【症状からチェック】女性の性病症状と間違いやすい病気を女医が丁寧に解説!
更新日:2025.01.23
性感染症(STD)/性病は、症状が現れるまでに潜伏期間を経ることが多いため、早期の発見と適切な対応が重要です。感染から症状が現れるまでの期間や症状が現れた際の対処法を理解しておくことで、早期の治療と予防が可能となります。
本記事では、症状ごとに考えられる性感染症とそのセルフチェックのポイント、注意点を解説し、潜伏期間に関する情報も加えています。
症状からチェックする女性の性感染症(性病)
症状1.排尿時の痛みや違和感
▼考えられる性感染症
・性器クラミジア感染症
・淋菌感染症
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症
・性器ヘルペス
▼症状のセルフチェックポイント
・排尿時に刺すような痛みを感じる。
・頻尿や残尿感がある。
・性行為後に症状が悪化した。
・排尿後も違和感がある。
▼注意点
これらの症状は泌尿器系の感染症と共通する場合もあるため、必ず医療機関で診断を受けましょう。
▼潜伏期間
・性器クラミジア感染症: 1週間から3週間
・淋菌感染症: 数日から1週間
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症: 1〜5週間程度
・性器ヘルペス:5~10日程度
▼どのタイミングで性行為を中止すべきか?
症状が現れた場合はすぐに性行為を中止し、検査を受けましょう。
症状2.陰部から膿が出る
▼考えられる性感染症
・性器クラミジア感染症
・淋菌感染症
▼症状のセルフチェックポイント
・下着に黄緑色や乳白色の分泌物がつく。
・膿が臭う場合がある。
・性行為後から分泌物が増えた。
・性行為後からか腹痛が出現した。
▼注意点
・膿が出る場合、他の性感染症との併発が疑われるため、早急な検査をおすすめします。
▼潜伏期間
・性器クラミジア感染症: 1週間から3週間
・淋菌感染症: 数日から1週間
症状3.陰部の周辺が臭う
▼考えられる性感染症
・膣トリコモナス症
・腟カンジダ症
・非特異性膣炎
▼症状のセルフチェックポイント
・おりものが魚の腐ったような臭いを感じる。
・外陰部を清潔にしても臭いが取れない。
・性行為後に臭いが強まる。
▼注意点
臭いは膣内の細菌バランスの乱れが原因の場合もあるため、早めに医師に相談しましょう。
▼潜伏期間
・膣トリコモナス症: 5〜14日間程度
・腟カンジダ症:数日〜1週間程度
症状4.陰部周辺や膣口のまわりに水ぶくれやただれ、しこり
▼考えられる性感染症
・性器ヘルペス感染症
・梅毒
▼症状のセルフチェックポイント
・性器や口のまわりに水ぶくれが繰り返し現れる。
・痛みを伴う潰瘍やただれがある。
・水ぶくれが破裂して黄色いかさぶたになる。
・外陰部に硬いしこりができる。
▼注意点
水ぶくれは感染症特有の症状の可能性が高く、見つけたら放置せず早急に受診してください。
▼潜伏期間
・性器ヘルペス感染症:数日〜1週間程度
・梅毒:3〜6週間程度
症状5.陰部周辺の痛みやかゆみ
▼考えられる性感染症
・性器ヘルペス感染症
・腟カンジダ症
・尖圭コンジローマ
▼症状のセルフチェックポイント
・外陰部がむずむずするようなかゆみがある。
・痛みやかゆみが夜間や性交時に悪化する。
・皮膚が赤くなり、腫れている部分がある。
・いぼが触知できる
・痛い場所が限定されている
▼注意点
かゆみの原因は複数考えられるため、適切な診断が必要です。診断により治療が異なります。
▼潜伏期間
・性器ヘルペス感染症: 数日〜1週間程度
・腟カンジダ症:数日〜1週間程度
・尖圭コンジローマ:3週間~8か月程度
症状6.陰部が腫れている
▼考えられる性感染症
・尖圭コンジローマ
・性器ヘルペス感染症
▼症状のセルフチェックポイント
・性器周辺に固いしこりやイボ状の隆起がある。
・腫れが痛みやかゆみを伴う。
・腫れが数日間引かない。
▼注意点
腫れがある場合、早期診断で治療の効果が向上します。
▼潜伏期間
・尖圭コンジローマ: 2週間〜数か月
・性器ヘルペス感染症:数日〜1週間程度
症状7.身体にブツブツ(皮疹・発疹)
▼考えられる性感染症
・梅毒
・HIV感染症
▼症状のセルフチェックポイント
・全身に細かい発疹が広がっている。
・発疹が非対称的で、特に手のひらや足の裏に現れる。
・発疹が痛みを伴わないが色が濃くなる。
・発疹が治まることもある。
▼注意点
発疹は病気が進行しているサインである場合が多く、早急な対応が必要です。
▼潜伏期間
・梅毒:3〜6週間程度
・HIV感染症: 感染後、数週間経過したところで発熱・頭痛など風邪のような症状を呈することがあります。その後、自覚症状の全くない期間が10年以上続くのが一般的です。
症状8.全身の斑点や円形のアザ
▼考えられる性感染症
・梅毒
▼症状のセルフチェックポイント
・円形の皮膚変色が現れる。
・アザが広がり、かゆみや痛みがない。
・数週間たっても消えない。
