【唇ヘルペスの治し方】口唇ヘルペスに市販薬は?受診は何科?早く治す方法とNG行動・予防法を女医が丁寧に解説!
更新日:2025.03.22

口唇ヘルペスは、さまざまなきっかけで感染して再発を繰り返し、見た目にも目立つものであるため、困っている方も多いです。感染力が非常に高いため、同居の家族がいる方などは、適切な対処方法を知っておく必要があります。
今回は、口唇ヘルペスの特徴や症状、治療法、早く治すためのコツなど、知っておいていただきたい情報をまとめました。口唇ヘルペスになりやすい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
口唇ヘルペスとは?

※写真は口唇ヘルペスのイメージです
まずは、口唇ヘルペスがどういった病態なのか、正しく知りましょう。
口唇ヘルペスの基本情報
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(主にHSV-1)によって引き起こされる感染症です。唇やその周囲、鼻の周りなどに水疱やかさぶたができます。
単純ヘルペスウイルスは非常に感染力が強く、世界では約37億人、67%の方が感染していると推計されています。日本でも、70歳以上の方はほとんどが感染しているようです。これまでは、多くの人が幼少期のうちに感染していました。
ただし、近年は核家族化もすすみ、若い年齢層の方ではヘルペスウイルスに感染していない方も増えてきています。子どものうちに感染すると初発時の症状が比較的軽度なのですが、大人になってから初感染で口唇ヘルペスを発症した場合、症状が重くなる傾向があります。
【感染経路】
・コップや食器の共有
・タオルの共有
・キス
・オーラルセックス
なぜ再発するのか?(体内に潜伏する仕組み)
口唇ヘルペスは、非常に「再発しやすい」というのが特徴です。ヘルペスウイルスは、一度感染すると「神経節」という部位に一生涯にわたって潜伏し続けます。
ふだんは、自分の免疫の力に守られているため、ウイルスの活動は抑えられた状態になっており、神経節で大人しくしています。しかし、免疫力が低下すると、ウイルスの活動を抑えきれずに活性化し、神経節から神経を伝って皮膚表面にウイルスがあらわれ、症状を呈するようになるのです。
【再発のきっかけ】
・風邪をひいた
・月経前
・強い日差しを浴びた
・睡眠不足や疲労の蓄積があった
・免疫抑制剤を使用している
・糖尿病がある
・がん治療中である
【医師が解説】「風邪・ストレスが原因」と言われる理由は?
口唇ヘルペスは、「熱の華」「風邪の華」などと呼ばれることもあります。これは、熱を出したときに発症しやすいという特徴からです。
風邪を引いたときや、心身にストレスがかかったときには、「コルチゾール」というストレスホルモンが多く分泌されます。コルチゾールにはストレスに対抗し、炎症を和らげるような作用がある一方で、免疫を担う白血球の働きを抑えてしまうという作用もあります。
そのため、体の免疫力が低下し、口唇ヘルペスの再発のきっかけとなってしまうのではないか、という説が考えられています。
「月経前に悪化する」って本当?
月経前や妊娠中は、プロゲステロンの分泌が高まっています。プロゲステロンは、子宮内膜を厚く維持したり、妊娠を継続させたりするために重要なホルモンです。一方で、免疫を抑制する作用も知られています。そのため、月経前や妊娠中にはヘルペスの再発が起こりやすいのは事実です。
月経前は、自律神経の乱れによりコルチゾールの分泌も高まることもあり、免疫が低下しやすい時期だということを意識しておくとよいでしょう。
口唇ヘルペスの症状と進行

口唇ヘルペスの症状は、進行の度合いによってさまざまに変わります。症状の進行に合わせて、詳しく解説いたします。
前駆症状期(ピリピリ・かゆみ)
まずは、初発・再発いずれの場合でも、唇や鼻の周囲などに、ピリピリ・チクチクとした感覚や、かゆみ、違和感などが生じます。少し時間が経過すると、腫れも出てきます。
再発するのは、疲れたとき、精神的なストレスにさらされたとき、風邪をひいたとき、強い紫外線を浴びたとき…など、何らかのきっかけで免疫が低下したタイミングです。免疫抑制剤を使用している方、糖尿病の方、がん治療をしている方なども免疫が低下した状態のため、再発しやすいといえます。
前駆症状期にすぐ対応できると、症状が悪化しにくいです。中にはあまり前駆症状を強く感じず、気が付かない方もおられます。
水疱期
前駆症状期から数時間〜数日で、小さな水疱が複数生じてきます。水疱同士が融合し、大きな水疱となることも珍しくありません。水疱期は、数日程度続きます。
潰瘍期
水疱が破れ、ただれてしまうこともあります。潰瘍になると強い痛みを伴うため、水疱が破れないように慎重にケアをすることが大切です。潰瘍期も数日程度続きます。
水疱に含まれる浸出液にはウイルスが多量に含まれているため、粘膜や傷のある皮膚に浸出液が触れると、感染が広がってしまいます。液体に直接触れないこと、皮膚についた場合は石鹸で洗い流すことを意識してください。
痂皮(かさぶた)期
前駆症状期から1週間程度すると、かさぶたができてきます。これは、回復に向かっている印です。かさぶたが自然と治っていくのを待ちましょう。数日〜1週間程度かかると思ってください。
かさぶたが乾いてくると、ひび割れ、出血してしまうことがあります。よく保湿をし、かさぶたをケアすることで肌の負担を軽減できます。
口唇ヘルペスを放置するとどうなる?
治療薬を使用せずに放置していた場合でも、自然に治癒はしていきます。ただし、症状が悪化してしまったり、治癒までにかかる期間が長くなったりするため、放置はあまりおすすめできません。皮膚科や内科、婦人科などで抗ウイルス薬の軟膏を処方していただくことができます。
症状を悪化させると、おさまったあとに神経節へ潜伏するウイルス量も増えてしまいます。そうすると、また再発したときにも、重症化しやすくなっていきます。
口唇ヘルペスと似た病気との違い

