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生理・妊娠

生理前のイライラは妊娠初期症状?PMS・PMDDセルフチェックと今すぐできる対処法を婦人科医が解説。

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「生理前になると、感情がコントロールできず夫や子どもに八つ当たりして自己嫌悪に陥ってしまう…」

そんなふうに、PMS(月経前症候群)の症状でお悩みはありませんか?

 

「自分の性格が悪いせいだ、PMSくらいで我慢が足りないんだ」

自分を責めてしまっている女性はとても多いです。

 

また、妊活中の方からは

「生理前の症状がいつもと少し違うと、妊娠なのかも!と一喜一憂してしまい、つらい」

という声も耳にします。

 

生理前には、

どうしても自分で気持ちのコントロールが難しくなってしまうことがあります。イライラや自己嫌悪、気持ちの波などは、あなたの性格や忍耐力のせいではないということを知っていただきたいという思いから、今回の記事を書こうと決めました。

すべて、「ホルモンの影響」なのです。
少しでも自分が穏やかに過ごせるよう、治療をしてみませんか?

 

PMSには、

さまざまなアプローチ方法(ピル、漢方、その他薬物療法)があり、きっと合う治療が見つかります。

そして、精神的な不調症状が強く日常生活に支障をきたす場合は、PMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。

我慢ではなく、適切なアプローチが重要です。

 

また、生理前の症状と妊娠初期症状には、似ている部分があります。

その区別についても、婦人科医の視点から解説いたします。

 

そのイライラ、「生理前」と「妊娠初期」どちらのサイン?

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意外と見落とされているのが、生理前の不調が「妊娠初期のサイン」と似ているという点です。

症状だけで妊娠かどうかを100%判定することは難しいですが、症状の傾向はあります。

生理前のPMS症状は?

女性ホルモン(エストロゲンおよびプロゲステロン)が原因です。

妊娠初期症状は?

エストロゲンとプロゲステロンに加えて、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの影響が加わります。hCGは着床後から妊娠10〜12週ごろをピークに分泌されるもので、「つわり」の原因物質の1つとも考えられています。

 

項目 PMS(月経前症候群) 妊娠初期症状
原因 排卵後の黄体期におけるホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の急激な増減 エストロゲン・プロゲステロンに、妊娠ホルモンのhCGの影響が加わる
症状の出る時期 生理予定日の約1〜2週間前(排卵後)から生理開始まで 受精・着床後(生理予定日前後から)
精神的な症状 イライラ、落ち込み、不安、集中力の低下 情緒不安定、涙もろさ、集中力の低下
体の症状 胸の張り、下腹部の張り・痛み、頭痛、むくみ、便秘、肌荒れなど 胸の張り、眠気、だるさ、吐き気、味覚や嗅覚の変化、わずかな出血(着床出血)など
基礎体温の変化 排卵後に高温期となり、生理直前に体温が下がる 高温期が2週間以上続くことがある
症状の持続期間 生理が始まると数日以内に改善・消失 数週間〜数か月続くこともある

妊娠の可能性がある場合は、妊娠検査を生理予定日以降に試してみましょう。

>>生理前症状と妊娠初期症状の違いの徹底解説記事はコチラ

【Check point】妊娠以外で生理がこない原因は?

妊娠以外で生理がこなくなる要因については、こちらの記事で解説しております。

>>生理がこない…不安で焦る方へ
【危険度・原因・対処法を解説】

生理がきて、それと同時に心身の症状が軽快・消失するのであれば、PMSやPMDDが考えられます。

 

なぜ生理前はイライラする?医師が教える2つの医学的理由

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「生理前になると、ついパートナーや家族に当たってしまう」

「仕事に集中できず、自分でもコントロールが効かない」

そんな経験はありませんか?

 

月経周期と女性ホルモンの変化をおさらい

これは決して「性格や忍耐力の問題」ではなく、体の中で起きているホルモン変化による自然な反応です。

まずは、イライラの原因を、医学的にしっかりと説明いたします。

PMSの明確な原因はまだ完全には解明されたわけではないのですが、月経周期に伴って、女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が変動し、脳内の神経伝達物質の働きに影響を与えることが主な原因と考えられています。

月経周期と合わせて、ホルモン分泌の動きをみてみましょう。

月経周期とホルモンの変動図

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月経が終わった直後は、2つのホルモン分泌量はいずれも少ない状態です。

まずはエストロゲンの分泌量が高まる「卵胞期(月経終了〜排卵まで)」が始まります。エストロゲンの分泌量がピークに達すると、脳から命令が出て排卵が起こり、エストロゲンの分泌量はグッと減ります。

