デリケートゾーンの腫れやしこりが痛い!痒い!陰部の違和感の原因、早期受診すべき症状や治療法を女医が丁寧に解説。
更新日:2024.11.16
「デリケートゾーンが腫れている気がする」
「ポコっとしこりのようなものがある」
そのようなことに気がついたら、悪化してしまう前に、早めに受診をしていただきたいです。
デリケートゾーンが腫れるというのは、それほど頻繁に生じる症状ではないかもしれませんが、生活に支障が出る場合もあります。今回は、デリケートゾーンの腫れを感じた際、考えられる原因や治療法をご紹介します。
デリケートゾーンの腫れやそれに似た症状について
デリケートゾーンの「腫れ」と言っても、ご自身の症状が「腫れ」なのかどうか、よくわからないという方も少なくありません。
・ふくれている
・全体的に盛り上がっている
・触るとしこりのようなものを感じる
・デキモノがある
・いつもより熱っぽく感じる
こういった症状があれば、「腫れ」やそれに似た症状だと考えてよいと思います。
腫れ以外にも、かゆみや痛みなど、付随する症状がある場合も多いです。
腫れがあると、通常よりもデリケートゾーンに違和感を覚えやすく、日常生活にも影響が出るかもしれせん。
たとえば、痛みを伴う腫れであれば、歩行時や座る時に刺激が加わり、痛みで生活がままならないというケースがあります。また、かゆみがある場合、寝ている間など無意識に掻きむしってしまい、症状が悪化するかもしれません。しこりやできものが下着と擦れて、出血してしまうケースもあります。
デリケートゾーンの「腫れ」のような症状に気がつきましたら、お早めにご相談ください。
腫れの部位について
デリケートゾーンに違和感がある場合、次のような箇所の状態を見てみましょう。
小陰唇、大陰唇(腟の横のヒダ)
腟の入り口
肛門周辺
足の付け根
床に足を立てて座り、手鏡を使うとデリケートゾーンを観察しやすいです。赤い、ブツブツと発疹が出ている、ニキビのようなデキモノがあるなど、異変がないか確認してみてください。
腟の内部に症状が出ることもありますが、それは婦人科で内診をしなければわからないため、ご自身で無理に観察しようとせずに、ご来院ください。
デリケートゾーンの腫れ(できもの)を引き起こす病気
デリケートゾーンの腫れがある場合に、考えられる病気をいくつかご紹介いたします。
当てはまりそうだなと思うものがあれば、お早めにご相談ください。
接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎(かぶれ)は、デリケートゾーンが特定の物質に触れて炎症を起こした状態です。
原因や症状
主な原因として、洗濯洗剤やボディソープ、ナプキンやおりものシートの素材、下着、コンドームなどが考えられます。腫れのほか、強いかゆみ・赤み・発疹などが特徴的な症状です。
治療方法
原因になっている物質を特定し、その原因を取り除くことが大切になるため、症状が出始めた時に何か新しく使ったものがわかると役立ちます。原因と思われる物質を除去しながら、ステロイドのクリームや保湿剤などを使用して、症状の改善を待ちます。重症の場合は、内服治療をおこないます。
毛嚢炎・毛包炎
毛嚢炎や毛包炎は、毛穴に細菌が感染して炎症を引き起こした状態です。
原因や症状
デリケートゾーンではアンダーヘアの自己処理をきっかけに生じることが多いです。デリケートゾーンには、さまざまな細菌が存在するものなので、小さな傷でも細菌が入り込みやすく、注意が必要といえます。
毛穴の部分がプクッと盛り上がるような状態となり、膿を伴うケースも見られます。痛みも伴いやすいです。悪化し、大きなしこりのようになる場合もあるため、早めに受診いただくのがよいでしょう。
治療方法
基本的には抗菌成分の含まれた外用薬を用いますが、症状が悪化している場合、切開・排膿などの処置や抗菌薬・抗炎症薬の内服も併用します。
医療脱毛をすることもおすすめいたします。毎回のシェービングによるデリケートゾーンの損傷がなくなるため、毛嚢炎・毛包炎を予防することが可能です。
また、蒸れも軽減しますので、デリケートゾーンのトラブル(かゆみ、匂い)も減少します。
炎症性粉瘤
粉瘤(ふんりゅう)がデリケートゾーンにできて、感染による炎症を引き起こしてしまう場合もあります。
原因や症状
粉瘤というのは、皮膚の内側に袋のような構造ができてしまい、そこに角質や皮脂が溜まったものです。デリケートゾーンに限らず全身のさまざまな箇所にできうるもので、はっきりとした原因はわかっていませんが、皮膚の擦れが多い場所に好発します。
