女性の顔(目・鼻・耳など)のヘルペスの原因・症状・治し方|妊娠・出産や生理時の注意点も女医が丁寧に解説。
更新日:2025.08.18

ヘルペスというと口唇や性器に発症するイメージが強いですが、実は顔のさまざまな部位に現れることをご存知でしょうか。特に女性は、ホルモンバランスの変化によって男性よりもヘルペスが発症しやすいといわれています。
この記事では、女性に特有のリスク要因も含め、顔の各部位に発症するヘルペスの原因、症状、治療法について詳しく解説します。
目次
女性がヘルペスになりやすい理由とは?

ヘルペスウイルスは一度感染すると体内に潜伏し、免疫力の低下などをきっかけに再活性化します。このウイルスは神経に沿って広がるという特徴があるため、顔のさまざまな部位に症状が現れることがあります。
女性特有のヘルペス発症リスク
女性がヘルペスを発症しやすい主な要因として、以下のようなものが挙げられます。
月経周期に伴うホルモンバランスの変化
特に生理前は発症リスクが高まります
妊娠によるホルモン変化と免疫力の変動
妊娠中は免疫システムが変化するため
出産後の疲労やストレス
睡眠不足や育児ストレスが引き金になることも
経口避妊薬(ピル)の使用
ホルモンバランスに影響を与える可能性があります
更年期の体調変化
エストロゲン減少による免疫機能への影響
一般的なヘルペス発症要因
女性特有の要因に加えて、以下のような一般的な要因も発症リスクを高めます。
免疫力の低下
過労やストレス、睡眠不足など
紫外線への過度な曝露
日焼けや強い日差しを浴びた後
発熱や風邪
体調を崩した際に発症しやすい
物理的な刺激
顔の皮膚が傷ついたり、強い摩擦が加わったりした場合
感染経路
感染者との直接接触(キスや肌の接触)だけでなく、タオルや食器の共有によっても感染する可能性があります。また、自分の口唇ヘルペスに触れた手で顔の他の部位をこすることで、自己感染(自家接種)を起こすこともあります。
ヘルペスが繰り返し発症するメカニズム
ヘルペスウイルスの厄介な特徴は、一度感染すると生涯にわたり体内に潜伏することです。ウイルスは通常、三叉神経節や頸部神経節などの神経節に潜伏しており、免疫力が低下すると再活性化して症状を引き起こします。
女性の場合、特に以下のタイミングで再発しやすい傾向があります。
生理前や生理中
エストロゲンとプロゲステロンのバランス変化時
妊娠初期・後期
急激なホルモン変化がある時期
ストレスが強い時期
仕事や家庭の負担が大きい時
睡眠不足が続いている時
育児や介護などで睡眠が不足している時
各部位のヘルペス症状と女性が特に注意すべきポイント

顔の各部位におけるヘルペスの症状と、女性が特に注意すべきポイントについて詳しく見ていきましょう。
1.目のヘルペス(ヘルペス性角膜炎)
目にヘルペスが発症すると、ヘルペス性角膜炎や結膜炎などを引き起こす可能性があります。特に角膜炎は視力に直接影響するため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
主な症状
- 目の充血
結膜や角膜の炎症による充血 - 異物感・痛み
「目に砂が入ったような」不快感や痛み - 視界のぼやけ
角膜の炎症による視力低下 - まぶたの腫れ
炎症が周囲に波及することによる腫脹 - 光過敏
光に対する過敏反応(まぶしさを強く感じる) - 涙の増加
刺激に対する反応として涙が多く出る
女性が特に注意すべきポイント
・コンタクトレンズ使用者は特にリスクが高い
女性はコンタクトレンズ使用率が高く、角膜へのダメージリスクが増加
・アイメイク時の注意
目のヘルペスがある場合、メイクは避け、完治後もアイメイク道具は新しいものに交換する
・妊娠中は特に注意
妊娠中の目のヘルペスは治療薬の使用に制限がある場合も
2.鼻・鼻下のヘルペス(鼻ヘルペス)
鼻やその周辺に発症するヘルペスは、口唇ヘルペスと同じく単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が原因です。鼻の粘膜は非常にデリケートなため、痛みを強く感じることが多く、不快感も大きいのが特徴です。
主な症状
- 鼻の中や鼻周囲の水疱(水ぶくれ)
小さな水疱が集まってできることが多い - ピリピリとした痛みやかゆみ
発症初期に現れることが多い - 鼻粘膜の炎症
鼻の中が赤くなり、腫れることもある - かさぶた
水疱が破れた後、かさぶたになる - 鼻づまり
炎症による粘膜の腫れで鼻づまりを感じることも
女性が特に注意すべきポイント
・ファンデーションやコンシーラーの使用
患部を隠そうとして化粧品を使うと症状が悪化する可能性がある
・生理前は特に注意
多くの女性が生理前に鼻ヘルペスを発症しやすい
妊娠中は免疫力の変化で発症リスクが高まり、治療にも制限がある
3.耳のヘルペス(ラムゼイ・ハント症候群の可能性)
耳に発症するヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによるものもありますが、帯状疱疹ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)による「ラムゼイ・ハント症候群」の可能性もあります。特に顔面神経に影響がある場合は、早急な対応が必要です。
主な症状
- 耳の中や周囲の水疱
小さな水ぶくれが集まってできる - 耳の痛みやかゆみ
激しい痛みを伴うことがある - 耳鳴りや難聴
内耳に影響が及ぶと聴覚障害が現れることも - めまい・平衡感覚の障害
前庭神経に影響がある場合 - 顔面神経麻痺
顔の片側が動かしにくくなる(ラムゼイ・ハント症候群の特徴的な症状)
女性が特に注意すべきポイント
・ピアスの使用
耳のヘルペスがある場合、ピアスは外し、完治するまで着用しない
・妊娠中の耳のヘルペス
内耳症状(めまいなど)がある場合、転倒リスクに注意 妊娠中も治療は可能です
顔面神経麻痺が出た場合の髪型のアドバイス
口唇ヘルペスと帯状疱疹の違い

顔に現れる水疱性の発疹として、口唇ヘルペスと帯状疱疹はしばしば混同されますが、原因となるウイルスや症状には明確な違いがあります。
特徴 | 口唇ヘルペス (単純ヘルペス) |
帯状疱疹 |
---|---|---|
原因ウイルス | 単純ヘルペスウイルス(HSV-1) | 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) |
発症パターン | 限局的(口唇など特定の部位) | 神経の走行に沿って片側に帯状に発疹 |
痛みの程度 | 比較的軽度 | 強い神経痛を伴うことが多い |
年齢層 | 全年齢 | 50歳以上に多い(若年者でも発症する) |
帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)と同じウイルスが原因で、水痘に罹患した後、神経節に潜伏したウイルスが再活性化することで発症します。顔面神経に沿って発症した場合は、顔面神経麻痺を引き起こすことがあり、特に注意が必要です。