おりものシート・ナプキンでかゆい、におう理由|蒸れ・摩擦とデリケートゾーン環境
更新日:2026.07.07
「毎日おりものシートを使っています。」
外来でそうお話しされる患者さんは少なくありません。
そして、
- 最近かゆい
- なんとなくにおう
- 蒸れて不快
- 繰り返しかぶれる
という症状を訴える方も多くいらっしゃいます。
もちろん、おりものシートやナプキン自体が悪いわけではありません。月経中や必要な場面では、女性の生活を支える大切な製品です。
しかし、毎日長時間使い続けることが、本来の外陰部環境を変化させてしまう可能性があることは、あまり知られていません。
最初に知っておきたいこと
おりものシートやナプキンは便利な一方で、長時間の使用により「蒸れ」「摩擦」「密閉」が続くと、かゆみ・におい・かぶれなどの原因になることがあります。症状が続く場合は、感染症や皮膚炎などの確認も大切です。
目次
デリケートゾーンは「蒸れすぎない」ことが大切
外陰部の皮膚は非常に薄く、汗や皮脂、腟から分泌されるおりものによって適度に保護されています。
ところが、おりものシートやナプキンを長時間装着すると、次のような状態になりやすくなります。
- 通気性が低下する
- 湿度が高くなる
- 温度が上昇する
- 摩擦が増える
これは皮膚科でいう「密閉環境」に近い状態です。
密閉された皮膚では角質がふやけ、皮膚のバリア機能が低下し、刺激を受けやすくなります。
その結果、次のような症状が起こりやすくなることがあります。
- かゆみ
- 赤み
- ヒリヒリ感
- 湿疹
- 接触皮膚炎
においは「細菌が増えやすい環境」が原因
「最近においが気になります。」
これも非常によくある相談です。
においそのものは汗だけが原因ではありません。
高温・多湿の環境では、皮膚に存在する常在菌や腸内由来の細菌が増殖しやすくなります。それらの細菌が汗や皮脂、おりもの、経血などを分解することで、独特のにおいが生じることがあります。
つまり、湿った状態が長く続くほど、においが発生しやすい環境になるということです。
もちろん、細菌性腟症、カンジダ、トリコモナス、性感染症などが原因の場合もあります。
しかし、感染症がないにもかかわらず、生活習慣を見直すだけで症状が落ち着く患者さんも少なくありません。
腟内フローラと外陰部マイクロバイオーム
近年、腟内フローラだけでなく、外陰部のマイクロバイオームにも注目が集まっています。
※マイクロバイオームとは?
体に存在する細菌や真菌などの微生物と、それらがつくる環境全体を指します。腟にも独自のマイクロバイオームがあり、ラクトバチルスなどの菌が腟内環境のバランスに関わっていると考えられています。
腟内では、ラクトバチルスが乳酸を産生し、腟内を弱酸性に保つことで、病原菌が増えにくい環境を作っています。
一方で、外陰部は腟の入口、尿道、肛門に近く、皮膚常在菌、腸内細菌、腟内細菌が交差する場所です。
つまり、外陰部は単なる「皮膚」ではなく、腟内フローラ、皮膚バリア、湿度、摩擦、ホルモン状態が影響し合う場所なのです。
おりものシートやナプキンの長時間使用によって高温・多湿・摩擦が続くと、外陰部の皮膚バリアが乱れ、マイクロバイオームのバランスにも影響する可能性があります。
現時点では、「おりものシートやナプキンが腟内フローラを必ず悪化させる」と断定できるほどの研究は十分ではありません。
しかし、通気性の低下や湿潤環境が外陰部の皮膚環境に影響し、かゆみ、かぶれ、におい、不快感につながる可能性は十分に考えられます。
特に、カンジダを繰り返しやすい方、外陰部が敏感な方、更年期以降で皮膚が薄くなっている方では、毎日のシート使用が刺激になっていることがあります。
高分子吸収体について考える
現代のナプキンには、経血を素早く吸収するために高分子吸収体が使われているものがあります。
これは生活を便利にした一方で、自然環境への影響が問題視されることもあります。
人体への有害性については、現時点で明確に証明されているわけではありません。
しかし、化学繊維、接着剤、香料、漂白成分、表面素材などに対して、皮膚が敏感に反応する方はいます。
大切なのは、すべての製品を否定することではなく、自分の外陰部に合わないものを毎日使い続けないことです。
「便利だから毎日使う」から、「必要な時に、肌に合うものを選んで使う」へ。
この考え方が、これからのフェムケアにはとても大切です。
毎日のおりものシートは本当に必要でしょうか?
おりものは病気ではありません。
正常なおりものは、次のような大切な役割を担っています。
- 腟を守る
- 細菌を洗い流す
- 腟内環境を維持する
少量のおりものは、健康な女性なら誰にでもあります。
そのため、毎日シートを当て続けることが本当に必要なのか、一度考えてみることも大切です。
必要な時だけ使用し、それ以外は綿素材など通気性の良い下着で過ごすだけでも、外陰部環境は変わることがあります。
昔の日本人の生活には学ぶ点があります
昔の日本人は、現在のような密閉性の高い下着を常に身につけていたわけではありません。
着物やふんどしなどは風通しが良く、デリケートゾーンが蒸れにくい構造でした。
もちろん、現代の生活を昔に戻すことはできません。
しかし、「通気性を確保する」という考え方は、現代のフェムケアにも十分通じるものがあります。
- 締め付けの少ない下着を選ぶこと
- 帰宅後はゆったりした衣服で過ごすこと
- 就寝時にはできるだけ蒸れを少なくすること
こうした小さな工夫が、皮膚環境を守ります。
フェムケアは「減らすケア」も大切
フェムケアというと、
- 何かを塗る
- 何かを使う
ことばかりが注目されます。
しかし、本当に大切なのは、皮膚に余計な負担をかけないことです。
- 必要以上に洗わない
- 必要以上に密閉しない
- 必要以上に擦らない
- 合わない製品を使い続けない
これだけでも、外陰部環境が落ち着くことがあります。
そのうえで、乾燥や加齢による皮膚の菲薄化がある場合には、保湿剤やフェムケア製品を併用することで、より良好な状態を維持しやすくなる場合があります。
かゆみ・におい・ヒリヒリ感が続く方へ
おりものシートやナプキンの使い方を見直しても症状が続く場合、感染症、皮膚炎、ホルモン変化、GSMなどが関係している可能性もあります。強いかゆみ、痛み、出血、悪臭、発熱、排尿時の痛みなどがある場合は、自己判断せず婦人科で相談しましょう。
まとめ
デリケートゾーンは、湿度・温度・摩擦の影響を非常に受けやすい場所です。
おりものシートやナプキンは生活を支える大切な製品ですが、長時間・毎日の使用によって、蒸れや摩擦が続くと、皮膚バリアが低下し、かゆみやにおい、不快感につながることがあります。
また近年は、腟内フローラだけでなく、外陰部マイクロバイオームの視点からも、デリケートゾーンの環境を整えることが重要だと考えられるようになっています。
フェムケアで最も大切なのは、「足すこと」だけではありません。
本来の外陰部が持っている環境を、できるだけ自然な状態に保つこと。
毎日のおりものシートが当たり前になっている方ほど、一度その習慣を見直してみてください。
デリケートゾーンは、思っている以上に「風通しの良い環境」を好んでいるのです。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



