生理前の吐き気・気持ち悪さは妊娠初期(つわり)?産婦人科医が原因・対処法・見分け方を解説。
更新日:2026.01.03
生理前になると、なんとなく胃がムカムカしたり、吐き気がしたり…。
「生理予定日前なのに、つわりみたいで不安」
「毎月、生理前になると気持ち悪くてつらい。これってPMS?」
こうしたご相談は、外来でもとても多く見られます。
生理前の吐き気・気持ち悪さは、PMSの一つとして“よくある症状”である一方で、妊娠初期(つわり)の症状ととてもよく似ているため、「妊娠かもしれない」という不安につながりやすい症状でもあります。
完全に見分けることは難しいのですが、
「症状が出る時期」
「続く期間」
「一緒に出るほかの症状」
に注目すると、
ある程度「PMSとして様子を見てよい場合」と「妊娠や他の病気を考えて受診した方がよい場合」の整理がしやすくなります。
この記事では、
- 生理前の吐き気・気持ち悪さが起こる主な原因
- 妊娠初期(つわり)との違い・見分け方
- 今できるセルフケアや市販薬・漢方薬の使い方
- 受診した方がよいサインと、婦人科・女性内科でできること
を、婦人科医の立場からわかりやすく解説します。
不安を必要以上にあおるのではなく、「原因」と「妊娠との違い」、「今どう動けばよいか」を一緒に整理していきましょう。
目次
生理前に吐き気・気持ち悪さが起こるのは普通?
生理前に吐き気がある、というのは、決しておかしなことではありません。
【結論】生理前の吐き気はPMS(月経前症候群)の一つとしてよく見られます
「生理前になると気持ち悪い」
「胃のムカムカが続く」
このような相談は、毎日の外来でもよく寄せられています。
生理前の吐き気・気持ち悪さは、多くの女性に見られるPMS(月経前症候群)の症状のひとつです。
PMSと聞くと、イライラや頭痛などをイメージする方が多いかもしれませんが、吐き気を感じるのも決して珍しいことではありません。
排卵後〜生理前の時期には、女性ホルモンの分泌量が大きく変化します。
この“ホルモンの揺らぎ”が胃腸や自律神経に影響し、吐き気やだるさとして現れることがあるのです。
まずは、「生理前に気持ち悪くなること自体は、おかしなことではない」と安心していただければと思います。
ただし、妊娠初期症状(つわり)と非常によく似ています
一方で、生理前の吐き気は妊娠初期(つわり)の症状と非常によく似ているため、「妊娠したのかな?」と一喜一憂してしまうという方も。
つわりかどうかを、症状のセルフチェックだけで完全に見分けるのは簡単ではありません。
ただし、次のような点に着目して、「妊娠初期症状(つわり)」かどうかをある程度見分けることができます。
-
症状が出始める時期
-
吐き気が続く期間
-
生理が来るかどうか
このあと詳しく解説していきますので、生理前の吐き気にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
【原因編】生理前に吐き気・気持ち悪さが起こる5つのメカニズム
生理前の時期に生じる吐き気は、複数の要因が重なって起こりやすいのが特徴です。
ここでは、代表的な5つのメカニズムを解説します。
原因① 黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響【胃の動きが鈍くなる】
排卵後の「黄体期」は、女性ホルモンのうち、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌がとくに増加する時期です。プロゲステロンには、胃腸の動きをゆっくりにする作用があるため、以下のような症状を引き起こします。
-
胃もたれ、吐き気
-
胸焼け(胸の辺りがムカムカする)
-
便秘
胃の動きがゆっくりになった結果、食べ物が胃に長く留まりやすくなり、胃もたれや吐き気、すぐにお腹がいっぱいになるような感覚が出ます。
また、腸の動きが悪くなることで、便秘も併発するのです。
