モナリザタッチとエムセラの違い|尿漏れ・頻尿・GSMの使い分けを医師が解説
更新日:2026.08.08
「モナリザタッチとエムセラは、どちらも尿漏れに使われる治療ですか?」
「自分には、どちらの治療が合っていますか?」
診療の中で、このようなご質問をいただくことがあります。
モナリザタッチとエムセラは、どちらも女性の排尿やデリケートゾーンのお悩みに対して用いられる治療ですが、主に働きかける場所が異なります。
- モナリザタッチは、腟・外陰部・尿道周囲の「粘膜や組織」を整える治療
- エムセラは、膀胱や尿道、骨盤内臓器を支える「骨盤底筋」を鍛える治療
つまり、どちらか一方が優れているというものではありません。
粘膜と筋肉という異なる場所にアプローチする治療だからこそ、症状の原因によって使い分けることができ、両方の問題が重なっている方では組み合わせて治療することもできます。
特に更年期以降の女性では、GSMによる腟・外陰部・尿道周囲の変化と、加齢や出産などによる骨盤底筋機能の低下が同時に起こっていることも少なくありません。
今回は、モナリザタッチとエムセラの違いと、それぞれの治療をどのように使い分け、組み合わせているのかを詳しく解説します。
目次
モナリザタッチとエムセラの違い
まずは、2つの治療の違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | モナリザタッチ | エムセラ |
|---|---|---|
| 主に働きかける場所 | 腟・外陰部・尿道周囲の粘膜や組織 | 骨盤底筋 |
| 治療方法 | フラクショナルCO₂レーザーを照射 | 高強度焦点式電磁場(HIFEM)によって骨盤底筋を刺激 |
| 主な目的 | 乾燥、ヒリヒリ、灼熱感、性交痛などの改善を目指す | 骨盤底筋機能を高め、尿漏れなどの改善を目指す |
| 施術方法 | 腟内・腟前庭部・外陰部などを診察して照射 | 服を着たまま専用の椅子に座る |
| 特に検討する症状 | GSM、腟・外陰部の乾燥、性交痛、排尿時の違和感など | 腹圧性尿失禁、産後・加齢などによる骨盤底筋機能低下 |
| 骨盤底筋への作用 | 骨盤底筋を直接鍛える治療ではない | 骨盤底筋に強い反復収縮を起こす |
| 粘膜への作用 | 腟・外陰部などの組織に照射する | 粘膜を再構築する治療ではない |
同じ「尿漏れ」「頻尿」という症状でも、原因は一つではありません。
そのため当院では、症状名だけで治療を決めるのではなく、粘膜に問題があるのか、骨盤底筋に問題があるのか、それとも両方が重なっているのかを確認することを大切にしています。
モナリザタッチとは|腟・外陰部・尿道周囲の組織を整える治療
モナリザタッチは、波長10,600nmの炭酸ガスレーザーを、腟内、腟前庭部、外陰部などにフラクショナル状に照射する治療です。
細かな点状にレーザーを照射し、微小な熱刺激を加えることで、組織の創傷治癒反応や再構築を促します。
一部の組織学的研究では、施術後に腟上皮や結合組織、血管構造などの変化が報告されています。
当院では、単に「腟内へレーザーを当てる」という考えではなく、
- 腟内
- 腟前庭部
- 外陰部
- 尿道口周囲
など、患者さまの症状が出ている場所を確認しながら治療を考えています。
更年期以降に増えるGSM
更年期以降は、エストロゲンの低下によって腟や外陰部、尿道周囲の粘膜が薄くなり、乾燥しやすくなります。
こうした変化によって起こる腟・外陰部・尿に関する症状をまとめて、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)と呼びます。
GSMでは、
- 腟や外陰部の乾燥
- ヒリヒリ感
- 灼熱感
- かゆみ
- 性交痛
- 腟入口部の痛み
- 頻尿
- 尿意切迫感
- 排尿時の違和感
- 膀胱炎を繰り返すような症状
- 軽い尿漏れ
など、さまざまな症状が現れます。
「性交痛だけ」「尿漏れだけ」と分かれているのではなく、乾燥・痛み・尿症状が一緒に起こることがあるのがGSMの特徴です。
モナリザタッチは、このような腟・外陰部・尿道周囲の組織変化に対して治療を行います。
エムセラとは|骨盤底筋を強く動かす治療
エムセラは、高強度焦点式電磁場(HIFEM)を利用して、骨盤底筋に強い反復収縮を起こす治療です。
専用の椅子に服を着たまま座り、電磁場によって骨盤底筋を支配する運動神経を刺激します。
刺激が運動神経から筋肉へ伝わることで、自分で力を入れていなくても骨盤底筋が強く収縮します。
骨盤底筋は、膀胱や尿道を下から支えています
骨盤底筋は、
- 膀胱
- 尿道
- 子宮
- 直腸
などを下から支えている筋肉です。
妊娠・出産や加齢などによって骨盤底筋の機能が低下すると、咳やくしゃみ、運動などで腹圧がかかったときに尿が漏れやすくなります。
特に、
- 咳をすると尿が漏れる
- くしゃみで漏れる
- 走ると漏れる
- ジャンプすると漏れる
- 産後から尿漏れが続いている
といった腹圧性尿失禁では、骨盤底筋機能が大きく関係しています。
骨盤底筋体操がうまくできない方にも
尿漏れの基本的な治療の一つに、骨盤底筋トレーニングがあります。