口唇ヘルペスと似たようなデキモノはいくつかあります。判断に迷うときは自己判断せず、医療機関にかかりましょう。
口内炎との違い
最も多い「アフタ性口内炎」は主に外傷や栄養不足、ストレスなどが原因で発生し、口の中の粘膜(頬の内側、唇の内側など)にできる白い潰瘍です。白い潰瘍の周辺は、赤くなっています。
口唇ヘルペスとは異なり、ウイルス感染ではありません。通常は数日から2週間程度で自然に治りますが、痛みが強いことが多く、食事や会話が困難になることがあるため、炎症を抑える外用薬の塗布が有効です。
口唇ヘルペスも、口内にできることがあります。喉の奥の方や歯茎、舌、唇の内側などあらゆる部位に症状が出る点、水疱を形成する点が特徴的です。
口角炎との違い
口角炎は、ビタミン不足、乾燥、唾液の影響、カンジダや細菌感染などが原因で起こる炎症です。口角部分に赤みやひび割れ、ただれが生じ、口を開けると痛みが出るといった症状があらわれます。
口唇ヘルペスも似たような部位にできますが、口角炎の場合は水疱やかさぶたにならない点が異なります。
ニキビとの違い
ニキビは、ニキビは皮脂の詰まりやアクネ菌の繁殖によって発生する炎症性の皮膚疾患で、主に皮脂の分泌が多い部位(Tゾーンやあご周辺)の毛穴に発生します。ニキビの場合、膿をもつことはありますが、水疱にはならない点、赤みや腫れが出る点が口唇ヘルペスとの違いです。
また、ニキビはあまり複数が一箇所にできることは少ないですが、口唇ヘルペスは小さな水疱がブドウの房のようにまとまって発生します。
口唇ヘルペスは何科に行くべき?

口唇ヘルペスができたとき、何科へ行くべきか迷う方もいると思います。ケース別にご紹介いたします。
皮膚科:アトピー性皮膚炎など皮膚の疾患をお持ちの方、症状の重い方
口唇ヘルペスは皮膚科や内科など多くの診療科で対応してもらいやすい疾患ではありますが、皮膚の疾患があり症状の鑑別が難しい方や、口唇ヘルペスの症状の重い方などは、とくに皮膚科がよいでしょう。
婦人科:女性は婦人科でも可
一般的に、婦人科でも、性器ヘルペスだけでなく、口唇ヘルペスに対応可能です。オーラルセックスなどにより、ヘルペスウイルスが性器から口唇や目の周囲などに感染してしまうケースはよくあります。
とくに当院は、土日・祝日も診療しているという特徴から、症状が出たらできるだけ早く対応したいヘルペスの診療とは相性がよいと思います。
その他の診療科でも
鼻の周囲や口の中に症状がある場合は耳鼻科、目の周囲に症状がある場合は眼科なども選択肢となります。稀ではありますが、ヘルペスウイルスにより顔面神経の麻痺を呈することがあり、その場合は耳鼻科や神経内科が対応するケースもあります。
受診後の流れ
ヘルペスの症状で受診した場合は、一般的に次のような流れで診察をおこないます。
・問診
いつから、どのような症状があるか、ヘルペスの既往はあるかなどを伺います。
・検査、視診
検査キットを用いて浸出液を調べます。また、患部を直接確認し、ヘルペスや他の疾患との鑑別をおこないます。
・必要な薬剤の処方
内服薬や外用薬、場合によっては鎮痛剤などを処方いたします。
口唇ヘルペスの治療方法