原因② ホルモン変動による自律神経の乱れ(PMS)【複数症状のセット】
生理前は、2つの女性ホルモンの分泌量は急激に変動しています。
女性ホルモンの分泌を司る脳の「視床下部」という部位では、自律神経の調節も担っているため、女性ホルモンのバランスが乱れると自律神経も影響を受けやすくなるようです。
自律神経の乱れにより、吐き気をはじめ、めまいや頭痛、だるさ、眠気といった多彩な症状が同時に押し寄せます。
原因③ 血糖値の変動【空腹時のムカムカ】
あまり知られていない印象ですが、生理前には普段よりも血糖値が乱高下しやすいです。
プロゲステロンが大量に分泌されると、血糖を下げるホルモン「インスリン」の作用がやや弱まり、ふだんよりも血糖値が上昇しやすくなると言われています。上がった血糖値を下げるため、体からインスリンが多く分泌され、結果として、血糖値の上がり下がりが大きくなってしまうのです。
これが、生理前に感じる「なんとなくずっと空腹感がある」という感覚につながると考えられています。
血糖値が下がるタイミングで空腹感が強くなり、その際にムカムカした吐き気を伴う方もいます。このタイプの吐き気は、少量ずつこまめに食事を摂ることで楽になることが多いです。
原因④ プロスタグランジンの影響【胃痛や下痢】
生理が近づくと子宮内膜が厚くなり、子宮内膜を排出する準備として「プロスタグランジン」という物質の産生が増えます。プロスタグランジンは、子宮を収縮させ、子宮内膜を経血として排出させる物質です。
ただし、プロスタグランジンは子宮だけに作用するわけではありません。
腸に作用すると腸の動きを活発にしてしまうため、胃痛や吐き気、下痢または便秘、腹痛、お腹の張りといった症状も引き起こすことがあります。
このあとに、【症状セット編】として、吐き気と一緒に出る症状によって原因を推察できるということを解説いたします。参考にしてください。
原因⑤ ストレスやPMDD(重症PMS)
生理前のさまざまな症状により心身のストレス(疲労、睡眠不足など)が蓄積すると、自律神経のバランスをさらに崩し、吐き気を悪化させる原因となります。
さらに、気分の落ち込みや不安、イライラなどの精神的な不調があり、いつもと同じような生活を送れないほどつらいという方は、「PMDD(月経前不快気分障害)」かもしれません。
問診や検査などにより医師がPMDDと診断できれば、より専門的な治療をすることができます。
「生理前だけ極端に精神的に苦しい」という場合は、一度ご相談ください。
>>生理前のイライラは認識初期症状?PMS・PMDDについて
【比較編】生理前の吐き気と妊娠初期(つわり)の決定的な違い
生理前の吐き気と妊娠初期のつわりは症状がよく似ており、セルフチェックだけで100%の判断をすることは難しいです。
とはいえ、傾向として違いはありますので、どのような点に注目すると違いがわかりやすいのか、医師の視点で整理していきます。
【比較表】PMSの吐き気 vs 妊娠初期のつわり
下の表は、PMSなのか妊娠初期症状なのか、皆さんが一目で違いをつかめるようにまとめたものです。
ただし、症状は個人差が大きいため「必ずこうなる」というものではありません。あくまでも傾向として、参考にしてください。
| 比較ポイント | 生理前(PMS)の吐き気 | 妊娠初期(つわり) |
|---|---|---|
| 時期 | 生理予定日の3〜10日前ごろから出やすい | 生理予定日ごろ〜1週間後以降から始まりやすい |
| 持続する期間 | 生理が始まると軽快する | 数週間〜数か月続く |
| 吐き気の特徴 | 断続的なムカムカ感が中心 | 強い吐き気が持続する傾向にある |
| においへの敏感さ | あまり目立たない | 匂いに敏感になる方もいる(においづわり) |
| 一緒に出やすい症状 | 頭痛、めまい、腰痛、眠気、イライラ | だるさ、眠気、乳房の張りや痛み、食欲の変化 |
