【更年期や閉経後の性交痛】濡れない原因、対処法や治療法など性交痛の悩みを女医が丁寧に解説。
更新日:2024.05.09
「年齢を重ねるにつれ、性行時の痛みが増してきた」
「うまく濡れない、アイ液(腟分泌液)が出ない」
そのようにお悩みの女性は、とても多いです。
どこで相談できるかわからず、ただ我慢しているという方に、よく出会います。
とくに更年期になると、性交痛に関するお悩みは目立ってきます。
性交痛があると、痛みへの不安からさらに緊張して痛みが増してしまうといった、悪循環が生まれてしまうかもしれません。性交痛を我慢せず、早いうちに対処しましょう。
今回は、更年期〜閉経後の性交痛に関して、解説していきます。
なぜ更年期に性交痛が?
更年期にさしかかると、なぜ性交痛が出てくるのか、まずは原因をご紹介します。
エストロゲン減少が主な要因
性交痛は年齢を問わずに生じるお悩みではありますが、更年期(40代ごろ)になって初めてという場合には、腟萎縮と、腟萎縮に伴って腟分泌液の量が減ったことが主な原因として考えられます。
更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減り始めることで、腟やデリケートゾーンにさまざまな変化が訪れます。
たとえば、エストロゲンにはコラーゲンの合成を促す働きがあるため、更年期にはお肌だけでなく腟のハリの減少・乾燥を感じることが多いです。
腟分泌液の量の変化も
また、腟分泌液の量も減ってきます。
これにより、
「アイ液(腟分泌液)が出ない」「濡れにくい、乾燥でヒリヒリする」
という状態となります。
乾燥していると少しの摩擦でも傷ついてしまい、性交時に出血してしまうとお悩みの方も多いです。
萎縮性膣炎の症状も
さらに、腟内の細菌バランスが崩れることで、萎縮性腟炎(老人性腟炎)を繰り返してしまうという方も少なくありません。更年期に伴う腟の変化は、性交痛だけでなく、さまざまなお悩みにつながるのです。
女性の性器は、生殖に必要な臓器であるため、閉経が近づくと自然と退化するようになっているのだろうと思います。
自然な変化であるといえます。ですが、性行為を継続することにより皮膚への刺激が加わり、腟壁の収縮弛緩が繰り返され、腟壁の血流を保持することにつながります。
パートナーとのスキンシップとして性行為を楽しむためには、腟の状態を保つことが重要です。デリケートゾーンのケアをしてあげるのがよいでしょう。
不妊治療に伴う場合も
不妊治療で排卵を促す治療をした、卵子凍結・卵子提供をしたという場合にも、治療後に腟の乾燥に伴う性交痛を生じる場合があるようです。
こうした不妊治療では、大量のホルモンを投与するため、その後急激にホルモンが低下するという状況が生まれます。このホルモン分泌の大きな変動が、腟分泌液の減少に影響している可能性があります。
腟分泌液不足の対処法は?
当院では、女性にいつまでも明るく輝く人生を送ってほしいという思いから、デリケートゾーンケアにも力を入れています。更年期の腟乾燥・性交時痛にも、いくつかの治療を用意しておりますので、お気軽にご相談ください。
保湿剤の使用
デイリーケアとして、保湿ジェルを使うことをおすすめしています。
乾燥感は口渇感とよく似ている、不快な症状です。朝晩のお手入れにより、日常の違和感がなくなり、性交時の疼痛も和らぐことがあります。当クリニックの取り扱っているエビネセラム、エビネジェルもお勧めです。
潤滑ゼリーの使用
性交時、潤滑ゼリーを塗布するのも手軽な方法としておすすめです。
指先に潤滑ゼリーをつけて腟に塗るか、 男性がコンドームを着用したあとで、先端につけて使ってください。摩擦により生じる痛みを和らげることができます。ウォーターベース、シリコンベース、オイルベースなどさまざまな種類がありますので、好みに合わせて使ってください。大切なのは、腟分泌液の成分に類似した粘着度があることです。
ホルモンの局所投与
「エストリール膣錠」という女性ホルモンの錠剤を、腟内へ投与する方法です。
腟内に女性ホルモンを作用させ、乾燥や腟萎縮を改善する治療です。萎縮性腟炎の治療に保険適応で治療可能です。副作用に乳房のはりなどが感じる場合があります。
モナリザタッチ(腟レーザー)
腟にレーザーをあてることで、腟壁の潤いや弾力を回復させる治療です。
女性ホルモン投与をせずに治療ができるので、子宮がんや乳がん治療後の方も施術可能です。レーザー治療により、腟粘膜の代謝やコラーゲン線維生成が促され、数日から2週間程度で乾燥の改善、性交痛の緩和などを実感できると思います。月に一度、3か月継続的にレーザー治療を行うことにより症状の改善が期待できます。