中央部分に小さな黒っぽい穴のようなものがあり、強く圧迫されると匂いの強い内容物が出てくる場合があります。放っておくと徐々に大きくなりますので、デリケートゾーンの違和感につながってしまうこともあります。一般的にあまり症状はないのですが、この部分に細菌が感染すると痛みや腫れを伴うようになります。
治療方法
感染創を切開除去し、必要に応じて抗菌薬の外用薬や内服薬を使用して治療します。
バルトリン腺炎、嚢胞、膿瘍
バルトリン腺というのは、あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、腟の左右・後ろ側(肛門側)にある小さな腺で、通常、見たり触ったりしても場所はわからないものです。
バルトリン腺炎
バルトリン腺に細菌が入り込んで炎症を起こすと、バルトリン腺炎となります。抗菌成分の含まれた外用薬や内服薬などで治療可能です。
バルトリン腺嚢胞(のうほう)
バルトリン腺には分泌液を出すための小さな穴があり、穴がなんらかの理由で閉じて分泌液が内側にたまり、袋状に腫れてしまった状態は「バルトリン腺嚢胞(のうほう)」と呼ばれます。自然に軽快することもありますが、症状がある場合は中の液体を抜く、または、バルトリン腺の開口部を外陰部に開ける開窓術もおすすめです。
バルトリン腺炎、バルトリン腺のう胞のいずれも、腟のわき、片側だけに症状が出るのが特徴的です。まれに、両側性の方もいらっしゃいます。のう胞が炎症によって腫れや痛みを生じ、歩く・座るといった日常動作に支障をきたしてしまうこともありますので、早めの対応がよいでしょう。
バルトリン腺膿瘍(のうよう)
炎症が悪化し、膿が溜まってしまった状態は「バルトリン腺膿瘍」です。腫れ・痛み・ヒリヒリ感・発熱など症状もつらくなる傾向にあります。当院では、受診当日すぐに医療レーザーで切開して膿を出し、再発防止のため、開窓術を行います。消毒を連日行うことによりバルトリン腺開口部が作られますので、ご安心ください。
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性器ヘルペス
性器ヘルペスは、ヘルペスウイルスによる感染症で、強い痛みや水ぶくれ、潰瘍、残尿感、神経痛など重い症状と、再発が多い点が特徴的です。
原因や症状
デリケートゾーンだけでなく、お尻やふともも、腟内などにも症状の広がることがあります。完全に体内からウイルスを除去できないため、疲労がたまっているときなどにウイルスが活発化して再発し、つらい症状に悩まされ続ける方も少なくありません。
治療方法
抗ウイルス薬をしっかり服用するか、潰瘍部に軟膏を使用し、痛みには痛み止めを使って、症状が落ち着くのを待ちます。早く治療を始める方が回復も早いため、性器ヘルペスの症状が出たらすぐに受診することが重要です。性交渉は感染に繋がるためお控えください。
何度も再発をしている方は、「少しピリピリ感が出てきた」という段階で、再発に気がつくことができるでしょう。そういった方には、あらかじめ抗ウイルス薬をお渡ししておき、症状が出たらすぐに服用できるようにする「PIT療法」をおこなうこともあります。
尿道カルンケル
中高年以降の女性に特有の、良性の腫瘍です。
原因や症状
外尿道口(尿の出る部位)に赤い豆粒のようなできものが生じます。加齢(エストロゲンの減少)、便秘、多産などが関係しているのではないかと考えられます。症状のない場合はそのままにしておいても健康には差し支えありません。婦人科検診などで偶然に見つかるという方も多いです。
治療方法
ただし、痛み、出血、排尿困難といった症状のある場合には、ステロイド外用薬を塗布して経過を見るか、手術を検討するケースもあります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、一部のヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の性感染症です。外陰部や肛門周辺に、イボのようなできものが生じます。
原因や症状
初期段階では小さな突起が数個できる程度ですが、放置すると大きくなり、数も増えていくことがあります。色は白っぽいものからピンク、茶色、黒までさまざまです。腟や会陰の内側、肛門部、男性であれば尿道の内側にも発生することがあります。表面がややザラザラとしているのが特徴です。
あまり痛みやかゆみはありませんが、腟前庭乳頭症やヘルペスの初期、梅毒などでも似たような見た目の症状が出るため、適切に治療するためにも早期の受診が必要になります。
治療方法
尖圭コンジローマの治療には、外用薬塗布と切除の2つの方法があります。
小さいものは、外用薬が有効です。大きな腫瘤性病変、多発病変、膣内、子宮口などのコンジローマの場合にはレーザー治療がよいでしょう。