・皮疹が出たり、よくなったりする。
▼注意点
・梅毒が進行すると臓器障害を引き起こす可能性があるため、注意深く観察してください。
▼潜伏期間
・梅毒:3〜6週間程度
・梅毒皮疹:3か月程度から
症状9.急な発熱、微熱が続く
▼考えられる性感染症
・HIV感染症
・B型肝炎
・C型肝炎
▼症状のセルフチェックポイント
・インフルエンザ様の症状があるが原因がわからない。
・発熱が数日間続き、体力が著しく低下する。
・肝臓付近に鈍い痛みがある。
・倦怠感
▼注意点
発熱が続く場合、性感染症以外の原因も含めて早めに医師に相談してください。血液検査で診断できます。症状がほぼないことがあります。
▼潜伏期間
・HIV感染症: 感染後、数週間経過したところで発熱・頭痛など風邪のような症状を呈することがあります。その後、自覚症状の全くない期間が10年以上続くのが一般的です。
・B型肝炎:感染から1〜6か月程度
・C型肝炎:2〜14週間程度
症状10.喉の痛みや腫れ
▼考えられる性感染症
・咽頭クラミジア
・咽頭淋病
▼症状のセルフチェックポイント
・喉に違和感や腫れがあるが風邪ではない。
・唾を飲み込むときに痛みを感じる。
・喉の奥に赤みや膿が見える。
・喉の奥に膿が白く張り付いている。
▼注意点
喉の症状は性感染症の初期サインである場合もあるため、放置せず検査を受けましょう。内科では診断できないことがあります。
▼潜伏期間
・咽頭クラミジア:1〜3週間程度
・咽頭淋病: 数日〜1週間程度
症状11.性交痛
▼考えられる性感染症
・性器クラミジア感染症
・淋病
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症
・膣トリコモナス症
・性器ヘルペス
▼症状のセルフチェックポイント
・性交時に膣内や外陰部が痛む
・性交後におりものが増える。
・性交後におりものが臭う
・外陰部や下腹部に痛みが頻発して性生活に影響が出ている。
・排尿痛
▼注意点
性交痛は重大な性感染症のサインである場合が多いので、見過ごさず診察を受けましょう。
▼潜伏期間
・性器クラミジア感染症:1〜3週間程度
・淋病:淋菌感染症: 数日から1週間
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症: 1〜5週間程度
・膣トリコモナス症: 5〜14日間程度
・性器ヘルペス:数日〜1週間程度
症状12.下腹部痛
▼考えられる性感染症
・性器クラミジア感染症
・淋菌感染症
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症
▼症状のセルフチェックポイント
・下腹部に鈍い痛みを感じる。
・性行為後や月経周期に関連した痛みがある。
・腹部が張る感じがする。
▼注意点
下腹部痛は、性感染症による骨盤内炎症や感染の兆候である可能性があります。痛みが続く場合、早期に受診して診断を受けましょう。
▼潜伏期間
・性器クラミジア感染症:1〜3週間程度
・淋菌感染症: 数日から1週間
・マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症: 1〜5週間程度
症状が気になったら!
性感染症は早期に発見し、適切な治療を受けることで予後が大きく変わります。潜伏期間や発症後の適切な対応を知ることで、早期発見と早期治療をしましょう。
症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診し、自己判断せずに適切な治療を行うことが大切です。また、感染予防にはコンドームの使用や定期的な検査が効果的です。
性感染症(性病)の症状と間違いやすい病気
性感染症と間違いやすい似た症状を持つ病気にはいくつかあります。これらの症状は、性感染症の症状に似ているため、自己判断だけで対処するのは難しいことがあります。
以下にいくつか代表的な病気を挙げ、症状とその違いを解説します。
1.膀胱炎(尿路感染症)
▼類似する症状
・排尿時の痛みや違和感
・頻尿、残尿感
・排尿後の不快感や痛み
▼性病との違い
膀胱炎は尿路に細菌が感染して発症する病気です。
性行為に関連することが多いですが、排尿時の痛みや頻尿といった症状があるものの、膣や外陰部の異常は通常ありません。性感染症であれば、性器に異常(膿、かゆみなど)があることが多いです。混合感染の場合もあります。
2.膣カンジダ症(カンジダ膣炎)※性行為を原因としない場合
▼類似する症状
・性器周辺のかゆみや痛み
・性交痛
・白っぽいおりものの増加
▼性病との違い
カンジダという真菌(カビの一種)による感染症です。
性行為により感染し発症する場合もありますが、基本的には、自身の腟内環境の乱れによりカンジダが異常増殖することが原因となります。 カンジダは、時々腟内に存在するもので病原性は高くありませんが、何らかの原因で過剰に増えてしまうと腟炎を起こします。
