【第23回海老根会】得田由美子さんを想い、子宮内膜症と婦人科がんを考える
更新日:2026.08.23
第23回海老根会を開催いたしました。
今回は、いつもの海老根会とは少し違う、私にとっても特別な会となりました。
いつも海老根会に参加してくださっている皆さま、乳がんを経験され現在も治療や経過観察を続けていらっしゃる患者様、そして日頃から白金高輪海老根ウィメンズクリニックに通ってくださっている患者様にもご参加いただきました。
そして、得田由美子さんの妹さん、得田美奈子さんにもお越しいただきました。
目次
あまりにも早かった病状の変化
今回の会では、由美子さんの病気がどのように始まり、どのように診断され、どのような治療を受け、どのような経過をたどったのかを、できるだけ丁寧にお話しさせていただきました。
最初の激しい腹痛と嘔吐。
当初は急性腹症として診療を受け、画像では子宮内膜症性卵巣嚢胞と炎症性変化が疑われました。
その後、当院の超音波検査で卵巣悪性腫瘍を疑い、大学病院へご紹介しました。
手術、病理診断、術後の出血、血栓症、再発、抗がん剤治療。
病気は、私たちが想像していた以上の速さで進んでいきました。
妹の美奈子さんが、次のようなお気持ちをお話しくださいました。
「あまりにも病状の変化が早くて、家族も友人も気持ちが追いつかなかった」
本当によくわかります。
昨日まで話をしていた人が、少し前まで一緒に食事をしていた人が、急速に病気に奪われていく。
医学的には経過を時系列で整理することができます。
けれども、人の気持ちはそんな速度では進めません。
もっと生きていてほしかった
私は医師として由美子さんの病気を見ていました。
でも、それだけではありませんでした。
友人として、
もっと生きていてほしかった。
そう思っていました。
きっとご家族も、友人も、由美子さんを知る多くの方も同じだったと思います。
そして何より、由美子さん自身が、もっと生きたかったと思います。
まだやりたいことがあったでしょう。
行きたい場所も、会いたい人も、話したいことも、たくさんあったと思います。
そのことを考えると、今でも胸がいっぱいになります。
「子宮内膜症は閉経したら終わり」ではありません
今回、由美子さんの病気について詳しく振り返る中で、私自身、改めて考えさせられたことがあります。
子宮内膜症と卵巣がんの関係です。
子宮内膜症に関連する卵巣がんというと、明細胞がんを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、類内膜がんも子宮内膜症と関連する代表的な卵巣がんの一つです。
由美子さんは、お子さんがいらっしゃらず、妊娠・出産をきっかけに産婦人科を受診する機会も少なかったため、ご自身に子宮内膜症があることを知らなかったようです。
ここから、私たちが女性たちに伝えなければならないことがあると思います。
妊娠しない女性にも、婦人科を受診するきっかけをつくること。
そして、
閉経したら婦人科を卒業する、ではないということ。
子宮内膜症や卵巣嚢胞などの既往や残存病変がある方は、閉経後も必要に応じて婦人科で経過をみていくことが大切です。
また、腹痛、腹部膨満感、食欲の変化、不正出血など、いつもと違う身体の変化があれば、「婦人科かもしれない」という選択肢を思い出していただきたいと思います。
関連して知りたい方へ
- 卵巣がんの初期症状・検査・受診の目安
腹部膨満感や腹痛、不正出血など、卵巣がんで注意したい症状を解説しています。 - 閉経後に気をつけたい症状と病気
閉経後も婦人科を受診したほうがよい症状や、定期的な健康確認についてご案内しています。
由美子さんが望んでいたことを
由美子さんは、婦人科がんについてもっと多くの女性に知ってほしいと考えていました。
だから私は、由美子さんの経験を「悲しい出来事」だけで終わらせたくありません。
由美子さんの気持ちを一番に考えた活動をしたい。
そして、ご家族のお気持ちも大切にしながら、一歩ずつ進めていきたいと思っています。
一人でも多くの女性が自分の身体に関心を持つこと。
婦人科を受診することへのハードルを少しでも下げること。
そして、病気ができるだけ早い段階で見つかる女性を一人でも増やすこと。
それが、由美子さんの経験を未来につなぐ一つの方法なのではないかと思っています。
第24回海老根会へ
次回の海老根会は、2026年10月16日に開催いたします。
第24回海老根会
開催日:2026年10月16日
次回は、国立がん研究センター中央病院の前田日菜子先生をお迎えし、お話を伺いたいと思っています。
婦人科がんについて正しく知ること。
そして医療者だけではなく、患者さん、ご家族、友人、さまざまな立場の人が一緒に考えること。
そんな場をこれからもつくっていきたいと思います。
昨日、会場に集まってくださった皆さま、本当にありがとうございました。
そして由美子さん。
これからも、みんなであなたのことを思いながら、あなたが残してくれたものを次の女性たちへつないでいきたいと思います。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



