【子宮筋腫の症状チェック】お腹ぽっこり・生理痛・貧血…受診目安とタイプ別に婦人科医が解説。
更新日:2025.12.28
「最近、体重は変わらないのに下腹部だけぽっこり出ている気がする」
「以前より生理痛がつらい/経血量が増えて漏れることが増えた」
「生理期間以外でも、下腹部や腰に鈍い痛みがある」
こうした体の変化は、年齢や体質だけでは説明しきれないこともあり、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)が関係している可能性があります。
子宮筋腫は珍しくない病気で、多くは良性(がんではない)です。
一方で、症状が強くなると出血による貧血や、頻尿・便秘などの圧迫症状が続いて、生活の質(QOL)に影響することがあります。
この記事では「病院に行くべきか迷っている」方が、症状を整理し、安心して次の行動(受診/経過観察)を選べるように、セルフチェック・受診の目安・お腹ぽっこりとの関係・タイプ別の特徴をわかりやすく解説します。
※診断は医療機関で行います。
ここでは自己判断で抱え込まないための整理を目的にしています。
目次
まず結論|不安なときに押さえる3つのポイント
1)「お腹ぽっこり」だけで筋腫とは判断できません
下腹部の膨らみは、脂肪、便秘、ガス、むくみ、姿勢などでも起こります。
筋腫が関係する場合は、生理の変化(出血・痛み)や圧迫症状(頻尿・便秘)と「セット」で起きているかが、判断のヒントになります。
2)「触って確認」より「エコー検査」が確実です
自分で触って「しこり」を確かめたり、見た目だけで筋腫かどうかを判断したりするのは困難です。
婦人科の超音波検査(エコー)で、筋腫の有無や大きさ・位置を確認できます。
※経腟エコーは短時間で終わることが多い一方、違和感の感じ方には個人差があります。
3)「受診=すぐ手術」ではありません
「手術を勧められたら怖い」という理由で受診をためらう方もいます。
実際には、症状が軽い場合は経過観察や、薬で出血・痛みをコントロールする治療が選ばれることが多いです。
まずは「いまの状態を知る」ために受診する、という考え方で大丈夫です。
【セルフチェック】子宮筋腫を疑う4つのサイン
筋腫の症状は、できる場所と大きさで変わります。
以下でご自身の状態を整理してみてください。
1)生理(月経)に伴う症状(代表的)
「昔と比べてどうか」という変化がポイントです。
- 経血量が多い(夜用でも不安/短時間で交換が必要)
- 血の塊が出る/増えてきた
- 生理が長引く(だらだら続く)
- 生理痛が年々重くなっている/鎮痛薬が手放せない
2)貧血を疑う症状(過多月経がある方は要注意)
出血が多い状態に慣れてしまい、気づかないまま貧血が進むことがあります。
- 立ちくらみ、めまい
- 少し動くだけで動悸・息切れ
- だるさが続く/疲れが取れない
- 集中しづらい、階段がつらい
3)圧迫症状(トイレや腸の悩み)
筋腫が大きくなると、膀胱や腸を圧迫して症状が出ることがあります。
- トイレが近い(頻尿)/残尿感がある
- 尿が出にくい(特に月経前から月経にかけて)
- 便秘がちになった、便が細くなった
- 下腹部が張るような苦しさがある
4)見た目や痛みの変化
- 下腹部だけがぽっこりしてきた(急な体重増加はない)
- 生理以外の日にも腰痛や下腹部痛がある
- 性交時に痛み・違和感がある(※詳細は別記事へ)
判定の目安
複数当てはまる場合、特に「以前より悪化している」場合は筋腫の影響が疑われます。
一度、婦人科で検査(エコー)を受けると原因が整理できます。
【受診の目安】「様子見」か「受診」か迷ったら
「これくらいで病院に行っていいのかな?」と迷う方へ。判断の目安をまとめました。
すぐ受診(当日〜近日)
- ナプキンが短時間で追いつかない出血が続く
- ふらつきが強く、立っていられない
- 激しい腹痛/急な悪化
- 閉経後の不正出血
→ 重い貧血や、筋腫以外の原因も含め早めの評価が必要です。
早めに受診(数日〜数週間)
- 生理の量が増えた/血の塊が増えたと感じる
- 健診で貧血を指摘された
- 頻尿・便秘が続き、内科的な対処でも改善しない
- 生理痛がつらく、薬が手放せない
→ 症状をコントロールできる可能性がある段階です。QOL改善のため、一度産婦人科受診をおすすめします。
様子見も可(ただし医師の指示に従う)
- 症状がほとんどない
- 健診で指摘されたが「経過観察」と言われた
- 生活に支障がない
→ 緊急性は低いこともありますが、自己判断で放置はせず、フォロー間隔は医師の指示に従いましょう(例:6〜12か月ごとなど、状況で変わります)。
症状が変わったときは予定より早めに相談してください。
「お腹ぽっこり」は筋腫? 脂肪? 整理の手順
下腹部のぽっこりは、筋腫以外にも便秘・ガス・むくみ・姿勢などで起こります。
