女性の尖圭コンジローマの感染原因、(初期)症状、見分け方、治療から予防法まで女医が丁寧に解説。
更新日:2024.11.29
デリケートゾーンの周囲や肛門などに、小さなイボのようなものが生じたという方はいませんか?
そのイボは、尖圭(せんけい)コンジローマかもしれません。
多少の違和感だけで、あまり痛みやかゆみなど強い症状はないのですが、放置していると広がる厄介な病気です。今回は、尖圭コンジローマとは何か、その症状や治療法、予防策についてご紹介します。
尖圭(せんけい)コンジローマとは
まずは、尖圭コンジローマについて詳しく解説いたします。
尖圭コンジローマの原因と症状
尖圭コンジローマは、性行為によって感染するウイルス性の病気です。主にヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で、外陰部や肛門周辺にイボのようなできものが生じます。疲労や寝不足、服用している薬などの影響で免疫力が低下していると、感染しやすくなります。
初期症状
初期段階では小さな突起が数個できる程度ですが、放置すると大きくなり、数も増えていくことがあります。色は白っぽいものからピンク、茶色、黒までさまざまです。腟や会陰の内側、肛門部、男性であれば尿道の内側にも発生することがあります。
尖圭コンジローマは、あまり自覚症状はなく、外陰部や肛門周辺などに小さなイボや突起が生じるだけということも多いです。かゆみ、痛み、出血を伴うこともありますが、頻度は高くありません。
多くの場合、目視で尖圭コンジローマかどうかの判断ができます。 女性では、「腟前庭乳頭症」と見た目が似ています。ヘルペスの初期や、梅毒でもイボが出ることがあり、それぞれ対処法が違うため、診断をつけることが大切です。
性行為無しでも感染?
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尖圭コンジローマの特徴
詳細 | |
---|---|
色 |
白、ピンク、茶色、黒などさまざま |
できる部位 |
【女性】腟、会陰、肛門など |
見た目・性状 |
・イボの先端が尖っている ・表面がザラザラしている ・鶏のトサカのようなギザギザした形、 |
※【女性の診察治療の場合】皮膚科で対応してくれることもありますが、女性は産婦人科をおすすめします。会陰部や腟内など、確認しにくい部位までしっかり確認が可能です。
尖圭コンジローマの感染者数は増えている
厚生労働省の報告では、尖圭コンジローマの感染者数は年々増加傾向です。以下のグラフを参照ください。
・出典:国立感染症研究所ホームページ
・該当記事URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/condyloma-m/condyloma-idwrs/12088-condyloma-16jun.html
男女の報告数【図1】
男性の報告数【図2】
5歳毎の年齢階級別定点当たり報告数は、男性では2017年以降20代後半が最も多く、20代前半とともに増加傾向であった(図2)。
女性の報告数【図3】
女性の年齢階級別定点当たり報告数は、2012年以降20代前半が最も多かった(図3)。2012年以降、30代では減少していたが、定点当たり報告数としては多くないものの2019年以降10代後半から20代前半で増加してきていた。
臨床現場の見解
実際の数は確認できないのですが、臨床現場の感覚でも増加傾向にあるように思います。複数の性的パートナーがいる方、性産業に従事している方などは十分に注意が必要です。
尖圭コンジローマの感染経路や潜伏期間
尖圭コンジローマは主に性行為を通じて感染します。
腟、肛門、口腔、陰茎など、感染部位と直接的に接することが原因です。また、皮膚に傷があれば、そこからウイルスが入り込み感染することもあります。
腟への挿入を伴う場合だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスも感染のリスクがある行為です。肛門周囲の感染は、治療が難しい場合がありますので、注意が必要です。また、時々、感染経路のわからない患者さんもおります。
ウイルスに接してから実際にいぼが目で確認できるようになるまでは、2週間〜数か月の時間がかかり、すぐにはわかりません。感染した人と性行為をした場合、半分以上の高い確率で感染するといわれています。
尖圭コンジローマの治療と予防
尖圭コンジローマの治療法と、予防のためにできることをお伝えいたします。
