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生理・妊娠

妊娠初期の腹痛・出血は流産のサイン?「大丈夫な痛み」の見分け方と受診の目安を産婦人科医が解説。

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妊娠、おめでとうございます。

喜びも束の間、「お腹がチクチク痛む」「茶色い出血がある」といった症状が出ると、「流産してしまうのではないか」「赤ちゃんは無事なのか」と、一気に不安になってしまいますよね 。

 

実は、妊娠初期の出血は妊婦さんの約2〜3割が経験すると言われており、そのすべてが流産につながるわけではありません 。子宮が大きくなるための「生理的な痛み」であることも多いのです 。

しかし一方で、一刻を争う「異所性妊娠(子宮外妊娠)」や、出血が止まらずに処置が必要な「流産」のサインである可能性もゼロではありません 。

大切なのは、「様子を見てよい症状」と「危険なサイン」を正しく見分けることです 。

 

この記事では、

あなたの今の症状が「緊急で受診すべきレベル」なのか
「次回の健診まで様子見でよいレベル」なのか

医師監修のもと判断基準を分かりやすく解説します 。

不安な気持ちを少しでも解消し、適切な行動をとるために、まずは次章の「緊急度判定リスト」で今の状態を確認してみましょう。

 

※まだ妊娠かどうかわからない方へ

妊娠検査薬を使う前で、「生理前の不調なのか、妊娠初期症状なのか」を知りたい方は、以下の記事をご覧ください 。

迷ったら、すぐに妊娠検査をおこないましょう。

>>生理前の腹痛・腰痛が
“いつもと違う”と感じたら

>>生理前なのに出血…
これって大丈夫?

>>生理前と妊娠初期の違いは?

 

目次

【最初にチェック】妊娠初期の腹痛・出血「緊急度判定」リスト

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妊娠初期(4〜12週ごろ)の症状で、お腹のチクチクした痛みや少量の出血が、不安になってしまいますよね。

妊娠経過として、よく見られる症状であり、問題のないケースも多いです。

一方で、流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)など、早急な対応が必要なケースが隠れていることもあります。

まずは、今のあなたの症状がどのレベルに近いか、一つひとつ確認してみましょう。

痛み × 出血の状態|受診の目安

※あくまで目安です。症状が強い/不安が強い場合は早めに医療機関へご相談ください。

出血の状態 痛みなし
or 違和感程度
生理痛レベル 激痛・冷や汗レベル
出血なし 様子見OK 早めに受診 今すぐ受診
茶色or少量 様子見OK 早めに受診 今すぐ受診
鮮血or多量 今すぐ受診 今すぐ受診 今すぐ受診


【レベル3:緊急】今すぐ連絡・救急受診が必要なサイン

以下の症状は、大量出血や異所性妊娠の破裂など、命にかかわる状態の可能性があります。

  • ナプキンが1時間ほどでいっぱいになるような鮮血の出血が続く
  • レバー状の血の塊(血腫)がいくつも出る
  • 立っていられないほどの激しい腹痛、冷や汗、意識が遠のく感じがある
  • 右または左の片側だけが強く痛む(卵管の破裂リスク)
  • 肩や首に抜けるような痛み(腹腔内出血の典型的サイン)
Check point

これらに当てはまる場合は、夜間や休日であっても、迷わずに救急外来・救急相談窓口・かかりつけ産婦人科にすぐ連絡してください。自宅で様子を見るのは、危険です。

【レベル2:早めの受診】翌日〜近日中に受診すべきサイン

以下の症状は、切迫流産や妊娠経過のトラブルの可能性があります。

  • 生理2日目くらいの出血量が続く
  • 鮮血の出血がダラダラと止まらない
  • 生理痛より明らかに強い鈍痛が続く、お腹が張って苦しい
  • 腹痛で目が覚めるほどの痛み
Check point

