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子宮頸がん検診の費用は?痛い?検査内容は?検査結果の見方から要精密検査の確率まで女医が丁寧に解説。

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「子宮頸がん」という病気について、しっかりと理解して対策を取れていますか?

子宮頸がんは、現在で唯一「予防法が確立されたがん」です。

私が産婦人科医となったばかりの頃と比較すると、多くのことがわかってきました。せっかく医学が進歩しているのに、十分に恩恵を受けられていない女性がまだ多くいることに、産婦人科の医師として歯がゆい思いを抱いています。

今回は、子宮頸がんについて簡単にご紹介するとともに、大切な「子宮頸がん検診」についてお伝えします。

 

子宮頸がんとは?

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まずは子宮頸がんという病気について、原因や治療法などを解説します。

子宮頸がんは、子宮の入り口の部分である子宮頸部にできるがんのことです。 女性特有のがんとして知られており、定期的な検診で早期発見・早期治療が可能です。

子宮頸がんの原因はHPV

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じるがんです。HPVには約200種類以上の型がある中で、13種類が「ハイリスク型HPV」と呼ばれ、子宮頸がんの発症に密接に関わっています。

HPVに感染すると、すぐに子宮頸がんになるわけではありません。

まず、感染したとしても、時間の経過とともに自然とウイルスが排出されることが多いです。排出されず、持続的にHPVに感染していると、子宮頸部の細胞が変化し、「異形成」と呼ばれる、がんの前段階の状態となります。

異形成には「軽度・中等度・高度」の段階があり、異形成も、時間経過で消失する可能性がありますが、一部は数年〜10年ほどかけて、がんへと進展するのです。最も発症が多いのは30代半ばの方ですが、早ければ20代でも、子宮頸がんになる可能性があります。

HPVは主に性交渉により感染します。
性交渉を持つようになってから数年〜の若い年代の女性に発症が多く、妊娠・出産といったライフプランにも関わってしまう、厄介ながんです。とはいえ、性行為の経験がある方であれば、一生の間に一度も感染しないというのは難しいでしょう。

子宮頸がんの前がん病変の治療法

子宮頸部異形成(cervical intraepithelial neoplasiaCIN)は、子宮頸がんの前がん病変と考えられており、その病変の程度により3つに分類されます。

・軽度異形成(CIN1)
・中等度異形成(CIN2)

・高度異形成(CIN3)

子宮頸がんの前がん病変の場合、治療法は主に子宮頸部蒸散術および子宮頸部円錐切除術の2つです。
手術にはそれぞれメリットデメリットがそれぞれあり、一人ひとりの状態に合わせて検討することになります。

その後の妊娠は可能ですが、早産のリスクが上がるなど、多少の影響は避けられません。

子宮頸がんの治療法

子宮頸がんにまで進展した場合、その進行度合いによりますが、治療法は大きく2つです。

1.手術

がんの広がりにより摘出の範囲が変わります。進行の度合いによっては、今後の妊娠を諦めなければなりません。手術の後遺症として、排尿障害やリンパ浮腫、リンパのう胞の感染などつらい症状が出てしまうこともあり、「手術をしたらすっかりよくなる」わけでもないことを知っておいてください。

2.抗がん剤や放射線による治療

子宮頸がんが進行していた場合、抗がん剤や放射線による追加治療も必要です。放射線療法のみ、手術と放射線療法、さらには化学療法を組み合わせる場合もあります。

子宮頸がんの症状

子宮頸がんや、子宮頸部異形成となった場合、以下のような症状が出てきます。

不正出血
性行為や運動などの刺激による出血
おりものの匂いや色が変わる
おりものが多くなる
下腹部痛、腰痛

異形成など初期の段階ではほとんど症状がありません。該当する症状がある方は、早めに婦人科を受診しましょう。

 

子宮頸がんを予防・早期発見するには?