ただ、診療していると、
「締めているつもりなのに、どこに力を入れればよいか分からない」
「お腹やお尻ばかりに力が入ってしまう」
「骨盤底筋体操を毎日続けるのが難しい」
という方も少なくありません。
エムセラでは、自分の意思だけに頼らず骨盤底筋に反復収縮を起こすことができます。
骨盤底筋をしっかり動かし、筋機能を高めることを目指せる点がエムセラの大きな特徴です。
女性の尿漏れは「骨盤底筋が弱い」だけではありません
尿漏れというと、
「骨盤底筋が弱くなったから」
と思われがちです。
もちろん骨盤底筋は非常に重要です。
ただ、女性が尿を漏らさずに保つ仕組みには、
- 尿道周囲の粘膜
- 粘膜下の血管床
- 尿道を支える結合組織
- 骨盤底筋
- 尿道括約筋
- それらを動かす神経
など、複数の組織が関わっています。
「シール」と「ハンモック」で考えてみましょう
私は、患者さまには「シール」と「ハンモック」という考え方で説明すると分かりやすいと思っています。
女性の尿道は、前腟壁や骨盤内筋膜、骨盤底筋などから構成される支持組織の上に乗っています。
この支持構造は、しばしば「ハンモック」に例えられます。咳やくしゃみで腹圧が加わると、尿道がこの支持組織に押しつけられ、尿道が閉鎖されます。しかし、尿禁制にはハンモックのような支持機構だけでなく、尿道粘膜や血管床による「内側からのシール機能」も必要です。
さらに、咳やくしゃみなどで腹圧が高まったときには、骨盤底筋や尿道周囲の筋肉が収縮し、尿道を閉じる働きを助けます。
つまり尿禁制は、
粘膜・支持組織・筋肉が協力して維持している仕組み
なのです。
だからこそ、尿漏れをすべて「筋力低下」だけで考えるのではなく、腟や尿道周囲の粘膜の状態も一緒に見ることが大切だと考えています。
モナリザタッチとエムセラを組み合わせるメリット
モナリザタッチとエムセラは、同じ作用を重ねる治療ではありません。
モナリザタッチは、腟・外陰部・尿道周囲の粘膜や組織へアプローチします。
一方、エムセラは、骨盤底筋へアプローチします。
つまり、異なる二つの方向から治療することができます。
更年期以降の女性では、GSMによる粘膜の変化だけでなく、出産や加齢による骨盤底筋の弱りも同時に存在していることがあります。
このような方では、粘膜だけ、筋肉だけを見るのではなく、両方からアプローチできることが、モナリザタッチとエムセラを組み合わせる大きなメリットです。
どのような方で組み合わせを検討するのでしょうか?
例えば、次のような方です。
- 更年期以降で、尿漏れと腟乾燥の両方がある
- 尿漏れに加えて性交痛や外陰部のヒリヒリがある
- 出産後から尿漏れがあり、腟入口部にも痛みがある
- 腟や外陰部の乾燥と腹圧性尿失禁が重なっている
- モナリザタッチで乾燥や粘膜症状は改善したが、運動時の尿漏れが残っている
- エムセラで骨盤底筋にアプローチしているが、乾燥や排尿時の違和感が残っている
- 頻尿、尿意切迫感、尿漏れ、性交痛など複数の症状が重なっている
Check point
こうしたケースでは、一つの症状だけを見て治療を選ぶよりも、何が原因になっているのかを整理して、それぞれに合った治療を組み合わせることが大切です。
尿漏れにはモナリザタッチとエムセラ、どちらが向いている?
治療を選ぶときは、「尿漏れがあるか」だけではなく、どのような尿漏れなのかを確認します。
咳・くしゃみ・運動で漏れる方
咳、くしゃみ、走る、ジャンプするなど、腹圧がかかったときに尿が漏れる場合は、腹圧性尿失禁が考えられます。
特に、腟や外陰部の乾燥などの症状が少なく、骨盤底筋機能の低下が中心の場合には、骨盤底筋へのアプローチであるエムセラを検討します。
尿症状と腟・外陰部症状が一緒にある方
更年期以降で、
- 頻尿
- 尿意切迫感
- 排尿時の違和感
- 腟乾燥
- 外陰部のヒリヒリ
- 性交痛
などが重なっている場合には、GSMが関係していることがあります。
このような場合には、腟や外陰部、尿道周囲の状態を確認し、モナリザタッチを治療選択肢として検討します。
両方が重なっている方
実際の診療では、
「咳でも漏れるし、頻尿もある」
「尿漏れがあるうえ、腟も乾燥して痛い」
という方もいらっしゃいます。
こうした場合には、モナリザタッチとエムセラを組み合わせ、粘膜と骨盤底筋の両方へアプローチすることができます。
性交痛がある方では、骨盤底筋の「弱さ」だけを見ません
性交痛がある方の場合には、一つ大切なポイントがあります。
骨盤底筋は、必ずしも「弱い」とは限りません。
痛みへの不安や、長く続いた性交痛などによって、骨盤底筋が必要以上に緊張している方もいます。
この状態を骨盤底筋の過緊張と呼びます。
そのため、
「性交痛があるから骨盤底筋を鍛えればよい」
とは限りません。
当院では性交痛がある場合、
- 腟や外陰部の乾燥
- 腟前庭部の痛み
- 粘膜の状態
- 炎症
- 皮膚疾患
- 骨盤底筋の弱り
- 骨盤底筋の過緊張
などを確認します。
骨盤底筋は「弱いかどうか」だけでなく、「緊張しすぎていないか」という視点も大切です。
これは、性交痛外来でも非常に重要な診察ポイントだと考えています。
どちらを先に受けるのでしょうか?