診療時間内に病院へ連絡し、当日〜翌日の受診を相談してください。

切迫流産が疑われる場合でも、安静にする・適切な処置をおこなう等により妊娠が継続できるケースは決して少なくありません。まずは落ち着いて行動しましょう。

【レベル1:様子見OK】次回健診まで記録しておきたいサイン

妊娠初期に多く見られ、生理的変化の範囲と考えられる症状です。

  • 一瞬の「チクチク」「ピリッ」とした痛み
  • 体勢を変えたときだけ起こるズキッとした痛み
  • 茶色や薄いピンクのおりものが少量で、1〜2日で消える
  • 便秘や下痢、排ガスに伴うお腹の痛み
Check point

無理をせず、温かくして、できる範囲でゆっくり過ごしましょう。症状が起きたタイミングや持続時間などはメモしておくと、次回の妊婦健診で医師にうまく症状を伝えることができます。

妊娠中は、少しの不調や違和感も心配になってしまうのは、自然なこと。もし不安であれば、かかりつけの産婦人科に受診しましょう。「確認してもらえたら安心できる」というお気持ちは、よくわかります。

 

妊娠初期の腹痛・出血はなぜ起こる?「心配しすぎなくてよい」原因

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・子宮が大きくなる痛み(円靭帯の牽引痛)

子宮は、非妊娠時は数センチですが、出産直前には30センチほどの大きさにまで大きくなります。

妊娠が進んで子宮が大きくなるにつれ、子宮を骨盤につないで支えている「円靭帯」が引き伸ばされ、下腹部や足の付け根が突っ張るような痛みとして感じられることがあります。

  • 「チクッ」「突っ張るような感じ」
  • 体勢を変えた瞬間に痛みが走る
  • 横になって休むと自然におさまる

 

円靭帯のイメージ図


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※模式図であり位置関係は簡略化しています

Check point

こうした特徴がある場合、子宮が成長している過程で起こる「円靱帯牽引痛」の可能性があり、これにより流早産が引き起こされることはありません。

妊娠の経過は、毎回違うものですので、痛みにご不安があれば、かかりつけ産婦人科でご相談ください。切迫流早産などの異常がなく、円靱帯牽引痛と考えられる場合、楽な姿勢で安静にすることで軽快します。

・ホルモン変化による便秘・ガス・下痢

着床すると、妊娠を維持するためにプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が大きく増えて、腸の動きがゆっくりになります。そのため、便秘や下痢、ガスが出る・溜まるといった症状が出やすいです。お腹の痛みや張りを感じる方もいらっしゃいます。

  • 痛みの場所があちこち移動する
  • 排便や排ガスをした後に症状が楽になる
Check point

このような特徴に当てはまるのであれば、腸の不調に伴う症状といえるでしょう。

・着床出血や軽度の絨毛膜下血腫

着床が起こる時期や、胎盤がつくられていく過程で、子宮内膜が刺激されることで少量の出血が生じることがあります。

  • 茶色やピンクで、おりもの程度の量
  • 量が増えない
  • 痛みが強くならない
Check point

このような場合は、経過観察になることが多いです。

絨毛膜下血腫については後ほど詳しくお伝えしますが、不正出血が長く続くことがあります。

一方で、以下のようなケースは要注意です。

  • 色が徐々に鮮血(鮮やかな赤)に変わる
  • 出血量が増える
  • 下腹部痛が強まってくる


このような変化が見られたときは、前述のレベル2・3の症状に該当する可能性があり、医療機関での診察が必要になるかもしれません。かかりつけの産婦人科へ連絡し、受診の相談をしてください。

・性行為や排便後の出血(接触出血)

また、妊娠中は子宮の入り口が充血してデリケートになっているため、性行為や内診の刺激、硬い便をきばって出した後などに、一時的に出血すること(接触出血)があります。

これは赤ちゃんがいる子宮内部からの出血ではないため、痛みもなくすぐに止まるようであれば、過度な心配はいらないことが多いですが、流産の症状と見分けがつかないことが多いので、ご心配あればすぐに産婦人科を受診しましょう。

 

