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更年期・閉経

閉経前後は本当に妊娠しない?いつまで避妊が必要か?産婦人科女医が丁寧に解説。

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「もう閉経したと思っていたのに、生理のような出血があった」
「避妊をやめたいけれど、万が一妊娠したらと思うと怖い」
50代でも妊娠する確率はあるの?」

 

更年期世代の女性から、このようなご相談をいただくことは決して少なくありません。

「もう年だから大丈夫」

と自己判断してしまうのは危険ですが、かといって一人で不安を抱え続けるのも辛いものです。

 

閉経前後はホルモンバランスが大きく乱れるため、生理周期だけで「妊娠の可能性」を判断するのは非常に難しい時期です。

しかし、婦人科で検査を行えば、現在の体の状態を客観的に知ることができます。

 

この記事では、閉経の定義や更年期との違い、閉経前後の妊娠の可能性、そして「いつまで避妊が必要か」という疑問について、白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長の海老根真由美が丁寧に解説します。

 

「閉経したら妊娠しないって本当?」
「閉経後に妊娠する確率はどのくらい?」

と不安な方は、最後まで読んでみてください。

正しい知識を持って、不安のない更年期ライフを送りましょう。

 

目次

「閉経」とは?更年期との違いと自己判断の危険性

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まずは、「閉経」とは具体的にどのような状態を指すのか、医学的な定義とよくある誤解について整理しましょう。

閉経の定義(最後の月経から12カ月以上月経がない状態)

日本産科婦人科学会では、

1年以上月経(生理)が来ない状態」を確認して初めて、1年前の最後の月経の時をもって「閉経した」と判定します。

つまり、閉経とは「生理が止まった瞬間」にわかるものではなく、

1年来なかったから、あの時がそうだったんだな」と後からわかるものなのです。

日本人の平均閉経年齢は約50.5歳ですが、個人差が大きく、40代前半の方もいれば50代後半の方もいらっしゃいます。

更年期と閉経・閉経後の違い

よく「更年期」と「閉経」を混同されることがありますが、更年期とは「閉経を挟んだ前後5年(合計10年間)」の期間を指します。

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・プレ更年期(〜40代半ば)

生理周期が短くなったり、経血量が変化し始める時期。

・更年期(閉経周辺期)

生理が数ヶ月来ないと思ったらまた来るなど、不規則になる時期。

・閉経後(アフター更年期)

完全に卵巣の機能が停止し、エストロゲンが欠乏した状態が続く時期。

1年止まったと思ったらまた出血」がよくある理由

「1年近く生理がなくて、もう閉経だと思っていたら出血があった。生理が再開した?」このようなケースは要注意です。

閉経周辺期に排卵が起きて生理が来ることもありますが、実は「閉経後不正出血」である可能性も否定できません。

子宮体がん、子宮頸がん、あるいはポリープや腟の萎縮(GSM)による出血の可能性があります。

「久しぶりの生理だ」と自己判断せず、必ず婦人科を受診してください。

>>閉経後の不正出血と病気について

 

閉経前後の妊娠のしくみとリスク

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「生理が不順になれば、もう妊娠しない」というのは誤解です。

閉経前の身体の中で何が起きているのかを解説します。

月経が不規則でも、排卵がゼロとは限らない

妊娠するためには「排卵」が必要です。

閉経が近づくと、卵巣機能が低下し、無排卵の月経が増えたり、数ヶ月排卵が止まったりします。

しかし、完全に卵巣機能が停止するまでは、突発的に排卵が起こる可能性があります。「生理が3ヶ月来ていないから排卵もしていない」とは限らないのが、この時期の難しいところです。

40〜50代の自然妊娠は「確率は低いがゼロではない」

避妊をせずに性行為を行った場合、閉経前であれば妊娠の可能性はゼロではありません。

「確率は低い」ですが、医学的に「絶対にない」とは言い切れない時期が、閉経の確定診断が出るまで続きます。

外来診療で、46歳で初めての妊娠を経験したというかたは、比較的いらっしゃいます。

高年妊娠で増える合併症・流産のリスク

万が一、閉経周辺期に妊娠した場合、母体には大きな負担がかかります。

流産の可能性が高くなるだけでなく、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、産褥心筋症などの合併症リスクも、若い頃に比べて高くなります。

ご自身の健康を守るためにも、確実な避妊計画が必要です。

性交痛や乾燥でお悩みの方へ

妊娠の不安だけでなく、更年期特有の「性交痛」や「濡れにくさ」でお悩みの方も多くいらっしゃいます。

これらは「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」という治療可能な症状です。

詳しくは、以下記事をご覧ください。

>>更年期・閉経後の性交痛と「濡れない」悩み|原因・対処法・治療法を女医が解説

 

「閉経前後の妊娠確率」は?女医が現場の感覚を解説

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実際、40代後半〜50代で自然妊娠する確率はどのくらいなのでしょうか。