稀にがんが併発しているタイプもあるため、切除後は念のため病理検査に提出し、組織を確認させていただきます。
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萎縮性腟炎
加齢性変化、女性ホルモン(エストロゲン分泌)の減少が原因で腟や外陰部がしぼみ、乾燥や炎症を引き起こす病態です。
原因や症状
あまり「腫れ」が出てくることはないのですが、炎症、かゆみ、赤み、違和感、性交時痛、下着の食い込みなど多彩な症状があらわれます。また、腟内の常在菌であるラクトバチルスが少なくなることで腟内環境が悪化し、おりものの量やにおいに悩むことも少なくありません。
治療方法
更年期以降の女性に多く、「婦人科へ行くような悩みなのかどうか」と躊躇してしまうことも多いようです。当院では、萎縮性腟炎の治療に力を入れており、外用薬やモナリザタッチなどさまざまな選択肢のご用意があります。また、ラクトバチルスの生菌のサプリメントの取り扱いもありますので、違和感がある、または、症状に困っている症状のある方は、お気軽にご相談ください。
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外陰部腫瘍(脂肪腫)
外陰部に発生する良性の腫瘍です。
原因や症状
増殖した脂肪組織が腫瘍化したもので、痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。
ニキビ程度の小さなものから、数センチ以上の大きなものまで、サイズはさまざまです。触ると柔らかいですが、大きくなると歩きにくさ、座った時の違和感などが気になる方もおられます。
治療方法
脂肪腫は放っておいても健康への影響は特にありませんが、気になる場合は、手術で取り除くことも可能です。いずれも稀ですが、傷ができたことをきっかけに線維組織が増殖した線維腫、また、数か月程度の短いスパンで急激に大きくなった場合は、肉腫のケースもありますので、ご心配があればいつでも婦人科にご相談ください。
リンパ嚢胞
外陰部の水のたまりがリンパのう胞であることがあります。
バルトリン腺のう胞との見分けはつきにくいですが、開窓術後に持続的にリンパ液が排出する際にはこの疾患が疑われます。診断は摘出した組織により判定されます。
デリケートゾーンの腫れを感じたら
以下のような場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。
症状が強い場合には、できるだけ早い受診をおすすめいたします。
腫れなどの症状が数日経っても改善しない、悪化している
発熱、だるさなど全身の症状がある
症状が重い、生活に支障がある
おりものの量、匂いなどにも変化がある
基本的に、デリケートゾーンの症状は婦人科を受診すべきです。
腟や子宮・卵巣などの女性器を詳しく診察するためには、婦人科でなければ十分な設備がありません。特に、内診台の設備がない場合、処置は非常に難しいです。
当院は、急な症状でお困りの方にも対応するため、土日・祝日も含めて毎日診療しております。性器ヘルペスなど、早い対応が疼痛緩和に重要な疾患もありますので、お早めにご相談ください。
デリケートゾーンの腫れにまつわるQ&A
デリケートゾーンが腫れているという症状がある場合に、よく受けるご質問にお答えいたします。
Q. 女性の陰部が片方だけ腫れる原因は何ですか?
片側だけが腫れている場合、バルトリン腺の炎症やのう胞などを疑います。症状が全くなければ数日様子を見てもよいかもしれませんが、炎症・かゆみ・痛みなどがある場合には、お早めにご相談ください。
Q. 性行為が原因で腫れることはありますか?
性行為の際に爪などで傷ができたことにより感染を起こしたり、性感染症(尖圭コンジローマや性器ヘルペス)を発症することは考えられます。コンドームによる接触皮膚炎も可能性があるでしょう。
性行為のあとにデリケートゾーンに違和感がでた場合にも、原因として考えられるものは1つではありません。症状があれば婦人科でご相談ください。
Q. 外陰部の腫れは放置していても大丈夫ですか?
感染症などすぐに対応が必要なもの、自然に軽快する可能性があるもの(バルトリン腺のう胞)などさまざまですので、実際に状態を確認し、判断するのが安心です。
まとめ
今回は、デリケートゾーンの「腫れ」や、それに類似した症状がある場合に考えられる疾患について、原因や治療法を解説しました。
原因としてはさまざま考えられますが、中には緊急性の高いものもあります。
症状が悪化する前に、早めの対処が重要です。当てはまる症状がある場合には、お早めにご相談ください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。