口唇ヘルペスができたとき、早く治すためにすべきことをご紹介します。
受診のタイミングは「できるだけ早く」
前駆症状の段階で受診できればベストです。水疱ができて何日も経過してから、かさぶたになってからでは、抗ウイルス薬の服用を開始するには遅い場合もあります。気が付いたら早めに受診しましょう。
医療機関で処方を受ける
医療機関では、抗ウイルス薬の内服薬・外用薬を処方することが可能です。症状が出て間もないうちに使用を開始するほど、高い効果が期待できます。
【内服薬】
内服薬は、5日間を目安に飲み切っていただきます。ピリピリとした自覚症状がなくなっても、まだウイルスの活動は抑えられていないため、途中で服用をやめてはいけません。
アシクロビル
1回200mg、1日5回服用します。回数が多いのが難点ですが、副作用は比較的少ないです。
バラシクロビル
1回500mg、1日2回服用します。(腎機能の低下している方は、量が異なる場合もあります。)
ファムシクロビル
1回250mg、1日3回服用します。再発の方は、1回1000mg、1日2回の服用とする場合もあります。
【外用薬】
7日間程度、患部が乾燥してくるまで塗布を続けます。軽度の口唇ヘルペスは外用薬だけでもコントロール可能ですが、内服薬との併用もできます。
アシクロビル
ビダラビン
市販薬との違いは?
市販薬として、抗ウイルス成分の含まれた外用薬を購入することができます。成分は、医療用医薬品のものと同等ですので、「口唇ヘルペスの再発」の方に限り、使用可能です。初発の方、口唇ヘルペスと診断を受けたことがない方、性器ヘルペスの方は、市販薬での対応はできません。
・ヘルペシアクリーム(大正製薬)
「アシクロビル」が含まれる外用薬で、1日3〜5回塗布します。
・アラセナS軟膏/クリーム(佐藤製薬)
「ビダラビン」が含まれる外用薬で、1日に1〜4回塗布します。
かさぶたができ、患部が乾燥してくるまで塗布を続けましょう。以前、医療機関から処方されて使用した成分と同じものを選ぶのがよいと思います。
口唇ヘルペスを早く治すには?医師のすすめるセルフケア
・疲労を溜めず、しっかり眠る
過労、睡眠不足などは、免疫力を低下させる原因となり、口唇ヘルペスを長引かせたり、再発しやすくさせたりと悪影響です。
口唇ヘルペスができたということは、疲れている、体に無理をかけているということ。体を労り、しっかり休みを取るようにしましょう。
・日焼けを避ける
日焼けも、口唇ヘルペスを引き起こすきっかけの1つです。紫外線が、皮膚の免疫細胞の働きを抑えると考えられています。早く治したい方は、日焼け止めを使う、帽子をかぶるなどの対策をとり、日焼けを避けてください。
・栄養バランスを整える
とくに何を食べてくださいとおすすめするものはありませんが、野菜やタンパク質など、バランスよく十分な量を食べましょう。
・患部の保湿・保護をおこなう
患部の保湿・保護が必要です。また、抗ウイルス薬の外用薬を気になったときに1日数回、塗布してください。食事の前に塗布すると、食事の際に破れるのを防ぐことができます。
口唇ヘルペスのNG行動リスト

何気ない行動が、口唇ヘルペスの治癒を遅らせてしまうかもしれません。代表的なNG行動を2つご紹介します。
水疱を潰す、触る
水疱が気になったり、かゆみがあって触りたくなってしまったりするのはわかりますが、なるべく水疱には触れないようにしてください。
水疱には、多量にウイルスを含んだ液体(浸出液)が含まれています。水疱がやぶれ、周辺の皮膚に浸出液が付着してしまうと、感染範囲が拡大するリスクが高いです。
患部に外用薬を塗布したあとは、石鹸で手をよく洗い流しましょう。患部に触れた手から別の箇所へ感染することも、十分に考えられます。
ステロイド外用薬やオロナイン軟膏の使用
ステロイド外用薬や市販のオロナイン軟膏などを、自己判断での使用はお控えください。
とくに、ステロイド外用薬は、炎症を抑える高い効果がある一方で免疫を抑える作用も持っているため、ウイルス感染であるヘルペスに使用すると、かえって症状が悪化してしまいます。
また、ニキビに対して使用する外用薬は、細菌に対して効果を持つものであるため、ヘルペスには無効です。
口唇ヘルペスは人にうつる!感染対策をご紹介

ヘルペスウイルスは感染力が強いため、とくに症状のある期間は、他者へ感染させないため、十分に対策を取る必要があります。
・タオルや食器など直接的に触れるものを共有しない
タオルや食器などは、洗剤で洗えば問題ありません。
・キスなどの直接的な接触は、症状が消えるまで控える
かさぶたも治り、きれいな肌に戻ってからにしましょう。
・患部に触れたら石鹸で洗い流す
外用薬を塗布したとき、触ってしまったときなどは、手にウイルスが付着している可能性があるため、石鹸で洗い流しましょう。
・マスクを着用するなどし、なるべく触らない
どうしても触れてしまうことは避けられないため、マスクを着用しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は、ストレスの蓄積や風邪、生理前などのタイミングで再発しやすい「口唇ヘルペス」について、さまざまな観点から解説いたしました。
症状が落ち着くまで2週間程度かかり、見た目にも気になってしまう口唇ヘルペスは、できるだけ早く気がついて対処することで、重症化せず早く治すことにつながります。触らないこと、水疱を保護することなど、じつはセルフケアも大切です。
当院は、土日・祝日も診療しておりますので、口唇ヘルペスでお困りの際にはぜひご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。