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腟内フローラ・ラクトバチルス

生理前にデリケートゾーンがかゆい・におう原因|腟内フローラと月経周期の関係

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「生理前になると、なんとなくデリケートゾーンがかゆい」「においが気になる」「おりものが増える」「ヒリヒリする」「ニキビのようなできものができやすい」。このようなご相談を外来で受けることは少なくありません。

実際に診察していても、生理前になると普段は症状のない方が、一時的に外陰部の違和感や不快感を訴えることをよく経験します。

これは決して気のせいではありません。

女性の身体は月経周期に合わせて大きく変化しており、その変化は子宮や卵巣だけでなく、腟や外陰部、さらには皮膚や免疫機能にまで影響を及ぼしています。

近年では、腟内細菌叢(vaginal microbiome)も月経周期によって変化することが明らかになりつつあり、「生理前に調子が悪くなる理由」が少しずつ科学的に説明されるようになってきました。

この記事でお伝えしたいこと

  • 生理前のかゆみやにおいは、ホルモン変化、ムレ、皮膚バリア、腟内フローラのゆらぎが関係していることがあります。
  • カンジダなどの感染症ではなく、皮膚環境の変化が原因になっていることもあります。
  • 症状が強い、毎月繰り返す、悪臭や強い赤みがある場合は、婦人科で原因を確認することが大切です。

月経周期の後半は「黄体ホルモン」が主役になります

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排卵が終わると、卵巣では黄体が形成され、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が急速に増加します。

このホルモンは妊娠を維持するために欠かせない存在ですが、その一方で身体全体にさまざまな変化をもたらします。

例えば、次のような変化です。

  • 基礎体温が約0.3〜0.5℃上昇する
  • 発汗しやすくなる
  • 水分をため込みやすくなる
  • むくみやすくなる
  • 皮脂分泌が増える
  • 眠気やだるさを感じやすくなる


これらは多くの女性が経験する月経前症候群(PMS)の症状として知られています。

そして、この変化はデリケートゾーンにも少しずつ影響を及ぼしているのです。

ムレやすくなることで皮膚環境が変化します

デリケートゾーンは、もともと湿度が高く、皮膚同士が接する特殊な環境です。

生理前は体温上昇や発汗の増加により、次のような変化が起こりやすくなります。

  • 下着の中が蒸れやすくなる
  • 汗が増える
  • 摩擦が起こりやすくなる
  • 皮膚がふやけやすくなる


皮膚は乾燥し過ぎても、湿り過ぎても、本来のバリア機能が低下しやすくなります。

その結果、次のような症状が現れやすくなります。

  • かゆみ
  • 赤み
  • ヒリヒリ感
  • 接触性皮膚炎


特に毎日おりものシートを使用している方では、蒸れと摩擦が加わり、症状がさらに悪化することも少なくありません。

腟内フローラも月経前には少し揺らぎやすくなります

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これまでのブログでもご紹介してきたように、健康な腟ではラクトバチルスが優勢となり、乳酸、過酸化水素(H2O2)、バクテリオシンなどを産生しながら、腟内を一般にpH3.8〜4.5程度の弱酸性に保っています。

この酸性環境が病原菌の増殖を抑え、女性の身体を感染から守っています。

しかし、生理前になるとホルモン環境の変化に伴い、次のような要素が少しずつ変化します。

  • 腟粘膜の成熟度
  • 粘液の性状
  • 分泌物の量
  • 局所免疫


近年のマイクロバイオーム研究では、月経周期に伴うエストロゲンとプロゲステロンの変動によって、腟内細菌叢の組成や安定性にもわずかな変化が起こることが報告されています。

健康な女性ではラクトバチルス優位の状態は維持されることが多いものの、一時的に菌叢の多様性が増したり、安定性が低下したりすることがあります。

この「小さなゆらぎ」が、デリケートゾーンの違和感として現れている可能性があります。

特に、次のような方では、生理前に症状が出やすくなる傾向があります。

  • 細菌性腟症を繰り返す方
  • カンジダになりやすい方
  • 抗生物質を服用した後の方
  • 睡眠不足やストレスが続いている方

「かゆいけれど異常がない」ことも少なくありません

「先生、カンジダでしょうか?」

と受診される患者さんはとても多くいらっしゃいます。

しかし実際には、次のようなケースも少なくありません。

  • 培養検査は陰性
  • 真菌も検出されない
  • 細菌感染もない
  • 性感染症もない


このような場合には、次のような要因が症状の原因となっていることがあります。

  • ホルモン変化による皮膚の過敏性
  • 汗や摩擦
  • 乾燥と湿潤の繰り返し
  • 皮膚バリア機能の低下


つまり、「感染」が原因ではなく、「皮膚環境の変化」が違和感を引き起こしていることもあるのです。

生理前は毛嚢炎も増えやすい印象があります

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私が長年診療していて感じていることがあります。

それは、生理前になると外陰部の毛嚢炎が増えるということです。

毛嚢炎とは、毛穴の中で細菌が増殖し、炎症を起こした状態です。

生理前には、次のような条件が重なります。

  • 皮脂分泌が増える
  • 汗が増える
  • 蒸れやすくなる
  • 摩擦が増える
  • 局所免疫が変化する


さらに近年では、毛包や皮脂腺にもプロゲステロン受容体が存在し、黄体ホルモンが皮脂分泌や毛包周囲の炎症反応に影響を与える可能性が指摘されています。

顔に月経前ニキビが増える女性が多いのと同じように、外陰部でも毛穴周囲の炎症が起こりやすくなっているのかもしれません。

現時点では、外陰部毛嚢炎と月経周期との関連を直接検討した研究は多くありません。しかし日常診療では決して珍しい現象ではなく、今後さらに研究が進むことが期待される分野です。

