30代なのに更年期かも?若年性更年期障害のセルフチェックと治療法を婦人科女医が丁寧に解説。
更新日:2025.08.28

30代なのに…更年期かも?そんな不安を抱えていませんか?
近年、多く受ける取材の中で、特によく訊かれるのが、「若年性更年期」「プチ更年期」というキーワード。
「なんだかイライラする」
「気分が沈む」
「顔がほてる」
「疲れやすい」
「月経不順」
などの症状から更年期障害なのかなと感じている方が多いからなのかもしれません。
「もしかして、更年期障害?」
そう感じて婦人科を受診される方の中には、20代後半〜30代前半の若い女性も少なくありません。
医学的に「更年期」は閉経前後の年齢(一般的に45〜55歳)とされますが、実はストレスやホルモンバランスの乱れが原因で、30代から“更年期のような症状”が現れることもあるのです。
実際に、内閣府の令和5年度(2023年12月)の調査によると、30代女性の6%が「症状があり、更年期障害だと思う」と回答し、66%が「更年期様症状により生活に支障を感じる」と答えています(令和5年度 男女の健康意識調査)。
また、最近では、男性の更年期障害という言葉も話題です。
今回は、30代など早くから生じる「若年性更年期障害」なのでは?
という症状の原因や対策をご紹介します。
まずは大きな器質性疾患(心疾患、甲状腺疾患、高血圧など)がないことが確認できたら、この病態について考えてみてもいいかもしれません。
目次
若年性更年期障害とは?

若年性更年期障害は、多くの場合、閉経とは無関係に更年期障害のような症状が出ることで使われているようです。プチ更年期とも呼ばれているようですが、医学的にははっきりとした病態がつかめておりません。
ただし、臨床現場においてこのような「更年期障害」を疑われる症状を呈した方に、ホルモン検査を行うと更年期と同様の低エストロゲン状態にある患者様にお会いすることがあります。
実際、婦人科の外来ではこのような症状を訴える30代女性に対して、ホルモン検査を行うと、エストロゲン(卵胞ホルモン)の低下がみられるケースがあります。
こうした背景から、「まだ若いのに更年期みたい…」と感じる方が増え、心身の不調に戸惑いながらも、婦人科を訪れる方が少しずつ増えてきています。
年齢とともに変化する女性ホルモンの量
早発閉経(POI:早期卵巣不全)にも注意
なお、40歳未満で卵巣機能が低下し、月経が停止してしまう「早発閉経(POI:早期卵巣不全)」という医学的な病態もあり、検査と正確な診断が非常に重要です。
よくある症状とチェックリスト

