ラクトバチルスの種類と特徴
更新日:2026.06.27
目次
女性を守る乳酸菌との共生
「乳酸菌は体によい。」最近では、誰もが知っている言葉になりました。しかし実際には、乳酸菌には数百種類もの仲間がおり、そのすべてが同じ働きをするわけではありません。
特に女性の健康にとって重要なのが、「ラクトバチルス(Lactobacillus)」です。
私は婦人科医として毎日患者さんを診ていますが、「乳酸菌なら何でも同じですか?」と質問されることがあります。
答えは、「違います」です。
実は腸と腟では、活躍するラクトバチルスの種類が異なり、それぞれが人間の体を守るために役割分担をしています。
ラクトバチルスとは何か
ラクトバチルスとは、乳酸を産生する細菌の総称です。糖を分解して乳酸を作り、その乳酸によって周囲を酸性に保ちます。
この「酸」が、病原菌の増殖を抑える大きな武器になります。
つまりラクトバチルスは、自分自身が直接戦うだけではなく、「敵が住みにくい環境」を作っているのです。
これは非常に効率のよい防御システムです。
人間は、強力な免疫だけで体を守っているわけではありません。
胃では胃酸、皮膚では弱酸性、そして腟ではラクトバチルスが産生する乳酸によって、病原菌が増えにくい環境を維持しています。
腸と腟では主役が違う
「乳酸菌」と聞くと、ヨーグルトを思い浮かべる方が多いでしょう。腸内にはさまざまなラクトバチルスが存在し、
- L. plantarum
- L. casei
- L. rhamnosus
- L. acidophilus
などが代表的です。
これらは消化を助けたり、免疫を調節したり、腸内細菌叢を安定させたりしています。
一方、健康な女性の腟内では主役が少し違います。
近年の研究では、
- L. crispatus
- L. jensenii
- L. gasseri
- L. iners
この4種類が、腟内環境の中心を担っていることがわかっています。
この4種類は、「Community State Type(CST)」という分類でも重要視されています。
理想的な腟内環境を支える Lactobacillus crispatus
婦人科領域で最も注目されているのが、Lactobacillus crispatus
です。
この菌は多くの乳酸を産生し、腟内pHを約3.5〜4.2という酸性に保ちます。
さらに、
- 過酸化水素(H₂O₂)
- バクテリオシン
といった抗菌物質も作るため、
- 細菌性腟症
- クラミジア感染
- 淋菌感染
- HPV感染
- 早産
などのリスク低下との関連が報告されています。
つまり腟内では、L. crispatusが優勢であることが、より安定した状態と考えられています。
L. gasseriは日本人にも多い
日本人女性では、Lactobacillus gasseri
も比較的多く存在します。
この菌も乳酸を産生し、
- 病原菌の付着を防ぐ
- 炎症を抑える
- 免疫を調節する
といった働きがあります。
日本人女性の腟内細菌叢を調べた研究でも、重要な菌種として報告されています。
L. jenseniiも重要な防御菌
Lactobacillus jenseniiも、健康な女性によくみられます。こちらも乳酸と過酸化水素を産生し、感染予防に大きく関与しています。
L. crispatusほど強力ではありませんが、健康な腟内細菌叢を維持する重要な構成員です。
少し特殊なL. iners
一方で、少し変わった存在が、Lactobacillus iners
です。
この菌もラクトバチルスですが、
- 乳酸産生量は少ない
- 過酸化水素もほとんど作らない
という特徴があります。
健康な女性にも存在しますが、細菌性腟症へ移行する途中でもよく見つかります。
つまり、
「よい菌」
「悪い菌」
というより、
環境の変化に適応する菌
という位置づけです。
最近では、L. iners単独優位よりも、L. crispatus優位の方が、より安定した腟環境と考えられています。
更年期になるとなぜ減るのか
エストロゲンは、腟上皮にグリコーゲンを蓄えさせます。ラクトバチルスは、このグリコーゲンから作られる糖を栄養源にしています。
つまり、
女性ホルモン
↓
グリコーゲン増加
↓
ラクトバチルス増加
↓
乳酸増加
↓
酸性維持
という流れになります。
閉経後はエストロゲンが低下し、グリコーゲンが減少し、ラクトバチルスも減少します。
すると腟内pHは5〜7程度まで上昇し、さまざまな細菌が増殖しやすくなります。
これが、
- 乾燥
- かゆみ
- 性交痛
- におい
- 頻尿
- 膀胱炎
など、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の背景になります。
ラクトバチルスを守る生活
ラクトバチルスは生き物です。そのため、「育てる」という考え方が大切になります。
そのためには、
- 腟内を洗いすぎない
- アルカリ性石鹸を使いすぎない
- 必要以上の抗菌薬を避ける
- 発酵食品や食物繊維を意識し、腸内細菌叢を育てる
- 栄養バランスを整える
- 腸内環境を改善する
- 必要に応じて、医師のもとで女性ホルモンを適切に補う
などが重要になります。
最近では、乳酸菌サプリメントによるサポートも研究されています。
私がEBINEフェミニンムースとサプリメントを開発した理由
私は毎日外来で、「洗いすぎによって腟内環境を壊してしまった女性」
を数多く診てきました。
市販のボディソープの多くはアルカリ性寄りであり、皮脂や汚れをしっかり落とす一方で、腟周囲が本来持っている弱酸性環境まで失わせてしまうことがあります。
だからこそ私は、腟の酸性環境を守ることを第一に考えたEBINEフェミニンムースを開発しました。
さらに、更年期以降はエストロゲンの低下によって、ラクトバチルスそのものが減少します。
この時期には、外側から酸性環境を守るだけでは十分ではありません。