見逃してはいけない「流産」のサインと種類

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妊娠初期の腹痛や出血の中には、残念ながら、流産が原因となっている場合もあります。

ただし、妊娠初期の流産の多くは避けられないもので、決してお母さんの行動が原因ではありません。正しく理解し、必要に応じて早めに医師へ相談しましょう。

1.妊娠初期流産の多くは「受精卵側の理由」

妊娠12週ごろまでの、初期での流産は、全妊娠の約10〜15%程度で起こるといわれています。そして、大半は受精卵の染色体異常が原因。染色体の異常によって、胎児が発育できずに流産してしまうというものです。

「仕事や家事で体に無理をかけてしまったからかも…」「重いものを持ったせい?」「薬や食べ物がよくなかったのかな」とご自分を責めてしまう方もいらっしゃいますが、決してお母さんの行動や食べ物などが原因ではありません。

心拍確認後の流産率低下

流産のリスクは妊娠12週(妊娠4ヶ月)を過ぎると大幅に減ります。

また、もっと早い段階でも「エコーで赤ちゃんの心拍(心臓の動き)」が確認できれば、流産の確率は数%程度まで下がると言われています。 今日の痛みや出血を乗り越え、次の健診で元気な心拍が見えれば、安心への大きな一歩になります。

2.切迫流産・進行流産・稽留流産・化学流産の違い

「流産」という言葉にはいくつか種類があり、それぞれ状態や緊急度が異なります。 最も重要なのは、「切迫流産」であれば、妊娠を継続できる可能性が十分に残されているという点です。

症状だけで自己判断するのは難しいため、必ず医師の診察が必要ですが、目安として以下の違いがあります。

【表で見る】流産の種類と症状・見込み(妊娠6週以降)

※症状には個人差があります。強い腹痛や大量出血、ふらつき等がある場合は早めに医療機関へご相談ください。

種類 あなたが感じる症状(出血・痛み) 病院での診断(エコー・心拍) 妊娠継続
切迫流産(せっぱく) 出血・痛みあり(量は生理より少ないことが多い) 心拍あり(赤ちゃんは生きている) 可能性あり(安静・治療で継続を目指す)
進行流産 激しい腹痛・大量出血(血の塊が出ることも) 胎児の排出(子宮外に出始めている) 困難
稽留流産(けいりゅう) ほぼ症状なし(あっても茶おり程度) 心拍なし(エコーで初めて分かる) 困難
化学流産 生理のような出血(生理痛程度の痛み) 胎嚢が見えない(超音波で見える前の段階) (医学的な流産回数には含めない)
Check point
・「痛い・血が出ている」=「もうダメ」ではありません。

⇒赤ちゃんの心拍確認できれば(切迫流産)、妊娠継続する可能性は十分にあります。

・逆に「痛くないから大丈夫」とも限りません(稽留流産)。

⇒だからこそ、症状の有無に関わらず健診を欠かさず受けることが大切なのです。

・切迫流産(せっぱくりゅうざん)

 「流産しかかっている」状態ですが、まだ流産したわけではありません。

出血や腹痛があっても、子宮口が閉じていて赤ちゃんの心拍が確認できれば、安静や治療によって妊娠を継続できるケースが多くあります。

 ・稽留(けいりゅう)流産

「出血も腹痛もないのに、超音波検査で胎児の成長がなく、稽留流産を告げられた」というケースがこれにあたります。自覚症状がほとんどないため、定期健診でのエコー検査で初めて発見されることが一般的です。

 ・進行流産

出血量が増え、下腹部痛が激しくなっている状態です。

赤ちゃんを含む胎嚢が着床部位から移動して外に出始めているため、残念ながら妊娠の継続は困難です。

・化学流産

受精はしたものの、着床が続かずに流れてしまった状態です。

妊娠判定陽性確認後、すぐに月経様の出血がでて、妊娠判定が陰性になったという経過が多いです。超音波検査で胎嚢(赤ちゃんの袋)が見える前に起こるため、医学的には「流産」の回数に含めないことが一般的で、通常の生理と同じように生活して問題ありません。