| おりものの変化 | 量は少なめで、粘つきがあり白〜クリーム色になる傾向にある | 妊娠初期は量が増え、サラッとして白っぽい傾向にある |
妊娠初期の吐き気の特徴
妊娠初期の吐き気(つわり)は、生理予定日を過ぎて1週間ほどしてから症状が出始めることが多いです。
女性ホルモンの変化に加えて、着床後に分泌が始まるhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)の影響で、胃腸の働きが乱れたり、においに過敏になったりします。
つわりにはいくつかのタイプがあり、次のような形であらわれることがあります。
・食べつわり
空腹になると気持ち悪くなる、食べていないとつらい
・吐きつわり
食べても食べなくても吐き気が続く
・においづわり
食べ物や生活臭などさまざまなにおいに敏感になり吐き気が出る
・混合型
いくつかの症状が組み合わさるタイプ
妊娠初期症状はPMSと非常によく似ていますが、症状が経過とともにだんだん強くなる点や、長く持続する点が異なります。
なお、妊娠の確定診断には、尿検査(妊娠検査薬)や超音波検査(エコー)が必要です。
症状だけで判断せず、気になる場合は早めに検査を受けましょう。
妊娠検査薬は、月経周期が安定している方であれば「生理予定日ごろ(妊娠4週0日)」から反応し始めます。 ただし、多くの妊娠検査薬は、より正確な判定のために「生理予定日の1週間後」からの使用を推奨していますが、妊娠していれば妊娠判定は陽性になります。
妊娠初期症状を詳しく知りたい方へ
妊娠初期症状はいつから・いつまで?超初期の兆候チェックリスト20と陽性後のロードマップ
生理前特有の吐き気の特徴
一方で、PMSとして起こる吐き気には次のような特徴があります。
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生理予定日の3〜10日前から出始める
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生理開始とともに軽くなる、または消える
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ムカムカ感や胸焼けに近い不快感が中心で、強い嘔吐はまれ
-
頭痛、めまい、腰痛、眠気、むくみ、イライラなどの他のPMS症状とセットで出ることが多い
-
においへの過敏さはあまり目立たない
このように、症状の出るタイミングと持続期間は、妊娠初期症状との違いを見分ける大きなポイントとなっています。
【時期編】PMSの吐き気・妊娠初期のつわりはいつからいつまで?
吐き気の原因を見分けるときに、「症状が出始めた時期」は非常に重要な手がかりになります。
PMSの吐き気と妊娠初期のつわりでは、症状が始まるタイミングも、落ち着いていく時期も大きく異なります。
ここでは、それぞれの一般的なタイムラインをみていきましょう。
PMSの吐き気は「生理何日前からいつまで」続く?
PMSの吐き気が出る時期は、女性の月経サイクルの「黄体期(排卵後〜生理まで)」と一致します。
・排卵日(生理の約2週間前)
生理開始日〜次の生理開始日の、ちょうど真ん中あたりで排卵が起こります。排卵後から生理開始までの期間が、黄体期です。
・生理予定日の1〜2週間前
プロゲステロンの分泌量が大きく増え、吐き気・胸のムカムカ・だるさなどが出てくるようになります。
・生理直前〜生理開始前後がピーク
胃腸の動きの低下や、自律神経の乱れが最も強くなる時期です。吐き気を強く感じる方もいます。
・生理開始後1〜2日
ホルモンバランスがリセットされ、吐き気や胃のムカムカなどのPMS症状は落ち着いていきます。
Check point
多くの方ではこのような流れになりますが、PMSは体質・ストレス・生活リズムなどの影響を強く受けるため、「症状が出始める時期」「症状の強さ」「続く期間」は人によって、また月によっても違うのが特徴です。だいたいの目安として考えてください。
妊娠初期のつわりはいつからいつまで?
