場合には、一時的に症状が和らぐことがありますが、長期連用には注意が必要です。
細菌性腟炎が合併している場合、感染の悪化を防ぐため、抗生物質の腟錠や軟膏で治療を行うことがあります。さらに、症状や状態によっては、ホルモン剤の腟錠が有効な場合もあります。
腟内洗浄
エストロゲンが低下することにより、腟内の常在菌であるラクトバチルスが減少して、細菌性腟炎を生じることがあります。まず、腟分泌細菌培養検査を施行し、腟内洗浄により細菌を除去します。
抗生物質投与
病原菌である細菌数を最小限に低下させ、原因菌に合った抗生物質を腟内に挿入します。
ご自身で挿入可能な方には、必要に応じて腟錠を処方します。
女性ホルモン投与(局所的・全身的)
局所的投与
萎縮性腟炎の原因は、女性ホルモンの低下です。腟の萎縮の強い方は腟内に挿入する女性ホルモンの製剤を処方します。
全身的投与
女性ホルモンの低下を全身的に補う必要がある場合、女性ホルモンの内服治療、塗り薬や貼り薬などの外用薬治療があります。どのタイプの製剤を選択しても、効き目はほぼ変わりません。乳がん検診、子宮がん検診、血栓症に関する検査をお勧めいたします。
上記治療方法は、一般的な治療として保険適用で行える場合があります。
ホームケアや保険診療で改善しにくい場合の選択肢
上記の治療を順に進め、保湿などのホームケアを行うことで、症状が軽快することもあります。
一方で、萎縮や乾燥が強く、保湿ケアや腟剤などで十分に改善しにくい場合には、腟レーザー治療であるモナリザタッチをご提案することがあります。
特に、性交痛、腟の乾燥、ヒリヒリ感、外陰部の違和感が続く場合は、GSMの治療選択肢の一つとして検討します。
外陰部や腟の萎縮している部位に炭酸ガスレーザーを照射し、血流や粘膜の状態、コラーゲン生成などに働きかけることを目的とした治療です。
自費診療で1回5万円(税別)の施術になります。症状や状態によって個人差がありますが、複数回の治療で症状の変化を実感される方もいます。
当院では、症状の程度やご希望、既往歴を確認したうえで、保険診療・ホームケア・自費治療を含めて無理のない方法をご提案しています。
自宅でできるセルフケア・ホームケア

萎縮性腟炎やGSMでは、外陰部・腟まわりの乾燥や摩擦を減らし、刺激を避けながら、日常的にやさしくケアすることが大切です。
セルフケアだけで萎縮性腟炎そのものを治療できるわけではありませんが、乾燥やヒリヒリ感、下着とのこすれによる違和感をやわらげる助けになることがあります。
外陰部・腟まわりの刺激を減らすケア
- デリケートゾーンを強くこすらない
- 刺激の強い洗浄剤や洗いすぎを避ける
- ウォッシュレットを使いすぎない
- 通気性のよい下着を選ぶ
- きつい下着や長時間のパンティライナー使用を避ける
- 乾燥や摩擦が気になる場合は、保湿ケアを取り入れる
特に、外陰部の違和感やにおいが気になって洗いすぎてしまう方は注意が必要です。洗いすぎは、乾燥や刺激を強める原因になることがあります。
洗浄後に乾燥やつっぱり感が気になる場合は、デリケートゾーン用の保湿ケアを取り入れることも検討しましょう。
生活習慣の見直し
萎縮性腟炎やGSMの症状には、女性ホルモンの低下だけでなく、血流、皮膚や粘膜の状態、生活習慣が関係することもあります。
ウォーキングや軽い運動は、血流を保つ助けになります。無理のない範囲で体を動かすことで、冷えやこわばりの対策にもつながります。
喫煙は血流や女性ホルモンの働きに影響することがあります。デリケートゾーンの乾燥や粘膜の状態が気になる方は、禁煙も大切な見直しポイントです。
皮膚や粘膜の健康を保つためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂ることが大切です。
大豆製品などに含まれる植物性エストロゲンに着目した食生活を取り入れる方もいます。ただし、食品だけで萎縮性腟炎を治療するものではありません。