治療の順番は、最も困っている症状と診察所見から決めます。
乾燥・ヒリヒリ・性交痛が強い場合
腟や外陰部の乾燥、灼熱感、性交痛、腟入口部痛が強い場合には、まず粘膜や外陰部の状態を確認します。
GSMによる変化が中心であれば、モナリザタッチなど、粘膜に対する治療から始めることがあります。
咳や運動時の尿漏れが中心の場合
咳・くしゃみ・運動などで尿が漏れ、粘膜症状がほとんどない場合には、骨盤底筋へのアプローチを優先します。
エムセラや骨盤底筋トレーニングなどを検討します。
粘膜症状と尿漏れの両方がある場合
GSMと骨盤底筋機能低下が重なっている場合には、モナリザタッチとエムセラを同じ時期に並行して行うこともできます。
治療回数や間隔についても、その方の症状や身体の状態に合わせて考えます。
モナリザタッチとエムセラ以外の治療が必要な尿症状もあります
尿漏れや頻尿の原因は、GSMや骨盤底筋機能低下だけではありません。
例えば、
- 膀胱炎
- 過活動膀胱
- 骨盤臓器脱
- 残尿
- 糖尿病
- 神経疾患
- 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群
などが関係していることもあります。
そのため当院では、
「尿漏れがあるからモナリザタッチ」
「頻尿だからエムセラ」
というように、症状だけで治療を決めることはありません。
必要に応じて尿検査、超音波検査、内診などを行い、原因を確認します。
原因が分かれば、
- 保険診療
- 薬物療法
- 骨盤底筋トレーニング
- モナリザタッチ
- エムセラ
- 日常生活のケア
など、必要な治療を組み合わせて考えることができます。
モナリザタッチとエムセラの併用をどう考えているか
モナリザタッチとエムセラは、作用する組織が異なります。
そのため、GSMによる粘膜・尿道周囲の変化と、骨盤底筋機能の低下が重なっている方では、両方からアプローチすることには解剖学的・生理学的な合理性があります。
一方で、モナリザタッチとエムセラを組み合わせた治療と、それぞれの単独治療を直接比較した臨床研究はまだ限られています。
そのため当院では、単純に「両方受けた方がよい」と考えるのではなく、粘膜と骨盤底筋の両方に問題がある方には、それぞれの原因へ適切に治療を行うという考え方を基本にしています。
当院では「粘膜」と「骨盤底筋」の両面から診察します
白金高輪 海老根ウィメンズクリニックでは、モナリザタッチとエムセラのどちらか一つを一律におすすめするのではありません。
診察では、
- どのような場面で尿が漏れるのか
- 咳や運動で漏れるのか
- 急な尿意があるのか
- 頻尿があるのか
- 腟・外陰部の乾燥やヒリヒリがあるか
- 性交痛や腟入口部痛があるか
- 出産歴
- 閉経の状況
- 骨盤底筋の状態
- 骨盤底筋が過緊張になっていないか
- 感染症や皮膚疾患がないか
- 骨盤臓器脱などがないか
などを確認します。
女性のデリケートゾーンや尿の症状は、一つの原因だけで起こるとは限りません。
だからこそ私は、腟・外陰部・尿道周囲の「粘膜」と、身体を支える「骨盤底筋」の両方を見ることが大切だと考えています。
モナリザタッチは、腟・外陰部・尿道周囲の粘膜や組織を整える治療。
エムセラは、骨盤底筋を強く収縮させ、筋機能を高める治療。
この二つは競合する治療ではなく、それぞれ異なる役割を持った治療です。
そして、GSMと骨盤底筋機能低下の両方がある方では、粘膜と筋肉という異なる方向からアプローチできることが大きな特徴です。
「尿漏れと腟の乾燥の両方が気になる」
「性交痛もあるので、骨盤底筋を鍛えてよいのか知りたい」
「モナリザタッチとエムセラのどちらが自分に必要なのか分からない」
という方は、どうぞ一度ご相談ください。
症状の原因を確認しながら、その方に合った治療やケアをご提案します。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