そして、入れ替わるようにプロゲステロンの分泌量が増え、子宮内膜が厚くなる「黄体期(排卵後〜月経開始まで)」になります。一度分泌量が減ったエストロゲンも、再度分泌量が増えます。妊娠が成立しなかった場合は、子宮内膜が剥がれて月経が起こります。

PMSが生じるのは、「黄体期」にエストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に減少するタイミングです。

理由① エストロゲン低下と「セロトニン」の減少

エストロゲンは、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の合成を促す作用があるため、エストロゲン分泌量が減るとセロトニンも減ってしまい、気分の落ち込みを生じるのです。

分泌量が安定しないと精神的に不安定となり、イライラしたり落ち込んだりしやすくなります。

理由② プロゲステロン低下とむくみ・不安感

また、プロゲステロンはからだに水分や栄養を溜め込んで、妊娠に備えるためのホルモンであるため、月経前には胸の張りや手足のむくみ、食欲増進といった体の症状に繋がりやすいです。

さらに、プロゲステロンの代謝物(アロプレグナノロン)は、GABA受容体というものを介したリラックス効果・抗不安効果を持っています。プロゲステロンの減少によって、代謝物も減少し、不安が強くなってしまうのです。

PMSが出やすいかどうちは「体質・感受性」の問題

PMS症状が全くない方も、生活に支障が出るほどつらい方もいらっしゃいます。

その原因には、女性ホルモンの「感受性(効きやすさ)」が影響しているのではないか、と考えられています。

分泌量の変化を体が敏感に察知してしまう方は、症状が出やすいということです。
これは体の個人差の問題であるため、「PMSは甘え」「我慢が足りない」などということは、全くありません。

シフト勤務などで生活が不規則な方、心身のストレスが多い方も、PMS症状が出やすいと言われています。

 

【セルフチェック】そのイライラ、我慢しないで。「PMDD」の可能性は?

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PMSの中でも、特にイライラや落ち込み、不安感といった精神的な症状が非常に強く、日常生活に深刻な支障をきたす場合、PMDD(月経前不快気分障害)という精神疾患の可能性があります。

PMDDの場合、低用量ピルだけでは改善が難しく、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬など、別の治療法が必要になることがあります。
生理に伴う精神的なつらさは、我慢すべきものではなく、治療の対象です。

生理のある女性の5%前後がPMDDに該当すると推察されており、決して少なくない数の女性が悩まされている病態といえます。

 

PMDD(月経前不快気分障害)セルフチェック

PMDDをセルフチェックしてみよう

生理が始まる1~2週間前に、次のような症状があるかどうか、チェックしてみてください。


乳製品や大豆製品に含まれる「トリプトファン」という成分は、セロトニンの材料となるものですので、積極的に取り入れたいです。

カフェインやアルコールは、イライラや気分の落ち込みなど、精神的な症状を悪化させる可能性があります。一度、カフェインやアルコールを摂らずに過ごしてみてください。

 

生活習慣を整える

できるだけ規則正しい生活をすることや、しっかり睡眠をとることも大切です。

朝日を浴びる、日中はよく体を動かす、寝室の温度や湿度を快適にする、などの工夫で、睡眠の質を高めることができます。

軽い運動は、睡眠の質を高めるためにもよいですし、PMSPMDDの改善にもよい習慣です。どのような運動がよいかははっきりしていませんので、ヨガやピラティス、スイミング、ウォーキングなどご自身の好きなものを取り入れてみてください。

生理前で不調な場合は、自宅でのストレッチなど無理のない範囲で体を動かしてみましょう。

 

考え方を少し変えてみる

PMSやPMDDに悩む方は、とても真面目で一生懸命な方が多いなというふうに感じます。

 

「いつも通り、しっかりやらなくちゃいけない!」

と考えるのではなく、

「今はホルモンのせいで仕方ないから、自分に優しくする期間」

と考えてみてはいかがでしょうか? 

 

生理前には、重要な決断、失敗したくない用事などを入れないようにするといった工夫も必要です。

生理前には、80〜90%程度の女性が多かれ少なかれ心身の不調を感じます。30%程度の方は、PMSの診断を受けています。

 

つまり、PMSは「特別な人だけの症状」ではなく、誰にでも起こり得るごく自然な体の反応です。

症状の出方や程度には個人差がありますが、「我慢するしかない」と思い込む必要はありません。

自分を責めるのではなく、「ホルモンの波に上手に付き合う」姿勢が大切です。

PMSの認知度も高まってきました。

「今、生理前でイライラしやすいんだ」とご家族やパートナーなど身近な方に伝えておくことも、セルフケアの1つです。

周りの人と一緒に、PMSについての正しい知識を持ちましょう。

 

セルフケアで改善しない方へ|婦人科でできること

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婦人科での薬物療法は、PMSPMDDの緩和に非常に有効です。