妊娠初期のつわりは、妊娠ホルモン(hCG)の急激な上昇が関わるため、PMSとは時期がまったく異なります。
・生理予定日から1〜2週間後(妊娠5〜6週)
hCGの分泌が増えるに伴って、吐き気、においに敏感になるなど、つわりの症状が出始めます。妊娠5週頃からうっすらと感じ始めることが多いです。妊娠6週過ぎる頃になると、徐々に悪化し始めます。
・妊娠8〜11週頃
つわり症状のピークは10~12週であることが多いです。
空腹で症状が強くなる人と食べた後に症状が強くなる人がいます。朝方または疲れた夕方以降に症状が強くなります。
・妊娠12〜16週頃
hCGの分泌が減り、胎盤が完成してくると、症状がだんだんと落ち着いていきます。
つわりが出るかどうか、またどれくらい続くかには個人差が非常に大きいです。ほとんどない方、妊娠12〜16週ごろでおさまる方、出産の直前までずっと続く方。予測するのは難しいでしょう。
これまでは、hCGや女性ホルモンのバランスがつわり症状の主な原因と考えられていました。
現在は、それに加えて胎盤から分泌される「GDF15」の存在、ビタミン不足、精神面、水分コントロールや血糖のコントロールなどにより、さまざまな要因が絡み合って生じると考えられています。
吐き気が出始めた「時期」だけで妊娠の判断はできませんが、一般的に、生理予定日よりも7日前後早い時期からの吐き気であれば、PMSである可能性が高いといえます。
逆に、生理予定日を過ぎても生理が来ず、2週間ほど経過してから吐き気が強くなってきたという場合は、妊娠初期症状の可能性が考えられます。
【症状セット編】吐き気と一緒に出る症状別・考えられる原因
生理前の吐き気は単独で出ることもありますが、他の症状と一緒に出てくることも多いです。どんな症状が一緒に出るかによって、原因の目星がつきやすくなることがあります。
ここでは、吐き気と一緒に出やすい代表的な症状と、そのときに考えられる原因を解説します。
【Case1】吐き気+頭痛(ズキズキ・ガンガン)
生理前の吐き気に頭痛を伴う場合、PMSに伴う片頭痛や緊張型頭痛が考えられます。
とくに、次のような症状が出る場合は、典型的な月経関連片頭痛(月経前後に悪化する片頭痛) の可能性があります。
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ズキズキする痛み(頭の片側または両側)
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光や音がつらい
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動くと痛みが強くなる
片頭痛はエストロゲンの影響が強いと考えられており、生理開始2日前〜生理開始後3日後の期間に多いです。
人によっては、寝込むほど症状が重くなります。ジエノゲストや漢方薬などでの予防治療、頭痛に対する対症療法が可能です。睡眠を十分にとることが大切です。
一方、肩こり・首こりが強い方は、筋肉の緊張による緊張型頭痛に吐き気が加わるケースもあります。無理のない範囲でストレッチや軽い運動、肩までゆっくりつかるような入浴を取り入れると良いかもしれません。
いずれの頭痛も、「生理前に毎月同じように頭痛と吐き気が出る」という場合は、PMSの影響が大きいと考えられます。
【Case2】吐き気+腹痛・下痢・胃痛(キリキリ)
この組み合わせは、プロスタグランジン(生理前に増える物質)の影響による典型的なものです。
プロスタグランジンは子宮を収縮させる物質ですが、腸にも作用しやすく、腹痛や下痢(便秘の方もいます)、お腹の張り、胃がキリキリするような痛みが出てくることがあります。
「生理前、お腹の調子が乱れて、吐き気もセットで出る」という方は多く、ホルモン変動と腸の動きが深く関係しています。
痛み止めのほか、胃腸の強い収縮を抑えるための薬を選択することがあります。
【Case3】吐き気+胸焼け・食欲不振・胃もたれ
生理前に胸のムカムカや食欲不振が強く、吐き気が続くタイプは、胃の動きの低下(機能性ディスペプシア)や、胃酸の逆流が関係している可能性があります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)は胃腸の動きをゆっくりにするため、生理前は食べ物が胃に長くとどまって食欲が湧きにくくなったり、胃酸が逆流しやすかったりといった状態に陥りやすいです。
このタイプの吐き気は、次のような工夫で軽減しやすいです。
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寝る前の食事は控える
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脂っこい食事は避け、胃が消化しやすいものを選ぶ
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コーヒーやアルコール、刺激物を減らす
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少量ずつこまめに食べる
食事の内容に工夫をし、胃の負担を減らすことで、吐き気も落ち着いていきます。