「もしかして若年性更年期障害かも?」と感じる方に共通するのは、以下のような症状です。
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顔がほてる、汗をかきやすい
-
イライラや気分の落ち込みが続く
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月経が乱れる、周期が不安定
-
寝つきが悪く、眠りが浅い
-
肩こりや疲労感がとれない
いずれも更年期障害にみられる典型的な症状ですが、20代〜30代の女性にも十分に起こりうるものです。
こうした症状が複数あてはまる場合、ホルモンのバランスが崩れている可能性があります。
若年性更年期障害のセルフチェックをしてみましょう
更年期障害の可能性がある方の受診目安のチェックに使うことができる「簡略更年期指数(SMI)」をご紹介します。
この表は実際外来診療で使用されているものですが、更年期障害を心配されている場合、試してみてもいいかもしれません。
月経不順で、合計点が51点以上であれば、婦人科を受診してみてもいいかもしれません。
簡略更年期指数(SMI)チェック
以下のチェック表でご自身の状態を確認してみましょう。合計点が51点以上の場合は、婦人科受診をご検討ください。
症状 | 強い (点) |
中くらい (点) |
弱い (点) |
なし (点) |
---|---|---|---|---|
顔がほてる | 10 | 6 | 3 | 0 |
汗をかきやすい | 10 | 6 | 3 | 0 |
腰や手足が冷えやすい | 14 | 9 | 5 | 0 |
息切れ・動悸がする | 12 | 8 | 4 | 0 |
寝つきが悪い・眠りが浅い | 14 | 9 | 5 | 0 |
起こりやすく、イライラする | 12 | 8 | 4 | 0 |
くよくよしたり、憂うつになる | 7 | 5 | 3 | 0 |
頭痛・めまい・吐き気がよくある | 7 | 5 | 3 | 0 |
疲れやすい | 7 | 4 | 2 | 0 |
肩こり・腰痛・手足の痛みがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
✔ 合計点が51点以上の方は、婦人科でのホルモン検査をおすすめします。
原因はホルモンバランスの乱れ
30代で更年期のような症状が現れる背景には、ホルモンバランスの乱れが大きく関係しています。
とくに、ストレスや過度なダイエット、不規則な生活などが重なると、脳(視床下部や下垂体)からの指令が乱れ、卵巣からのエストロゲン(卵胞ホルモン)分泌が一時的に低下することがあります。
この不安定な状態が続くと、以下のような流れ(不調のメカニズム)で心身に不調が現れることがあります。
※閉経に伴う更年期障害(卵巣機能の低下)とは、メカニズムが異なります。
不調のメカニズム(簡易図)
1.ストレスや生活習慣の乱れ
↓
2.脳のホルモン指令(FSH・LH)が不安定に
↓
3.卵巣の働きが低下 → エストロゲン分泌が減る
↓
4.自律神経の乱れ・代謝低下・気分の変調などが起きる
まとめ
ストレスや体重減少で、下垂体からLHとFSHの分泌が抑制され、卵巣分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)や排卵後に分泌が増加する黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が十分に分泌されないことが原因と考えられます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)の働き
若年性更年期障害に関与すると思われるエストロゲン(卵胞ホルモン)は、どのような役割をしているでしょうか。
・月経周期の安定
・卵胞を成熟させる
・精神を安定化させる
・代謝をコントロールする
・骨密度を保持する
・肌や粘膜の潤いを保つ
・骨や血管を守る
このように、エストロゲン(卵胞ホルモン)にはさまざまな作用があり、女性の健康を保持しております。ストレスや疲労によってエストロゲンの分泌量が低下すると、これらの効用が得られなくなり、更年期障害のような症状を呈するようになるのかもしれません。
つまり、「女性らしさ」と「健康」を支える重要なホルモンなのです。
このホルモンが一時的に減少すると、年齢にかかわらず、更年期に似た症状が現れても不思議ではありません。
ホルモンバランスの乱れと似た症状
なお、ホルモンバランスの乱れと似た症状を起こす病気(甲状腺疾患や高プロラクチン血症など)もあるため、自己判断せずに婦人科での検査が大切です。
甲状腺疾患とは
甲状腺はのどぼとけの下にある小さな臓器で、体の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しています。この甲状腺の病気は、男性に比べて圧倒的に女性に多く見られるのが特徴です。特に20代から50代の女性に発症しやすいとされています。
女性に甲状腺疾患が多い明確な理由はまだ分かっていませんが、バセドウ病や橋本病といった主要な甲状腺疾患は、自分の免疫が甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患であるため、一般的に自己免疫疾患が女性に多いことが関連していると考えられています。
高プロラクチン血症とは
高プロラクチン血症(こうプロラクチンけつしょう)とは、妊娠や授乳期間中でないにもかかわらず、血液中のプロラクチン(PRL)というホルモンの濃度が異常に高くなる状態を指します。
脳腫瘍の場合があり、プロラクチンが非常に高い場合は、脳のMRI検査が必要です。
プロラクチンは、脳下垂体から分泌されるホルモンで、「乳腺刺激ホルモン」とも呼ばれ、主に乳汁の分泌を促す働きがあります。通常、プロラクチンの分泌はドーパミンという脳内ホルモンによって抑制されています。しかし、何らかの原因でこの抑制がうまくいかなくなると、プロラクチンが過剰に分泌されて高プロラクチン血症となります。
早発閉経の場合は治療が必要です
頻度は高くないのですが、40歳未満で閉経してしまう「早発閉経」が原因で、実際に更年期障害が生じている場合もあります。早発閉経の原因として、非常にまれですがターナー症候群、甲状腺疾患、糖尿病、化学療法や放射線療法の影響などの方もいらっしゃいます。 早発閉経は、30歳未満の0.1%、40歳未満の1%程度にみられるといわれており、突然卵巣の機能を停止してしまう明らかな原因はまだわかっておりません。
「早く閉経するなら楽でいい」と思うかもしれませんが、女性のからだにとって、早くに閉経するのは健康を害する場合もあります。早発閉経で、以下のようなリスクが上がります。
・骨粗鬆症のリスク増大
・冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)や脳卒中のリスク増大
・高血圧、高脂血症
・性器萎縮(腟の乾燥や炎症)
エストロゲンの欠乏は、全身のさまざまな病気の発症に関わることが知られております。
早発閉経の場合、妊娠は難しいことが多いです。 どの女性も挙児希望があれば、早めの妊娠をお勧めしております。
若年性更年期障害の診断と治療法