見た目だけで「筋腫だ」と決めるのは難しいことが多いです。
迷ったときは、次の手順で整理すると判断しやすくなります。
【手順1】まず“セット症状”があるか確認する
- ぽっこり + 過多月経/生理痛の悪化
- ぽっこり + 貧血っぽい(めまい・息切れ・だるさ)
- ぽっこり + 頻尿/便秘などの圧迫症状
【手順2】「出血が多い」か「圧迫症状が中心」かを分ける
- 出血が多い/貧血がある
→ 子宮の内側に影響が出やすいタイプ(粘膜下・筋層内)を含めて評価 - 頻尿・便秘・張りが中心
→ 外側へ大きくなるタイプ(漿膜下)を含めて評価
【手順3】迷ったらエコーで確認するのが最短
「ダイエットしても下腹部だけ凹まない」
「症状がセットである」
このような方は、エコーで子宮の状態を確認するのが近道です。
原因が分かるだけで不安が軽くなることも少なくありません。
子宮筋腫とは? タイプ別で症状が違う(早見表)
| タイプ | できる場所 | 出やすい症状(目安) |
|---|---|---|
| 粘膜下筋腫(ねんまくか) | 子宮の内側(内膜側) | 小さくても過多月経・貧血が出やすい。生理が長引くことも。 (小さいものは子宮鏡下の手術適応) |
| 筋層内筋腫(きんそうない) | 子宮の筋肉の中 | 生理痛の悪化・過多月経につながることがある。子宮が大きくなり張り感が出る場合も。 |
| 漿膜下筋腫(しょうまくか) | 子宮の外側 | 出血症状は目立ちにくいことも。大きくなるとお腹ぽっこり・頻尿・便秘・腰痛など“圧迫症状”が出やすい。 |
| 頚部筋腫(けいぶ) | 子宮の出口付近 | 頻度は高くないが、位置の関係で頻尿・排尿しづらさが前面に出ることがある。性交痛の一因になる場合も。 |
この表の見方|「出血の悩み」か「圧迫の悩み」かで当たりをつけます
子宮筋腫は、できる場所によって症状の出方が変わります。
悩みの中心が「生理(出血・痛み)」なのか、「圧迫(頻尿・便秘・張り)」なのかで、関係していそうなタイプを整理しやすくなります。
※複数タイプが同時にあることもあります。
①「生理の量が増えた」「貧血っぽい」なら:粘膜下・筋層内が関係することが多い
過多月経、血の塊が増えた、生理が長引く、めまい・息切れ・だるさなどの貧血症状がある場合は、子宮の内側に近い粘膜下筋腫や、子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫で、子宮内腔が影響を受けている可能性があります。
子宮内膜ポリープや小さい粘膜下筋腫は子宮鏡下での手術の適応になることがあります。早めの診断でおなかに傷のつかない手術が可能になります。
特に「以前より悪化」「鎮痛薬が手放せない」「健診で貧血を指摘された」場合は、我慢せずエコーで確認すると原因が整理できます。
【粘膜下筋腫の特殊ケース】筋腫分娩(腟へ脱出)とは?
粘膜下筋腫のなかでも、筋腫が「茎(けい)」を持って子宮内にぶら下がる形(有茎性)で大きくなると、筋腫が子宮口へ下がり、腟内へ飛び出してくることがあります。これを「筋腫分娩」と呼ぶことがあり、分娩のように押し出されるため、陣痛のような痛みを伴うことがあります。
起こりやすい症状は、出血が多い/止まりにくい(過多月経・不正出血)、貧血症状、下腹部痛、(脱出している場合は)腟の中に何か触れる・違和感などです。悪臭・発熱など感染が疑われる場合もあります。
出血が多い、強い痛みが続く、腟内にしこりのようなものが触れる、発熱・悪臭がある場合は、自己判断せず早めに婦人科へ相談してください。
②「頻尿・便秘・張り」「お腹ぽっこり」が中心なら:漿膜下を含めて考える
生理の量は大きく変わらない一方で、下腹部の張り、頻尿、便秘、腰の重さなどが続く場合は、子宮の外側に向かって大きくなる漿膜下筋腫で、膀胱や腸が圧迫されているケースがあります。
「ダイエットしても下腹部だけ凹まない」「トイレが近い・便秘が続く」といった“ぽっこり+圧迫症状”がセットなら、婦人科でエコーを受けるのが最短ルートです。
③「排尿のしづらさ」が強いとき:頚部筋腫も候補(ただし他の原因も)
頚部筋腫は頻度は高くありませんが、位置の関係で排尿しづらさ・頻尿が前面に出ることがあります。
排尿できないと腎臓機能に影響が出るので、必ず子宮筋腫の治療が必要です。
内服や注射で子宮筋腫を小さくする治療や手術療法が必要な場合もあります。無尿の時は、すぐに産婦人科を受診してください。
また、性交痛や性交後の出血がある場合は筋腫以外の原因もあり得るため、気になる方は別記事も参考にしてください。
Check point
「出血が多い/貧血っぽい」または「頻尿・便秘・張りが続く」のどちらかがある時点で、受診してエコーで確認するのが確実です。
※受診=すぐ手術ではありません。まずは「今の状態を知る」ことからで大丈夫です。
検査と治療について
・検査は痛い?
