必要な薬剤が入手できない
更新日:2024.07.16
必要な薬剤が入手できない
院内処方を開業当時の11年前から続けています。理由は、当クリニックは産婦人科疾患の処方が多いため、女性特有疾患の薬剤は一般的な薬局では、入手できないことがあること。一般の方の前で、薬剤の説明に抵抗のある方が多いこと。月経に関する薬剤の内容を薬剤師が理解できないことが多いこと(内科医も説明はとても難しくて、できないのは当然なのですが)。実は、1956年から厚労省は医薬分業を掲げております。理由はというと、処方が自由にできることと在庫負担がないこと。医療の質的向上を図るため。しかしながら、この状況がどんどん厳しくなってきました。
まず、普通に世の中に入手できない薬剤が多すぎる。私もクリニックで入荷できない薬剤を院外処方箋で処方するのですが、どの薬局でも手に入らないことがある。どの薬局がどの薬剤を持っているかわからず、手探り状態で処方箋を作成する。結局、その策剤を患者様は入手できない。そして、再度クリニックに来て処方を変更する。病気の人に、この作業はつらすぎる。
世の中に必要な薬剤が薬局で入手できないこの状況では、やはり院内処方で入できる薬剤で患者様にお渡しする方が、親切ではないかと思うようになってきた。さらに、これはこちらの事情であるが、今回の保険点数の改定により入手できる薬剤の金額より低い保険点数が設定されているため、処方すれば処方するほど赤字になるという仕組みにもなった。おかしいのは仕方ないとして、病気の人はどうやってこの医療保険制度で治療していくのだろう。わからない。
気持ちを入れ替えて、入手できる薬剤を処方薬により赤字になることを覚悟して入荷を頑張ってトライしようと思う。それ以外、医療がスムーズに行える道はないのだ。特に、妊婦さんの場合、処方薬が限られてくる。この製剤はどうしても確保したいと訴えると、オンラインではオーダーできないが、問屋さんの営業さんのご厚意で、今日も少し妊婦さんに使用できる抗生剤を入荷できた。手間はかかっても、こうやって薬剤の流通が戻るまで努力しなければならないだろう。
コロナの時も、いろいろ差別を受けながら毎日診療してきた。今度は、医療品がない状態での診療。困難は続くのかなあ。
ちょっとした愚痴をこぼさせていただきましたが、少しは薬剤をご用意できますので、心配な方は遠慮なく、ご相談に来てください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。