女の子に生まれるということ|小学生に伝えたい未来の選択肢
更新日:2026.10.07
明日、白金小学校で子どもたちにお話をする機会をいただきました。
何を話そうかと考えていたら、自分が小学校5年生くらいだった頃のことを思い出しました。
目次
「女の子だから」と言われても、信じていたこと
その頃、何かのきっかけで、「女の子に生まれるって、どういうことなんだろう?」ということが話題になったことがあります。
私は一生懸命考えました。
でも、そのときの私は、自分が女の子だからといって、それほど不便を感じていませんでした。
ただ、周りの大人や社会から、いろいろな言葉を聞いて育ったことは覚えています。
- 「女の子は算数が苦手なんでしょう?」
- 「女の子は言葉を使うのは上手だけれど、勉強は男の子の方ができるよね」
- 「女の子は、なりたい仕事に何でも就けるわけではないよ」
そんな言葉です。
でも、不思議なことに、私はそれをあまり信じていませんでした。
当時の私は、本当の意味での男女差別を自分自身が経験したこともなかったのだと思います。
だから、「なりたいものには、いつかなれる」と、かなり素直に信じていました。
そして、そのまま大人になりました。
医学部を目指したときにも、
「そこは世襲で、一般家庭からでは入れないよ」
「入試が難しいんじゃない?」
と、大人から何度も言われました。
でも、やっぱり私はあまり気に留めませんでした。
医学部に行きたいから受ける。医者になりたいから勉強する。
とても単純でした。
そして医学部に入り、医師になり、産婦人科医になりました。
今では、女性たちの人生に毎日向き合う仕事をしています。
人生の選択に、一つの正解があるわけではありません
そんな今になって、改めて考えることがあります。
「女の人に生まれるって、どういうことなんだろう?」
小学校5年生のときには答えられなかったこの問いを、私は今も考え続けています。
女性には月経があります。妊娠する可能性があります。出産することもあります。
もちろん、子どもを産む人生を選ぶ人も、選ばない人もいます。結婚する人も、しない人もいます。
仕事に夢中になる人もいる。家庭を大切にする人もいる。両方を大切にしたい人もいる。
どれが正しいということではありません。
「子どもを産むと損」という言葉に、考えさせられたこと
でも、産婦人科医として一つ、とても気になっていることがあります。
それは、子どもを持つことが「損」だと感じられてしまう社会になっていないだろうか、ということです。
私は自分の子どもたちに、「どうして日本では子どもが少なくなっていると思う?」と聞いたことがあります。
すると、とてもはっきりした答えが返ってきました。
「だって、子どもを産むと損だからでしょう」
私は、その言葉にとても驚きました。
私はこれまで一度も、「あなたたちを産んで損をした」なんて言ったことはありません。
それどころか、子どもたちがいてくれて本当によかったと思っています。
それでも、子どもたちの世代には、
- 「子どもを産んだら大変」
- 「仕事ができなくなる」
- 「お金がかかる」
- 「自由がなくなる」
- 「自分の人生で損をする」
というメッセージが、社会のどこかから伝わっているのだと思います。
これは、とても大きな問題だと私は思っています。
少子化というと、出生率や人口の数字の話になりがちです。
でも、本当に考えなければならないのは数字だけではありません。
次の世代を育てたいと思える日本社会なのか。
私は、そこがとても大切だと思っています。
産む、産まないを、自分で選べる社会に
地球温暖化も重要な問題です。戦争も、貧困も、移民の問題もあります。
でも、どれほど素晴らしい社会をつくっても、それを次の世代へ渡す人がいなくなってしまったら、社会そのものを続けていくことができません。
だから私は、子どもを持つことを強制したいわけではありません。
「女性なのだから産みなさい」などということを言いたいわけでもありません。
むしろ、それとは反対です。
産む、産まないは、一人ひとりが自分で決めることです。
ただ、その選択をする前から、「子どもを持ったら損」という社会にはしたくないと思っています。
子育てには、損か得かだけでは測れないものがある
子どもを育てることは、確かに大変です。
時間もかかります。お金もかかります。心配することも山ほどあります。仕事との両立に悩むこともあります。
でも、それだけではありません。
昨日できなかったことが、今日できるようになる。
泣いていた子が笑う。
一生懸命練習して、何かを成し遂げる。
失敗して、また立ち上がる。
そんな子どもの姿を見ていると、逆に大人の方が勇気をもらうことがあります。
「この子が頑張っているんだから、私も頑張ろう」
そう思わせてもらうことが、私は何度もありました。
だから、子どもを育てることには、「損か得か」という言葉だけでは測ることのできないものがあることも、子どもたちには知っていてほしいと思っています。
「女の子だから」「男の子だから」で、未来を決めなくていい
そして、明日、小学校でお話しする子どもたちには、もう一つ伝えたいことがあります。
- 女の子だから算数ができない。
- 男の子だから泣いてはいけない。
- 女の子だからこの仕事には向いていない。
- 男の子だからこの仕事をしなければいけない。
そんなことは、自分の未来を決める理由にはしなくていい。
「あなたは何になりたい?」
まず、それを自分に聞いてほしい。
私が小学校5年生の頃、「女の子に生まれるってどういうことなんだろう」と一生懸命考えました。
あの頃の私は、その答えを知りませんでした。
そして産婦人科医になった今でも、きっと答えは一つではないと思っています。
でも、一つだけ、昔と変わらず信じていることがあります。
なりたいものがあるなら、まず「なりたい」と思っていい。
女の子でも、男の子でも。
子どもたちに、たくさんの選択肢を残したい
そしていつか大人になって、仕事をすることも、誰かを好きになることも、結婚することも、しないことも、子どもを持つことも、持たないことも。
自分で考えて、自分で選んでほしい。
そして私たち大人には、その子どもたちが将来、「子どもを持ったら損だからやめておこう」ではなく、「子どもを育てる人生も、いいかもしれない」と思える社会を残していく責任があるのではないでしょうか。
子どもは、未来そのものです。
そして、子どもたちが頑張っている姿は、私たち大人にも勇気をくれます。
明日はそんなことを、小学生のみなさんと一緒に考えてみたいと思っています。
あの頃、小学校5年生だった私自身にも語りかけるような気持ちで。
「女の子だから」と、自分の未来を小さくしなくていい。
そして、「あなたの未来には、まだたくさんの選択肢があるよ」と伝えてきたいと思います。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



