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院長ブログ

なぜ腟は酸性なの?|人体に備わった「酸で守る」という知恵

腟の自浄作用とラクトバチルスが女性を守る仕組み

私たちは普段、「酸」という言葉に対して、強い・危険・刺激がある、といったイメージを持つかもしれません。
しかし実は、人間の体は「酸」を巧みに利用して、自分自身を守る仕組みを何重にも備えています。

胃酸は食べ物と一緒に入ってくる細菌を排除し、皮膚は弱酸性を保つことで雑菌の繁殖を防ぎます。
そして女性の腟もまた、酸性環境を維持することで感染から身を守っている臓器なのです。

私たちの体を眺めると、「なるほど、人体は本当によくできている」と感心させられる場面が数多くあります。
今回は、腟だけではなく、人間の体全体に共通する「酸で守る」という生体防御の仕組みを中心にお話ししたいと思います。

人体は「外」と「内」をきちんと分けている

私たちは皮膚に包まれて生活していますが、実は体の中には外界とつながっている場所がいくつもあります。

例えば、
・口から肛門まで続く消化管
・鼻や気管などの呼吸器
・尿道
・腟

これらは一見「体の中」に見えますが、生物学的には外界とつながったトンネルです。

つまり、細菌やウイルスにとっては侵入経路でもあります。

もし何の防御もなければ、人は毎日感染症にかかってしまうでしょう。

そこで人体は、それぞれの場所に最適な防御方法を発達させてきました。

胃は「強酸」で細菌を殺している

最も有名なのが胃酸です。

胃液のpHは約1〜2。
これはレモン汁よりもはるかに強い酸性です。

食べ物には数えきれないほどの細菌が付着しています。
その多くは胃酸によって死滅します。

もちろん、すべての細菌を殺すわけではありません。
腸まで届く細菌もいますが、胃酸があることで、有害菌の多くは最初の関門で排除されます。

もし胃酸が極端に少なくなると、
  • 食中毒
  • 胃腸炎

などが起こりやすくなることも知られています。

つまり、酸は人体にとって天然の防御機構のひとつなのです。

皮膚も実は弱酸性

皮膚も弱酸性、pH4.5〜5.5程度に保たれています。

これを「酸性皮脂膜」と呼びます。

この環境では病原菌は増えにくく、一方で皮膚の常在菌はうまく共存しています。

近年では、洗いすぎによって皮膚のバリア機能が低下することも問題になっています。

人間は、必要以上に「無菌」を目指しているわけではありません。

良い菌が住みやすい環境を整えることが大切なのです。

腟もまた「酸」で守られている

女性の腟も同じ考え方です。

健康な閉経前女性の腟内pHは約3.8〜4.5。
体の中ではかなり酸性です。

では、この酸はどこから来るのでしょうか。

答えは、ラクトバチルス、いわゆる乳酸菌です。

ラクトバチルスは乳酸を作っている

女性ホルモンであるエストロゲンの作用によって、腟の上皮にはグリコーゲンが蓄えられます。

古くなった細胞が剥がれると、このグリコーゲンが分解され、糖になります。

ラクトバチルスはその糖を利用して、乳酸を作ります。

この乳酸によって、腟は酸性に保たれているのです。

つまり、
女性ホルモン → グリコーゲン増加 → ラクトバチルス増殖 → 乳酸産生 → 酸性環境維持
という見事な仕組みになっています。

腟の自浄作用とは何か

「腟には自浄作用があります。」

この言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

自浄作用とは、腟が自分で健康な環境を維持する能力を意味します。

これは単に分泌物が汚れを洗い流しているだけではありません。

実際には、
  • ラクトバチルスが乳酸を作る
  • 酸性環境になる
  • 悪玉菌が増えにくくなる
  • 常在菌のバランスが保たれる
  • 腟粘膜の免疫機能が働く