当クリニックでは、若年性更年期障害を心配された方には、血液検査で女性ホルモン検査を行います。
また、同時に器質性疾患(心疾患、甲状腺疾患、高血圧など)の鑑別診断も行います。
ホルモン分泌異常が認められた場合、以下の治療を行います。
・ホルモン補充療法
検査の結果、エストロゲンの著しい低下が認められる場合には、ホルモン補充療法(HRT)を検討します。
特に、低エストロゲンの症状がでてすぐの場合は、「ほてり」「発汗」「腟の乾燥」などがつらい場合に有効です。
主な特徴
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飲み薬・貼り薬・腟錠などから選択可能
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骨密度の低下予防、動脈硬化の抑制にも効果あり
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腟萎縮が強い方には、腟座薬によるホルモン治療や腟レーザー療法も併用可
(※低容量ピルを長期に服用されている方で、この症状が強くでるかたもいらっしゃいます。)
※乳がんや血栓症の既往がある方は使用できない場合があります。
・漢方薬
若年性更年期障害で生じる多彩な症状の緩和には、効果の期待できる漢方薬があります。 ホルモン補充療法との併用も可能です。乳がんや子宮がんや血栓症など、一部のご病気をお持ちの方ではホルモン補充療法が行えません。そういった場合にも漢方薬をおすすめしています。
主な特徴
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イライラや不眠、落ち込みなど「気分面の不調」にも効果的
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全身のバランスを整えるため、疲労感や冷えにも対応
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授乳中・妊活中などのライフステージに合わせて調整可能
漢方薬は、体全体のバランスを整えるよう働くため、不快な症状をまんべんなく底上げするようなイメージで効果が得られます。当院では、体質・症状・月経パターンなどを総合的に診て、最適な処方を行います。
・プラセンタ療法
注射または内服で胎盤由来の成分を補う「プラセンタ療法」も、症状緩和の選択肢としてご案内しています。
主な特徴
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疲れやすさ・肌の乾燥・ホットフラッシュ・不眠など多彩な症状に対応
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自律神経やホルモン分泌の調整に作用
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注射の場合は血液製剤のため、治療開始後に献血ができなくなる点にご留意ください
※内服タイプは自由診療となります。
ただし、注射剤はヒトの胎盤から抽出している血液製剤となり、使用後には、献血ができなくなります。ブタやウシ、ヒツジから抽出した内服も可能ですが、保険診療適応外の製剤となり、やや高価です。・生活を整える
一番大切な治療法です。
ホルモンや漢方薬も大切ですが、もっとも根本的かつ有効な対処法は、「生活を整えること」です。
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十分な睡眠をとる
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栄養バランスの良い食事を心がける
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自分をいたわる時間を作る
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リラックスする時間を作る
これらを意識するだけでも、ホルモンの分泌や自律神経の働きが整いやすくなります。
ホルモンバランスの乱れに対しては、お薬を使った治療も有効ですが、生活を整えることが何よりも大切です。なかなか実践は難しいのですが、生活リズムを整えて、しっかり眠って体を休める、バランスよく栄養のあるお食事をとるなど、体をいたわるように過ごしてください。
幸せ感が最も有効な治療法ですので、ストレスや疲労を、極力ためないように工夫しましょう。
・運動をする
更年期障害の症状の緩和には、運動も効果的です。
血行を促進することにより、肩こりやイライラ、疲れやすさの解消につながります。自律神経のバランスも整いますので、不眠や精神的な不調にもよい影響があるでしょう。
ウォーキングやストレッチ、ヨガ、キックボクシングを趣味にする!などを積極的に運動を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
男性も更年期障害?

