10歳までのフェムケア
更新日:2026.06.28
女性の一生の健康は「赤ちゃんの頃」から始まっています
「フェムケア」という言葉を聞くと、生理が始まってからのケアや、更年期のケアを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、産婦人科医として診療を続けていると、女性の健康の土台は、もっと早い時期、赤ちゃんの頃から作られていると強く感じます。
私は、生まれたての小さな赤ちゃんを診るとき、特に大切なのは、
① 授乳
② 睡眠
③ 排泄
この3つだと考えています。
これらは成長・発達だけでなく、将来の女性としての健康にも深く関わっています。
赤ちゃんの腟は大人とは全く違います
赤ちゃんの女の子の外陰部を見ると、大人よりもずっと小さく、腟の入り口は非常に狭くなっています。
新生児では、お母さんから受け継いだエストロゲンの影響が一時的にありますが、その後はエストロゲンが低下し、思春期までは「低エストロゲン期」が続きます。
この時期の腟粘膜は薄く、腟の内部はまだ十分に発達していません。
さらに処女膜は比較的厚く、腟口の一部を覆うような構造になっています。
これは将来のためだけではなく、腟内へ便や異物が入り込みにくくする、生体の防御機構の一つとしても働いています。
赤ちゃんの体は、本当によくできています。
排泄の自立は成長の大きな節目です
生まれたての赤ちゃんは、最初は自分で排尿や排便をコントロールできません。
ところが歩けるようになり、脳や神経の発達が進むにつれて、自分で尿や便を我慢し、排泄できるようになります。
私はこの排泄の自立は、
二足歩行の完成と神経発達が重なる非常に重要な節目
だと考えています。
歩けるようになることと、自分で排泄をコントロールできることは、人間の発達において密接に関係しています。
日本では排泄の自立が比較的早かった
排泄の自立時期には、文化的な違いがあります。
日本を含むアジアでは、昔から布おむつを使用する家庭が多く、おむつ外れを早く進める文化がありました。
そのため、1歳半から2歳頃までに排尿・排便の自立が進む子どもも少なくありません。
一方、欧米の育児書では、2〜3歳頃を目安としているものも多く見られます。
もちろん個人差はありますが、この違いには、育児文化や紙おむつの普及など、さまざまな社会的背景も影響していると考えられます。
「早ければ良い」「遅ければ悪い」というものではありません。
大切なのは、その子の発達に合わせながら、自立を支えていくことです。
排泄が自立すると外陰部ケアも始まります
排泄が自立すると、
- 自分でトイレットペーパーを使う
- 便をきちんと拭く
- 外陰部を清潔に保つ
という習慣を覚えていきます。
これは将来の女性の健康にとって、とても重要な第一歩です。
便には、たくさんの腸内細菌が存在しています。
女の子は尿道や腟が肛門に近いため、便が外陰部に残ることで、外陰炎や尿路感染症の原因になることがあります。
そのため、
前から後ろへ拭く
という基本的な清潔操作も、この時期に身につけたい習慣です。
思春期になるとフェムケアはさらに大切になります
10歳前後になると、
- 卵巣が発達する
- エストロゲンの分泌が増える
- 腟、子宮、外陰部が成熟していく
という変化が起こります。
やがて初経を迎えると、月経血の管理も必要になります。
月経が定期的に起こるかどうかだけでなく、日常的に紙ナプキン、布ナプキン、タンポン、月経カップなどを使うための知識や手技も必要になってきます。
つまり、
フェムケアは、
『赤ちゃんの頃から始まり、排泄の自立、思春期、月経、妊娠、更年期』へと、
一生続いていくセルフケアなのです。
清潔は大切。「洗わない」のではなく「正しく洗う」
以前は、
「デリケートゾーンは石けんで洗わない方が良い」
と言われることもありました。
しかし、実際には、外陰部に適した刺激の少ない洗浄剤を用いて、皮膚を傷つけず、必要以上に乾燥させず、皮脂や汚れ、雑菌をやさしく洗い流すことが大切です。
大切なのは、腟内を洗うことではなく、外陰部を正しく洗うことです。
私は子どもの頃から、歯磨きや手洗いと同じように、外陰部も正しい方法で洗う習慣を身につけることが大切だと思っています。
そのために開発したのが、EBINEフェミニンムースです。
弱酸性で低刺激の処方とし、石油系合成界面活性剤を使用せず、毎日しみにくく、違和感なく使いやすい、保湿効果のある洗浄剤を目指しました。
小さい頃から正しい洗い方を知っていれば、思春期や月経開始後も自然にセルフケアができるようになります。
恥ずかしいことではなく、当たり前の健康教育へ
日本には「恥の文化」があります。
外陰部のことを話すことも、洗い方を教えることも、習うことも、どこか恥ずかしいものとして扱われてきました。
しかし、
歯磨きを教えるように、
手洗いを教えるように、
外陰部を清潔に保つことも、健康教育の一つです。
正しい知識を持つことで、感染症を防ぎ、皮膚トラブルを減らし、将来の女性の健康を守ることにつながります。
私は、教育者や医療者こそ、このことを意識して子どもたちや保護者に伝えていく責任があると考えています。
おわりに
女性の体は、生まれた瞬間から変化を続けています。
授乳、睡眠、排泄という乳幼児期の基本的な生活習慣から始まり、排泄の自立とともに外陰部のセルフケアを学び、思春期には月経管理へとつながっていきます。
フェムケアは、特別な美容や流行ではありません。
女性が自分の体を知り、清潔を保ち、健康を守るための一生の習慣です。
その第一歩は、10歳までの家庭での教育にあります。
子どもたちが自分の体を恥ずかしいものではなく、「大切に守るべき体」として自然に受け入れられる社会を、医療者として、そして教育者として築いていきたいと思います。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