【Case4】吐き気+強い眠気・だるさ
「とにかく眠い」「体が重くて動けない」という症状が吐き気と同時に出る場合、原因としては、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響や自律神経の乱れ、血糖値の変動が大きく関わっていると考えられます。
この状態は、妊娠初期によくみられる眠気(プロゲステロン・hCGの影響)とも似ているため、PMSとの混同が非常に多い組み合わせです。
「生理前の眠気(PMS)と妊娠初期の眠気の違い」は、先ほど紹介した比較の表をご確認ください。
さらに、後ほど紹介するフローチャートも参考にしてください。
【Case5】吐き気+めまい・ふらつき
吐き気に加えて、ふわっとするめまいや立ちくらみ、ふらつきがある場合は、自律神経の乱れや血圧変動、軽い貧血傾向が関係しているかもしれません。
とくに、生理前は自律神経の乱れにより血管の拡張・収縮がスムーズに切り替えられず、立ち上がったときにクラッとしたり、気分が悪くなったりしやすいです。
ただし、倒れそうになる、座って安静にしていてもぐるぐる回る感じが続く、強い動悸を伴うといった場合は、単なるPMSではないメニエール病や心疾患などの病気が隠れている可能性もありますので、一度受診をおすすめします。
思春期の方に多いですが、実際に血液検査で鉄の欠乏が認められる場合は、鉄剤の服用で症状が改善することもあります。
今すぐできる!生理前の吐き気・気持ち悪さを和らげる対処法
生理前の吐き気は、生活のちょっとした工夫で軽くできるかもしれません。ここでは、妊娠の有無に関わらず実践できる、簡単なセルフケアを中心にご紹介します。
ただし、妊娠の可能性がある場合は、「市販薬はすべてダメ」と思い込んで我慢し続けるよりも、自己判断で市販薬を使う前に一度ご相談ください。症状や妊娠週数に応じて、妊娠中でもお薬を選びます。
【対処法1】食事・食べ方の工夫(低血糖・胃もたれ対策)
吐き気は、胃の動きが低下したり、血糖値が乱れたりすることで起こりやすくなります。「食べ方の工夫」で、症状を軽減できる可能性がありますので、試してみてください。
・空腹を避ける、少量をこまめに食べる
1日3食にこだわらず、少量を1日5〜6回に分けて食べると、血糖値が低くなるのを予防できるため、吐き気が楽になることがあります。
・胃にやさしい食べ物を選ぶ
おかゆ、豆腐、温かいスープ、バナナ、おいもなどは消化がよく、胃腸に負担がかかりにくいです。
・胃の負担になる食べ物は避ける
脂っこい料理(揚げ物・脂身の多い肉や魚)、ファストフード、香辛料が強い料理、アルコール、カフェイン(コーヒー・紅茶・エナジードリンクなど)などは、胃腸に負担をかけるため、吐き気の原因になってしまうことがあります。
【対処法2】セルフケア(自律神経を整える)
自律神経が乱れると吐き気が悪化しやすいため、体をゆったり整えるセルフケアも効果的です。
・白湯・温かい飲み物で身体を温める
冷えは胃腸の動きや自律神経に影響します。白湯、生姜湯、温かいお茶などで体を中から温めるようにしましょう。
・吐き気に効くツボ「内関(ないかん)」を押してみる
手首の内側の、手のひら側のシワから指3本分ひじ側にある、くぼみの部分です。親指の腹を使って、気持ちよいと感じるくらいの強さで押してみましょう。ゆっくり円を描くようにマッサージするのもよいです。
・締め付けの少ない服装にする
ウエストやみぞおち周りがピッタリとしている洋服は、胃の圧迫で気持ち悪さを悪化させます。ゆったりした服を選びましょう。
・軽いストレッチ・散歩を取り入れる
激しい運動は不要ですが、肩回しなどの簡単なストレッチや、10分程度の散歩などで血流が改善すると、自律神経も整いやすくなります。
【対処法3】市販薬・漢方薬の活用と注意点
市販薬で症状を和らげるのも一つの方法です。ただし、持病がある方や妊娠の可能性がある方は、医師に相談してください。
・市販薬について
「薬を飲んだら赤ちゃんに悪いのでは…」と、吐き気や気持ち悪さがつらくても我慢してしまう方も少なくありません。
一般的に、市販されている多くの薬は、妊娠中に重大な影響が出ることは多くありませんが、吐き気止めは医師に相談しましょう。
「妊娠しているかもしれない」
「妊娠がわかったあと」
に市販薬が必要な場合は、
“我慢するしかない”と耐えるよりも、産婦人科などで主治医に相談し、妊娠中でも比較的安全性が高いと考えられるお薬を処方してもらうことをおすすめします。
・胃腸薬・漢方薬について
胃腸薬
生理前の吐き気や胸やけが強いときに、次のような胃腸薬が使われることがあります。
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消化を助ける薬:リパーゼ、ビオヂアスターゼ など
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胃酸を抑える薬:ファモチジン など
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胃腸の動きを助ける薬:ケイヒ、ショウキョウ、ソヨウ、チンピなどの生薬成分
妊娠中の胃薬の選択は医師が行いますので、主治医に相談しましょう。
漢方薬
