指の関節が痛い!第一関節が腫れる!変形した!?「へバーデン結節と更年期障害」について婦人科女医が解説。
更新日:2025.05.13
へバーデン結節という言葉をご存じでしょうか?
ヘバーデン結節は、更年期時期の女性に発症する症状の一つとして、特に40歳以降の女性に生じる手指の第一関節の変形性関節症です。
更年期になるとエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少するため、指の関節液が減少して、関節の軟骨がすり減りやすくなり、疼痛が出現して関節が腫脹して、変形が現れる可能性があります。
整形外科を受診されることが多いと思いますが、原因がエストロゲンの低下による可能性も考えられるため、ホルモン補充療法をお勧めしております。
目次
ヘバーデン結節の症状

指の関節の痛み
指の第一関節が痛むのが最初の症状です。
関節の腫れ
指の関節が腫れてきます。
指の変形
指の関節が屈曲変形し、指が曲がったり、棒状になったりします。
へバーデン結節の診断

レントゲン検査で関節の間隙の狭小化や骨棘などの変化がみられる場合、へバーデン結節と診断されます。
ヘバーデン結節の治療

1.保存的治療
安静、外用薬、テーピング、関節内ステロイド注射などを行います。
2.薬物療法
痛みや炎症を抑える薬を服用することがあります。
3.手術
症状が重い場合は、手術が必要になることもあります。関節固定術や骨棘切除術などがあります。
4.更年期障害の治療
婦人科を受診して、女性ホルモンの低下をみとめた場合、ホルモン補充療法をお勧めいたします。
ホルモン補充療法は、主に内服薬、塗り薬、張り薬があります。
特に、塗り薬はへバーデン結節の治療に効果的と思われます。疼痛の出現した関節に直接エストロゲンジェルを塗布することにより、痛みが軽減して、関節の変形化を抑制することができる可能性があります。
当クリニックでのへバーデン結節の治療法

1.問診
更年期の症状と関節リウマチの家族歴を中心に問診いたします。
2.採血
更年期と関節リウマチの鑑別が必要なため、血液検査により女性ホルモン及びリウマトイド因子や抗CCP抗体および炎症反応を確認します。確定診断のため、整形外科医をお勧めする場合もあります。
3.診断
更年期による低エストロゲンが認められ、関節リウマチが否定され、一般的な保存療法が有効でない場合、ホルモン補充療法(エストロゲン補充療法)を検討します。
4.ホルモン補充療法
安全にホルモン補充療法を行うために、子宮体癌検査、子宮超音波検査、乳がん検診、凝固能の検査を行い、ホルモン補充療法のメリットとデメリットを説明します。
5.患者様の同意がられた場合
エストロゲンジェルによる関節への塗布の方法と副作用軽減のため睡眠前の黄体ホルモンの内服を説明します。
私の個人的な関節痛の体験

更年期に治療するにあたり、よくご相談される症状が、指先が痛くて曲がってしまうへバーデン結節というわれる病態でした。
なんとなく、へバーデン結節の発症が更年期時期の発症時期に重なるので、この変化は何らかのエストロゲンの関連性があるのではないかと思っておりました。
ホルモン補充するにあたり、20年くらい前からエストロゲンのジェルを処方することが多くなりました。 理由は、量を多少個人で調整できるため、患者自身が使用しやすいのではという考えからでした。
へバーデン結節の何人もの患者さんにエストロゲンジェルを処方してまいりましたが、その効果判定をきちんとできないまま今に至り、先月から、なんとなく私の指が痛くなりました。
朝に少しこわばりも感じます。
取り合えず、関節リウマチの血液検査と女性ホルモン検査を行ってみました。関節リウマチは否定的なデータでした。女性ホルモンはというと、やや低めであるものの、全く女性ホルモンがでていない状況ではありませんでした。
しかしながら、関節の疼痛は持続し、念願のホルモン補充療法を自分で試してみる機会に感謝して、エストロゲンジェルを毎日使用することにしました。本来であれば、腕に使用するものを両手の関節に、特に疼痛を感じる部位に毎日1回塗る。
症状は改善するのか?
血中濃度はどうなるのか?
こんなことを思いながら治療を開始すると、3日後から、あら不思議。疼痛はすっかりなくなりました。
1か月持続して、採血を行いましたが、吸収率の悪い部位のためか、ほぼエストロゲンのデータは変わりがありませんでした。そして、治療を少しさぼると疼痛は出現します。 自分が患者になるのはとてもいいことがとしみじみ感じました。
その後、毎日ホルモン補充療法を行っている患者さんに特に関節痛にフォーカスを当てて問診してみると、関節に直接でなくとも関節痛に有効だった患者さんが沢山いらっしゃいました。
もちろん、疼痛から変形までには至っていない軽症例が多いので、もっと検討の必要性があるのは事実ですが、勇気をもって積極的に関節痛の患者様にホルモン治療をしようと思いました。
痛くなくなったのがうれしくて、つい書いてしまいました。
ヘバーデン結節の予防

バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事を摂り、特にカルシウムやビタミンD、コラーゲンやタンパク質を十分摂取することが大切です。
適度に関節を動かすこと
関節の柔軟性を保ち、症状の悪化を防ぐことができます。
喫煙の禁止
喫煙は、関節の炎症を悪化させるため、禁煙が推奨されます。
まとめ
更年期における指の関節痛や変形は、多くの女性が経験する症状であり、特にへバーデン結節はその代表的な例です。エストロゲンの減少が関節の変性を促進することが知られており、早期の対処が重要です。
当クリニックでは、問診や血液検査を通じて、関節リウマチとの鑑別を行い、必要に応じてホルモン補充療法を提案しております。特にエストロゲンジェルの局所塗布は、関節の痛みや変形の進行を抑える可能性があります。変形を引き起こす前の治療をお勧めいたします。ぜひ、ご相談くださいませ。
また、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などの生活習慣の見直しも、症状の予防や改善に寄与します。
指の関節に違和感や痛みを感じた際は、早めの受診をお勧めいたします。当クリニックでは、患者様一人ひとりの症状に合わせた最適な治療法をご提案しておりますので、お気軽にご相談ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。