 

産婦人科での検査と対応

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腹痛や出血で受診した場合、状況に応じて次のような検査をおこないます。

・妊娠判定

尿検査で、妊娠に伴って分泌される hCG(妊娠ホルモン) の有無を確認します。

出血や腹痛がある場合、妊娠反応の有無や経過を把握するうえで重要です。自宅で妊娠検査薬を使用していても、結果の確認や状況整理のために、医療機関で再検査を行うことがあります。

・経腟エコー

胎嚢の有無、胎嚢の位置、胎児の有無、胎児心拍の有無など、子宮や卵巣の様子など、母体の婦人科疾患の有無と胎児の発育状態を確認します。

・クスコ診

膣鏡を用いて、出血の有無、子宮頸管ポリープの有無、膣分泌液の確認をおこないます。

【切迫流産の場合の対応】

切迫流産の場合、概ね以下のような対応となります。

  • 自宅での安静指導
  • 張り止め薬の処方
  • 定期的な通院
  • 膣炎の場合は膣炎の治療

【流産の場合】

初期の流産(稽留流産、進行流産、化学流産)の場合は自然排出を待つことが多いですが、出血が多い場合や止血ができない場合、子宮内に胎児成分が残存する場合は子宮内容除去術などが必要になるかもしれません。保険適応で処置をおこなうことが可能です。

妊娠初期の流産の場合、妊娠できない理由の多くは受精卵の問題です。どうか過度にご自分を責めないでください。妊娠の経過は毎回異なり、次の妊娠が順調に進むケースは非常に多いことが分かっています。

そのため、今回の経験が大きな不安につながっている方も、次の妊娠に向けてどのように備えればよいか、いつでもご相談いただければと思います。

当院では、心の整理がつくまでのサポートも含め、産婦人科として対応いたします。

 

命に関わる「異所性妊娠(子宮外妊娠)」のサイン

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妊娠初期の腹痛や出血の中で、見逃してはいけないのが「異所性妊娠(子宮外妊娠)」です。頻度の高いものではありませんが、破裂すると大出血につながり、命に関わる危険性があります。

「普段の痛みとは違う」「これまでに経験のない痛み」と感じたら、早めに受診することが何より大切です。

異所性妊娠とは?見逃せないリスク

異所性妊娠とは、本来受精卵が着床すべき子宮内腔ではなく、卵管や卵巣、頸管、腹腔内などに受精卵が着床してしまう妊娠のことです。とくに卵管に着床することが多く、異所性妊娠自体は全妊娠の1〜2%程度に起こるとされています。

クラミジア治療後など性病の既往がありその治癒後に発症するというケースが多いです。

異所性妊娠でも妊娠検査は陽性になり、つわりの症状が出現します。初期のうちは通常の妊娠と同じ経過をたどり、特別な症状が乏しいことが多く、早期発見は難しいです。

しかし、受精卵が成長するにつれ着床部位が破裂すると突然の腹痛や大量出血を引き起こし、緊急手術が必要になります。

異所性妊娠の特徴

  • 妊娠検査薬では陽性
  • エコー検査で子宮内に胎嚢(赤ちゃんの袋)が見えない
  • 腹痛や出血が続くことがある(症状がないこともあります)


妊娠判定が陽性で超音波検査で胎嚢が子宮内に確認できない場合、異所性妊娠の可能性が高く、着床部位により破裂のリスクが異なるため、正確な異所性妊娠の評価が必要です。

要注意サイン:片側の激痛・肩の痛み

異所性妊娠で特に注意したい症状は、片側だけに強烈な痛みがあるという点です。

  • 「右だけ」「左だけ」と限定された強い痛み
  • いつもの生理痛とは明らかに違う強さ
  • 出血が続いている(出血しないこともあります)
  • めまい、吐き気、冷や汗などを伴う


こうした症状がそろった場合、卵管破裂による腹腔内出血の可能性があります。腹部だけでなく、「肩に抜けるような痛み」も特徴です。お腹の内部で出血すると、横隔膜が刺激され、肩に痛みが出ることがあります。