PMS症状に対して、次のような漢方薬が有効な場合があります。市販薬として購入できるものもありますが、体質に合わなければ効果を感じにくく、妊娠中・妊娠の可能性がある場合には使い分けが必要です。
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呉茱萸湯:体が冷えやすく、片頭痛を伴う吐き気・下腹部痛などに
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半夏厚朴湯:気分のふさぎ・喉のつかえ感を伴う吐き気やめまい、不安感などに
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加味逍遙散:自律神経の乱れによるイライラ・不安感・吐き気などに
使ってみても改善が乏しい場合や、妊娠の可能性がある場合は、医療機関で体質や妊娠の有無も含めて相談したうえで処方を受ける方が安心です。
【受診の目安】危険なサインと婦人科・女性内科でできること
我慢しないで受診してほしい危険なサイン
次のような症状がある場合は、自己判断で様子を見ず、早めに受診してください。
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水分や食事がほとんど取れないほど吐き気が強い
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嘔吐が続き、ぐったりしている、ぼーっとしてきた
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脱水の心配がある
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立っていられないほどの腹痛、片側だけの鋭い痛みがある
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38℃以上の発熱を伴う
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妊娠検査薬が陽性なのに、強い腹痛や腟からの出血がある
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「今回の症状はいつものPMSと明らかに違う」と感じる
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初めての強い吐き気で、原因がわからず不安が大きい
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体重が5㎏以上減少した
これらの症状がある場合、PMSでは説明できない他の病気が隠れている可能性があります。
不安なまま過ごしたり、体調を崩してから受診したりするよりも、少しでも早めに医療機関へご相談ください。
婦人科・女性内科でできること(PMS/PMDD治療)
まずは、原因を明らかにして適切な治療をするために、問診や血液検査、超音波検査などをおこないます。
PMSやPMDDであった場合、低用量ピル(OC)や超低用量ピル(LEP)、黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)などを服用してホルモン変動を整えることで、以下のような症状を総合的に緩和することが期待できます。
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生理前の身体症状(吐き気、だるさ、眠気、腰痛など)
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生理前の精神症状(気分の波、強い落ち込みや不安、わけもなく涙が出るなど)
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ひどい生理痛
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経血量が多いことによる貧血(めまい、立ちくらみ)
そのほか、一人ひとりの状態に合わせ、漢方薬や、PMDDの治療のために必要な場合は少量の抗うつ薬なども併用し、症状に悩まされずに過ごせるようサポートしていきます。
生活習慣などもお伺いし、改善できそうなポイントはお伝えいたします。
>>生理前のイライラは認識初期症状?PMS・PMDDについて
【行動編】妊娠の可能性がある?と思ったときのフローチャート
【STEP1】生理予定日をすぎているか確認
まずは、自分の生理周期を振り返り、「生理予定日を過ぎているかどうか」を確認しましょう。
もともと月経は、「妊娠しなかったときに、赤ちゃんのベッドになる子宮内膜を入れ替えるための出血」です。妊娠していれば子宮内膜はそのまま赤ちゃんのために使われるので、月経は来なくなります。
予定日より少し早い時期の吐き気なら、PMSの可能性が高いでしょう。
一方で、予定日の前後から始まった吐き気で、生理が遅れているのであれば、妊娠の可能性を考えます。
基礎体温をつけている方は、高温期が16日以上続くと妊娠の可能性が上がります。
【STEP2】生理予定日以降に妊娠検査
