抗生物質のあとにデリケートゾーンがかゆい理由|カンジダ・おりものと腟内フローラ
更新日:2026.07.04
抗生物質を飲んだあとに、デリケートゾーンのかゆみやおりものの変化が起こることがあります。
その背景には、腟内フローラのバランスや、女性の身体を守るラクトバチルスの働きが関係している場合があります。
この記事のポイント
- 抗生物質のあとに、かゆみやおりものの変化が出ることがあります。
- 背景には、腟内フローラやラクトバチルスの変化が関係する場合があります。
- カンジダと思っても別の原因のことがあるため、症状が続く場合は婦人科で確認しましょう。
目次
抗生物質を飲んだあとにデリケートゾーンがかゆくなるのはなぜ?
膀胱炎や副鼻腔炎、細菌感染が疑われる症状などで抗生物質を飲んだあとに、
- 急にデリケートゾーンがかゆくなった
- 白いポロポロしたおりものが出てきた
- 抗生物質を飲むと、毎回カンジダのような症状が出る
というご相談を受けることがあります。
患者さんからは、
- 抗生物質でカンジダ菌が増えるのですか?
- 薬が合わなかったのでしょうか?
と聞かれることも少なくありません。
実際には、抗生物質そのものが直接カンジダを増やすというより、腟内フローラのバランスが変化することで、もともと身体に存在していたカンジダが増えやすくなることがあります。
その背景には、女性の身体を守っている「ラクトバチルス」という善玉菌の働きがあります。
腟の中にはラクトバチルスが存在しています
健康な女性の腟内には、ラクトバチルスと呼ばれる乳酸菌の仲間が多く存在しています。
ラクトバチルスは、腟の上皮細胞に含まれるグリコーゲンを利用して乳酸を作り、腟内を一般にpH3.8〜4.5程度の酸性環境に保つ働きがあります。
この酸性環境は、病原菌や雑菌が増えにくい状態を保つうえで重要です。
さらに一部のラクトバチルスは、過酸化水素やバクテリオシンなどの物質を産生し、腟内環境を守る働きに関わることが知られています。
つまりラクトバチルスは、女性の身体に備わった大切な防御システムの一つです。
抗生物質は悪い菌だけに作用するわけではありません
抗生物質は、細菌感染症の治療に欠かせない大切な薬です。
膀胱炎、肺炎、腎盂腎炎などでは、抗生物質が必要になることがあります。自己判断で中止してしまうと、感染症が悪化するおそれもあります。
一方で、抗生物質は原因となる細菌だけでなく、身体にとって必要な細菌にも影響を与えることがあります。
これは腸内細菌でも起こりますし、腟内環境でも起こる可能性があります。
抗生物質の影響でラクトバチルスが減少すると、腟内の酸性環境が保ちにくくなり、腟内フローラのバランスが一時的に乱れることがあります。
ラクトバチルスが減ると、なぜかゆみやおりものが出るのか
ラクトバチルスが減少すると、乳酸の産生が少なくなり、腟内の酸性環境が弱まりやすくなります。
その結果、以下のような微生物が増えやすい環境になることがあります。
- カンジダなどの真菌
- 嫌気性菌
- 雑菌
この変化によって、かゆみ、おりものの変化、におい、ヒリヒリ感などが出ることがあります。
つまり、抗生物質のあとにデリケートゾーンの不調が起こる背景には、腟内フローラのバランスが一時的に崩れることが関係している場合があります。
カンジダは外からうつるとは限りません
カンジダと聞くと、「どこかで感染したのでは」と心配される方もいます。
しかし、カンジダは必ずしも外から新たにうつるものではありません。
Candida albicansをはじめとするカンジダ属真菌は、腸、口腔、会陰部、腟などに少数存在していることがあります。
通常は、ラクトバチルスや免疫の働きによって増殖が抑えられているため、症状が出ないこともあります。
しかし、以下のような要因でバランスが崩れると、カンジダが増えやすくなることがあります。
- 抗生物質の使用
- 妊娠
- 糖尿病
- 睡眠不足
- 強いストレス
- ステロイド薬の使用
- 免疫力の低下
- ホルモン環境の変化
このような背景で、腟カンジダ症の症状が出ることがあります。
白いポロポロしたおりものが出る理由
腟カンジダ症では、白いポロポロしたおりものが見られることがあります。
これは、カンジダが増殖し、腟内で炎症が起こることで、
- 剥がれた上皮細胞
- 白血球
- 真菌
- 分泌物
などが混ざり合うためです。