セルフケアだけで十分に改善しない症状があるなら、ぜひお早めに婦人科でご相談ください。

生理痛だけでなく、生理に伴う精神的な症状についても、婦人科で総合的にみております。

低用量ピル

低用量ピルで女性ホルモンの分泌量の波を一定に、平坦にすることで、PMSPMDD症状の緩和が期待できることがあります。生理痛や、経血量が多いといった悩みも同時に解消可能です。

一般的には13か月(23シート)の継続で症状の変化を感じやすくなります。服用を開始した直後は体が慣れるまで不正出血や軽い吐き気・頭痛などが出ることがありますが、多くは自然に落ち着きます。

どの種類でも大きな差はないですが、症状がうまく改善されない場合は種類を変えて試してみることもあります。

生理の始まっている方であれば、10代でも服用可能です。

当院では若い年代の方の生理のコントロールにも力を入れておりますので、お気軽にご来院ください。

>>生理前のPMSついて

漢方薬

漢方薬で、個々の体質(証)に合わせて心と体のバランスを整えることで、症状を根本から改善することを目指します。低用量ピルと併用も可能です。

PMSに対しては、以下のような漢方薬がよく用いられます。

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

冷え性でむくみやすい方に向いています。

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

イライラやのぼせ、不眠が気になる方に向いています。

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

のぼせや下腹部痛、肩こりを伴う方に向いています。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

不安や不眠、胸がつかえるような感覚のある方に向いています。

Check point

服用を始めてすぐには効果を実感しにくいですが、何週間か続けていただき、効果を見ながら調整していきます。

抗うつ薬や抗不安薬

低用量ピルや漢方薬などで効果が十分に得られない精神的な症状がある方、PMDDが疑われる方には、少量の抗うつ薬や抗不安薬を検討します。

「生理の悩みで心療内科(精神科)なんて

と躊躇してしまう方もいるかもしれませんが、専門家と連携して治療をすることが、症状緩和の近道です。

「婦人科?心療内科?どこへ行けばいいの?」

と悩んだ場合、まずは女性の体をトータルでみることができる婦人科をご利用ください。必要に応じて、心療内科と連携していきます。

 

【コラム】パートナー・ご家族の皆様へ「なぜ彼女はイライラしているのか?」

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「生理前に、彼女(妻)がやけにイライラしている」

「いつもより言葉がきつくて、どう接していいか分からない」

そんなふうに感じている方はいらっしゃいませんか?

 

「感情がコントロールできないなんて、甘えだ」

「本性が出ているのでは」

と思っている方も、いるかもしれませんね。

 

実はその「イライラ・気持ちの波」は、

決してあなたへの愛情が冷めたからでも、性格の問題でもありません。

 

生理前の女性の体の中では、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが急激に変化しています。これらのホルモンは、脳の神経伝達物質にも影響を与え、気分のコントロールを難しくすることがあります。

 

つまり、PMS(月経前症候群)によるイライラや落ち込みは、本人の努力や意志ではどうにもできない、体の反応なのです。

実際、ほとんど全ての女性が生理前に心身の症状を感じていて、30%は治療が必要なほどの症状に悩まされているのです。

 

生理前の時期は、本人も

「どうしてこんなに感情が乱れるんだろう」
「きつく当たる自分が嫌なのに、コントロールできない」

と戸惑い、自己嫌悪に陥っていることが少なくありません。

 

ですから、もしパートナーやご家族がその変化に気づいたときは、どうか

「また怒ってる」
「機嫌が悪い」
「我慢しろ」

と責めずに、優しく向き合ってあげてください。

 

家事を代わってほしい、
一人にしてほしい、

など人それぞれ楽になる方法・必要なサポートはさまざまです。

本人と一緒に、PMSを乗り越えていくお手伝いを、ぜひお願いします。

 

婦人科では、生理に伴う心身のつらさを和らげるたくさんの選択肢を用意しています。本人が受診をためらっていたら、背中を押してあげてください。

あなたの理解と優しさが、彼女にとって何よりの支えになります。

 

【まとめ】イライラする自分を責めないで。一人で抱え込まないでください。

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生理前のイライラや不安、感情コントロールの難しさは、「性格」や「忍耐力のなさ」ではなく、女性ホルモンの変化によって起こる自然な体の反応です。誰にでも起こり得ることであり、我慢する必要はありません。

セルフケアで改善する場合もありますが、日常生活に支障をきたすようなつらさがあるときは、婦人科での治療を検討しましょう。

ピルや漢方薬、場合によっては抗うつ薬など、あなたに合った治療法を一緒に見つけることができます。

また、周囲の理解やサポートも大切です。

ご自身を責めず、「今はホルモンの波に揺れているだけ」と受け止めながら、心と体をいたわって過ごしましょう。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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