そこで、ラクトバチルスが優位な環境づくりを内側から支える目的で、乳酸菌サプリメントも開発しました。
もちろん、サプリメントだけで腟内細菌叢が劇的に変わるわけではありません。
しかし、「洗浄」「保湿」「栄養」「ホルモン環境」を総合的に整えることが、女性の健康につながると私は考えています。
人間は細菌と共に進化してきた
最新の医学では、人間は単独で生きている生物ではなく、多くの細菌と共生する「超個体(ホロビオント)」という考え方が広がっています。腸には腸内細菌がいます。
皮膚には皮膚常在菌がいます。
そして腟にはラクトバチルスがいます。
私たちは、細菌を排除して健康になるのではありません。
「よい細菌と共に生きること」で、健康を維持しています。
ラクトバチルスは、女性の体を静かに、しかし力強く守り続けている大切なパートナーです。
その存在を知り、大切に育てることが、未来の女性の健康につながると私は信じています。
ラクトバチルス属の再分類と今後の展望
近年、細菌の分類は16S rRNA遺伝子解析や全ゲノム解析の進歩により、大きく見直されました。その代表例がラクトバチルス属(Lactobacillus)です。
2020年、国際的な分類学の見直しにより、従来一つの属として扱われていたLactobacillus属は、遺伝学的な違いを反映して25以上の属に再編されました。
一方で、今後は腟内細菌叢(vaginal microbiome)の解析技術がさらに進歩し、「ラクトバチルスが多いか少ないか」だけではなく、「どの菌株(strain)が存在するのか」「どのような代謝産物を産生しているのか」が、診療上重要になる時代が訪れると考えられています。
例えば、同じLactobacillus crispatusでも、菌株によって乳酸産生能やバクテリオシン産生能が異なることが報告されており、将来的には、個々の患者さんに最適なプロバイオティクスやプレバイオティクスを選択する「マイクロバイオーム医療」が実現する可能性があります。
婦人科領域では、細菌性腟症、反復性尿路感染症、HPV感染、早産、さらには更年期のGSMとの関連についても研究が急速に進んでいます。
ラクトバチルスは単なる「善玉菌」ではなく、女性の健康を支える重要な共生微生物として、今後ますます注目されるでしょう。
EBINEフローラに込めた想い
私は長年、外来で多くの女性を診療してきました。おりものの異常、におい、繰り返す細菌性腟症、カンジダ、更年期の乾燥や性交痛――。
こうした症状を抱える女性の腟内細菌叢を調べると、共通していることがあります。
それは、
「ラクトバチルスが減っている」
ということです。
腟内には100種類以上の細菌が存在しますが、健康な女性ではラクトバチルスが優勢となり、乳酸を産生して腟内を酸性(pH 3.8〜4.5)に保っています。
この酸性環境こそが、女性を守る最大の防御機構です。
そこで私は、「女性の腟内で重要とされる代表的なラクトバチルスを、バランスよく摂取できるサプリメントを作りたい」と考えました。
EBINEフローラには、4種類の乳酸菌を配合しています。
① Lactobacillus crispatus(クリスパタス)
最も健康な腟内細菌叢で多く認められる乳酸菌です。
乳酸産生能力が高く、過酸化水素も産生しやすいため、病原菌の増殖を抑える中心的存在として知られています。
近年では、「クリスパタス優位」の腟内細菌叢は、細菌性腟症や性感染症のリスクが低いことが数多く報告されています。
② Lactobacillus gasseri(ガセリ)
日本人にもなじみ深い乳酸菌です。
腟内だけでなく腸内にも存在し、乳酸を産生して腟内環境を整える働きがあります。
腸と腟は密接につながっているため、腸内環境を整えることも女性の健康には重要です。
③ Lactobacillus reuteri(ロイテリ)
ロイテリ菌は、「ロイテリン」という抗菌物質を産生することで知られています。
善玉菌を守りながら病原菌を抑える働きが期待されており、腸内だけでなく女性の健康分野でも研究が進んでいます。
④ Lacticaseibacillus rhamnosus(ラムノーサス)
従来はLactobacillus rhamnosusと呼ばれていましたが、近年の菌分類で新しい属に再分類されました。
ラムノーサス菌は、世界中で最も研究されている乳酸菌の一つで、腸内環境や免疫機能との関連について豊富な報告があります。
腸と腟はつながっています
私は、「腸活」と「腟活」は別々ではなく、一つの健康管理だと考えています。口から摂取した乳酸菌が、そのまま腟へ届くわけではありません。
しかし腸内環境を整え、免疫バランスを改善することは、女性全体の細菌叢の安定につながる可能性があります。
さらに腟では、クリスパタスやガセリなどのラクトバチルスが優勢になることで乳酸を産生し、女性本来の酸性環境を維持します。
私がEBINEフェミニンムースとEBINEフローラを一緒に作った理由
私は診療を続ける中で、「洗うこと」と「育てること」の両方が必要だと感じるようになりました。そのため、EBINEフェミニンムースでは、腟周囲の弱酸性環境を壊さず、毎日やさしく洗うことを目指しました。
そしてEBINEフローラでは、女性にとって重要なラクトバチルスを補い、腸と腟の両面から健康を支えることを目標に開発しました。
女性の健康は、一つの菌だけで守られるものではありません。
さまざまなラクトバチルスが互いに協力しながら、腟内細菌叢という「生態系」をつくり、そのバランスが女性らしさや快適な毎日を支えています。
私はこれからも診療と研究を通して、「女性を守る乳酸菌」の大切さを、一人でも多くの方へ伝えていきたいと思っています。
EBINEフェミニンムースのご紹介
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