男性ホルモンの分泌量が低下することが原因で、40歳ごろから発症しやすくなり、女性の更年期障害と違って終わりがありません。
・体の疲れや痛み
・発汗、ほてり
・イライラ、落ち込み
・不安、不眠
・集中力や意欲の低下
・性的な能力の低下
こういった症状があれば、男性更年期として治療の対象となるかもしれません。
症状の軽い場合は生活指導や漢方薬などが体に合う場合もあります。 当クリニックでも、血液検査を行い、診断が可能です。
以上、たくさん思うことを書きましたが、やはり「若年性更年期?」と気になってしまう背景には、何らかの不安な感情があるのかもしれません。
できるだけ、ポジティブに生きる!無理なら、クリニックへ!! お勧めします。
よくあるお悩みQ&A|30代で更年期かも?と思ったときに

当院の外来でも、「30代なのに更年期障害かもしれない…」と不安を抱えて来院される方が増えています。
ここでは、実際によくあるご質問にお答えします。
Q. 30代でも更年期障害になることはあるのでしょうか?
A. 医学的には「更年期」は閉経前後(45〜55歳頃)とされていますが、
過度なストレスや生活習慣の乱れによって、30代でも一時的に更年期のような症状が出ることは珍しくありません。
エストロゲンが減少していれば、年齢にかかわらず不調が起きる可能性があります。
Q. PMS(月経前症候群)や自律神経失調症とどう違うの?
A. いずれもホルモンバランスや自律神経の乱れが関係しており、症状が似ていることがあります。
違いを明確にするには、ホルモン検査による数値の確認が重要です。
当院では、月経周期や症状の時期をもとに、PMSとの違いを慎重に判断します。
Q. 将来、妊娠できなくなってしまうことはありますか?
A. 一時的なホルモン低下であれば、妊娠への影響は少ないこともあります。
ただし、40歳未満で卵巣機能が著しく低下する「早発閉経(POI)」の場合は、妊娠が難しくなることもあります。
不妊を心配される場合は、早めの婦人科相談・卵巣予備能検査(AMHなど)をおすすめします。
Q. 婦人科を受診するのはちょっと恥ずかしいです…
A. ご不安なお気持ちはよくわかります。当院では、女性医師がすべての診察を担当しており、
安心して相談していただける環境を整えております。
「検査を受けるほどでは…」「話を聞いてほしいだけかも」という方でも大丈夫。
まずはお気軽にご相談ください。
Q. 忙しくて通院が難しいのですが…
A. 当院では、オンライン診療(スマホでの診察)も行っています。
初診からでもご利用可能で、土日・祝日も対応しています。
ライフスタイルに合わせて、無理のないかたちで体調管理をサポートいたします。
当院の診療とサポート体制|ひとりで悩まず、まずはご相談ください

「年齢的にまだ更年期じゃないはず…」
「この不調をどこに相談していいかわからない…」
そんな不安を抱えながら、がまんを続けてしまう女性がとても多くいらっしゃいます。
当院では、“まだ若いのに更年期かも”と感じる女性たちを丁寧にサポートしています。
1.女性医師によるきめ細かな診療
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すべての診療を、女性医師が担当します
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不安やつらさを気兼ねなくお話しいただける雰囲気づくりを大切にしています
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診察・検査・治療まで、プライバシーに配慮した環境を整えています
2.ホルモンバランス・妊娠希望・生活背景までトータルに診療
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月経周期や生活環境に合わせた女性ホルモン検査を実施
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必要に応じて、甲状腺機能・糖代謝・卵巣予備能(AMH)などもチェック可能
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妊娠を希望される方には、妊活への影響や治療のタイミングもご案内しています
3.忙しい方も安心のオンライン診療
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スマホから全国どこでも相談可能
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土日・祝日も診療、仕事や育児でお忙しい方にも通いやすい
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必要なお薬はご自宅へ郵送可能です
まとめ
あなたの心と体が「なんとなくつらい」と感じたとき、
それは“気のせい”ではなく、体が助けを求めているサインかもしれません。
どうかひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
あなたの生活と人生を、もっと心地よいものにするために、私たちがサポートいたします。
オンライン診療も受付中|スマホで相談できます
「忙しくて通院が難しい」「遠方で通えない」
そんな方には、オンライン診療をご利用いただけます。
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初診から対応可能
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土日・祝日も診療OK
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スマホ・パソコンで受診
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お薬は自宅に配送
どんな小さなお悩みでも構いません。
まずは、「話してみる」ことから始めてみませんか?

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。