という複数の仕組みが同時に働いています。

近年では、ラクトバチルスは乳酸だけでなく、過酸化水素や細菌の増殖を抑える物質、いわゆるバクテリオシンなどを産生し、病原菌の定着を抑えることもわかってきています。

また、腟粘膜の免疫応答にも影響を与え、感染防御に寄与すると考えられています。

まさに、人体と善玉菌の共同作業なのです。

ラクトバチルスは女性の一生を守っている

ラクトバチルスが減少すると、
  • 細菌性腟症
  • 腟カンジダ症などのトラブル
  • 尿路感染症
  • 性感染症への感受性の上昇

などが起こりやすくなることがわかっています。

閉経すると女性ホルモンが減少します。
するとグリコーゲンも減り、ラクトバチルスも減少します。

その結果、腟内pHは5〜7程度まで上昇します。

すると乾燥や炎症が起こりやすくなり、GSM、つまり閉経関連泌尿生殖器症候群へとつながっていきます。

つまり、ラクトバチルスは若い女性だけではなく、女性の一生に寄り添う存在なのです。

人間は「菌を排除する」のではなく「共生する」

近年、「マイクロバイオーム」、つまり微生物叢という考え方が注目されています。

以前は、細菌を敵と考えることが多くありました。

しかし現在では、人体には数十兆個もの細菌が共生しており、健康維持に重要な役割を果たしていることがわかっています。

つまり、健康とは菌がいない状態ではなく、良い菌が優勢な状態なのです。

腸ではビフィズス菌やラクトバチルス、皮膚では皮膚常在菌、そして腟ではラクトバチルス。

それぞれが適切な場所で人体を守っています。

人体は「道理」にかなった仕組みでできている

医療の現場にいると、人体の精巧さに驚かされることが何度もあります。

胃は酸で守り、皮膚は弱酸性で守り、腟も乳酸菌による酸性環境で守られている。

一見すると別々の臓器ですが、その根底にある考え方は共通しています。

外界と接する場所では、単に病原体を排除するのではなく、環境そのものを整え、良い菌と共生することで体を守る。

これこそが人体の知恵であり、長い進化の過程で築かれてきた仕組みです。

女性の健康を考えるうえでも、「腟を清潔にする」だけでは十分ではありません。
大切なのは、ラクトバチルスが住みやすい環境を保ち、腟本来の自浄作用を支えることです。

人体は決して無菌を目指しているわけではなく、「必要な菌と共に生きる」ように設計されています。
その自然の仕組みを理解し、必要以上に壊さないことが、これからの女性医療や予防医療においてますます重要になるでしょう。

酸は敵ではありません。
人体が長い進化の中で獲得した、私たちを守るための知恵なのです。

人体の知恵を守るために、私たちができること

私は長年、産婦人科医として多くの女性の診療に携わってきました。

その中で痛感してきたのは、女性は年齢とともにホルモン環境が変化し、本来備わっていた「体を守る力」が少しずつ弱くなってしまうという現実です。

特に閉経後は、エストロゲンが減少することでラクトバチルスが減り、腟内の酸性環境が保ちにくくなります。
その結果、乾燥、かゆみ、性交痛、におい、繰り返す感染症、頻尿や尿路感染など、さまざまな症状につながることがあります。

しかし、私は診療を続ける中で、「失われたものをすべて元に戻す」ことは難しくても、人体が本来持っている仕組みをできる限り支え、守ることはできると考えるようになりました。

その思いから開発したのが、EBINEフェミニンムースです。

女性のデリケートゾーンは、とても繊細な部位です。
だからこそ、「洗うこと」だけを目的とするのではなく、必要以上に刺激を与えず、やさしく清潔に保つことが大切だと考えています。

EBINEフェミニンムースは、毎日のケアの中でデリケートゾーンをやさしく洗い、清潔に保つことを目的に開発しました。

さらに、更年期以降の女性では、ホルモン環境の変化により、体調やデリケートゾーンにさまざまな変化を感じることがあります。

そこで私は、女性の毎日の健康管理を内側から支える選択肢のひとつとして、栄養補助食品「EBINEフローラ」も開発しました。

もちろん、洗浄料やサプリメントだけで、すべての症状が改善するわけではありません。
乾燥、かゆみ、性交痛、におい、繰り返す感染症、頻尿や尿路感染などの症状がある場合は、自己判断せず、婦人科で相談することが大切です。

大切なのは、日々のケア、生活習慣、適切なスキンケア、そして必要に応じた医療を組み合わせながら、女性が本来持つ体の力を支えていくことだと考えています。

私は製品を「売る」ためだけに作ったのではありません。

毎日の診療で、「もう少し何かできることはないだろうか」と考え続けた結果、生まれたものです。

人体は実によくできています。

胃は胃酸で守られ、皮膚は弱酸性で守られ、腸は多様な腸内細菌と共生し、そして腟はラクトバチルスがつくる乳酸によって守られています。

人は菌と戦うことで健康になるのではなく、良い菌と共に生きることで健康を維持している。

この自然の摂理こそが、私は最も美しい人体の設計だと思っています。

医療は病気を治療するだけではありません。

本来備わっている体の力を理解し、その力を支えることも医療の大切な役割です。

これからも私は、診療だけでなく、正しい知識を発信しながら、女性が人生のどの年代においても自分らしく健やかに過ごせるお手伝いを続けていきたい。

EBINEフェミニンムースのご紹介

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。

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