生理前は免疫も少し変化しています

女性の身体は妊娠の可能性に備えて、月経周期に応じて免疫機能も巧みに調節しています。

排卵後、黄体ホルモン(プロゲステロン)が優位になる時期には、受精卵を受け入れやすくするため、子宮内膜や腟・外陰部周囲では炎症反応が過剰にならないように、局所免疫のバランスが変化します。

具体的には、免疫細胞から分泌されるサイトカインと呼ばれる情報伝達物質のバランスが変化し、強い炎症を起こす方向よりも、組織を保護し妊娠成立に適した環境を整える方向へ傾くと考えられています。

これは生殖にとって非常に重要な仕組みです。

一方で、この時期には細菌や真菌に対する防御反応も、普段とは少し異なる状態になります。

腟や外陰部では、ラクトバチルスによる酸性環境、粘膜上皮のバリア機能、局所の免疫細胞、抗菌ペプチドなどが協力して感染を防いでいます。

しかし月経前には、ホルモン変化によって腟粘膜の状態や分泌物、皮膚のバリア機能が変わり、これらの防御機構が一時的に揺らぎやすくなります。

その結果、普段は問題にならない程度の刺激や菌の変化でも、次のような症状として感じられることがあります。

  • かゆみ
  • ヒリヒリ感
  • におい
  • おりものの変化
  • 毛穴周囲の炎症


つまり生理前の不調は、単に「黄体ホルモンのせい」というよりも、プロゲステロン優位の環境の中で、粘膜免疫・皮膚バリア・腟内フローラが相互に影響し合い、デリケートゾーン全体の防御バランスが一時的に変化することで起こると考えると理解しやすいと思います。

ホルモン、免疫、微生物叢は互いに影響し合う「ネットワーク」として働いており、そのバランスが少し変化するだけでも、かゆみや違和感として感じられることがあります。

この時期に心がけたいフェムケア

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月経前だからといって、特別なことをする必要はありません。

しかし、基本的なケアを見直すだけでも、症状が軽くなることがあります。

  • 洗い過ぎない
  • 刺激の少ない洗浄剤を使う
  • おりものシートを長時間使用しない
  • 蒸れたら下着を交換する
  • 締め付けの少ない下着を選ぶ
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレスをため込み過ぎない


さらに、外陰部の乾燥や皮膚バリア機能の低下が気になる方では、保湿を取り入れることが役立つ場合があります。

皮膚を健やかな状態に保つことは、かゆみや刺激感を予防し、デリケートゾーン全体の環境を安定させることにつながります。

ホームケアを見直したい方へ

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デリケートゾーンの洗浄や保湿は、症状や肌質に合った方法を選ぶことが大切です。自己判断で強く洗い過ぎるのではなく、違和感が続く場合は原因を確認したうえでケアを見直しましょう。

月経前の不調は「身体からのサイン」です

女性の身体は毎月、排卵・妊娠・月経という大きな変化を繰り返しています。

そのたびに、ホルモン、免疫、皮膚、そして腟内フローラも静かに変化しています。

生理前の「少しかゆい」「少しにおう」「少しムレる」という違和感は、多くの場合、月経が始まると自然に改善します。

しかし、次のような場合には、背景に感染症や皮膚疾患、あるいは腟前庭部の慢性的な炎症が隠れていることもあります。

  • 毎月強い痛みがある
  • カンジダを繰り返す
  • 悪臭を伴う
  • 潰瘍や強い赤みがある
  • 毛嚢炎を何度も繰り返す
  • ヒリヒリ感やしみる感じが長く続く


近年、腟前庭部は「ホルモン・神経・免疫・微生物叢が交差するインターフェース(境界組織)」として注目されています。

私は日々の診療の中でも、この前庭部の状態が月経周期の影響を強く受け、不快症状の出現に深く関わっているのではないかと感じています。

月経前だから仕方がないと我慢するのではなく、自分の身体のリズムを理解し、その変化に合わせたフェムケアを行うことが大切です。

女性の身体は毎月変化しています。

症状が続く場合は婦人科でご相談ください

生理前の一時的な違和感であっても、強いかゆみ、悪臭、おりものの変化、痛み、赤み、毛嚢炎の繰り返しがある場合は、感染症や皮膚疾患などの確認が必要です。

オンライン診療は、来院前の相談や受診の目安を整理する入口としてご利用いただけます。ただし、視診・検査・処置が必要な症状では、対面診療をご案内する場合があります。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。

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