更年期以降の性行為に関するQ&A
性行為に関する話というのは、ご友人同士でもしにくいかもしれませんね。
婦人科で相談できるということは、あまり知られていないように感じます。
今回は、更年期以降によくある性行為のお悩みについて、お答えしていきますので、参考にしてください。
Q. 更年期に性行為をするとどんな効果がありますか?
「高い頻度で性行為を行うことにより、更年期時期が遅くなる」というイギリスのロンドン大学の報告もあります。多くの報告はないのですが、可能性はあるかもしれませんね。
Q. いつまで避妊が必要ですか?
更年期で月経があまり生じなくなってきたとしても、妊娠のご希望がないのであれば、閉経まではきちんと避妊をする必要があります。
「もう月経もほとんどないから」「年だから」妊娠はしないだろうと、避妊を怠ってしまう方は少なくありません。ですが、実際、40代の方の中絶件数は多いです。閉経していない以上、予想外の妊娠の可能性はありますので、しっかりと避妊をしてください。確実な避妊の方法については、婦人科でもご相談を受けることが可能です。
Q. 閉経してから性欲が増したような気がします。なぜでしょうか?
閉経して女性ホルモンが減ることで、相対的に男性ホルモンが増えることが要因ではないかと言われています。
女性にも、男性ホルモンは分泌されています。男性ホルモンの分泌量は変わらなくても、女性ホルモンの分泌が減れば、バランスとしては男性ホルモンが強くなったような状態となります。この変化により、性欲が増すことがあるようです。
Q. 閉経後に、妊娠できる可能性はありますか?
閉経すると、一般的には妊娠することはできません。閉経というのは、自然の状態で1年以上月経が起こらなかった状態で、排卵も停止しています。ですから、自然に妊娠することもありません。
ただし、若い方の早発閉経の場合は、治療により妊娠できることもあります。
Q. ピルは50代でも服用できますか?
一般的に、低用量ピルは40歳くらいまでの服用が望ましいです。それ以降は、血栓症など副作用のリスクが高くなり、安全に服用できません。
40歳を超えたからといって、月経困難症が急に軽くなるわけではありませんので、「低用量ピルをやめたくない」とお考えになるのは理解できます。40歳以降は、月経困難症や子宮内膜症の治療で使用する黄体ホルモンのみが含まれた「ジエノゲスト」や、子宮内に装着するミレーナの使用は可能です。
Q. 性交痛は、病院に行くべきでしょうか?
更年期や閉経後の性交痛は、原因としてエストロゲンの減少だけでなく、子宮腫瘍や卵巣腫瘍の可能性があります。腟炎や性病の可能性も否定できません。婦人科での定期検査をお勧めします。こうした器質的疾患がない場合でも、適切な治療により改善が見込めますので、ぜひお気軽にご相談ください。
たとえば、疲労やストレス、性交痛のトラウマなども原因となっていることがあります。ご自身と労り、パートナーとよく話し合うことも必要です。また、皮膚の疾患(外陰部の萎縮、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、腟炎など)が影響を及ぼしている場合もあります。
いずれにせよ、しっかり原因を突き止めることで、性交痛の改善が期待できるので、婦人科受診をおすすめいたします。
まとめ
今回は、更年期〜閉経後の性交痛を軸に解説すると共に、性行為に関するお悩みにお答えしました。
更年期ごろからは、エストロゲンの減少に伴って、腟やデリケートゾーンに多くの変化が訪れます。婦人科での適切な治療により改善が見込めますので、お気軽にご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。