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次の2つの対策を、ぜひ全ての女性にとっていただきたいです。

子宮頸がんワクチンを接種する

予防効果が明らかとなっている「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」を接種することが重要です。日本では一時、HPVワクチンの接種が差し控えられたこともありましたが、再び接種が「推奨」されております。もちろん、私も産婦人科医として、皆さんにワクチンの接種を推奨いたします。

接種時期は?

初めての性交渉を持つ前に接種するのが望ましいため、1216歳の女性に対し、国が接種を推奨しています。
ワクチンの接種機会を逃してしまった方(平成9年度生まれ~平成19年度生まれの女性)は、令和7年3月までの間であれば公費でキャッチアップ接種ができますので、ご検討ください。

性交渉経験者は?

すでに性交渉の経験がある方でも、接種した時点以降で感染したHPVのがん化を防ぐ、現在感染していない型の感染を予防するという意味で、ワクチンの接種は意義があるでしょう。年齢に関係なく接種をお勧めいたします。

ワクチンの副反応

ワクチンの副反応としては、筋肉注射のため、投与した部位の腫れや痛みは頻度が高く、そのほかには痒み、頭痛、倦怠感などが知られています。

子宮頸がん検診を受ける

子宮頸がんワクチンを接種した方も、接種しないことを選んだ方も、子宮頸がん検診は必要です。
まだまだ検診受診率も低いですが、子宮頸がんの症状が出る前に、いち早く見つけるためには検診しかありません。

とくに、ワクチンを接種しない選択をした方は、少しでも早い段階で子宮頸部異形成や子宮頚がんを見つける必要があります。必ず、定期的に子宮頸がん検診へいらしてください。

検診費用は?

地域によっては子宮頸がん検診に対する補助があるため、無料〜数百円程度の負担で検診を受けられることがあります。
検診の頻度は、状況により異なるので医師の指示にしたがってください。

月経(生理)中の検査はあり?

月経(生理)中も検査は可能ですが、より精度が高い検査を希望の方は月経後の検診をお勧めいたします。
しかしながら、不正出血がある方は、子宮頸がんを見落とさないため、出血を避けて検査に行くのではなく、出血中でも速やかにご受診ください。

子宮頸がん検診の内容は?

問診

過去のワクチン接種歴、検診受診歴、妊娠・出産のご経験、不正出血などの症状があるか等について伺います。

内診、細胞診

腟にクスコという筒状の器具を挿入し、子宮頸部の状態を直接確認する(内診)ほか、細胞採取用のブラシを差し込み、子宮頸部をこすって細胞をとり(細胞診)、検査します。検査後少量の出血を認めることがありますが、特に問題ありません。

子宮頸がん検診結果の見方に関して

検診結果は、子宮頸部の状態を「ベセスダシステム」という方法で分類した以下のような結果で届きます。

これにより、異常の程度が簡単に把握でき、次にどのような対応が必要かを判断します。
結果の種類に応じていくつかのカテゴリに分かれています。

NILM

異常なし

精密検査不要

ASC-US

正常〜軽度異形成の疑い

ハイリスクHPV検査を実施

LSIL

HPV感染、軽度異形成

精密検査が必要

HSIL

中等度〜高度異形成、上皮内がん

ASC-H

HSILを否定できない

SCC

扁平上皮がん(子宮頚がん)

AGC

腺系の細胞に異常あり

AIS

子宮頸部腺がんの初期

adenocarcinoma

子宮頸部腺がん

その他の悪性腫瘍

 

検診結果に「要精密検査」と書かれていた場合は、必ず精密検査を受けましょう。

通常の検診では、子宮頸がんの段階を正確に診断することはできません。子宮頸がんやその前段階であるCIN(異形成)の診断には、より詳細な検査が必要なのです。

子宮頸がん検診にひっかかる確率は?