妊娠検査薬は、月経周期が安定している方であれば「生理予定日ごろ(妊娠4週0日)」から反応し始めることが多いです。
ただし、市販されている多くの妊娠検査薬は、より正確な判定のために「生理予定日の1週間後」からの使用を推奨しています。
妊娠すると、受精卵が子宮内膜に着床し、「絨毛(じゅうもう)」という組織が育ちます。この絨毛からhCGというホルモンが作られ、ママの血液に入り、最終的には尿として排出されます。
妊娠検査薬は、この尿中のhCGをキャッチして妊娠しているかどうかを判定します。
hCGの量が十分に増えるまでには少し時間がかかるため、生理予定日前〜予定日直後などに検査をすると、妊娠していても陰性と出てしまう「フライング検査」になる場合があります。
「できるだけ正確に知りたい」という場合は、生理予定日から1週間ほどたってから検査してみましょう
【STEP3】妊娠検査が「陽性」なら受診を
検査薬で陽性反応が出た場合は、必ず産婦人科を受診してください。
妊娠が確認できたら、医師は次の点をチェックします。
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胎嚢(たいのう:赤ちゃんの袋)が子宮内に確認できるか
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胎嚢のサイズが妊娠週数相当か
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子宮外妊娠の可能性がないか
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子宮内に血腫が認められないか
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卵巣嚢腫などの婦人科合併症がないか
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胎嚢は1個か(双胎や品胎はないか)
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絨毛疾患(存続絨毛症や絨毛がん)の可能性はないか
妊娠検査薬が陽性になったごく初期(ちょうど妊娠4週頃)では、まだ超音波で胎嚢が見えないこともあります。
その場合は、数日〜1週間ほどあけて再度超音波で確認します。
胎嚢が見える前に月経のような出血が起こり、「妊娠判定は陽性だったのに、その後出血して流産(化学流産)」と診断されることもあります。
妊娠が継続しているかどうかは、妊娠6週頃に胎児の心拍が確認できるかどうかがとても重要なポイントになります。
また、化学流産の子宮外妊娠をきちんと診断することは、非常に大切です。
受診時期や次の受診タイミングについては、医師の指示に従ってください。
【STEP4】妊娠検査が「陰性」の場合
陰性=妊娠していない、と断言できない場合もあります。
次のようなケースは注意が必要です。
・陰性だけど生理が来ない
排卵日がズレていた場合、hCGが十分に増える前に検査している可能性があります。
数日〜1週間ほどあけて、再検査してみてください。
・陰性でも吐き気や眠気など体調不良が続く
ホルモンバランスの乱れやストレス、甲状腺疾患、消化器疾患など、別の原因が隠れていることもあります。
非常にまれですが胃がんや卵巣がんなどの可能性も0ではありません。早めの婦人科受診をおすすめします。
・生理が2週間以上来ない/全く兆候がない
月経不順、無排卵、内科的な問題などの可能性が考えられます。
早発閉経の可能性も否定できません。「そのうち来るだろう」と放置せず、必ず一度受診してください。
生理前の吐き気・気持ち悪さに関するQ&A
Q1. 生理前の吐き気はいつまで続きますか?
多くの場合、排卵後〜生理が始まる直前まで(高温期)のあいだに出現し、生理が始まると少しずつ軽くなっていきます。高温期のほとんどの期間ずっと続く、月ごとにどんどん悪化する、出血後も長く続く場合は、一度ご相談ください。
Q2. 妊娠検査薬は陰性ですが、吐き気が強く心配です。
検査のタイミングが早すぎると、妊娠していても陰性になることがあります。
生理予定日の1週間後以降に再検査しても陰性で、吐き気が強い・長引く場合は、PMS以外の原因も含めて婦人科での相談をおすすめします。
水分もとれない、めまい・ぐったり感を伴うときは早めに受診しましょう。
Q3. 生理前に胃痛や胸焼けもありますが、よくあることですか?
生理前はホルモンバランスの変化や自律神経の乱れで、胃のムカつき・胸焼け・軽い胃痛が出る方も少なくありません。ただし、キリキリした強い痛み、食事のたびに悪化する、黒っぽい便が出るなどの場合は、胃炎や胃潰瘍など別の病気が隠れていることもあるため、早めの受診をおすすめします。
Q4. 吐き気が夜だけひどくなることはありますか?
はい、あります。
1日の疲れがたまる夕方〜夜や、空腹・食べ過ぎ・姿勢(前かがみ)などの影響で、夜に吐き気や気持ち悪さが強くなる方もいます。
ただし、夜間に何度も吐いて眠れない、水分もとれない、といった場合はつわりや他の病気の可能性もあるため、我慢せずご相談ください。
Q5. 生理前の吐き気だけで受診しても、大げさではありませんか?