Check point:セルフケアや生活習慣の見直しは、症状をやわらげる補助として役立つことがあります。ただし、出血、強い痛み、においの変化、かゆみ、性交痛、頻尿・尿もれなどが続く場合は、ホームケアだけで様子を見ず、婦人科で原因を確認しましょう。
症状・目的に合わせて選べるEBINEシリーズ
当院では、洗浄・保湿・腟内環境・外陰部の美容ケアまで、症状や目的に合わせて選べるEBINEシリーズをご案内しています。
ホームケアは治療の代わりではありませんが、乾燥や摩擦による不快感を減らし、毎日のデリケートゾーンケアを続けやすくするための選択肢です。
EBINEシリーズの商品一覧
洗浄・ムレ・におい
EBINEムース
こすらず洗える、弱酸性のやさしい泡ケア
腟内pHに近い弱酸性のデリケートゾーン専用ムースです。きめ細かな泡で摩擦や刺激を抑えながら、清潔を保てます。洗い流し・拭き取りのどちらにも対応しています。
- 泡でやさしく洗いたい方
- ムレ・におい・洗いすぎが気になる方
- 外出先や介護・産後の拭き取りケアにも
乾燥・摩擦・ヒリヒリ
EBINEジェル
乾燥・摩擦による違和感に、毎日の保湿ケア
3万人以上のデリケートゾーンのお悩みに寄り添う中で生まれた専用保湿ジェルです。乾燥、下着とのこすれ、うるおい不足による違和感に着目し、外陰部をやさしく保湿します。
- 乾燥や摩擦によるヒリヒリ感が気になる方
- 下着とのこすれによる違和感がある方
- 毎日の保湿ケアを始めたい方
腟内環境・おりもの・におい
EBINE flora
5種のラクトバチルスで、内側から乳酸菌ケア
生きている乳酸菌だけで作られた、女性のための乳酸菌サプリメントです。5種のラクトバチルスを配合し、腟内や子宮内の善玉菌バランスに着目しています。
- おりもの・におい・ムレが気になる方
- 腟内環境の乱れが気になる方
- 内側から乳酸菌ケアを取り入れたい方
外陰部の美容・年齢変化ケア
EBINEセラム
乾燥・ハリ不足・くすみに着目した美容セラム
幹細胞培養上清液2種類を配合した、デリケートゾーン専用の美容セラムです。乾燥、ハリ不足、くすみ、におい、肌荒れなど、年齢とともに変化しやすい外陰部の悩みに着目しています。
- 外陰部の乾燥・ハリ不足が気になる方
- くすみ・におい・肌荒れをケアしたい方
- デリケートゾーンも美容ケアとして整えたい方
当院で相談できる治療・ケア
当院では、4,200人以上の患者様に腟レーザー施術(モナリザタッチ)を行ってきました。症状や状態に応じて、治療選択肢の一つとしてご提案しています。
萎縮性腟炎に対して以下のような特徴ある診療を提供しています。
女性医師による診療
女性特有の悩みについて、同性の医師に相談できることで、より安心して症状や不安をお話しいただけます。
プライバシーに配慮した環境
デリケートな症状の相談や診察も、プライバシーを最大限に尊重した環境で行っています。
オーダーメイドの治療提案
患者さん一人ひとりの症状や生活スタイル、価値観に合わせた治療プランをご提案します。ホルモン療法を希望されない方には、非ホルモン療法の選択肢もご用意しています。
受診の流れ・費用について
初診時には問診と診察を行い、必要に応じて検査を実施します。診察料は保険適用で、処方される薬剤によって費用は異なります。詳しくはお問い合わせください。自費診療のオプションもあります。
萎縮性腟炎のよくある質問
萎縮性腟炎について、患者さまからよくいただく質問をまとめました。症状の経過、セルフケア、治療、受診の目安に分けて確認できます。
萎縮性腟炎は何歳くらいから起こりますか?
一般的には閉経後、50歳前後から多くみられます。ただし、個人差があり、早発閉経、卵巣摘出手術後、授乳中、薬剤の影響などでエストロゲンが低下している場合にも、乾燥や違和感が出ることがあります。
萎縮性腟炎は自然に治りますか?
閉経後の女性ホルモン低下が背景にある場合、自然に元の状態へ戻ることは期待しにくいと考えられます。ただし、授乳中や薬剤の影響など、一時的な原因による乾燥は、原因が解消されることで改善する場合もあります。
萎縮性腟炎を放置するとどうなりますか?