現場の医師としての実感をお伝えします。

45歳以上の自然妊娠は非常にまれだが、ゼロと言い切れない

生殖医療(不妊治療)の現場データを見ても、45歳以上での妊娠・出産は非常にハードルが高いのが現実です。

50代での自然妊娠となると、世界的にもニュースになるレベルの稀なケースと言えます。

しかし、生理がある(排卵の可能性がある)限り、その確率が「0%」になることはありません。

この「限りなくゼロに近いが、ゼロではない」という状態が、多くの女性の不安の原因になっています。

卵子の【数】だけでなく【質】も年齢とともに変化する

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妊娠しにくくなる理由は、卵子の数が減るだけでなく、卵子の「質(染色体の状態など)」が変化するためです。

これにより、受精しても着床しなかったり、初期で流産してしまったりする確率が高くなります。

妊娠を希望する場合に必要な検査・相談

もし、この時期に妊娠を望まれる場合は、時間の猶予がありません。

自然に任せるのではなく、早急にAMH(卵巣予備能)検査などを受け、残された卵子の状態を知ることが第一歩です。

当院でもご相談を承りますが、専門的な不妊治療が必要になるケースがほとんどです。

 

いつまで避妊が必要?避妊の「やめどき」の考え方

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「いつまで避妊を続ければいいの?」 これは、更年期世代の避妊相談で最も多い質問です。

一般的な目安(無月経12カ月ルールなど)

一般的には、以下の期間、生理が来なければ避妊をやめても良い(閉経した)と判断されることが多いです。

50歳未満の方: 最後の月経から 2年間
50歳以上の方: 最後の月経から 1年間

しかし、これはあくまで目安であり、個人差があります。

生理が不規則な時期は、妊娠の可能性が残ると考えたほうが安全

「半年生理が来ないけれど、まだ避妊具をつけるべき?」と迷う時期こそ、注意が必要です。

先ほどお伝えした通り、突発的な排卵が起こる可能性があるため、

「生理が完全に1年以上止まるまで」は避妊を続けるのが安全策です。

「いつまで避妊するか分からない」モヤモヤを解消する方法

「1年も待てない」

「パートナーとの関係もあるし、はっきりさせたい」

そのようにお考えの方には、婦人科での血液検査をお勧めします。

血液検査で「FSH(卵胞刺激ホルモン)」E2(エストラジオール)」というホルモンの値を調べれば、卵巣がまだ働いているのか、それとも閉経の状態にあるのかを、数値で客観的に判断できます。

※FSH値が高く、E2値が低い場合、閉経と診断されます

悩みながら避妊を続けるよりも、一度検査で白黒つけてしまったほうが、精神的にもパートナーとの関係においても、ずっと楽になります。

ただし、数年更年期のデータであったにもかかわらず、排卵することは非常にまれですが起こりうる事象であることを覚えておいてください。

女性の身体は不思議です。理屈と異なる場合があります。

 

閉経前後に選べる避妊法と注意点

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更年期世代の避妊法選びは、若い頃とは少し基準が変わります。年齢や持病に合わせた選び方を知っておきましょう。

低用量ピル・中用量ピル(年齢・持病による制限も含めて)

高い避妊効果があり、生理不順や更年期症状の改善も期待できます。 ただし、血栓症のリスクが高まるため、42歳以上の方や、喫煙者、高血圧、糖尿病の方には慎重な処方が必要です(当院ではガイドラインに基づき、説明を行っております)。

子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナなど)

子宮の中に小さな器具を入れ、黄体ホルモンを持続的に放出させる方法です。

メリット

一度入れれば最長5年間効果が続く

過多月経(量の多い生理)の改善にも効果があるため、更年期の月経トラブルと避妊を同時に解決したい方に非常に選ばれています。

>>ミレーナのメリット・デメリットについて

コンドームや避妊リングなどホルモンを使わない方法

ホルモン剤を使いたくない方や、閉経間近の方には、コンドームやホルモン不添加避妊リングなどの物理的な避妊法が適しています。感染症予防の観点からも、コンドームの併用は推奨されます。

高血圧・心疾患・片頭痛・血栓症・糖尿病・喫煙歴など、持病がある場合の注意点

更年期世代は、高血圧や脂質異常症などの持病をお持ちの方も増えてきます。

持病の種類によっては選べない避妊法もありますので、必ず医師にご相談ください。

 

「閉経後に妊娠したかも?」と思ったときのチェックポイント

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「生理が止まっていたのに出血した」「つわりっぽい気持ち悪さがある」 もし不安になったときは、以下のポイントを確認してください。