ここで挙げたような症状がある場合、夜間や休日であっても、ためらわずに救急受診、救急車の要請をしてください。自宅で様子を見るのは非常に危険です。

※頸管妊娠の場合は片側に偏らない大量出血を伴う異所性妊娠ですので、疼痛を伴わない大量出血を伴う異所性妊娠もあります。

異所性妊娠が疑われるときの検査と治療

異所性妊娠が疑われる場合、産婦人科では次のような検査をおこないます。

・経腟エコー

子宮内に胎嚢があるかないか、胎嚢がない場合どこに胎嚢があるのか探します。卵管、卵巣周囲、腹腔内、まれに子宮頸管内を注意深く検査します。腹腔内は広いため、非常に見つけにくいです。

また、腹腔内の出血の程度も確認します。

・血液検査(hCG値)

週数相当のhCG値かを確認し、その後の上昇、低下により治療方針を確定します。hCGがどんどん上昇する場合は、着床部位の破裂のリスクも高いため入院で管理することもあります。

異所性妊娠の対処法

異所性妊娠の生じた部位、hCG値などによって、異所性妊娠の対処法は3つあります。

・待機療法

血液中のhCG値が低い場合、妊娠が非常に早期または流産の可能性があるため、数日おきに経過を慎重に見るという方法をとることもあります。hCG値が高くなった場合や、腹痛が出てきた場合などには、手術や薬物による治療へ変更となります。

・腹腔鏡手術

異所性妊娠の診断がついた場合、治療は手術療法が基本です。

破裂や大量出血のときは、緊急に止血操作が可能な開腹手術となることもあります。腹腔内の状況を観察しやすい腹腔鏡下手術を選択する場合もあります。着床部位の切除および止血が大切です。次の妊娠に対する影響をなるべく小さくする配慮をしながら手術を行います。

手術の方式によって、次回の妊娠率への大きな差はないとされています。

・薬物療法(メトトレキサート)

受精卵が着床している部位が不明な場合、hCG の上昇がわずかな場合、その他母体の条件などにより、薬物療法をおこなう場合があります。薬物療法でも、将来の妊娠への影響などは、手術と同程度です。

異所性妊娠後の妊娠・出産の見通し

胎嚢の着床部位によっては、卵管の片側を失うことになる場合もあります。しかし、もう片方の卵管が機能していれば、その後に妊娠・出産をすることは十分可能です。

異所性妊娠の経験が、その後の自然妊娠の可能性を完全に閉ざすわけではありませんので、ご安心ください。また、最近では卵子凍結や受精卵凍結による妊娠数も増えており、不妊治療をおこなえばほとんどが妊娠可能です。

 

その他の原因:絨毛膜下血腫・胞状奇胎など

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妊娠初期の腹痛や出血は、子宮の変化やホルモンの影響によるよくある症状であることが多い一方で、特別な原因が隠れていることもあります。

ここでは、代表的な2つの病態について簡単に説明します。

絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫はあまり聞いたことがない言葉かもしれませんが、胎児を包む膜と子宮の壁の間に血液がたまったもので、全妊娠の数%〜22%にみられます。

【絨毛膜下血腫の症状】

  • 茶色っぽいおりもの、出血がダラダラと続く
  • ときどきは鮮血が混ざることもある
  • 時々痛みを伴う


血液は自然と吸収されてだんだん小さくなっていくことが多いものの、比較的長期間にわたって不正出血が続いてしまうケースも少なくありません。血腫の位置や大きさによっては、流早産のリスクを高める場合がありますので、主治医と相談しましょう。

感染症を併発すると流早産のリスクが高まるため、出血が広がらないように安静にし、便秘にならない生活習慣を見直し、おりもの異常があるようであれば、細菌性膣炎の治療が必要なので、産婦人科を受診しましょう。

胞状奇胎(ほうじょうきたい)

