ベルリンで迎えた8月15日|東京で出会った新しい命と平和への想い
更新日:2026.07.03
1995年8月、私は埼玉医科大学からドイツ・ベルリン自由大学へ交換留学生として、大学の夏休みの期間をベルリンで過ごしました。
そして今日、東京の診察室でベルリンから来られた妊婦さんと出会い、お腹の中の新しい命を一緒に見ながら、あの日の記憶を思い出しました。
目次
1995年、ベルリン自由大学で過ごした夏
ベルリン自由大学の神経内科のマルクス教授のもと、ドイツでの医学生生活を送らせていただきました。ドイツ人は日本人にとてもやさしく、時間が正確で約束を守ってくれるという印象が強かったです。
ベルリンの壁が崩壊して間もない頃のことで、かつて冷戦時代の東西分断の象徴でもある東ベルリンのブランデンブルク門を訪れ、夜な夜な学生たちの政治論議に参加しておりました。
「学生が政治を論議しなくて、誰が政治論議するのか!」といわれて、政治に全く無頓着だった私は、とても驚いたことを鮮明に覚えています。
ベルリンで見た、戦後50年の8月15日
その年は、戦後50年という大きな節目の年でした。
8月15日、私は日本から一緒に行った留学生たちと、ちょっと学生には贅沢だったベルリンにある日本食屋さんで天丼とお味噌汁を食べながら、テレビのニュースを見ていました。
画面には、村山総理大臣が、「戦後50周年の終戦記念日にあたって」という、日本の過去の植民地支配と侵略について「多大の損害と苦痛を与えた」として公式に謝罪する姿が映っていました。
その時、不思議なご縁を私は強く感じました。
ドイツのベルリンで、日本人の私が、先の大戦における日本の行為を明確に反省し、心からのお詫びの気持ちを表明する村山首相の姿をテレビで見ているのでした。
日本もドイツも、第二次世界大戦の敗戦国です。
遠い異国にいるという感覚以上に、同じ時代の歴史を背負った国に自分がいるのだ、という不思議なつながりを感じました。
歴史の記憶が残る街、ベルリン
ベルリンは、歴史の記憶が街の中に残っている場所です。戦争、敗戦、分断、そして再統一。街を歩くだけで、人間の歴史の重さと、それでも前に進もうとする力を感じることがありました。
そのベルリンで、日本の総理大臣が戦後50年の節目に言葉を発する姿を見たことは、学生だった私の心に深く残りました。
東京で出会った、ベルリンから来た妊婦さん
あれから30年以上が経ちました。
今日、旅行で訪れたドイツ人の妊婦さんが、当院で3D・4Dエコーをご希望で来院されました。
お腹の中の赤ちゃんが動く姿を一緒に見ながら、私はふと、1995年のベルリンでの記憶を思い出しました。どちらからいらっしゃったかを尋ねると、なんとベルリンからいらしたとのこと。
「私は若い頃、ベルリン自由大学に留学していたんですよ。」
そうお話しすると、そこからベルリンの話、日本の話、東京での暮らしの話へと会話が広がりました。
ご夫婦は、「東京が大好きです」と笑顔で話してくださいました。
その言葉が、とても嬉しく心に残りました。
歴史の重さと、新しい命の明るさ
かつて敗戦国であった日本とドイツ。
その二つの国は、それぞれに過去と向き合いながら、戦後の時間を歩んできました。
そして今、そのベルリンから来たご家族が東京を訪れ、お腹の中の新しい命を一緒に見ている。
歴史の重さと、命の明るさ。
その二つが、同じ診察室の中で静かにつながったように感じました。
命は、国境や言葉を越えて人を結びつける
産婦人科医として、私は日々、新しい命に向き合っています。赤ちゃんの小さな手足が動くたびに、その立体画像をご両親と一緒に見るたびに、ご両親の表情がやわらかくなります。
その瞬間を見ると、命は国境を越え、言葉を越え、人と人を結びつけるものだと感じます。
戦争の記憶を持つ国同士だからこそ、平和の大切さをより深く感じるのかもしれません。
過去を忘れるのではなく、過去を見つめたうえで、未来の命を大切に育てていく。
ベルリンの記憶と、東京で出会った命
1995年のベルリンで見た8月15日のニュース。ベルリンで過ごした学生時代。
そして今日、東京でベルリンから来た妊婦さんと一緒に見た、お腹の中の赤ちゃん。
私の中で、それらの出来事が一本の線でつながりました。
歴史を背負った国と国の間に、今は笑顔と命があります。
そして今日、その思い出を患者さんと共有できたことに、歴史を越えて人と人がつながる不思議さと、新しい命に向き合えるありがたさを感じた一日でした。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。