妊娠検査薬の限界と、擬陽性・偽陰性の可能性

まず、市販の妊娠検査を行いましょう。

擬陽性・偽陰性は非常にまれですが、ご心配あれば、医療機関を受診しましょう。

妊娠ではなく、別の病気のサインのことも

出血

妊娠ではなく、子宮体がんやポリープ、萎縮性腟炎による出血の可能性があります。

お腹の張り・気持ち悪さ

卵巣腫瘍や子宮筋腫、あるいは更年期障害による自律神経の乱れかもしれません。

すぐに婦人科を受診してほしい症状

「妊娠かも?」

と思った時点で受診をお勧めしますが、

特に

「大量の出血がある」
「強い腹痛がある」
「嘔気・嘔吐がひどい」

場合は、

緊急性の高い病気(異所性妊娠や流産、絨毛性疾患、婦人科疾患の急変など)の可能性があります。

すぐに婦人科を受診してください。

 

【Q&A】閉経前後の妊娠・避妊の不安

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Q:閉経したら本当に妊娠しないのですか?

医学的には、「最後の月経から1年以上(月齢によっては2年以上)生理がない状態」が確認できて初めて「閉経」と診断されます。この状態になれば、自然妊娠する可能性は極めて低くなり、基本的には妊娠しないと考えてよい時期です。

ただし、「もう閉経しただろう」と自己判断して避妊をやめてしまうと、まだ閉経前だった場合に妊娠する可能性がゼロではありません。確実に避妊をやめたい場合は、血液検査(FSHE2)で閉経かどうかを確認することをおすすめします。

Q:50代でも自然妊娠することはありますか?

確率は極めて低いですが、排卵がある限りゼロではありません。生理が不順でも続いている間は、適切な避妊が必要です。「もう大丈夫だろう」という自己判断が一番のリスクです。

Q:生理が半年止まって、また来ました。妊娠の可能性はありますか?

性行為があった場合、妊娠の可能性も否定できませんが、まずは「閉経周辺期の不正出血」を疑う必要があります。ホルモンバランスの乱れによるものか、子宮の病気によるものかを確認するため、受診をお勧めします。

Q:いつ避妊をやめていいのか、自分では判断できますか?

生理が1年以上来ていなければ「閉経」と判断して避妊をやめるのが一般的です。血液検査でホルモン値を調べれば、医学的な根拠を持って判断できますが、まれに2年以上月経がない方でも女性ホルモンが分泌されている方もいらっしゃいます。

Q:閉経後もピルやホルモン治療を続けられますか?

避妊目的のピルは閉経(または50歳頃)とともに終了しますが、その後は「HRT(ホルモン補充療法)」に切り替えることができます。 HRTは、更年期障害の緩和や骨粗鬆症の予防を目的に、ピルよりもさらに微量のホルモンを補充する治療法です。 「避妊のためのホルモン」から「体を守るためのホルモン」へ、スムーズに移行のご相談も可能です。

関連記事

>>閉経後の病気について

>>閉経後の生理痛のような症状

>>更年期の生理不順について

 

白金高輪海老根ウィメンズクリニックでの妊娠・避妊相談

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更年期世代の妊娠・避妊・更年期症状をトータルで相談できる体制

当院では、避妊の相談だけでなく、

更年期特有の不調、がん検診、そして性生活のお悩み(性交痛・GSM)まで、

トータルでサポートできる体制を整えています。

 「避妊はやめたいけれど、更年期の治療は続けたい」

といったご希望にも、HRT(ホルモン補充療法)やミレーナなどの選択肢から最適なプランをご提案します。

乳がん既往・持病がある方でも相談できること

乳がんの治療中の方や、高血圧などの持病がある方の場合、ホルモン剤の使用に制限があることがあります。

当院では、ホルモンを使わない避妊法や、ホルモンを使わずに更年期症状を和らげる治療(漢方やモナリザタッチなど)も積極的に行っています。

他院で断られた方も、一度ご相談ください。

「閉経前後で何が起きているのか分からない」方へのメッセージ

閉経前後は、心も体も揺らぎやすい時期です。

「妊娠の不安」と「閉経の寂しさ」、そして「体調の悪さ」が入り混じり、どうしていいか分からない方も多いと思います。

そんな時こそ、私たち専門家を頼ってください。

血液検査ひとつで、

「もう避妊は必要ないですよ」

「今はこういう時期ですよ」

と明確にお伝えするだけで、心の霧が晴れることもあります。一人で悩み続けず、まずは気軽に検査を受けにいらしてください。

「こんなことで相談していいのかな」

と遠慮する必要はありません。

閉経や妊娠・避妊の不安は、決してわがままではなく、専門家に相談してよい大切なテーマです。

ご予約について

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予約制となっております。

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【土日祝日も診療】全ての医師やスタッフは女性です。ご安心してご来院ください。
平日受診できない方に通院していただきやすいよう、毎朝8時30分から診療を受け付けています。
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オンライン診療も対応しておりますので遠方の方やご来院が難しい方は是非ご利用ください。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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