胞状奇胎は、妊娠のごく初期に起こる稀な異常妊娠で、1/500程度の割合で生じる、非常にまれな疾患です。

受精卵の遺伝情報の異常が原因で胎盤組織が異常に増殖してしまい、正常な胎児が育たない状態です。そのうち、胞状奇胎の10〜20%程度はその異常な絨毛成分が子宮筋層内にまで浸潤し、「侵入奇胎」と呼ばれる病態となります。

【胞状奇胎の特徴】

  • 強いつわり(通常より著しく重い)
  • 子宮が妊娠週数のわりに大きく腫れてくる
  • 持続したり、繰り返したりする腹痛や出血
  • hCGの値が異常に高い
  • 特徴的な超音波検査での所見がある


エコーや血液検査によって確定診断がされ、その広がりによって治療法がことなります。良性疾患でありながら、多臓器に浸潤するまれな疾患で、治療は慎重におこなう必要があります。

 

自宅でできる観察と、受診時に伝えるポイント

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症状が出たとき、メモをとっておくと受診のときに状況がよく伝わります。受診前の準備、受診のタイミングについて、簡単にお伝えします。

コピペして使える「症状記録テンプレート」

症状をメモする際に使えるよう、記録したいポイントを挙げました。スマホのメモなどにコピーして、活用してみてください。当てはまる部分は残し、当てはまらない部分は削除すると簡単に症状の状況を整理できます。

<症状メモ>

【出血】

・いつから:
・色:茶/ピンク/鮮やかな赤色
・量:少量/おりものシートで対応できる/ナプキンが必要
・血の塊:ある/なし

【痛み】

・いつから:
・痛い場所:下腹部中央/右/左/腰/痛い場所が動く
・どんな痛み?:チクチク/ギューッ/ズキズキ/生理痛のよう
・痛みの強さ:10段階で◯くらい
・痛みの続く時間:◯分

【その他メモ】

・最終月経の期間:
・妊娠検査薬で陽性が出た日:
・検診結果: 例 12月1日 胎嚢が確認できた

夜間・休日の受診判断の考え方

夜間や休日に腟からの出血や腹痛があっても、「このくらいの症状で医療機関へ行ってもいいのかな?」「大袈裟って思われたらどうしよう」と、躊躇してしまう方が少なくありません。

受診をすべきかどうか、簡単な目安をお示しします。

【すぐに受診!】

  • 出血量が多い(生理やそれ以上の出血)
  • 今までに経験のないほどの強い痛み(起き上がれない、歩けないならすぐに!)
  • めまいや冷や汗を伴う

【相談したいときは】

すぐに受診すべき症状には当てはまらなくとも、妊娠中は不安が尽きないものです。みてもらえるか、受診してもよいかなどを相談したい場合は、次のような方法があります。

  • まずは、かかりつけの産婦人科へ
  • かかりつけの産婦人科が繋がらない時は、「#7119」

>>厚生労働省.大人の症状は
【#7119】

 

海老根ウィメンズクリニックでの診療・サポート

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当院では、土日も含め毎日診療をおこなっておりますので、ちょっとした不安にも寄り添って対応できる診療体制です。妊娠初期の腹痛・出血で来院された場合、次のような流れで診察となります。

・受付

まずは受付をおこなってください。24時間web予約が可能です。

・問診

web問診も可能です。いつから、どのような症状があるのかなどをご記入ください。

・検査

必要に応じて尿検査、血液検査、エコーなどをおこないます。

・医師からの説明

問診と検査の結果を受けて、医師から説明があります。お薬の処方が必要な場合、当院は院内で処方しております。不安なままご自宅でお過ごしになるよりは、「安心するために」ちょっとしたことでもご相談にいらしてください。

 

よくある質問(FAQ)

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 Q1. 妊娠初期に生理痛のような腹痛があるのは普通ですか?

はい、よくあることです。子宮が大きくなるときの痛みや、ホルモンの影響による腸の動きの鈍りなどが原因であれば問題ありません。ただし、痛みが日に日に強くなる場合や、出血を伴う場合は受診が必要です。

 Q2. 出血がなくても流産や子宮外妊娠のことはありますか?

