更年期の子宮筋腫の治療「ホルモン補充療法(HRT)」の注意点を女医が丁寧に解説。
更新日:2024.05.13
子宮筋腫はとても女性に多い病気ですが、産婦人科受診の経験のない方には、ほとんど症状がなく気づかない方もいらっしゃいます。
その中で、更年期障害の治療を行いたいと婦人科を訪れて、超音波検査で子宮筋腫を発見される方もいらっしゃいます。
その際のホルモン補充療法は、ちょっと注意が必要です。
この記事ではホルモン補充療法(HRT)や子宮筋腫の基本的な情報の解説後に、子宮筋腫治療「ホルモン補充療法(HRT)」の注意点についてご紹介いたします。
そもそも子宮筋腫とは?
子宮筋腫とは、子宮にできる腫瘤(こぶ)です。
子宮の筋肉の中に糸巻のようなものができている感じです。
ほとんどが良性なので、症状がない場合は大きな問題ははないかもしれません。
では、なぜできてしまうのか、どういった症状があれば疑わしいのかについて、まずご紹介します。
子宮筋腫ができる原因自体は、まだはっきりとわかっていません。
ですが、女性ホルモンの影響を受けて大きくなるという性質があり、月経のたびに、そして、エストロゲンにさらされるほど、少しずつ悪化していく疾患です。閉経を迎えると、徐々に小さくなっていくことが多いです。
子宮筋腫は、できる部位により症状の出方が異なります。
・筋層内筋腫
子宮筋腫の中で、最も多いタイプです。大きくなると子宮の内側に盛り上がってくるため、月経量が多くなることがあります。尿道を圧迫するほど大きいものでは、月経前から月経にかけて、尿が出なくなる「尿閉」という症状が出る場合があります。
・粘膜下筋腫
子宮内膜の内側にできる子宮筋腫です。子宮の内側にポコっとできるため、筋腫が小さいものであっても月経量が多くなることがあります。過多月経のため貧血などの症状が出やすいのが特徴です。不正出血や不妊の原因にもなります。
・漿膜下筋腫
子宮の内側ではなく、外側にできるタイプの子宮筋腫で症状があまりないことがあります。月経に関連した症状が少ないために発見されないことも多いですが、大きくなると圧迫感が出てきたり、まれにねじれて痛んだりする場合があります。
・頚部筋腫
子宮筋腫の症状に加えて、頚部筋腫による特有の症状があります。
例えば、頚部の筋腫が近くの器官や組織を圧迫することで、排尿困難や頻尿、性交痛などの症状が現れる場合があります。また、筋腫の大きさや位置によっては、妊娠に関連した問題が生じることもあります。
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ホルモン補充療法(HRT)とは?
ホルモン補充療法(HRT)は、体内のホルモンレベルが低下したり不均衡になったりした場合に、そのホルモンを外部から補充する治療法です。
一般的に、更年期障害や閉経後の女性の症状を軽減するために行われます。
更年期障害では、卵巣からのエストロゲンやプロゲステロンの産生が減少することが主な原因です。
ホルモン補充療法(HRT)はこれらのホルモンを補充することで、ホットフラッシュ、夜間の発汗、不眠、骨粗しょう症のリスクなどの症状を軽減するのに役立ちます。
ただし、ホルモン補充療法(HRT)にはリスクや副作用もあり、個々の状況に応じて利点とリスクを慎重に考慮する必要があります。
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更年期の子宮筋腫治療「ホルモン補充療法の注意点」
子宮筋腫が小さい場合
子宮内膜に近くない場合は、ホルモン補充療法が比較的行いやすいです。
ホルモン補充療法を行いながら、定期的に超音波検査を行いサイズの変化がないか、不正出血や腹痛や下腹部違和感がないかを確認します。
子宮筋腫が大きい場合
ホルモン補充療法によりさらに筋腫のサイズが大きくなる場合もあります。
その後、不正出血、尿閉、下腹部違和感などが出現する場合には、ホルモン補充療法の中止を考えます。
中止しても症状が悪化する場合、子宮筋腫が大きくなる場合には、手術療法による子宮全摘術も考慮します。
子宮内膜に近く、サイズはほぼ変わらない場合でも不正出血が持続的に生じる場合、やはりホルモン補充療法の中止を検討します。
本当に子宮筋腫か?
ホルモン補充療法を施行するしないにかかわらず、子宮筋腫と思われていた腫瘤性病変が大きくなる場合は、非常にまれですが悪性腫瘍の可能性も否定できないので子宮全摘術も考慮します。
少ない経験ではありますが、早期に発見できて摘出だけで完治した症例、判断に迷っているうちに子宮摘出ができない状況になった症例、子宮摘出は可能であったが転移巣が急激に大きくなり亡くなってしまった症例の経験があります。
閉経後に子宮筋腫が大きくなる場合には、すぐにホルモン補充療法を中止して、注意深く観察するべきです。
子宮筋腫の治療が先か後か?
どうしてもホルモン補充療法が必要な場合には、子宮全摘を行い、その後ホルモン補充療法を行うと子宮筋腫のトラブルの心配なく治療ができると思います。更年期症状がひどく、さらに子宮筋腫で悩んでいる方は、手術療法も視野に入れて治療を行うことが大切です。
まとめ
いろいろな方がホルモン補充療法を必要とする時代。
それぞれの子宮筋腫と更年期障害の症状により治療を組み合わせる必要性があります。
お気軽にご相談くださいませ。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。