厚生労働省の統計データによると、子宮頸がん検診を受診した女性の約2.4%(85,209÷3,547,376)が、精密検査が必要と判断されました。このうち、実際に精密検査を受けたのは約74.6%の女性で、その結果、がんと診断されたのは検診を受けた女性の0.02%でした。

子宮頸がん検診の結果が「要精密検査」と示された場合、子宮頸がんだけでなく、がんになる前の段階である「前がん病変」が見つかった可能性を示していることもあります。

前がん病変は、適切な治療を行うことで、がんに進行するのを防ぐことができます。そのため、「要精密検査」と診断された場合は、必ず医師の指示に従い、精密検査を受けることを強くおすすめします。

令和元年度(2019年)がん検診受診者における要精密検査の受診状況 

 子宮頸がん検診受診者数

3,547,376
 
 要精密検査者数

85,209
 
 精密検査受診率

74.60%
 
 がんであった者数

858
 
 がん検診受診者数に対する割合

0.02%
 
 要精密検査者数に対する割合

1.01%

単位:人/令和元(2019)年度

※厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/20/dl/R02gaikyo.pdf
※「がん対策推進基本計画」(平成24年6月8日閣議決定)及び「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(平成20年3月31日健康局長通知別添)に基づき、がん検診の受診率の算定対象年齢を20歳から69歳までとする。
※がん検診受診者数については令和元年度受診者を令和2年度報告で改めて把握したものである。また、令和2年度に精密検査を受診し、結果が判明した者についても含めている。

検診で「要精密検査」となった場合

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子宮頸がん検診で「要精密検査」という結果を受け取られた場合は、追加で詳しい検査が必要です。

ASC-US」の場合

HPVのタイプを調べる「ハイリスクHPV検査」が推奨されます。この検査で、子宮頸がんのリスクが高いタイプであることがわかった場合、コルポスコープ検査や組織診へ進むのが一般的です。

ASC-US以外」の場合

細胞に何らかの変化が認められる状態ですので、コルポスコープ検査や生検をおこない、子宮頸部の状態をより詳しく確認します。実際に異常のある箇所の組織をつまみとる検査のため、多少の違和感や痛み、出血があります。

コルポスコープ検査(コルポスコピー)及び生検とは?

上記の「ASC-US以外」の場合に、子宮頸がんの精密検査として「コルポスコープ検査(コルポスコピー)」や「組織診」をおこないます。

コルポスコープ検査

コルポスコープという特別な拡大鏡を使って、子宮頸部を拡大して直接的に観察します。その後、酢酸を用いて、子宮頸部を観察します。膣内に光を照らして、状態をしっかり見ることができます。高い精度で異常を発見できる検査です。腟にコルポスコープを挿入するのに多少の違和感はあるかもしれませんが、痛みはほとんどありません。

組織診

コルポスコープでの観察中に異常のある箇所が見つかった場合、必要に応じて小さな1㎜程度の組織を取り、詳細な分析のために検査します。組織を取る際、少し痛みや出血があることがありますが、ほとんどなにも感じない方もいらっしゃいます。

精密検査の結果について

1.異常なし

検査結果に異常が見られない場合です。

2.慢性炎症

子宮頸部に慢性的な炎症が見られる場合です。

3.子宮頸部上皮内病変(異形成、上皮内がん)

CIN1〜3。これはCINCervical Intraepithelial Neoplasia)として分類され、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(重度異形成または上皮内がん)という段階があります。

4.浸潤がん

がん細胞が子宮頸部の上皮を超えて周囲の組織に浸潤している状態です。

子宮頸がん精密検査の結果別ガイド

精密検査の結果は、以下のように返ってきます。結果に合わせ、適切な対処をしましょう。

異常なし

定期的な検診を続けます。多くの場合、1年ごとに検診を受けることが推奨されますが、検診の頻度はかかりつけ医に確認しましょう。

慢性炎症

何らかの炎症や、ホルモンバランスの乱れが原因で異常があったと考えられますが、念のため36か月後の再検査をおすすめします。

CIN1〜2

CIN1(軽度異形成)やCIN2(中等度異形成)の場合、自然消退することもあるため、すぐには治療をおこなわず、経過を見ていきます。CIN1CIN2の状態が長く続くようなら、子宮頸部蒸散術を検討します。