尖圭コンジローマの治療
尖圭コンジローマの治療には、外用薬塗布とレーザーによる切除の2つの方法があります。
外用薬塗布
小さいものは、外用薬が有効です。
以前は、外用薬はありませんでしたが、近年外用薬が保険適応で処方することができるようになりました。免疫抑制剤の軟膏で1週間に3回使用する製剤です。患部に塗布後に6~10時間を目安に洗い流します。徐々にいぼが小さくなっていきます。ただし、正常な皮膚に薬剤が付着した場合、潰瘍化することがあり、患部に注意深く塗布することが重要です。粘膜には使用できません。
レーザー治療
大きな病変、多発病変、腟内や子宮口のコンジローマの場合には、外科的治療をおすすめします。外用薬でよくならない場合にも、レーザー治療がよいでしょう。当院では、年間150件ほどのレーザー治療を実施しております。
切除後、病理検査に提出して、病変の組織を確認させていただいております。
ご予約でなくとも、当日に局所麻酔をして切除することが可能です。医療用のレーザーで切除しますので、傷もきれいに治ります。
2週間後に、創部の確認と病理結果のお伝えのため、来院していただきます。
保険適用の治療です。
尖圭コンジローマ感染を予防するには
尖圭コンジローマの予防はとても難しいです。男性の陰茎・女性の会陰や腟だけに症状がある場合であれば、コンドームの着用である程度予防することはできます。
しかし、コンドームで覆われていない箇所にも尖圭コンジローマのイボがあると、全く接しないようにするのは難しいです。
予防のためには、「HPVワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)」、いわゆる子宮頸がんワクチンが有効です。
尖圭コンジローマを生じさせるのは、数あるHPVの中でも「HPV6型、11型」だとわかっています。(※子宮頸がんを引き起こすHPVとは別の型ですので、尖圭コンジローマから直ちにがんに変化するわけではありません。)
ワクチンの種類や、接種を受ける方の年齢によって回数が異なりますので、興味のある方はご相談ください。
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予防できる型 |
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4価ワクチン (ガーダシル) |
6、11、16、18型 |
9価ワクチン (シルガード) |
6、11、16、18、31、33、45、52、58型 |
尖圭コンジローマに関するQ&A
尖圭コンジローマに関して、よくあるご質問にお答えします。
Q. 再発することはありますか?
尖圭コンジローマはウイルスが原因で、完全に排除するのが難しく、再発も多いです。また、女性であれば腟内、男性であれば尿道の内側など、見えにくい場所に隠れており、感染を繰り返してしまうこともあります。女性は婦人科、男性は泌尿器科で、しっかりと症状の有無を確認することが大切です。
Q.女性のコンジローマは自然に治りますか?
自然に治癒する場合もありますが、年数がかかることもあります。また、悪性化してしまう可能性もあります。
半数以上の方は自然治癒せず、大きさや数が安定したままであるか、悪化していきます。
Q.尖圭コンジローマは性行為ができなくなりますか?
性行為によってパートナーにも感染が広がりますので、感染後、治療中は性行為を控えていただいています。
Q.尖圭コンジローマはキスでうつりますか?
オーラルセックスをした場合などには口の中に尖圭コンジローマの症状が出て、それによりキスで相手へ感染が広がる可能性はあります。
口内の症状は「口内炎」にも似ており、区別が難しいかもしれません。口の中のデキモノで痛みがない場合は、尖圭コンジローマの可能性も考えられます。
まとめ
今回は、デリケートゾーンにイボのようなデキモノを生じさせる「尖圭コンジローマ」という感染症について、解説しました。
ウイルスによる感染症で、放っておくとイボの数が増えたり、大きくなったりします。外用薬や、レーザーによる切除で治療が可能です。イボのようなものを見つけた場合は、病変が広がる前に早めにご来院ください。疑われた場合は、性交渉はお控えください。
また、女性の場合は腟内病変も見落とさないため、皮膚科ではなく産婦人科受診をおすすめいたします。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。