乾燥、ヒリヒリ感、性交痛、出血、頻尿などが長引くことがあります。また、感染症や他の婦人科疾患と症状が似ている場合もあるため、症状が続く場合は自己判断せず、婦人科で原因を確認しましょう。
治療はどのくらいの期間続けるのですか?
症状の程度や治療法によって異なります。症状が落ち着いた後も、再発予防や状態維持のために、保湿ケアや治療を無理のない範囲で継続することがあります。期間や頻度は医師と相談しながら調整します。
市販薬で治療できますか?
一時的な症状緩和には、市販のデリケートゾーン用保湿剤が役立つこともあります。ただし、萎縮性腟炎そのものの治療が必要な場合や、出血、強い痛み、においの変化、かゆみが続く場合には、医療機関での確認が必要です。
市販の保湿剤だけで様子を見てもよいですか?
軽い乾燥や摩擦による違和感であれば、保湿ケアで症状が和らぐこともあります。ただし、出血、強い痛み、においの変化、かゆみが続く場合、性交痛や排尿症状がある場合は、婦人科で相談しましょう。
ワセリンは使えますか?
ワセリンは、外陰部の皮膚を一時的に保護する目的で使われることがあります。ただし、萎縮性腟炎そのものを治療するものではありません。腟内への使用や、しみる・悪化する場合には注意が必要です。
ヨーグルトや乳酸菌で治りますか?
食生活の一部としてヨーグルトや乳酸菌を取り入れること自体は否定されません。ただし、萎縮性腟炎の治療代わりにはなりません。症状が続く場合は、婦人科で原因を確認しましょう。
モナリザタッチは萎縮性腟炎に使えますか?
腟や外陰部の萎縮、乾燥、性交痛などが強く、ホームケアや保険診療だけでは改善しにくい場合に、治療選択肢の一つとして検討することがあります。適応は症状や既往歴によって異なるため、診察時にご相談ください。
エストロゲン療法は乳がんのリスクを高めますか?
局所的なエストロゲン療法は、全身への影響が比較的少ない治療として検討されることがあります。ただし、乳がんの既往がある方、ホルモン療法に不安がある方は、必ず医師と十分に相談してください。
萎縮性腟炎は何科に行けばよいですか?
婦人科で相談できます。乾燥、ヒリヒリ感、性交痛、出血、かゆみ、おりものの変化、頻尿や尿もれなどがある場合は、萎縮性腟炎やGSM、感染症などを含めて確認します。
性交痛があるのですが、萎縮性腟炎が原因でしょうか?
閉経後の性交痛は、萎縮性腟炎が関係していることがあります。ただし、感染症、皮膚トラブル、骨盤内疾患、骨盤底筋の緊張など、他の原因が関係することもあります。痛みが続く場合は、婦人科で原因を確認しましょう。
萎縮性腟炎とGSMは違いますか?
萎縮性腟炎は、主に腟粘膜の萎縮や炎症に注目した呼び方です。一方、GSMは腟だけでなく、外陰部、尿道、膀胱まわりの症状まで含めて考える概念です。性交痛や頻尿、尿もれを伴う場合は、GSMとして総合的に考えることがあります。
まとめ
萎縮性腟炎はわかりにくい病態ではありますが、生活に支障をきたす場合、ためらわずに受診をお勧めいたします。
萎縮性腟炎は閉経後の女性に多く見られる症状ですが、「年齢のせいだから仕方ない」と諦める必要はありません。
症状や背景に合った治療やケアにより、つらさの軽減が期待できる場合があります。デリケートゾーンの不快感やかゆみ、痛みは我慢せず、早めに専門医に相談することをおすすめします。
当院では、一人ひとりの悩みに寄り添い、快適な毎日を取り戻すためのサポートをいたします。
女性の健康は、人生の質に大きく関わります。ぜひ、お気軽にご相談ください。
診療のご案内
ちょっと言いにくいお悩みでも、婦人科で相談していただけます。
出血や強い痛みがある方は来院での診察を、まず相談したい方はオンライン診療をご検討ください。乾燥・性交痛・尿症状が重なる場合は、GSM治療や性交痛外来もご確認いただけます。
※土日祝日も診療しています。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