CIN3

CIN3(高度異形成)は、進行がんへ発展してしまう可能性が高くなってくるため、手術(子宮頸部蒸散術および子宮頸部円錐切除術)を検討します。

浸潤がん

浸潤がんとなった場合には、手術や抗がん剤・放射線治療など、さらなる治療のため、専門的な病院で精密検査などをおこなう必要があります。

 

子宮頸がんをめぐる日本・世界の現状

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日本以外の先進国(G7/G20)では、子宮頸がん患者数は大きく減少しており、ほとんど撲滅されている国もあります。

HPVワクチンの接種が広まっているおかげです。ヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどでは、15歳の女子のHPVワクチン接種完了率は80%以上となっています。

一方の日本では、毎年1万人の女性が新たに子宮頸がんと診断され、3000人ほどの方が子宮頸がんにより亡くなっています。

※参考データ
国立がん研究センターがん情報サービス
2019年の診断数:10,879例
2020年の死亡数:2,887人

亡くなる方の数は全く減っていません。乳がんや大腸がんに比べれば患者数は少ないですが、たくさんの若い方の命が失われている、幼い子どもを残して亡くなってしまう方もいるという点で、子宮頸がんが減らないのはとても悲しいことだと感じます。

20代、30代など若い年代の女性にとって、「がん」はあまりリアリティのある病気ではないのでしょう。仕事やプライベートの用事に忙しく、婦人科検診を後回しにしたくなる気持ちも、わからないではありません。

ですが、子宮頸がんは比較的若い年齢で発症し、「早期発見」が妊容性温存に非常に重要です。

ステージIでは5年生存率が92.2%とかなり高いですが、ステージIIIでは65.8%、ステージIVになると25.6%と大きく下がってしまいます。もちろん、治療も長くかかるようになり、日常生活に支障が出ることも避けられません。

1年に1回の子宮頸がん検診で、早期発見につとめましょう。

 

子宮頸がん検診のQ&A

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子宮頸がん検診について、よくあるご質問にお答えします。

Q. 性行為の経験がないのですが、検診は必要ですか?

性行為の経験が全くない場合は、HPVに感染する可能性はごく低いです。したがって、子宮頸がん検診はしなくてもよいでしょう。ただし、お腹の上からあてる超音波等で子宮筋腫、ポリープなどの疾患を見つけることはできますので、かかりつけの婦人科を持っておくことをおすすめします。

Q. 子宮頸がん検診は痛いですか?

子宮頸がん検診では、腟にクスコという筒状の器具を挿入し、子宮頸部の状態を直接確認するほか、細胞採取用のブラシを差し込み、子宮頸部をこすって細胞をとります。1分程度の短時間ですむ検査です。

クスコにはサイズがあり、体形に合った器具を選択することができます。腟を広げて子宮頸部を確認する際に多少の違和感があったり、ブラシでこする際に痛みを感じたりすることはありますが、ほとんど何の痛みも感じない方もおられます。緊張して体に力が入っているとつらくなるので、リラックスしていただくと痛みが少なくなります。

検査のあと、ごく少量の出血をする場合がありますので、おりものシートなどをつけて帰られるのが安心だと思います。

Q. 子宮頸がんになったら、性行為は控えた方がよいですか?

性行為による刺激で出血しやすかったり、痛みを感じたりする場合があります。子宮頸がんの進行度合いによって異なります。手術や放射線治療の後などは、子宮頸部の状況が異なるので担当医に確認することをおすすめします。

 

まとめ

今回は、子宮頸がんそのものについて簡単にご紹介するとともに、子宮頸がんを早期に発見するための検診の重要性などについてお伝えしました。

若い皆さんにとって、「がん」はあまりリアリティのない病気かもしれませんが、妊娠や出産といったライフイベントにも影響し、命にも関わる重大なものです。早く見つけ、早く治療すること、そしてワクチンで予防することが大切です。1年に1度、ぜひ子宮頸がん検診を受けてください。

院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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