月経に関連する頭痛を改善する方法|ピル・トリプタン製剤・抗CGRP抗体の効果と注意点
更新日:2024.10.27
PMS(月経前症候群)がひどい患者の中には、片頭痛を訴える方が少なくありません。
頭痛を訴える患者さんに対しては、月経周期に伴う頭痛か、月経と無関係な頭痛かを見極め、診療手順を変える必要があります。
月経周期に関与しない頭痛の場合
この場合、まず脳や体の器質的な疾患が原因かどうかを確認します。
具体的には以下の検査を行います。
1.頭部MRI・MRA
脳血管に動脈瘤や血管奇形がないかを確認
2.採血検査
貧血、肝機能、腎機能、甲状腺ホルモンの異常をチェック
これらの検査で異常が見つかった場合は、その基礎疾患を治療します。
月経周期に関与する頭痛の場合
月経周期に関与する頭痛では、エストロゲンの急激な低下が原因で、血管が収縮・拡張するため頭痛が起こりやすくなります。特に月経開始の2日前から月経後3日間にかけて発症するケースが多いとされています。
このタイプの頭痛は、閃輝暗点(光のちらつきなどの視覚異常)を伴わないことが一般的です。
しかし、片頭痛が閃輝暗点を伴うかどうかは、治療方針に影響します。エストロゲンの変動を抑えるために、低用量ピルが効果的な治療法となりますが、以下の注意点があります。
前兆のある片頭痛(閃輝暗点あり)⇒ピルの処方は禁忌
前兆のない片頭痛⇒慎重に投与
ピル使用による脳梗塞リスクは、前兆のある片頭痛で約6倍、前兆のない片頭痛で約2倍とされています。
ただし、基礎疾患のない若年女性では脳梗塞リスクは低いため、十分な説明の上で、日常生活に支障をきたす頭痛の場合にピルを処方します。
セロトニンと片頭痛の予防
エストロゲンが減少すると、脳内のセロトニンという神経伝達物質も減少します。セロトニンには血管の収縮作用があり、これが不足すると血管が拡張して片頭痛が起こりやすくなります。
片頭痛の予防には、セロトニンの作用を強めるトリプタン製剤が有効です。代表的な薬剤は次のとおりです。
- スマトリプタン(イミグラン)
- ゾルミトリプタン(ゾーミック)
- エレトリプタン(レルパックス)
- リザトリプタン(マクサルト)
- ナラトリプタン(アマージ)
漢方薬やその他の治療法
症状が軽い場合は、安静、睡眠、鎮痛剤、および葛根湯などの漢方薬で改善を試みます。
ただし、これらの対策で十分な効果が得られない場合は、低用量ピルやトリプタン製剤の使用を検討します。
抗CGRP抗体による治療
当クリニックでは、婦人科医と脳外科医が連携して診療を行います。
片頭痛の発作を抑制する新しい治療法として、抗CGRP抗体を使用した治療も可能です。
まとめ
月経周期に関連する頭痛は、エストロゲンの変動が原因で発症しやすいため、低用量ピルやトリプタン製剤を組み合わせた治療が効果的です。安静や漢方などの対策で改善しない場合、専門医の診察を受けることが重要です。
当クリニックでは、婦人科と脳外科の連携により、最適な治療法を提案いたします。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。