症状は、かゆみや痛み、白いチーズ状の分泌物などですが、臭いは強くないことが特徴です。また、性行為後や生理後に症状が悪化することがあります。
3.尿道炎
▼類似する症状
・排尿時の痛みや違和感
・頻尿、残尿感
・性交痛
▼性病との違い
尿道炎は、膀胱炎と同様に細菌が尿道に感染して引き起こされます。
性感染症による尿道炎(例えばクラミジアや淋菌によるもの)もありますが、尿道炎自体が性感染症に限られるわけではありません。尿道のかゆみや腫れがある場合、性感染症が疑われることが多いです。
4.ヘルペス性口唇炎
▼類似する症状
・性器ヘルペスと似た水ぶくれや潰瘍が現れる
・かゆみや痛みを伴う
▼性病との違い
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)によって引き起こされるもので、唇や口周りに水ぶくれができます。
性器ヘルペスは、HSV-2によるもので、性器に症状が現れますが、ヘルペス性口唇炎と似た症状を示すことがあります。口唇ヘルペスは、口移しやキスなどで感染することが多いですが、性器ヘルペスは性行為を通じて感染することが主です。オーラルセックスで、性器ヘルペスも単純ヘルペスウイルス(HSV-1)によって引き起こされることがあります。
5.アレルギー反応(接触皮膚炎)
▼類似する症状
・性器周辺のかゆみや発疹
・赤みや腫れ
▼性病との違い
アレルギー反応は、アレルゲン(例えば、ラテックス製のコンドームや化粧品、洗剤など)に反応して発症します。症状は一時的で、原因物質との接触を避ければ改善します。性感染症ではなく、アレルギー反応の場合は感染症特有の症状(膿、異臭、発熱など)は現れません。
6.外陰部湿疹(外陰部皮膚炎)
▼類似する症状
・性器周辺のかゆみや発疹
・発赤、腫れ
▼性病との違い
湿疹はアレルギーや皮膚の刺激に反応して発症することが多いです。
性感染症のような膿や異臭、痛みなどは通常ありません。湿疹は外的要因(衣服やシャンプーなど)によって悪化することがありますが、性感染症の場合は性行為が原因であることが多いです。
7.細菌性腟炎(非特異性膣炎)
▼類似する症状
・性器のかゆみ
・異常なおりもの
・性交痛
▼性病との違い
腟炎は、細菌の不均衡や異常な膣内環境が原因で発症します。
性感染症による膣炎とは異なり、腟内の細菌バランスが乱れることが主な原因です。症状としては、臭いが強いおりものやかゆみ、膣内の不快感が現れることがありますが、感染症による膣炎ではないことも多いです。
8.痔
▼類似する症状
・性器周辺や肛門周囲のかゆみや痛み
・出血や異常な分泌物
▼性病との違い
痔は、肛門周辺に現れる病気で、かゆみや痛みを伴いますが、性感染症とは関係ありません。肛門に特有の症状が現れるため、性器に異常が現れない場合は痔の可能性が高いです。
性感染症(性病)と他の病気を見分けるためのポイント
性感染症(性病)と他の病気を見分けるためのポイントは、症状の特徴や発症経緯、併発している症状の有無などによって異なります。性感染症は性行為を通じて感染するため、性行為歴がある場合や、特定の症状が出た場合には、性感染症の可能性を考慮することが大切です。
自己判断せずに受診!不妊や流早産の原因にも。
「性感染症かもしれない」と感じられたときは、早めに婦人科を受診してください。放っておいても自然に治癒することはありません。ご自身の違和感を感じることがきっかけで、早期発見につながることが多いです。
また、放置していれば症状が進展し、治りにくくなったり、不妊や流早産の原因となる場合もあります。
性感染症(性病)の検査・診断・治療の流れ
性感染症の検査
性感染症を疑う場合、おりものの検査や、必要に応じて血液や尿、咽頭うがい液などの検査も実施し、原因を突き止める必要があります。
基本的にはご来院いただくのが望ましいですが、当院では、ご自身で検査キットに検体をとっていただき、オンラインで検査・治療をおこなうことも可能です。
性感染症(性病)の診断および治療
検査結果は即日確認することはできません。まずは、おりものの性状や問診等から疑わしい原因をある程度絞り込み、治療をおこないます。内服薬や注射薬、点滴、腟錠など、原因に合わせてご提案いたします。
その後、症状が改善しているかどうかを確認するために、再度ご来院ください。検査結果により、治療を変更する場合もあります。
さまざまな性感染症の特徴や治療については、こちらの記事で詳しく解説しております。
性感染症(性病)の予防にはコンドーム着用を
性感染症を予防するためには、性行為の際に精液に触れることなくコンドームを着用するしかありません。
性的なパートナーが複数おられる方は、症状がなくとも定期的な感染症検査をするのもよいでしょう。女性は、性感染症で無症状の場合も多いためです。無症状のまま体内で感染が広がらないように、小さな変化を見逃さないことや、定期的な検査が重要です。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。