まったく大げさではありません。
吐き気が続くと、仕事や家事、育児にも支障が出てつらいですよね。PMSの範囲内かどうか、妊娠や他の病気が隠れていないかは、ご自分だけで判断するのが難しいことも多いです。
「様子を見ていいのか不安」「毎月つらい」という時点で、一度相談していただいて大丈夫です。特に体重が5㎏以上減った、水分も摂れないという場合は必ず産婦人科を受診しましょう。
Q6. 毎月、生理前の吐き気がとても強いのは病気でしょうか?
必ずしも大きな病気とは限りませんが、毎月強い吐き気で生活に支障が出る場合は、受診をおすすめします。強いPMS・PMDD、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの問題、まれに子宮や卵巣の病気・甲状腺の異常などが背景にあることもあります。市販薬でやり過ごすより、原因を確認したうえで、あなたに合った治療や漢方・ピルなどを提案できます。
Q7. 低用量ピルを飲んでいても、生理前に吐き気が出ることはありますか?
あります。
低用量ピルはホルモンの波を安定させることでPMSを軽くすることが期待できますが、人によっては体質に合わず、吐き気や気持ち悪さが出る場合もあります。
飲み始めて数ヶ月で体が慣れてくることもありますが、「つらい」「続けられない」と感じる場合は、別の種類のピルに変える・他の治療法を検討することもできますので、我慢せずにご相談ください。
Q8. 吐き気があるとき、仕事や学校・家事は休んだ方がいいですか?
無理をして頑張りすぎると、自律神経の乱れや疲れがたまり、かえって吐き気が長引くことがあります。立っているのもつらい、集中力が切れて危ないと感じるようなときは、できれば一度しっかり休息をとることも「治療の一部」と考えてください。
頻繁に休まざるを得ない状態が続く場合は、治療や生活習慣の見直しで症状を軽くできることも多いので、早めの受診をおすすめします。
Q9. 妊娠を希望しています。吐き気があるとき、市販薬は飲まない方がいいですか?
妊娠を希望していると、「薬は全部ダメ」と思ってしまいがちですが、排卵日〜生理予定日前後は薬の影響はほぼありません。
比較的妊娠中に安全な薬を選択することができますので婦人科と相談しましょう。
【まとめ】生理前の吐き気は我慢しないで。妊娠との見分けは「時期」が大きなヒントに
生理前の吐き気・気持ち悪さは、PMSの一つとしてよくみられる症状です。
一方で、妊娠初期(つわり)とも症状がよく似ているため、
「これは毎月のこととして様子を見ていてよいのか」
「妊娠なのかもしれない」
と不安になってしまいますよね。
この記事のポイントを、あらためて整理しておきます。
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生理前の吐き気はPMSとして“よくある”一方で、毎月つらくて生活に支障が出ている場合は、治療で楽になる可能性があります。 我慢するしかない症状ではありません。
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妊娠との見分けは完全に線を引くことはできませんが、「症状が出始める時期」「どのくらい続くか」「生理が来るかどうか」が大きなヒントになります。 生理予定日から1週間以上たっても生理が来ない場合は、妊娠検査薬で確認しておきましょう。
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水分もとれないほどの強い吐き気・嘔吐、強い腹痛や出血、発熱を伴う場合は、PMSでは説明できない病気が隠れていることもあります。
こうしたサインがあるときは、自己判断で様子を見ず、早めの受診が安心です。
「妊娠かどうかが不安」
「毎月のPMSがつらい」
「市販薬に頼り続けていていいのか心配」
そんなときは、一人で抱え込まず、ご相談ください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニックでは、婦人科と女性内科の両面から、原因の見極めと、お一人おひとりに合った治療・セルフケアの方法をご提案しています。
受診をご希望の方は、下記の予約ページからお気軽にご予約ください。
あなたの「つらい毎月」が、少しでも軽くなるお手伝いができれば幸いです。
ご予約について
予約制となっております。
【土日祝日も診療】全ての医師やスタッフは女性です。ご安心してご来院ください。
平日受診できない方に通院していただきやすいよう、毎朝8時30分から診療を受け付けています。
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オンライン診療も対応しておりますので遠方の方やご来院が難しい方は是非ご利用ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。