はい、あります。「稽留(けいりゅう)流産」は出血や腹痛がないまま心拍が停止することがあります。また「異所性妊娠」も、破裂前は無症状のことがあります。だからこそ、症状がなくても定期的な妊婦健診を必ず受けることが大切です。

 Q3. 茶色いおりものが1週間以上続くとき、どのタイミングで受診すべきですか?

少量で腹痛がなければ緊急性は低いですが、数日続くようであれば一度受診しましょう。切迫流産の兆候である場合や、膣炎・びらん(ただれ)・ポリープからの出血の可能性もあります。安心のために次の健診を待たずに連絡して構いません。

 Q4. 仕事中に腹痛が出た場合、どこまで続けてよくて、どこから休むべきですか?

「少し休めば治まる痛み」なら様子見で大丈夫ですが、「冷や汗が出る」「痛くて集中できない」場合は無理せず早退・休憩して、産婦人科を受診しましょう。早めに職場に妊娠報告することも大切です。職場に妊娠を伝えている場合は、母性健康管理指導事項連絡カードを活用して、勤務緩和を申し出ることも検討しましょう。切迫流産も疾病なので、産婦人科医が診断して連続4日以上の休暇をとった場合、傷病手当を請求することができます。

 Q5. 前回流産しているので、今回も腹痛・出血がとても怖いです。妊娠を守るために私にできることはありますか?

不安になりますよね。ただ、初期流産の多くは受精卵の都合であり、防ぐことは難しいのが現実です。今できる最善のことは「無理をせず、体を冷やさず、リラックスして過ごすこと」「十分な睡眠をとること」「ストレスがあれば速やかに解除するよう対処すること」。そして気になる変化があれば、速やかに産婦人科を受診してください。

 Q6. 腹痛が辛いとき、市販の痛み止めを飲んでもいいですか?

痛み止めを飲みたくなるくらいの腹痛がある時は、産婦人科を受診して下さい。妊娠初期であれば、市販の鎮痛薬(ロキソニンなどのNSAIDs含む)を服用しても、赤ちゃんへの影響はほとんどないと言われていますが、妊娠中の内服は医師に相談するほうがいいでしょう。すでに飲んでしまった場合も、過度に心配する必要はありません。 ただし、妊娠後期になると胎児に影響が出る可能性があるため、内服薬の使用は医師と相談しましょう。「どの薬なら安心か分からない」「ネットの情報だけで判断するのは怖い」という方が多いと思います(オンライン診療も対応しています)。当クリニックでは、妊娠中でも安心して使えるお薬を処方いたします。

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>>妊娠初期症状の総合ガイド
【チェックリスト20】

 

まとめ

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妊娠初期の腹痛や出血は、お母さんの体と赤ちゃんからの大切なサインです。

それが「子宮が順調に育っている証拠」であることもあれば、「SOS(流産やトラブルの兆候)」であることもあります 。

初めてのことで戸惑うかもしれませんが、大切なのは「恐れすぎず、正しく恐れること」です 。

  • 出血量が多い、激痛がある → 迷わず医療機関へ
  • 医療機関で妊娠確認後であれば、少量の出血や軽い痛み → 安静にして経過をメモする


この記事で紹介した判断基準を参考に、まずは冷静にご自身の状態を観察してみてください。

それでも、

「やっぱり心配」
「自己判断するのは怖い」
と感じる場合は、

遠慮なく私たち産婦人科医を頼ってください 。

不安を抱えたまま過ごすことは、お母さんの心と体にとっても一番よくありません。

当院では、患者様の不安に寄り添い、丁寧な診察と説明を心がけています 。

「こんな程度の症状で受診してもいいのかな?」と遠慮せず、

赤ちゃんとご自身のために、いつでもご相談にいらしてください。

ご予約について

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平日受診できない方に通院していただきやすいよう、毎朝8時30分から診療を受け付けています。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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