腸活と腟活はつながっている?ラクトバチルスと母乳・発酵食品の力
更新日:2026.06.28
日本人は昔からラクトバチルスと共に生きてきた。
近年、「腸活」という言葉を耳にしない日はありません。
ヨーグルトを食べる。
乳酸菌を摂る。
発酵食品を食べる。
もちろん、それらは健康に役立つ方法です。
しかし私は産婦人科医として、そして周産期新生児医療に携わってきた医師として、腸活とはもっとずっと前から始まっているものだと考えています。
それは、人が生まれたその瞬間です。
そして女性には、その先にもう一つ大切なテーマがあります。
それが「腟活」です。
実は、腸活と腟活は別々のものではありません。
人が生まれ、成長し、子どもを産み、年齢を重ねていくまで続く、一つの生命の物語なのです。
人生最初の「腸活」は、お母さんから始まる
赤ちゃんは、お母さんの産道を通って生まれます。その瞬間、お母さんの腟内に存在するラクトバチルスをはじめとする細菌と出会います。
その細菌は口の中へ入り、やがて消化管へ運ばれます。
つまり、人は生まれた瞬間から「善玉菌」と共に人生を歩み始めるのです。
私は埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターで勤務していた頃、数多くの超低出生体重児の赤ちゃんの出産に携わってきました。
どうしても赤ちゃんを助けたくて、重症感染症になる前に、やむを得ず帝王切開術を行うこともありました。出産後、赤ちゃんはすぐにNICUに入院となり、肺が未熟な赤ちゃんは呼吸器をつけ、保育器の中で育ちます。
出生体重500gにも満たない赤ちゃんは、壊死性腸炎で命を落とすことがあります。どんなに強い抗生物質を使用しても、感染を抑えることは非常に難しいものです。
そんな中、わずか1mLでも母乳を飲めることで、その発症率が低下し、生存率が改善することを何度も経験し、驚きました。現代医療の中で、私は「感染を治療するのは抗生物質である」という考えに凝り固まっていたのです。
この経験から私は、母乳とは単なる栄養ではなく、「赤ちゃんの腸を育てる医学」であることを実感しました。
母乳は最高のプロバイオティクスでありプレバイオティクス
母乳には、- 免疫グロブリン(IgA)
- ラクトフェリン
- ヒトミルクオリゴ糖
- 成長因子
- 善玉菌が利用する栄養
が豊富に含まれています。
さらに母乳には、さまざまな細菌も含まれています。
つまり母乳は、
善玉菌を届け、
善玉菌を育て、
赤ちゃんの免疫を完成させる、
まさに「究極の腸活」なのです。
赤ちゃんは母乳を飲みながら胃酸分泌が成熟し、噴門や幽門の機能も発達し、消化管全体が完成していきます。
人生最初の数か月は、一生の消化管環境を育てる大切な時間なのです。
日本人は昔から腸活をしていた
私は最近、「腸活」という言葉を聞くたびに思うことがあります。実は日本人は、何百年も前から腸活をしていたのではないでしょうか。
和食には、『味噌、醤油、納豆、豆腐、漬物、魚、海藻、野菜』といった発酵食品や食物繊維が自然に取り入れられています。
味噌汁を飲み、ご飯を食べ、焼き魚を食べ、海藻を食べる。
これは単なる伝統料理ではありません。
現在の腸内細菌研究から見ても、腸内細菌が多様に育ちやすい、非常に理にかなった食文化と考えられます。
昔の日本人は「ラクトバチルス」という名前を知らなくても、経験的に体によい食事を選び、代々受け継いできたのでしょう。
食文化とは、長い年月をかけて育まれた先人たちの知恵なのだと思います。
保存料との付き合い方
現代では、加工食品を口にする機会が増えました。もちろん食品添加物や保存料は、食品の安全性を守るために必要な役割を果たしています。
一方で、加工食品ばかりに偏る食生活では、腸内細菌にとって好ましい食物繊維や発酵食品が不足しがちになります。
だからこそ私は、
できるだけ自然に近い食材を選び、
和食を中心に、
多様な食品をバランスよく食べることが、
腸内環境を育てる食事につながると考えています。
女の子には第二の「ラクトバチルスの物語」が始まる
そして女性には、第二章があります。
思春期になるとエストロゲンが分泌されます。
エストロゲンは腟粘膜にグリコーゲンを蓄えます。
ラクトバチルスはそのグリコーゲンを利用して乳酸を産生し、腟内を酸性に保ちます。
その結果、細菌性腟症(BV)などの感染を防ぎ、自浄作用が働きます。
私はこれこそが「腟活」の本質だと思っています。
腟活とは、ラクトバチルスを増やすことだけではなく、
ラクトバチルスが気持ちよく暮らせる環境を整えることなのです。
Check point
ラクトバチルスの基本的な働きや、腟内フローラ・子宮内フローラとの関係について詳しく知りたい方は、ラクトバチルスとは?ラクトバチルス菌の働き・増やす方法も参考にしてください。
子宮にもラクトバチルスがいる時代へ
さらに近年では、子宮内にもラクトバチルス、特にラクトバチルス・クリスパタスが存在することが報告されるようになりました。まだ研究途上ではありますが、子宮内細菌叢が着床や妊娠率、流産や早産と関係する可能性が示されています。
私は今後、この分野は産婦人科医療を大きく変えるテーマになると考えています。
私が腸活と腟活を大切にする理由
周産期新生児医療では、母乳が赤ちゃんの命を救うことを学びました。婦人科診療では、ラクトバチルスが女性の健康を守っていることを毎日診ています。
そして、更年期になるとエストロゲンの低下に伴いラクトバチルスも減少し、GSMや細菌性腟症、尿路感染症などが起こりやすくなります。
だから私は、腟内の酸性環境をできるだけ守る洗浄剤「EBINEフェミニンムース」と、更年期以降のラクトバチルスをサポートするサプリメント「EBINEフローラ」を開発しました。
私が届けたいのは商品ではありません。
人間が本来持っている「共生する力」を守るという考え方です。
腸活の先に、腟活がある
人は、お母さんからラクトバチルスを受け取り、母乳によって腸を育てられます。
その後、日本の伝統的な食文化に支えられながら、腸内細菌と共に成長します。
そして女性は思春期を迎え、ラクトバチルスに守られた腟内環境を築き、次の命を育む準備を始めます。
私は、腸活と腟活は別々の健康法ではなく、「命をつなぐ一本の道」だと考えています。
日本人が昔から大切にしてきた食文化、母乳の力、そして女性を守るラクトバチルス。
これらはすべて、「人は一人で生きているのではなく、目に見えない微生物と共に生きている」という、人間本来の姿を教えてくれているのではないでしょうか。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。




