店内写真
院長ブログ

人工妊娠中絶はどうして悪いのか?中絶は何週まで?心と体への影響やリスクを産婦人科女医が解説。

画像

人工妊娠中絶はどうして身体と心に悪いのか?

人工妊娠中絶の是非について、外来で患者さんから質問を受けることがあります。この複雑な問題について、以下のように考えを整理してみました。

. 倫理的に悪い

自然にまかせれば一人の人間として世に出る赤ちゃんの権利は、守ってあげたいものです。人間は生きる権利がある。この考えから、人工妊娠中絶はよくないと思っている人が多いと思います。

ただし、出産を望まない妊娠も存在することは事実です。

人工妊娠中絶に関する倫理的考察

多くの人が、生まれてくる可能性のある命を尊重し、その権利を守るべきだと考えています。これは人工妊娠中絶に反対する主な倫理的根拠の一つです。しかし、現実には様々な事情により出産を望まない、あるいは困難な状況にある女性も存在します。

  • 経済的な理由
  • 社会的な理由
  • 多産
  • 若年者
  • 母体の身体的理由:心疾患や糖尿病など

日本の法的枠組み【母体保護法】

日本では母体保護法により、特定の条件下で人工妊娠中絶が認められています。

  • 母体の健康上、妊娠継続が危険な場合
  • 経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれがある場合
  • 暴力や犯罪による妊娠の場合

 これらの条件下で、医師の判断により妊娠216日までの人工妊娠中絶が可能です。

中絶の方法と時期による違い

妊娠12週未満

麻酔下で意識のない中で処置が終了できるのは妊娠12週未満です。

妊娠12週以降

12週以降の人工妊娠中絶は、産院に入院して小さな赤ちゃんを人工的に分娩するという方法で中絶を行います。

この問題には明確な答えはなく、個人の価値観や状況によって判断が分かれる難しい課題です。医療者として、患者さんの状況を十分に理解し、適切な情報提供と支援を行うことが重要と考えます。

2.精神的に良くない

・胎児に人権があるのか?

・胎児に意識があるのか?

・中絶は子殺しなのか?

これらの議論は限りなくありますし、どのような状況であっても妊娠した女性は、妊娠を中断することに罪悪感を持つものです。

妊娠をやめることは、母親の精神衛生上よくないと思いますので、出産を望まない性交渉は、避妊方法を熟知して対策を練るべきです。性交渉すれば妊娠する。健康であれば、当然のことなのですが、妊娠するという状況を理解していない方もいるようです。

人工妊娠中絶処置後、母親は喪失感により、又は罪悪感により、うつ状態になってしまうこともありますので、人工中絶は十分に考慮したうえで判断したほうがいいと思います。長期的に心的サポートを得られる状況を作ることは大切です。

また、その次の妊娠時に前回の妊娠時の喪失感などがフラッシュバックすることがあり、そのサポートは非常に難しいです。

 人工妊娠中絶を決断する前に、妊娠を継続できる環境が整えられるかどうか(パートナー、両親、家族、仕事、学業、経済、住居問題、その他)を多方面にわたり検討すべきと思います。

3.女性の健康に悪い

人工妊娠中絶手術内容とそのリスク

まずは人工妊娠中絶処置に関して。

子宮内の胎児を人工的に取り出すことは、胎児が通るのに十分な広さに子宮頸管を広げ、子宮内に着床している胎児と胎盤とその付属物を取り出す処置です。

  • 子宮頸管を広げるときに頸管を傷つける
  • 子宮内の胎児および胎児付属物を取り出すときに子宮内膜を傷つける、または、欠損させる。
  • 子宮収縮不全により、止血できない

以上の理由により、大量出血する場合があります。

また、妊娠するときは性病が感染していることもありますし、性病以外の菌により子宮内感染症を引き起こす可能性もあります。子宮内感染や子宮収縮が悪い場合、処置後の出血が継続する場合、再処置が必要になる場合もあります。

次の妊娠への影響

子宮内癒着により不妊症につながる場合があります。

非常にまれですが、処置により子宮内膜の欠損した部位が修復する前に次の妊娠で胎児が生着すると、胎盤と子宮内膜がくっついて分娩後も胎盤が剝がれなくなる癒着胎盤という、母体死亡につながる疾患があります。

事前に本人の申告がない分娩後、胎盤が自然に剥がれない理由がわからず大量出血につながることがあります。子宮全摘術や大量輸血が必要な場合もあります。

その他、多くはありませんが、人工妊娠中絶時の子宮頸管拡張で、子宮頸管部の筋層のダメージひどく頸管無力症となる可能性があります。また、性病などの膣内感染症がある場合、処置をする際に子宮内に感染が広がると、その後の受精卵の着床不全を引き起こすことがあります。

処置後の発熱や帯下(おりもの)の増加がある場合は、速やかに受診してください。

まとめ

妊娠中絶は、倫理的な問題に加え、精神的・身体的にも女性に大きな影響を与えます。中絶後の罪悪感や喪失感、不妊や妊娠合併症のリスクも考慮が必要です。正しい知識を持ち、慎重に判断することが大切です。

あまり知られていないことかもしれませんが、少しだけお伝えしました。

院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

院長ブログの記事RANKING

オンライン診療

オンライン診療

当院は皆様の健康と快適な生活をサポートするため、オンライン診療サービスを提供しております。
オンライン診療は、体調が悪く外出が辛い時や感染症リスクを減らしたい時、ご自宅から医師の診療を受けることができます。移動時間や待合室での待ち時間を削減できます。

※LINEドクターはLINEのビデオ通話を通じた医師の診療、お薬の処方、配送までワンストップで受ける事ができるオンライン診療サービスです。
※医師からの指示により、通院が必要となる場合があります。

オンライン診療はこちらより
港区、品川区の産婦人科で妊婦健診・産後ケア・避妊相談なら│海老根ウィメンズクリニック

白金高輪 海老根ウィメンズクリニック
東京都港区高輪1-2-17 高輪梶ビル5.6.7F

TEL

03-5789-2590

FAX

03-5789-2591

診療時間
8:30 - 13:00
15:00 - 19:00

▲ 15:00 - 17:00

WEB予約