モナリザタッチが効かなかったと感じる理由|性交痛の原因と腟前庭部治療
更新日:2026.07.09
外来で時々、
「他院で、モナリザタッチを受けたけれど、効果がありませんでした。」
という患者さんがいらっしゃいます。
そのたびに私は、
「本当にモナリザタッチが効かなかったのだろうか。」
と考えます。
4,200件を超える施術を経験してきた中で感じるのは、「治療が効かない」のではなく、性交痛の原因が十分に理解されないまま治療が行われているケースが少なくないということです。
性交痛は、腟の乾燥だけで説明できるとは限りません。
痛みの部位、腟前庭部の状態、皮膚や粘膜の変化、ホルモン、神経、筋肉、緊張、炎症、腟内環境など、複数の要素が関係していることがあります。
性交痛の原因は、本当に「処女膜」でしょうか
性交痛で来院される患者さんの多くは、
「私は処女膜強靭症だと思います。」
とおっしゃいます。
しかし、診察してみると、私の診療経験上の印象では、本当に処女膜強靭症である方は多くありません。
むしろ、多くの方は腟前庭部、つまり腟の入り口周囲の痛みが原因となっていることがあります。性交を試みる時に、腟前庭部が引き攣れるように感じ、その部位に強い痛みを感じているように思います。
それにもかかわらず、処女膜切開術を受け、
「痛みは全く変わりませんでした。」
とおっしゃって受診される患者さんを、これまで数多く診てきました。
原因が違えば、治療法も違います。
そのため、性交痛の診療では、まずどこが痛いのか、何が痛みの背景にあるのかを確認することが何より重要です。
ダイレーターだけでは解決しないことがあります
もう一つ多いのが、
「腟口が狭いから広げましょう。」
とダイレーターを勧められた患者さんです。
もちろん、適応がある方には、ダイレーターが有用な選択肢になることがあります。
しかし、多くの性交痛患者さんには共通した特徴があります。
- 痛みが怖くて自分の外陰部に触れられない
- デリケートゾーンを十分に洗えない
- 鏡で見たことがない
- どこが痛いのか自分でも分からない
- マッサージなど到底できない
という状態です。
そのような方に、
「ここへダイレーターを入れてください。」
と言われても、
「どこに入れればいいのか分からない。」
というのが本音ではないでしょうか。
性交痛の診療では、器具を使う前に、まずご自身の身体への不安や恐怖感を少しずつ整理することも大切です。
まずは、自分の身体を知ることから始めます
私は治療の第一歩として、まず患者さんご自身に、
「自分の外陰部を知ること」
から始めていただいています。
- 優しく洗えるようになること
- 鏡で見てみること
- 痛い場所と痛くない場所を区別できるようになること
これだけでも、患者さんの身体への向き合い方が変わることがあります。
もし腟口が狭いと感じるのであれば、最初からダイレーターを使うのではなく、自分の指で少し触れてみることから始める方が安心できる場合も少なくありません。
大切なのは、無理に進めることではなく、痛みや不安の程度を確認しながら、その方に合った順番で進めることです。
私が大切にしているのは「腟前庭部」の治療です
モナリザタッチというと、
「腟の中にレーザーを当てる治療」
というイメージを持たれている方が少なくありません。
実際に、「モナリザタッチを受けました」とおっしゃる患者さんのお話を伺うと、腟内への照射のみで終わっていたというケースもあります。
しかし、性交痛の原因が腟前庭部にある場合には、それだけでは十分な変化を感じにくいことがあります。
私は診察で疼痛部位を確認しながら、外陰部や腟前庭部を丁寧にCO₂フラクショナルレーザーで照射することを大切にしています。
腟前庭部は、非常に複雑で繊細な組織です。
だからこそ、一人ひとりの痛みの部位を確認しながら、慎重に照射する必要があります。
1回で終わらず、組織を育てるイメージで
私は通常、約1か月ごとに3回の施術を一つの目安としてお勧めしています。
実際に診療していると、2回目、3回目になる頃には、
「組織が柔らかくなりましたね。」
「潤いが戻ってきましたね。」
と感じることが少なくありません。
患者さんご自身も、痛みや乾燥感の変化を実感されることがあります。
ただし、症状の変化や治療への反応には個人差があります。1回で大きく変化を感じる方もいれば、複数回の治療やホームケアを組み合わせながら、少しずつ状態を整えていく方もいます。
特に乾燥や摩擦による違和感が続きやすい方、治療後の状態をできるだけ良好に保ちたい方には、日常のデリケートゾーンケアも大切です。
- 刺激の少ない方法でやさしく洗うこと
- 乾燥や摩擦を防ぐために保湿を続けること
- 腟まわりの皮膚や粘膜を健やかに保つこと
- 腟内環境やラクトバチルスを意識したケアを取り入れること
デリケートゾーンのホームケアについて
当院では、診療やモナリザタッチなどの治療だけでなく、毎日のケアを見直すことも大切にしています。
その一つとして、女性のデリケートゾーンの悩みに向き合う中で開発してきた、ホームケアのEBINEシリーズをご案内しています。
治療だけではなく、「使うこと」もリハビリになります
痛みが改善してきたら、無理のない範囲で組織を少しずつ使っていくことも大切です。
性交を無理に行う必要はありません。
ただし、医師と相談しながら、ご自身のペースで外陰部や腟前庭部への恐怖感を減らし、触れること、洗うこと、確認すること、必要に応じて少しずつ挿入に慣れていくことが、回復につながる場合があります。
必要に応じて、外陰部の形状に配慮した器具を選択することも一つの方法です。
大切なのは、「痛みに耐えて頑張ること」ではありません。痛みの原因を確認し、適切な治療やケアを行いながら、安心できる範囲で少しずつ進めていくことです。
「効かない」のではなく、「原因に合った治療だったか」を考える
私は4,200件を超えるモナリザタッチの経験を通して感じることがあります。
「モナリザタッチが効かない」のではなく、「性交痛の原因に合った診断と治療が行われていたか」が非常に重要だということです。
性交痛は、一人ひとり原因が異なります。
だからこそ私は、処女膜だけを見るのではなく、腟前庭部、ホルモン、神経、筋肉、皮膚、マイクロバイオームなど、さまざまな要素を総合的に診察し、その方に合った治療をご提案したいと考えています。
性交痛は「我慢するもの」でも、「気のせい」でもありません。
正しい診断を受けることで、改善への道筋が見えてくることは少なくありません。
そのお手伝いができることが、私にとって何よりの喜びです。
※モナリザタッチは自由診療です。効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。症状や適応は、医師による診察のうえで判断します。出血、強い痛み、できもの、悪臭、発熱、強いかゆみなどがある場合は、自己判断せず婦人科でご相談ください。
痛みの原因が分からないまま治療を進めると、思うような変化を感じにくいことがあります。当院では、痛みの場所や背景を確認したうえで、性交痛外来、GSM治療、モナリザタッチ、ホームケア、オンライン診療などを必要に応じてご提案しています。
2026年7月開催 無料WEBセミナーのご案内
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