基本は問診+超音波検査(エコー)です。
経腟エコーは短時間で終わることが多く、筋腫の位置や大きさの目安が分かります。不安があれば遠慮なく伝えてください。
大きな子宮筋腫の場合、必要に応じてMRIなど追加検査を行うことがあります。
・治療の選択肢(手術だけではありません)
治療は、症状の強さとライフプラン(妊娠希望など)に合わせて検討します。
- 経過観察:症状が軽い/安定している場合
- 薬物療法:出血や痛みのコントロール、貧血の改善など。月経を止めて子宮筋腫のサイズを小さくする。
- 手術・処置:内膜に近い小さい病変は、子宮鏡下手術で治療が可能な場合があります。腹腔鏡下で筋腫のみを取る/子宮全摘を含めた治療など、状態により選択可能です。腹部の小さい傷で治療ができることもあります。
・妊娠・分娩への影響(知っておきたいポイント)
子宮筋腫があっても妊娠・経腟分娩できる方は多い一方、筋腫の大きさや場所(粘膜下、子宮下部、複数、大きい筋腫など)によっては、妊娠中の強い痛み(変性痛)、切迫早産、胎位異常、分娩の進みにくさ、帝王切開、分娩後の出血(弛緩出血)などのリスクが上がることがあります。
特に子宮下部に大きな筋腫がある場合は、赤ちゃんの向き(逆子など)が整いにくく、分娩方法の検討が必要になることがあります。妊娠希望や妊娠中は、健診で筋腫の位置・サイズを把握し、強い腹痛や出血、発熱がある場合は早めに相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子宮筋腫は「がん」になりますか?
子宮筋腫は良性の腫瘍で、がんではなく、がんになることも通常はありません。一方で、ごく稀に筋腫と似た所見の悪性腫瘍が見つかることがあります。術前に確実に見分けるのが難しいので、特に閉経後の不正出血や症状の急な変化があるときは早めに受診しましょう。
Q2. 食事や生活習慣で筋腫は小さくなりますか?
特定の食品を食べたり制限したりすることで、筋腫が確実に小さくなるという根拠は明確ではありません。ただし体調や月経症状の感じ方には生活習慣も影響するため、極端に神経質になりすぎず、睡眠や栄養のバランスを優先しましょう。
Q3. 妊娠を希望しています。影響はありますか?
影響は筋腫の位置・大きさ・子宮内腔への影響で変わります。妊娠を望む場合は、早めに相談し、治療の要否も含めて医師と方針を検討しましょう。子宮筋腫を妊娠前に摘出するか、子宮筋腫を持ったまま妊娠するかは医師の判断により異なることがあります。子宮筋腫を摘出後、妊娠中の子宮破裂を避けるため術後1年半は妊娠をお勧めしない場合もあります。子宮筋腫合併妊娠の場合、妊娠中に腹痛や子宮筋腫への感染、流早産のリスクとなる場合があります。妊娠の方針に関しては、妊娠前に産婦人科医に相談しましょう。また、妊娠が長期にできない場合には、不妊が子宮筋腫の影響の場合もありますので、子宮筋腫を妊娠前に切除をお勧めする場合があります。Q4. 子宮筋腫があると性行為はできますか?
多くの場合は可能です。
ただし性交痛や性交後出血がある場合は、筋腫以外の原因も含めて整理が必要です。
詳しくは別記事で解説しています。
まとめ|「ぽっこり+症状」があるなら、エコー検査で安心を
子宮筋腫の症状は、「生理の量」や「痛み」だけでなく、「お腹の張り」「頻尿」「便秘」などの形でも現れます。
「お腹ぽっこり」が気になり、さらに生理痛や貧血などの不調がセットである場合は、体からのサインかもしれません。
一度婦人科でエコー検査を受けることで原因が整理でき、安心につながります。
つらい症状を「いつものこと」と我慢せず、ご相談ください。
ご予約について
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【土日祝日も診療】全ての医師やスタッフは女性です。ご安心してご来院ください。
平日受診できない方に通院していただきやすいよう、毎朝8時30分から診療を受け付けています。
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オンライン診療も対応しておりますので遠方の方やご来院が難しい方は是非ご利用ください。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。