見た目としては、ヨーグルト状、酒粕状、カッテージチーズ状と表現されることがあります。
また、カンジダでは以下のような症状が出ることもあります。
- 強いかゆみ
- 外陰部の赤み
- ヒリヒリ感
- 排尿時のしみる感じ
- 性交時の痛み
- おりものの変化
自己判断に注意しましょう
かゆみや白いおりものがあるからといって、必ずカンジダとは限りません。
細菌性腟症、接触性皮膚炎、外陰部のかぶれ、性感染症、GSM、更年期以降の乾燥など、別の原因が隠れていることもあります。
症状が続く場合や繰り返す場合は、自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、婦人科で確認することが大切です。
抗生物質は悪者ではありません
ここで大切なのは、抗生物質を怖がりすぎないことです。
「抗生物質を飲むとカンジダになるから、飲まない方がよい」という考え方は適切ではありません。
抗生物質は、必要な場面では命を守る重要な薬です。
膀胱炎や腎盂腎炎、肺炎などを放置すると、症状が悪化したり、全身に影響が及んだりすることがあります。
大切なのは、医師の指示通りに抗生物質を使用し、その後の腟内環境や外陰部のケアにも目を向けることです。
抗生物質のあとに意識したいデリケートゾーンケア
抗生物質を服用したあとにデリケートゾーンの不調が出やすい方は、まず洗いすぎを避けることが大切です。
外陰部はとても繊細な皮膚です。
洗浄力の強い石けんでゴシゴシ洗ったり、腟の中まで洗浄したりすると、皮膚のバリア機能や腟周囲の微生物環境に影響する可能性があります。
日常のケアでは、以下を意識しましょう。
- 外陰部はやさしく洗う
- 腟の中まで洗わない
- 洗浄力の強い石けんを避ける
- ムレや摩擦を減らす
- デリケートゾーンを乾燥させすぎない
- 症状があるときは自己判断で市販薬を使い続けない
更年期以降では、エストロゲンの低下により腟や外陰部が乾燥しやすくなり、ラクトバチルスも減少しやすくなります。
そのため、年齢や体調によっては、保湿ケア、腟内環境を意識したケア、必要に応じた婦人科での治療を組み合わせることも選択肢になります。
EBINEシリーズについて
私は、デリケートゾーンケアでは「洗う」「守る」「補う」という考え方が大切だと考えています。
その考え方から、日常のフェムケアを支える製品として、
- 弱酸性でやさしく洗うことを目的としたEBINEフェミニンムース
- デリケートゾーンの保湿を目的としたEBINEウィメンズジェル
- ラクトバチルスをサポートするEBINEフローラ
を開発しました。
これらは医薬品ではなく、カンジダや感染症を治療するものではありません。
しかし、デリケートゾーンを洗いすぎず、乾燥から守り、腟内フローラを意識したケアを続けることは、女性が本来持っている防御機能を支えるうえで大切だと考えています。
毎日のケアを見直したい方へ
洗いすぎを避け、乾燥を防ぎ、腟内フローラを意識したケアを続けたい方は、EBINEシリーズもご覧ください。
婦人科を受診した方がよい症状
抗生物質のあとに一時的な違和感が出ることはありますが、以下のような場合は婦人科での確認をおすすめします。
- 強いかゆみがある
- 白いポロポロしたおりものが続く
- においが強い
- 外陰部が赤く腫れている
- 排尿時に強くしみる
- 性交時に痛みがある
- 症状を何度も繰り返す
- 市販薬を使っても改善しない
- 妊娠中である
- 糖尿病や免疫に関わる病気がある
カンジダと思っていても、別の原因があることもあります。
症状に合った治療を行うためには、診察や検査で確認することが大切です。
最後に
女性の身体は、細菌と戦うだけで健康を保っているわけではありません。
ラクトバチルスをはじめとした良い菌と共生することで、腟内環境は守られています。
抗生物質を飲んだあとに起こるデリケートゾーンのかゆみやおりものの変化は、その共生のバランスが一時的に乱れたサインであることがあります。
抗生物質は必要なときに正しく使う。
そのうえで、腟内フローラや外陰部のバリア機能を守る。
これからのフェムケアでは、「悪い菌をなくす」だけではなく、「良い菌が働きやすい環境を整える」という視点がますます大切になると考えています。
2026年7月開催 無料WEBセミナーのご案内
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



