東京都「ユースクリニック」実施医療機関に採択されました|若い世代が安心して相談できる居場所を目指して
更新日:2026.08.26
今回、20施設の一つとして採択していただき、東京都の助成により、若い世代の皆さんからの相談を無料でお受けできることになりました。
私がユースクリニックの必要性を感じるようになったのには、大きく3つのきっかけがあります。
目次
1.トー横キッズを目の前にして感じた「子どもたちの居場所」の必要性
「フェムテック」という言葉が社会に浸透し始めた頃のことです。ある食事会で、「トー横キッズ」の話題が出たことがありました。
その食事会の場所は、ちょうど新宿駅の近くでした。
「実際にトー横キッズと呼ばれている子どもたちは、どのような状況にいるのだろう」
そう思い、実際に見に行ってみることになりました。
そこで目にした光景は、今でも忘れることができません。
まだ若い子どもたちが行く当てもなく集まり、地面にゴロゴロと横になっていました。
私にとっては、とても信じられない光景でした。
警察の方々が必死になって子どもたちに声をかけ、その場所から移動させようとしていた姿も印象に残っています。
聞くところによると、親御さんに連絡しても、迎えに来てもらえないことも多いとのことでした。
私は大学にいる頃から、児童虐待に関わる仕事に携わる機会が多くありました。
その経験もあって、目の前の子どもたちを見ながら、これは単に「若者が繁華街に集まっている」という問題ではなく、児童虐待やネグレクト、家庭環境など、現代社会が抱えるさまざまな問題が表面化したものではないかと感じました。
その場から、知り合いの区議会議員、都議会議員、国会議員の方々に電話をして、
「私たちに何かできることはないでしょうか」
と相談しました。
しかし、現実にはすぐにできることは決して多くありませんでした。
その時、強く感じたことがあります。
子どもたちには「居場所」が必要なのだ。
当時、港区議会議員だった清家愛さん(現在の港区長)とも、「どうしたら子どもたちの居場所をつくることができるのだろう」と話し合ったことを覚えています。
行政だけでも、警察だけでも、医療だけでも解決できない問題です。
それでも、医療機関が若い人たちにとっての「相談できる居場所」の一つになることはできるのではないか。
これが、私がユースクリニックの必要性を感じた最初のきっかけでした。
2.小学校・中学校で感じてきた、子どもと親の「誰に聞けばいいの?」という悩み
私は年に1回、港区の小学校や中学校で、婦人科医としてお話をさせていただいています。一般的に学校医というと、内科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科などの先生方が中心です。
ところが10年ほど前から、産婦人科医である私にもお声をかけていただくようになり、いくつかの学校に毎年伺っています。
そこで驚くのは、毎回、本当にたくさんの質問をいただくことです。
特に、ご両親からの質問がたくさんあります。
「プールや受験に合わせて月経を移動してもいいのでしょうか?」
「生理痛で鎮痛薬を飲ませても大丈夫ですか?」
「どのくらいの症状になったら婦人科を受診すればいいのでしょうか?」
「ピルは飲んだほうがいいのでしょうか?」
「避妊について、子どもにどう教えればいいのでしょうか?」
などなど。
質問を伺うたびに感じるのは、**子どもたちだけではなく、ご両親も困っている**ということです。
親子であっても、生理や妊娠、避妊、性について話をするのは、なかなか難しいものです。
そして、内科や小児科の先生方にとっても、専門領域から少し離れるため、踏み込みにくい内容があるのではないかと思います。
だからこそ、このような悩みは尽きないのだと実感してきました。
それならば、
月経や妊娠、避妊、性のことを、産婦人科医に直接聞ける場所があってもいいのではないか。
病気になってから婦人科を受診するのではなく、
「これって普通ですか?」
「こんなことを聞いてもいいですか?」
という段階から相談できる場所です。
学校で子どもたちやご両親と接するたびに、その必要性を強く感じるようになりました。
3.後輩の産婦人科医、高橋幸子先生との再会が背中を押してくれました
そして3つ目のきっかけが、大学医局の後輩である**高橋幸子先生**です。高橋先生は、研修医の頃から「性教育をしたい」という強い情熱を持って入局してきた先生です。
その熱意はその後も変わることなく、日本全国の小学校、中学校、高校を訪れ、性に関する講演を年間100件以上行っていると聞いています。
今年6月、私の恩師である木下勝之教授のお別れの会で、久しぶりに高橋先生にお会いしました。
相変わらず精力的に講演を続けている話を聞き、その後、Facebookでの発信も改めて見るようになりました。
そんな時、高橋先生のFacebookに、東京都の「ユースヘルスケア推進事業(ユースクリニック補助事業)」に関するアンケートの記事が掲載されているのを見つけました。
「これは、私がやりたかったことかもしれない」
そう思い、すぐに申し込みました。
その後、東京都から事業計画の提出依頼が届きました。
普段、診療をしている私にとっては慣れない事業計画書です。
何をどう書けばいいのか悩みながらも、
「若い人たちが安心して相談できる場所をつくりたい」
という思いで、一生懸命作成しました。
そして今回、東京都のユースクリニック実施医療機関20施設の一つとして採択していただくことができました。
とてもうれしく思っています。
医師だけではない。いろいろな専門家に相談できる場所へ
当院には、医師、薬剤師、助産師、管理栄養士、臨床心理士など、さまざまな専門資格を持つスタッフがいます。身体のことだけでなく、必要に応じて心や生活についても一緒に考えることのできる環境があります。
また、当院はもともと土曜日・日曜日・祝日も診療しています。
学校がある平日にはなかなか医療機関へ行けない学生さんにも、利用していただきやすい環境だと思います。
「病院」ではなく、まずは「相談できる場所」と思ってください
ユースクリニックは、病気になった人だけが来る場所ではありません。生理のこと。
身体のこと。
妊娠のこと。
避妊のこと。
性感染症のこと。
性のこと。
家族や友人とのこと。
「こんなことを相談していいのかな?」
と思うようなことこそ、相談してください。
東京都の事業では、原則として都内在住・在学・在勤の25歳未満の中高生等の若者が支援対象となっています。
対象となる方は、相談を原則無料で受けることができます。
また、一定の条件を満たす場合には、初回の妊娠判定や緊急避妊に係る受診費用についても助成を受けることができます。
相談したからといって、必ず内診をするわけではありません。
お話だけでも大丈夫です。
東京都在住の学生さん、東京都内の学校に通っている学生さん、ぜひ学生証を持って気軽にいらしてください。
もちろん、制度の対象となる方については、学生さんに限らずご相談いただけます。
トー横で子どもたちを見た時に感じた、
「子どもたちには居場所が必要だ」
という思い。
学校で子どもたちやご両親からたくさんの質問をいただく中で感じてきた、
「性や身体について、安心して専門家に聞ける場所が必要だ」
という思い。
そして、高橋幸子先生との再会をきっかけに、その思いをようやく一つの形にすることができました。
白金高輪海老根ウィメンズクリニックのユースクリニックが、若い皆さんにとって、
「何かあったら、ここに相談すればいい」
と思ってもらえる場所になればうれしいです。
一人で悩まず、どうぞ気軽にいらしてください。
お待ちしております。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



