「まず1回」から未来を守る ― HPVワクチンの新しい考え方
公開日:2026.07.31
昨日に続き、HPVワクチンについて考えさせられる記事を読みました。今回は、日頃から大変お世話になっている自治医科大学産婦人科名誉教授・今野良先生がMedical Tribuneに寄稿された「HPVワクチンは1回接種でも有効?」という記事です。
先日も今野先生とお食事をご一緒させていただき、このHPVワクチンについて長時間お話しする機会がありました。
子宮頸がんを一人でも減らしたいという強い思いと、現場の医師だからこそできる現実的な情報提供の大切さについて語られ、そのお考えに深く共感しました。
今回の記事を読み、改めてその考え方に賛同したいと思います。
「まず1回」に大きな意味がある
2025年にNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたESCUDDO試験では、12~16歳の約2万人を対象に、HPVワクチンは1回接種でも高い予防効果を示し、2回接種に対して非劣性であることが報告されました。もちろん、日本の定期接種制度では現在も決められた回数の接種が推奨されており、それを完了することが理想です。
しかし、この研究が私たちに教えてくれることは、
「全部受けられるか不安だから何もしない」より、「まず1回接種することに大きな価値がある」
という新しい視点です。
「完璧」を目指しすぎない情報提供
外来では、
「最後まで通えるかわからない。」
「部活動や受験で予定が合わない。」
「副反応が少し心配。」
そんな理由で、最初の1回をためらう方も少なくありません。
今野先生が提案されているように、
「本来は2回、あるいは3回接種することが理想です。でも、まず1回だけでも大きな予防効果があります。」
という伝え方は、多くの方の背中を押してくれるのではないかと思います。
医療者は理想を伝えるだけでなく、現実の中で一人でも多くの方が予防医療へ踏み出せるよう支援することも重要な役割です。
長期成績はこれから
今回の研究は5年間の追跡結果です。
10年、20年という超長期の効果については、今後さらに研究が続いていくでしょう。
また、追加の高リスク型への予防効果や抗体の持続という観点からも、現在推奨されている接種回数を完了することが望ましいことに変わりはありません。
ですから、この研究は
「1回で十分だから、それ以上受けなくてよい」
という意味ではありません。
「0回より1回」
という考え方を、科学的根拠を持って伝えられるようになったことが大きな意義なのです。
私もこの考え方を患者さんに伝えていきたい
これからは、接種を迷っている患者さんにはこうお話ししたいと思います。
「もちろん決められた回数まで接種することが理想です。でも、全部受けられるか不安だからと何もしないより、まず最初の1回を受けることには大きな意味があります。」
この一歩が、将来の子宮頸がん予防につながります。
子宮頸がんは予防できる時代へ
子宮頸がんは、ワクチンと検診によって予防できる数少ないがんです。産婦人科医として、一人でも多くの女性が将来子宮頸がんで苦しむことのない社会を目指したいと思っています。
今野先生の記事を読み、先日直接伺ったお話を思い返しながら、改めて感じたことがあります。
「完璧を待つより、まず一歩踏み出すこと。」
その一歩が、多くの命を守ることにつながります。
私も今野先生の現実的で患者さんに寄り添った考え方に賛同し、このメッセージをこれからも丁寧に伝えていきたいと思います。
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